エロゲの悪役に転生した俺、勃起中はステータス爆上がりのスキルで破滅を回避する。童貞だけど   作:ゼフィガルド

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第9話:はじめまして

「俄かに信じ難い話ですが」

「俺だって、今でも信じられない。だが、これが現実なんだ」

 

 突拍子の無い話だが、今まで暴虐の限りを尽くしていた男が急遽改心したとすれば、こうでもないと説明が付かない。

 

「信じます。今までのエレク様の風評を鑑みれば、信憑性があります」

「むぅ、確かに執事の私としても。理解は出来ませんが、納得は出来る所です」

「信じてくれるのか?」

 

 だとすれば、2人は心強い協力者になってくれるかもしれない。幾ら【勃起無双】の能力が強くても、発動できなければ俺はただのデブでしかないのだから。

 

「はい。このままだと破滅しちゃうんですよね? 私で良ければ、ダンジョン攻略の手伝いをさせて頂きます!」

「ありがとう。本当に助かる」

 

 善意が巡り巡って自分に帰って来るのは本当に喜ばしい。……だが【勃起無双】の発動を手伝って貰うとなると、話は変わってくるかもしれない。

 どうやって打ち明けるべきかと考えていると。俺達の会話を遮らない様にしていた、執事が機を見て口を開いた。

 

「では、貴方様のことは何と呼べば良いのでしょうか?」

「今まで通りで良い。変えた方が不自然だ」

 

イレギュラーを増やしたくないので、原作準拠な所はそのままにしておきたい。だが、執事は複雑な顔をしていた。

 

「ということは、今。本来のエレク様は何処に行ってしまわれたのでしょうか?」

「俺も分からない」

 

 ひょっとしたら、俺の肉体に入っているかもしれない。元に戻った時、牢獄に居た、なんてことも考えて身震いした。

 

「そうですか……」

 

 執事と言う立場からして、エレクには散々迷惑を掛けられて来た立場だろうに、彼は悲痛な表情を浮かべていた。彼にとっては大事な人物だったんだろうか?

 ふと、【勃起無双】を行使した直後に見た光景のことを思い出していた。使用人達から目を背けられ、父親からすら見放されていた彼に対して、力量の彼我も顧みずに体を張ったのは、彼だけだった。

 

「俺はエレクの嫌な面しか知らない。どんな奴だったか、俺達に教えて欲しい」

「私も聞きたいです。どうして、エレク様はあんな酷いことをする様になったんですか?」

「そうですね。そのことを語るには、まず生まれから遡らなければなりません」

 

 これはゲームをプレイしていても、設定資料集などにも載っていなかった情報だ。一体、エレクは何が原因で歪んでしまったんだろうか?

 

「エレク様は早くから母親を亡くされているのです。御父上は仕事に忙しく、世話は私達に一任しておりました」

「侯爵家ともなれば多忙だろうしな。ひょっとして、妻を亡くした寂しさから仕事に逃げていたのかもしれないが」

 

 エレクをぞんざいに扱っていたのは、妻を亡くして子への接し方が分からなくなってしまった故の対応だったのかもしれない。

 

「私達が推し量ることも憚られます。女性からの愛に飢えていたエレク様でしたが、その容姿から疎んじまれ、拒絶されてばかりでした」

「やがて、憎しみに変わって行った。ということでしょうか?」

「はい。後は、皆さまも知っての通りです」

 

 母を亡くし、周りにいる執事やメイドは対等な立場ではなく。唯一残った肉親からすらも見放されている。俺はその一端を見ている。

 

「だからと言って、非道を許していい理由にはならない」

「おっしゃる通りです。ですから、こんなことを言えた義理は無いのですが。お願いです。この国とエレク様をお助け下さい!」

 

 絞り出すような懇願だった。父親よりも誰よりも真摯に彼と向き合い、生傷も絶えぬ日々だっただろう。

 

「……実は、俺はエレクの記憶を見ているかもしれないんだ」

「どういうことなんですか?」

 

 セレンに尋ねられたので、俺が見た記憶に付いてを話した。メイドに暴行したこと、彼を止めようと執事が身を張ったこと。彼以外は誰もが事態の対処に当たらなかったこと。

 

「これは事実か?」

「お恥ずかしながら、事実でございます。私の力が足りぬばかりに」

 

 心底悔いている様だった。どうして、ここまで親身になれるのだろうか? 彼に対して興味が湧いて来た。

 

「そうだ。まず、名前を教えて貰えないか?」

「申し遅れました。私、ケイローと申します。改めまして、よろしくお願いします。エレク様」

 

 真の意味での初対面ということで、俺はケイローから差し出された手を握った。掌に固い感触が伝わって来た。

 

「剣タコ。って奴か?」

「はい。私、エレク様の身の回りと言うことで勉強以外にも剣術や弓術なども教えていたのですよ」

「その割には、この体は随分と贅肉を蓄えているようだが」

「スキルに気付かれましてから、する意味が無い。と、おっしゃられまして」

 

 【勃起無双】は強力すぎるが故に心身の成長を大きく妨げてしまっていたのだろう。時間があれば、じっくりと鍛錬。と言いたい所だが、手っ取り早さを考えると……。

 

「剣術の指南。ということは、ケイローさんは今でも戦えるんですか?」

「厳しいでしょうな。エレク様からも邪魔だから付いて来るなと言われていたので」

 

 俺よりも先にセレンが聞いてくれた。実際、今回のカリドーン戦に彼が居ても邪魔にしかならなかっただろう。【勃起無双】のことを考えたら、そもそも身内に見られるのも嫌だが。

 

「ケイローには引き続き日常面で頼りにしている。俺を支えて欲しい」

「かしこまりました。私に出来ることがあるとすれば」

「私のことも頼って下さいね!」

 

 事態は悪くなっているはずだと言うのに俺の心は軽かった。意識した訳でもなく、自然と笑みが溢れていた。

 

「ダンジョンの方でもよろし」

 

 と言いかけて言葉に詰まった。よろしく頼むって、何を? ナニを? 朗らかな笑みを浮かべる彼女に対して、シて欲しいことを説明しなければならないと思うと、気は重くなるばかりだった。

 

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