エロゲの悪役に転生した俺、勃起中はステータス爆上がりのスキルで破滅を回避する。童貞だけど   作:ゼフィガルド

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第6話:エレクと勃起無双

「や、め、て……」

 

 心臓が跳ね上がった。過熱していた本能に冷や水を浴びせられた。目の前にいるのはキャラクターではない。1人の人間だ。俺は今、身勝手な考えで一人の人間の尊厳を踏みにじろうとしていた。

 股間をきつく握る。比喩ではなく、本当に焼けるように熱い。行き場を失った欲望と力が、出口を求めて全身を突き破ろうとしている。

 

「グハッ!!」

「ひっ!?」

 

 堪らずに血を吐いた。鉄の香が口腔に広がり、鼻から抜ける。裸で震える娘の様子が、俺に正気を取り戻させた。戦闘開始前にバッグをフロアの入り口に投げ捨てて来たことを思い出して、這いずって向かう。

 幸い、戦いの余波から逃れていたのか。買い込んだアイテムの多くは無事だった。脱出用の巻物(スクロール)を取り出して、放り投げた。

 

「あの……大丈夫ですか?」

「うるさい! このスクロールを使えばダンジョンの入り口に戻れる筈だ! 俺が正気を保っている間に! 早くいけ!!」

 

 ほぼ全裸の少女を外へと放り出すことになるが、少なくともこのままでいるよりかはマシだ。彼女は直ぐに巻物(スクロール)を使用して、姿を消していた。

 

「ゴブッ」

 

 彼女が居なくなって気が緩んだのか、暴走していた力が内部を破壊し尽くした。動くことすら困難になり、口から夥しい量の血が流れだしていく。立つことも困難になり、俺は意識を手放した。

 

~~

 

「やめて下さい! エレク様!」

「煩い! 口答えするな!!」

 

 いつもは倒されたりしたらダンジョンの入り口に戻るのだが、今回は少し違うようだ。エレクの記憶だろうか?

 場所は館で、メイドに対して醜い欲望をぶちまけていた。汚い尻を曝け出しながら、腰を振っている。同室には、他のメイドや執事もいたが、彼女らは見て見ぬフリをしていた。

 

「いやっ、誰か。助けて!」

「ハハハ! ここにそんな勇気のある奴はいない! 皆、腰抜けばかりだ! 誰か俺を諫めてみろ! さぁ!」

 

 挑発的な物言いだが、皆バツが悪そうに俯くだけ。唯一、歩み出たのは例の執事だけだった。手には木剣が握られていた。

 

「エレク様、無理やりにでも止めさせて貰いますぞ!」

 

 木剣で後頭部を殴打した。普通ならば死に至る可能性すらあるが、無駄だ。情事の最中に【勃起無双】が発動していない訳がない。

 

「カスが! 効かんわ!」

「ぐほっ!?」

 

 軽く払い除けただけで、執事は壁際まで吹っ飛ばされていた。他の者達は一斉に駆け寄って、彼の体を運び上げた。

 

「大変だ! 執事長が怪我をされたぞ! 早く、治療しなくては!」

 

 彼らは犯されているメイドから目を背ける様にして、倒れた執事長を別室へと運んで行った。暫く、高笑いをしながらメイドを嬲っていると、背後に人の気配を感じたのか、振り返った。

 

「また、メイドに手を出したのか?」

 

 エレクとは似つかぬほどに精悍で屈強な中年の男性だった。原作では見たことのないキャラだが、接し方から察するに。

 

「なんだ。俺を注意する気か? 親父、アンタが俺に勝てると思っているのか?」

 

 やはり父親だったらしい。だが、息子に向ける視線は冷たい物だった。怒りを孕んだ物と言うよりかは、無機質で無関心な物だった。

 エレクのことを無視して、彼はメイドへと歩み寄った。彼女は救いの主がやって来たのかと、安堵の表情を浮かべたが。

 

「これをやる。さっさと館から出て行け」

「え?」

 

 メイドに渡したのは金貨の入った袋だった。彼女の腕を掴み上げ、部屋から出ようとして、エレクが叫んだ。

 

「この腰抜けめ! 怒りすらしないのか!」

「お前には勝てんからな。弱者は弱者らしく従っておくよ。良いスキルを持ったじゃないか。亡くなったアイツも喜んでいるだろうよ」

 

 相手をする気が全くなかった。彼が去った後、エレクは部屋中の物を壁に向かって投げつけていた。【勃起無双】で強化された投擲は、投げつけた物が壁にめり込む程の威力となっていた。

 

「クソ! クソ!! クソが!!!」

 

 欲望は満たした。だと言うのに、晴れやかな物も嗜虐に満ちた喜びも無い。怒りのままに暴れ狂っていた。

 スゥッと意識が浮上していく。そろそろ、目を覚ます頃だろうか? 『迷宮エレクチオン』では描写されることのなかったエレクの過去。ルーカスと言う勇者の輝かしさを前にしては、不快感を覚える者すらいるかもしれない。

 

「(なんでだろう)」

 

 エレクのしていることは許されることではない。だが、彼の中には怒り以外の何かが存在している様な気がした。

 

~~

 

 目を覚ました時、俺はダンジョンの入り口に戻っていた。周囲の者達からは侮蔑と嫌悪感に塗れた視線を向けられている。

 どれ位のラグがあったかは分からないが、全裸の女性が帰還した後に俺(エレク)が帰って来たとなれば、過去の所業と結び付けられるのは当然のことだった。唯一心配して駆け寄って来てくれたのは、執事の男だけだった。

 

「エレク様! ご無事ですか?」

「ふん、ちょっと火遊びをしただけだ。今日は疲れた、もう帰るぞ」

「かしこまりました。馬車は停めておりますので」

 

 有能な男だと思った。馬車へと乗り込み、一息ついた所でドッと疲れが押し寄せて来た。何を話そうかと考えて、俺は先程見た光景について質問した。

 

「親父は今、どうしている?」

「旦那様はダンジョンに付いて、諸外国と協議中です。最近は口にすることすら、珍しかったのに、何かありましたか?」

 

 とすれば、長いこと。エレクは父親とも会っていないのだろう。他にも色々と聞きたいことはあったが、思考を中断する様に眠気がやって来た。

 

「何でもない。爺、少し寝る。着いたら、俺をベッドの上まで運んでくれ」

「分かりました。お休みください」

 

 スッと目を閉じる。本当に一瞬で意識が落ちて、今までの活躍の反動の様に。俺は泥のように眠った。

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