『ウィィィィィス!!どうもぉジャムでぇす!!』 作:ジャムキンTV
『ウィィィィィス!!どうもぉジャムでぇす!!』
「「「「わああああああああ!!!!」」」」
ボウルタウンから東の草原、そこでイベントが開催されていた。僅か二週間で建てられたステージ、中央に作られ等間隔に並ぶ半透明な壁で覆われた八つのバトルフィールドと観客席、その周りを囲う多くの露店や簡易型のポケモンセンター、会場内に多く見受けられるスタッフ、会場の周りを囲う様にして配置されたセキュリティなどからこのイベントにかなりの額が使われているのが分かる。
会場の奥に建てられたステージの上から、会場に来たファンへ"お決まりの挨拶“をしたのは配信者『ジャム』。それに対し各バトルフィールドやステージ前から地面が震える程の歓声が上がった。
『皆さん……ようこそぉ!私のオフ会バトル大会にぃ!ワァーオ!!!』
「「「「ワアアアアアアアア」」」」
ジャムの言葉によって湧き上がるイベント会場。老若男女関係無く熱狂する空間。スタッフなどの一部を除いた全ての人々が一つになって熱を放っていた。
『まぁ今回、オフ会リベンジから始まったんですけどねぇ、なんやろなぁ……いつの間にかバトル大会に、繋がっていったと……。元々は視聴者さんから「バトル増やして」というお話、それがあって、えぇ?そこから話が膨らんでいった結果が、今日になったんですねぇ。なんて言うんやっけ?一期一会!そう、まさに一期一会なんですねぇ!!』
「言いたい事は分かるぞー!」
『はい!そこの人ありがとうございます〜。あれ?言いたい事は分かるって、可笑しいぞ!?……えぇっと、そうそう。視聴者さん達とのお話から、じゃあやろうとなった今回。なんですけどぉ、当初ではね……50人、50人くらい人が来てくれればええやろ?って思ってましたぁ。ですがねぇ、見てくださいよ。もう人ばっかりですよぉ!その数約五千万人!……ちゃうわちゃうちゃう、5000人!最初のオフ会の予測人数の100倍にも増えていると!』
ジャムが数ヶ月前に行おうとしたオフ会は当初「50人くらいだろう」と謳っていた。実際には失敗という体で終わった。今回の参加者はその百倍の5000人。オフイベントに参加しようとパルデア中から集まった人々、中にはパルデア外からやってきた者までいる。その中には「オフ会は数十人しか来ないだろう」と思い、いざ行けばここまで大掛かりな会場と人数に驚いた者もいた。
『えぇ……話もね、長々としても、私疲れちゃうので。中にはね「ジャムさんの話聞きたいよ〜」とか「ジャムさんこっち見て〜」ってらいう人も、チラホラとね、いるんじゃないかと。しかしね、この後も解説とかバトルとかあるので、今日の大まかな流れをね説明しますよ〜?』
『事前に参加者の方には、この、私が付けております腕輪、真っ赤な腕輪がありますね?見えてます?はい、見えてますね。この腕輪がねぇ、参加者の証と。ここから音声が流れるし、表面に文章が浮かぶので、皆さんそれに従ってください。それで、会場の皆さんにも説明しておきますと、参加賞は"おだんごしんじゅ“になっております。これ全部私がね集めた物です……あ、今日の為に集めたんじゃなくて、元々ね、物拾いで集めたので、えぇ。詳細が知りたい方は、私のTraiTubeチャンネルのアーカイブから過去の配信を漁ってください!』
会場の中の一部の人々の腕にある赤い腕輪。一般参加者ではなくバトル参加者はイベント開始前、トーナメント参加の為の事前登録で渡された腕輪を嵌めていた。真っ赤な腕輪の表面には『バトルトーナメント』と文字が映っているのが見える。
『64人ずつのトーナメント、ジムバッジの個数で分け、最初はバッジ二つまでのトレーナー、トレーナーの方々がバトルを開始します。ここが結構、学生さんが多いと、その次がトレーナー初心者の方が多いんですねぇ。各フィールドに実況の方がいます、私は"上からフィールドを回りながら解説をちょこちょこしていきます“。聞きたい方はね、事前にお配りした、貸し出し用のスマホロトム、それから流しますので、それでね、お聞きください』
会場の各地に取り付けられた大型モニターにそれぞれのバトルフィールドが映り出した。
『皆さんね、これからバトルが始まりますので、入れないとは思うけどね、バトルしない人はバトルフィールドに入らないでねと。えぇ、フィールドの周りには壁もあるし、シールドも展開してるので、それがあるから安全です。参加者さんも大勢に見られてね、緊張するかもしれへんけど、まぁそこは私と同じ気分を味わえると思って、頑張ってください!』
『それでは、ジャムのバトルオフ会ぃ〜スタート!!YEAH!!』
俺の名前はブーモ、ジャムさんのオフ会に参加した者だ。ジムバッジはこの間まで一つだけだったが、ジャムさんのおかげで二つ目を手に入れられた。そんなジャムさんがオフ会を開くと聞いてやってきた、当然トレーナーとしてトーナメントに参加する為だ。しかし……。
「こんなに人がいるなんて……」
前にジャムさんは50人くらい来れば……と言っていたから、倍の100人くらい人が来るのかと思っていた。まさかこれ程の人が来るとは。
手持ちのポケモン達が緊張を和らげようと接してくれるのが救いだ。
「選手の方、お願いします!」
「……よし!決めるぜ!覚悟!!」
審判の呼び声に従いフィールドに向かう。相手はアカデミーの学生服を着ていた。学生相手で、バッジ二つ以下なら勝てる……かもしれない!
「それでは、これより第一フィールドのバトルを始めます!」
「ふぅ……よろしく頼むぜ!学生さん!」
「……あぁ、こちらこそだ」
静かに挨拶を返してきた相手の様子に眉を顰める。淡々としているというか、何か考えている様子。
「バトルに集中しないと、俺には勝てないぜ?行くぜ!コイル!」
「……そうだよな、バトルは集中しなくちゃだよな。行け!ホシガリス!」
こちらに意識を向け直した相手が出したのはホシガリス。ジャムさんのサイトでは特殊よりも物理寄りのステータスと書いてあった、筈。ノーマルタイプのポケモンで、防御の高い電気鋼タイプのコイルの方が有利!
「コイル!ここは確実に勝つぞ!でんきショック!」
「ジ、ジージ」
「ホシガリス!相手はカチカチちゃんだぞ!お前の力見せてやれ!マッドショット!」
「ムチャア!」
マッドショット!?ホシガリスが飛ばしてきた泥の塊はコイルが放った電気を蹴散らし、コイルに命中した。目元に当たったコイルは弱点を突かれ苦しそうにしていた。
「まさか弱点を突く技を覚えていたか」
「色んなタイプの技を覚えるのも戦略だって言ってたぜ?」
この学生さんもジャムさんの動画を見ていたか!まぁこの集まりに来てるんだから当然なんだが!
「負けられないぜ!コイル!かいでんぱ!」
「ホシガリス!マッドショット!」
次の技はかいでんぱ!マッドショットに防がれずホシガリスに当たった。これは変化技の一つ、マッドショットを使ってくるなら特殊攻撃を下げれば良い!
かいでんぱを受けて嫌な顔をするホシガリス、弱点とはいえ特殊攻撃を下げられた攻撃を受け止めるコイル。
「ホシガリス大丈夫か!?やるな、アンタ!」
「君こそ!」
相手もよく考えている。油断したら一気に追い詰められる。攻めるか?慎重に行くか?
『……ドウシテ、ドウシテキミモサンカシテルノ……。あ、んん!えぇ、第一バトルフィールドのホシガリスとコイルのバトル。素晴らしい!もう本当に素晴らしい!アッアッアッアッ。コイルは防御が高いのとノーマルが半減してしまうと、ならどうする?どうする?ここは、特殊技の弱点を突ける技を使う……えぇ、しかもマッドショットは泥の影響で視界を遮れると。まさかに今のね、今のバトル状況に適した技と……。コイルもね、かいでんぱという変化技を使っております。かいでんぱはね、特殊攻撃を一時的に下げてしまうと、うん……攻撃技だけじゃなくて、変化技を使う、素晴らしい!』
「発作出てますよ」
「えぇ……ジャムさん空飛んでるよ」
「ジャムさんは飛行タイプだった……?」
「生で観れてマジギガ嬉しす♡」
「あれエスパーで浮いてるんじゃねぇのか?」
「怖……」
「あぁんジャム様ぁ……」
「まだ初心者クラスなのにみんな考えてバトルしてる!凄い!早くバトルしたいなぁ!でもメインは後、その前にトーナメントで体を温めてから……」
「さっき言ってた事の意味が分かった」
「早速SNSに晒されてて草」
「エンターテイナーが過ぎる」
「うへぇ……相変わらずイロモノやねぇ。ん?ポピーはアレのマネしたらアカンで?四天王はドッシリ構えてればええんや」
「……食品レビューは?」