『ウィィィィィス!!どうもぉジャムでぇす!!』   作:ジャムキンTV

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チャンピオンネモの退屈

 10歳の時。トレーナー資格を手にした。お父様から受け取ったのはパモ。あの日の事は今でも覚えている。あのドキドキとワクワクは今も胸の内にある。

 数日後。初めてのトレーナーとのバトル。手持ちは2匹、向こうは3匹。数は負けてたけど、バトルには勝った。あのヒリつく様な感覚が気持ち良かった。

 一ヶ月後。アカデミーで多くの学生とバトルをした。この頃から強いトレーナーとして周りに注目される様になった。学校外のトレーナーにもバトルを挑む様になった。

 数ヶ月後。相手になるのはエリートトレーナーだけになった。この時はまだポケモンバトルを挑まれたし、挑んでもみんな受けてくれた。

 チャンピオンになった。四天王やトップとのバトルは楽しかった。でも、この日から満足出来るバトルは無かった。

 

「昔、お母様が取り寄せてくれたカントーのポケモンリーグの雑誌にね、トレーナーの特集の所にカントーで有名なトレーナーの言葉があったの。『頂きには何も無い』って。私は小さかったから、山の頂には何も無くて景色が広がってたのかな?なんて思ってたけど、それを数年後に思い出したの。ああ、あの人はこの事を言ってたんだって」

 

 クラスメートにバトルを挑んだ。みんなバトルしてくれなかった。

 

 クラス外の子にバトルを挑んだ。私の事を知っていて、拒否された。

 

 スター団にバトルを挑んだ。何か喚いて居なくなった。

 

「ジムリーダーも四天王もトップも、みんな強いよ。でもバトルすればする程楽しさが無くなって、何度も挑むのも申し訳ないから野生のポケモンで強い子を探したり、他の地方から来たっていうトレーナーとバトルしたり。そんな事をしても限界はあって……」

 

 あのカントーのトレーナーの様に、私の周りには何も無かった。パルデアの頂で私は一人きりになっていた。ワクワクとドキドキでキラキラしていたあの日々はあっという間に終わっちゃった。

 それからはバトルする事も無くなって、教室と自分の部屋を移動する日々。変わり映えしない日常。バトルが生き甲斐になってた私には、平和は苦痛で。パルデアの大穴には強いポケモンがいるって噂があったから、じゃあ行っちゃおうか?なんて毎日の様に考えてた。

 

 そんな日々を何となく過ごしてた時にね、彼に出会ったの。

 

『ウィィィィィス!!どうもぉジャムでぇす!!』

 

 その時は登録者は一万人もいなくて、ひっそりとした配信だった。その時は野生ポケモンとバトルしてて、相手はカイリューだった。テラスタルで鋼タイプになってるカイリュー。

 

『カイリューが相手ですねぇ、頭の上のね、頭の上に生えております、えぇ……テラスタルを見るに、あれは鋼テラスタル!それではこちらは──』

 

 彼が選んだポケモンを見た時に『あ、かなり強い』って思って、バトルが始まってからビビッときたの。この人はポケモンをかなり育てているし、バトルも強いって。何というか、落ち着きがあった、余裕って言えば良いのかな。相手がエリートトレーナーの時も、色々騒いでたけど内心は落ち着いて戦況を見ているのが分かった。

 

『──はい、対戦ありがとうございましたぁ!えぇ、はい、配信もさせていただけて良かったです。それじゃあ皆さん、この辺りで。ンマタノォ〜!YEAH!』

「あぁ、もう配信終わりかぁ……私もバトルしたいなぁ」

 

 私も彼とバトルがしたい。何度も思ってたけど、流石に配信してる所にお邪魔するのは気が引けた。毎日動画や配信を見返して、自分ならこの時どうするかとか、この相手ならこの子に交代しよう!とかも考える様になって。毎日彼とのバトルを考えて。

 

 そして。

 

「ん?え?ナゼココニキミガァ……あ、は、はじめまして?えぇっと、どうしましたぁ?」

「バトル?ナンデチャンピオンガ?ん!?何でも無いですよぉ!独り言独り言!ほんでぇ、君は私とバトルがしたいと?」

「ま、まぁそこまで言われたらね、バトルしますよぉ!それじゃあ33でええかな?それじゃあ、バトルしていきたいと、思いますぅ!」

 

「ウェエ!ウアァァン!負けてしまいましたぁ。イヤガチデツヨイワホンマ……はい、アカデミーの学生さんとのバトル、みんな見てくれてたかなぁ?」

「君もありがとう、ほんまにありがとうやで。“久しぶりにね、強い相手とバトル出来て良かったわ”。視聴者さんにも、良いバトル見せれて良かったとね、えぇ」

「それじゃ!」

 

 彼との初めてのバトルは今も鮮明に覚えている、場所は南5番エリアの浜辺。勝負は私の勝ちだったけど、最後の一匹でしかもギリギリ。こんなに追い込まれたのは初めての事だった。

 

 曇った頂に光が差した。誰も居なかった場所に彼が現れた。

 

 彼が去った後も私はその場で立ち尽くしていた。胸がドキドキして、ワクワクして。トレーナーになったばかりの頃を……いやそれ以上の感情が体を震わせていた。

 

「えぇ、なんでぇ?なんでチャンピオンクラスの君がぁ?」

「目が合った!目が合ったからバトルしよっ!!」

「えぇ……?目が合ったらバトル、それは他の地方でしょ……」

「折角来てみたのにぃ……?」

「いや折角来て……」

「……」

「はい、はい。バトルします、はい……あぁ!もう!チャンピオンなのにいじらしい!分かりました3対3ならやりますよぉ!そこまで言うのなら、しょうがない!ここは年上の意地を見せる時ですよぉ!アッアッアッアッ!」

「やった!」

 

 だから私は、彼とのバトル以降何度もバトルを挑んだ。戦績は私が勝ち越してはいたけど、少しずつ彼に押され始めた。だからもっと強くなろうとした。

 ジムリーダーや四天王、トップにまでポケモンの話を聞きに行き、実際にポケモンを育てた。戦術も考えた。夜遅くまでバトルを考え過ぎて体調を崩す事もあった。

 そんな私が相手でも彼はバトルをしてくれた。だから、見かけたらバトルを挑む、配信に突然行ってバトルを挑む、呼び出してバトルを挑む。彼とバトルする為に生活リズムも変わった。

 

「でもそれだけじゃなかった。彼は私だけじゃなくてパルデア中にも影響を与えた」

 

 彼がTraiTubeに載せた動画や配信によってバトルの常識が変わり、バトルに関する技術や育成、戦術までも飛躍的に進んだ。

 

「まさか、貴方が初戦とは……」

「……ごめんなさい、私が相手で──」

「──いえ!この上なく、嬉しいですよ!」

「!?」

 

 私が誰なのかを知っているのに、バトルがどれだけ強いのかも知れ渡っているのに。そんな私に皆が挑んでくれた!誰かにバトルを申し込む側だった私が挑まれた!

 トーナメント配信、トップに許可を貰って行って良かった。ジャムだけじゃなくて、色んな人とバトルが出来た。数回だけだったけど、みんな強くて負けそうになった。まだパルデアにはこんなに強い人達がいた事を知れた。

 

「ありがとう。貴方のおかげでバトルをする喜びを再び味わえた。楽しくバトルが出来る様になった」

 

「だからね、絶対に離さない。これからもずーっと私とバトルをしてね?」

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