エロゲの悪役に転生した俺、勃起中はステータス爆上がりのスキルで破滅を回避する。童貞だけど   作:ゼフィガルド

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第14話:一石を投じる

「大した奴だ」

 

 派手にケリュアーを蹴散らした直後、死に戻りをしたが未だにダンジョンの入り口は見えてこない。靄が掛かった空間の中で浴びせられた言葉は、賞賛だった。

 

「お前は、エレクか?」

「俺の体で面白いことをしてくれたものだ。女を犯すか暴力を振りかざすなら未だしも、魔物相手に腰を振るなんて正気じゃない」

 

 まさか、悪党から正気を疑われるなんて思わなかった。だが、あの行為は決して狂気に陥った故の行動ではなかった。

 

「とんでもない。あの場において、ケリュアーを打倒しうる最適の手段だった」

 

 【勃起無双】におけるデメリットを相手の内部から叩き込み、なおかつ戦闘終了後にヒロイン達に手を出すことをも防げる最適解と言えるだろう。上手く制御できれば、自死すら避けられるかもしれない。

 

「まさか、俺のスキルをそんな風に使う奴がいたとは。今度、試してみるのも悪くはないな」

 

 声色は喜色に弾んでいた。今度、という言葉が気になる。エレクは今、自分が何処にいるかを理解している様だった。

 

「お前は今、何処にいるんだ?」

「何処にも行ってはいない。最初から、俺は俺の中にいる」

 

 当然のことだった。だとしたら、俺の体は今どうなっているのだろうか? どうして、俺が呼び出されたのだろうか?

 

「なぁ。どうして、俺を呼んだんだ?」

「覚えていないのか? 以前も言っただろう。お前は全てに対して無関心なのだと。そう、自分自身にさえ」

「質問の答えになっていない。俺を呼んだ理由はなんだ?」

「敢えて言うなら、偶然だ。本当に偶々タイミングがあっただけだった。と言っておこう」

 

 俺を弄んでいるのか。あるいは本音なのかは判断し辛いが、それ以上の疑問を投げかけるよりも先に意識が浮上していく。

 

~~

 

 目を覚ました。入り口に戻ったかと思ったが、ここはイアス達が設置した第1フロアボスの跡地を利用した休憩所だった。頭がひんやりして気持ちが良い。

 

「みぎゃ!」

「天雅。お前が、付き添ってくれていたのか」

 

 透明な体内には自身の一部を凍らせたのか、氷の結晶が浮かんでいた。俺を介抱する為にやってくれたのだとしたら、健気さに目頭が熱くなった。

 少し離れた場所では商人達が集まって何かを話している。痛む体を起こそうとした俺に気付いたのか、セレンが駆け寄って来た。

 

「あ、まだ起きないで下さい。スキルの反動があるので」

「ケリュアーは? 囚われていた奴は?」

「ばっちりです!」

 

 彼女の手にはボスを討伐した証である黄金の鹿角が握られていた。解放したヒロインはと言うと、商人達から衣服やスープを貰って一息吐いていた。

 自らの成果を見て胸を撫で下ろしていると、セレンから麦粥の入った食器を渡された。薬草などが入っており、疲れた体にはよく効きそうだった。一口掬って、喉へと流し込む。臓腑に沁みる温かさだった。

 

「ありがとう、美味いよ」

「でしょ! 私、粥作りには自信があるんですよ!」

「頼もしいな」「みぎょ!」

 

 おっと。俺だけが食事を楽しんでいてもいけない。天雅にも一口与えると、体を震わせて喜んでいた。少し体を休めて判断力を取り戻した後、俺はセレンの方を見た。

 

「セレン。彼女から話を聞いたりしたか?」

「はい。エレクさんが寝ている間に色々と聞いておきました」

 

 あんな現場を見せた後では、俺からは話しにくい。なので、先んじて事情聴取してくれた、彼女の気の利きように感謝した。まず、聞きたいことがあるとすれば。

 

「ルーカスから囮にされた。というのは本当だったのか?」

「残念ながら……事実です」

 

 信じられない。ゲーム内では、プレイヤーと言うメタ視点から見捨てることはできるにしても、作中の選択肢として囮にするという展開は無かった。

 それに、手段としてもデメリットが大きすぎる。もしも、この所業が露呈すればどれだけ非難されることか。

 

「王国の方で取り締まりの方は?」

「ダンジョンに入る時に書かされる誓約書で『何が起きても、国は一切責任を負わない』と言う文言がありますから」

 

 殺人が起きたとしても死に戻りがあるし、ダンジョンで何が起きているかなんて外野には分からない。

 重大な犯罪を起こしそうな奴は入り口で弾くのだから、ダンジョン内での出来事に干渉しない。というのは、仕方ないこともあるのだろうが。

 

「一冒険者とルーカス、どちらの話が信用されるかと言われれば」

「言うまでもありませんよね」

 

 勇者と言う立場を使って弱い人間を抑圧する。やっていることがエレクと変わりない。なりふり構っていられない程に王女を助けたいのだろうか? あるいは俺に助けられるのが我慢ならないのか。

 色々な可能性を思案していると、転送陣を通してイアスがやって来た。俺達の方を見るなり、拍手をしていた。

 

「素晴らしいですね。こんなに早くに第2フロアボスを倒すだなんて」

「皆の協力があってこそだ。あの女冒険者は、件の人物か?」

「いいえ、違います。恐らく、別の階層に居るのでしょう」

「そうか、残念だったな」

「とんでもない。貴方達のおかげで、彼女の尊厳はこれ以上辱しめを受けずに済んだのですから」

 

 チラリと女冒険者の方を見た。原作では見なかった顔だ。きっと、ルーカスがイレギュラーを働いた為、起きてしまったのだろう。ともすれば、俺も遠因の1つになっているかもしれない。

 

「彼女はどうするんだ? このまま地上に戻るのか?」

「いえ、彼女はダンジョン内で保護します。スポンサーである国王からすれば、余計な事を知っている人物ですから」

「そんな、まさか」

 

セレンの表情が固くなった。王女を助ける為に命を懸けた勇士に対して、その様な振る舞いが行われる可能性があることはショックだったらしい。

 

「あくまで念の為だ。イアスに任せよう」

「はい、お任せください。それとこれを」

 

 脱出用の巻物(スクロール)を渡された。忘れていたが、今の俺は病み上がりだった。あまり無茶をし過ぎる訳には行かないだろう。

 

「有難く使わせて貰うぞ」

「どうぞ。ケイロー先生にもよろしくと言っておいてください」

 

十分に体を休めた後、俺達はケリュアーの黄金鹿角を持って帰った。

賞賛こそは無かったが、多くの人々に困惑を与えた。何故、エレクが持って帰って来ているのだと。

 

「偽物だ。あんな物は偽物に決まっている!」

「だが、ルーカス様はカリドーンの品以降は何も持って帰って来ていない」

「その様な希少品を衆目に晒す必要が無いからだ。ともかく、奴が持って帰って来たのは偽物だ!」

 

 喧々囂々。衆人の困惑を他所に悠々と馬車に乗って帰って行くのは、少しばかり気分が良かった。

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