『ウィィィィィス!!どうもぉジャムでぇす!!』   作:ジャムキンTV

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配信者ジャムの陰謀

 パルデア生まれパルデア育ちのジャムは動揺していた。最近ノリにノっているTraiTube活動、それに胡座を掻く事もせずに企画を考え配信と動画に精を出してきた。しかし、最近身の回りで起きるイレギュラーに流石のジャムさんも動揺を隠せずにいた。

 

「そもそも俺がイレギュラーなんですけどね、初見さん」

 

 突然の発声により周りから視線が向けられるが無視を決め込む。一旦思考を変えようと某大物YouTube rのセリフを代用してみるも、不審者扱いを受ける結果になった。だがジャム自身は落ち着いたので結果オーライである。

 ジャムの身の回りで起きるイレギュラー、一つ目は“ポケモンリーグ関係者との関わりが増えた事”だ。ジャムはファンとの交流があるとはいえ、他者とはそれ以上の関わりを持とうとはしていなかった。突然のチャンピオンクラストレーナーの襲来、それ以降少しずつ関わりが増えていき、今ではジムリーダーや四天王と配信を共にするまでになった。元来陰気なジャムには多人数との長い時間の共有はストレスとなり、結果胃に穴が空き掛けていたのは言うまでもない。

 二つ目は“トップからの勧誘”。ジャム曰く、パルデアポケモンリーグを支配下に置き「ポケモンバトルで笑顔を……」と好き勝手してるバトル狂いのトップ。そのトップからの定期的な連絡、それに乗じた「貴方もチャンピオンクラスに成らないか?」「ポケモンリーグで働かないか?」といった勧誘が来ていた。最近では本題であるやり取りよりも勧誘がメインになってきている可能性もある。

 三つ目は“アニメ映画”。TraiTubeにて投稿された謎のアニメーションは60分という短い物だが“その場で起きた出来事が鮮明に描かれている”のが問題であった。これには当事者であるジャムもゲロ吐く程動揺したのは言うまでもない。

 これらの出来事が最近のトレンドとなり、ジャムは身体の調子を崩しライブ配信や動画投稿の間隔を空けていた。

 

「なんであの出来事をアニメに……?」

 

 ジャムの頭の中の殆どを占めるのはアニメの事。あの街で起きた事をあそこまで細かく描く作品を見て、思わず「塔の上でのやり取りなんて誰も知らねぇだろ」とツッコミを入れ掛けた。それ以外にも“元の映画にもあった演出やシーン”があり、これも悩みの種であった。

 誰が製作したのかも分からぬ謎のアニメ映画は拡散され再生数は数億回、謎が謎だけに遂にはポケモン世界の七不思議の一つに入った。世界七不思議ってなんだよ。

 当事者であり元の映画を知る者として、ジャムは製作者に会い何者なのかを知らなければと決意を固めていた。

 

「あ…あの、自分…ファンなんスよ。握手してもらっていいスか」

「あ、人違いです」

「しゃあっ(話し掛けたら別人で恥ずかしいの意)」

 

 今ジャムがいるのはパルデアから遠く離れたカントー地方、とある港町。海から持ち込まれる荷物を集積する倉庫や海鮮物を売る店が多く連なる場所であるが、今は嵐が近付き激しい雨が降っており、多くの観光客が建物の中で雨が止むのを待っている状態であった。

 カフェの中で外を眺めているとファンに握手を求められる事数回。カントーにもファンがいる事を嬉しく思いながらも人違いだと言い張り回避する。あまり目立つとまたネットのおもちゃにされるからだ。何が嬉しくて秘密結社の一員にされなくてはならないのか、ジャムは割と気にしていた。

 離れていくファンを見送り、これから介入する出来事に内心「嫌だなぁ」と思いながら、そろそろかなと店の壁に飾られた時計を見る。

 

「しかし、良くもまぁこの嵐の中海に出ようとするなあいつら」

「トレーナーってのは命知らずばかりなんだろ」

「それにしてもほとんどガキばっかだぜ?」

「あそこ見ろよボイジャーさんとジュンサーさんがいるぜ」

 

 窓の外を見れば数十人ものトレーナー達が集まり波止場の責任者と揉めていた。“話通り”なら「船を出してほしい」やら「明日に船が出る」やら「波止場のキャモメに聞いてみな」やらと騒いでいるのだろう。

 カントーやジョウトから集まった腕に覚えのあるトレーナー達。中にはエリートトレーナーもいるのが見える。皆一様に手に手紙を持ち海に出たいと息巻いている。

 

「なんであいつらこんな日にこんな所来たんだ?」

「んあ?オメェ知らねぇだか?何でも最強のトレーナーからの挑戦状だかが来たからバトルしに行くんだとよ」

「ほんでこの海を超えて目的の島へ?そんなもん、死にに行く様なもんだろう」

「んだんだ」

 

 すると、痺れを切らしたトレーナーがポケモンを呼び出し海に飛び込んだ。それに続いて数人のトレーナーも飛び出す。中には嵐の海に一歩踏み出せず留まる者、無理だと諦め帰る者も出て来た。波止場が一際騒がしくなり人々が何かあったのかと目を向け始めた所で席を立つ。

 

「……アンタ、有名なトレーナーだろ?グラサン無いけど分かるぜ、ウチの子が良くスマホで見てるからな。アンタもあいつらと同じ口かい?どこに行こうかは知らんがこの海を船も使わずに往こうなんて馬鹿な事はするもんじゃない」

「いやいやいや、私は別にそんなもんじゃないですよ。ただ危ない事をしようとしてるトレーナーを放っておくのは拙いでしょ?」

「それなら海に出る前に止めるべきじゃないのかい?」

「……一度痛い目見た方が子供には効くと、私はそう思いますねぇ」

 

 トレーナーの一団の中には“ピカチュウを連れたトレーナー”も“お転婆人魚”も“ブリーダー志望”も居なかった。この時点で正史の通りには進まない事は明白であるが、放置すればどうなるのかは分からない。

 ボール嫌いのピカチュウとポケモン思いの少年がいたからこそ、二つの勢力は争いを辞めた。二人がいない今、代わりを誰かが務めなくてはならない。

 建物を出たジャムに打ち付けられる雨。バチバチと音を立てながら波止場に向かうと、責任者であるボイジャーとジュンサーさんがどこかに連絡を取っていた。海に出て行ったトレーナー達を救う為に救援を呼んでいるのだろう。

 

「頼むぞ、イルカマン!」

「キュキューン!」

「あ、ちょっと!そこの!海に出るな!」

「待ちなさい!!」

 

 水タイプのポケモンであるイルカマンを呼び出しその背中に乗る。海の上で四苦八苦するトレーナーを目指し、進み始めたイルカマンに掴まりジャムは考える。どうしてこうもトレーナーとは蛮勇なのかと。最強のトレーナーからの挑戦状?それに釣られて荒れた海に飛び込むなどマジネモってる。頭ネモちゃんか?

 

「助けるのはヤバそうな奴だけ、救助が終わったら向こうの島に行くぞ!」

「キュキューンキューン!」

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