蒼い炎と紫の魔女   作:星夜見流星

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決闘

煙の中から無傷で現れたエンガを見てシオンの本能が危険だと言ってくる。今の一撃は様子見とはいえかなりの威力で撃ったはず。

それはもうかなり上位の防御魔法じゃないと防ぎきれないぐらいの出力で…。

 

「どうしたシオン。まさか学校の首席様がこれで終わりなんて言わないよな?」

 

さっきの火柱の熱に当てられたことで出てきた汗を左手で拭いながら「当たり前でしょ」と返すがどんどん気持ちの余裕がなくなっていく。

今の一撃で得られたのはエンガには身を守る手段があるという事。それもとびっきりに防御力の高いものが。

 

(一か八か近距離戦を…だめだわからない相手に仕掛けるのは相手の思う壺になる。一先ず一旦距離をとって…)

 

「距離をとらせると思うか?」

 

「!?」

 

急に後ろから声をかけられて振り返ってみれば今まで自分の前にいたエンガが一瞬にして背後に立っていた。

 

瞬間移動(テレポート)!?。高等魔法に分類される魔法を媒体もなしに!?)

 

本来高等魔法に分類されるものはなにかしらの媒体を使って発動させる。瞬間移動ならそもそもの陣に加え移動対象の数と大きさ、移動する距離または範囲を書き込んだ陣を追加しなきゃいけない。

しかしエンガが媒体を使った形跡はない。

魔法陣が描かれれば感覚でわかるけどそんな感じはしなかった。

 

(絶対に何か仕掛けがあるはず。考えることをやめるな紫咲シオン、今辞めたら尚更勝ち目なんてなくなる)

 

「下が駄目なら上なんてどうだ?」

 

エンガが右手を上に翳すと上空に無数の火球が現れシオンに向かって降り注ぐ。

頭をフルに回転させエンガが使ってくる魔法や直前の動作を記憶しながら回避に専念していく。避けれるものは避けて当たりそうなものはビームで撃ち落とす。

全ての火球を捌ききると少しだけだが違和感を感じ始める。

 

(数に対してあまり魔力を感じない?)

 

避けれる火球はそれ相応の魔力を感じるが撃ち落とした奴からはあまり魔力を感じないのだ。片方の魔力を10とするともう片方は4ぐらいだろうか。シオンが深傷を負わないように手加減しているのかそれとも他に理由があるのか。

 

(もしかして…)

 

この情報をもとに一つの仮説が導き出されるが確認するとなると一か八かの賭けになる。

 

「考えはまとまったか?」

 

「おかげさまでね」

 

「なら、見せてもらおうか」

 

エンガが右手を上げるとその周りに魔力で出来た球体が生成される。恐らくは直線に飛ばすタイプの魔法だろう。

右手を下ろすと同時に球体がシオンに向けて飛んでくるけどそれに対してシオンは動く事なく飛んでくる球体を見つめていた。

 

(エンガならきっと…)

 

球体が身体に当たると当たった球体は突如として消滅する。そしてシオンにダメージはない。

 

「ハァ…やっぱりか」

 

思っていた通り消滅したというより()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

存在してる様に見せられていただけだったんだ。

 

「いつから気づいてた?」

 

「疑問に思ったのは魔法陣なしで瞬間移動した時でさっきの火の玉を見てなんとなく。やっぱりエンガは優しいね」

 

「…うっせぇ黙ってろ」

 

恥ずかしかったのかエンガは制服のポケットに両手を入れてそっぽを向く。

エンガの魔法の正体、それは相手の精神に干渉する系の魔法だった。

精神に干渉する魔法はさほど珍しくはない。けれどエンガの場合は干渉する力が強くて見せるイメージが現実とさほど変わらないらしく魔力を敏感に感じ取れるシオンでもごく僅かな違和感しか感じ取れなかった。

そしてもう一つ。

 

「ご丁寧に当たらない奴は実態で撃ってくれちゃってさ。用意周到すぎでしょ」

 

エンガはシオンに当たらない攻撃は全て実際に魔法を使う事で見せている幻を悟らせない様にしていた。

恐らくだが最初に負けを認めるまでやめないと言ったのは幻で圧倒して敗北宣言をさせるつもりだったのだろう。

 

 

「本当にお前は頭がキレるな。だからやり辛いんだよ」

 

「最初の火柱もシオンが当たらない距離で本物に切り替えたんでしょ?。最初に熱く感じたのは先入観、実際に熱を感じたのは避けた後だった」

 

誰しもいきなり火柱が出てきたら熱いと思い込んでしまう。

その思い込みを利用しそこにあるのは本物の火柱だと脳に誤認させる事で相手を精神的に追い詰め戦闘の幅を狭めていく。

よく出来た戦術だ。

 

「御名答。俺の基本魔法は炎と幻覚、この二つが俺の魔眼と相性がいいんだよ」

 

相性がいいと言っているあたりエンガの魔眼は固有の能力ではなく特定の種類をブーストするタイプなのだろう。

 

「実体の中に潜む幻。幻の中に存在する実体。それが俺の魔法だよ」

 

「ふーん。でもシオンは難しい事分からないからさ」

 

右手に持った杖を一回転させエンガに向けて突き出し口を開く。

 

「手品は終わりにして純粋に力比べで決着つけようよ」

 

「ふっ、それもそうだな!」

 

エンガは顔に笑みを浮かべ右手を腰に回すとホルダーから一丁の銃を取り出す。

見た感じ魔力を装填させる事に特化した銃といったところか。ネットで観たりするものよりサイズが一回り大きいのはオーダーメイドだからだろうか。

 

「確かに俺たちらしくないわな。いいぜ、小細工なしの力比べだ」

 

エンガが片手で銃を構えて発動する体勢を取り空いた手でポケットからコインを取り出して上に弾く。

コインはクルクル回りながら落下していき地面に落ちてチャリンと音を鳴らした瞬間お互いの魔法が発動する。

 

「「くらえ!!!!!」」

 

シオン達の叫びが周囲にこだますると高火力の魔法がお互いの武器から放たれぶつかり合う。

ぶつかった衝撃で吹き飛ばされそうになるがここで踏ん張らなければ押し返されて負けてしまう。

 

(それだけは嫌だ!)

 

今のシオンを突き動かすのはただ目の前にいるあいつに勝ちたいという思いだけ。

 

(絶対に勝つ!)

 

押される体に力を入れ攻撃を押し返す為に残った全魔力を流し込む。

 

「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」

 

押しては押し返されを繰り返していきお互いの魔法は出力が上がり続け遂には魔法が爆発する。

眩い光とともに激しい爆風が発生し身体ごと地面に吹き飛ばされると同時にシオンの意識は途切れた。

 

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