『ウィィィィィス!!どうもぉジャムでぇす!!』 作:ジャムキンTV
シンオウ地方は以前ヒスイ地方と呼ばれていた。まぁそれは数百年も前の事であり、今ではそう呼ぶ者はいない。ヒスイという名前自体歴史に興味を持つ者以外にはあまり知られていない。
現代まで残っている書物等が広げられたテーブルを前にして思う。今までは神話や伝説のポケモンについて調べていたが、今は昔の人々の暮らしについても調べている。過去の人々の歩み、どう過ごしどこに向かったのかを調べる過程で更なる発見をする事が増えたからだ。
「ふぅ……一旦休憩をしようかしら」
眉間を揉み資料から目を離す、自然と口から息が溢れた。視線をテーブルから上げると、窓の外を見れば日が沈んでいた。朝から学会でのプレゼン資料作りを終え、ヒスイ時代について調べていると、いつの間にかこんな時間になっていた。
チャンピオンの座を渡したとはいえ、リーグ関係の仕事は残っており、それに並行して考古学者としての仕事もしている。故にふとした時に眼精疲労から色々な症状を引き起こしてしまう。
「……彼はどうしてこの事を知っていたのかしら」
ふと少し前にオンラインで話をした彼の事を思い返す。パルデアで生まれ育った彼はパルデアの歴史に詳しいとして、何故シンオウ神話ヒスイ神話について詳しかったのだろう。彼曰く「バトルを知る過程で色々な事を学んだ」と言っていたが、研究者と同等なのは不思議でならなかった。
彼と初めて出会ったのは更に前である。その時は三つの湖にいる幻のポケモン達に接触しあかいくさりを作ろうとしていた。それに加えてギンガ団の残党に襲われそうになっており、協力して戦った。最初は警戒していたが、会話を通じる事で彼の人となりが分かり、いつの間にか定期的にやり取りをする程度の仲になっていた。
「でも、配信のネタの為にあかいくさりを作ろうとしたのはダメよね」
随分と過激というか……目的よりも手段の方が大きくなってしまっているというか。まぁ、そんな感じの人であり、問題は今の所ないだろうと判断している。
「彼、知識もあるしバトルも強かったわね」
彼を知る為にバトルもした。結果は私の勝ちであったけれど、彼が一度だけ使用したテラスタルというパルデアの技術は非常に興味深く、三対三で最後の一匹まで追い込まれた際には「負けるかも」と思わされる程の強さを感じた。配信や動画で開示される情報、ついついTraiTubeや151ちゃんねるにコメントを書き込みながら見てしまう程度には視聴している。
「……私ってこんなにも他者を考える人だったかしら?」
最近、仕事中にも彼の事を考える時が増えた。時折、思考の隙間に彼の事が浮かぶのだ。対等に会話が出来てバトルが出来る数少ない存在。そんな相手はなかなかいない。
「貴重な存在だから大切に思ってしまうのは自分でも分かるけど、一日に何度も頭に浮かぶのは可笑しいわよね……」
彼との話の中で新たな発見をしたり、自分とは違った考え方を知る事も出来た。助言のおかげでヒスイ人が他の地方に移住している事が判明し、連絡を取り付けて話を聞く事も出来た。
「彼のおかげで研究が進んだし色々な事が知れた。感謝してもし切れない程だわ」
だからいつも彼の事が頭に浮かんでしまうのかもしれない。
「はぁ……パルデアじゃなくてシンオウに居てくれたら、もっと話もバトル出来るのに……」
そう呟くとお腹が鳴った。そろそろ夕食の準備をしなくちゃ。頭の中で冷蔵庫の中の食材とメニューを考える。あぁ、あれにしよう。私が最近ハマっているのは彼が教えてくれたパルデア料理だ。