『ウィィィィィス!!どうもぉジャムでぇす!!』   作:ジャムキンTV

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劇場版ポケットモンスターマジで終了のお知らせ

「──で、それからどうなったんだよレッド。そのコピー?クローン?ポケモンとのバトルはよ」

「…………」

「へぇ、サンダーとは一度バトルしてたけどその時より強くて驚いたと」

「…………」

「コピーだとしても相手はサンダーだったんだろ?伝説を相手に出来る奴なんて早々いないぞ」

「…………」

「いや俺も一応は相手出来るけどさ。真正面からそう煽てられると照れるぜ」

 

 俺は今伝説の二人のやり取りって奴をほんのちょっぴりだが体験した。い……いや……体験したというよりは全く理解を超えていたのだが……レッドさんは何も言ってないのにグリーンさんは何を言いたいのか理解していて怖いんだ。

 あ……ありのまま数時間前に起こった事を話すぜ! 俺は乱闘の中で伝説入り混じる最強同士のバトルを観戦していたと思ったら、いつの間にか幻も現れてフィールドに爆撃を受けていた。な……何を言ってるのか分からねーと思うが、俺も何をされたのか分からなかった……攻撃を食らって死にそうだった……さいみんじゅつだとかこうそくいどうだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ……もっと恐ろしい物の片鱗を味わったぜ……。

 

 レジェンドと呼ばれる二人のトレーナーの会話を聞きながらジャムは脳内で長文を出力していた。ジャムからすれば始まりの二人であり、数々の偉業を成し遂げた最高峰のトレーナー。一人だけでも緊張するというのに、二人揃ったとなっては脳内でネタを改変してしまうのも仕方の無い事である。

 

「ミュウツーの元になったミュウだったか、そいつが現れてシャドーボールを撃ちまくり始めた……それからはミュウツーとミュウの空中戦……周りのトレーナーとポケモン達を守る為にジャムさんと1匹ずつ相手をした……ジャムさんもバトル強いんだな」

「ア、ウス……アッジャムトヨビステシテクダサイ」

 

 話を振られれば“アーボに睨まれたニョロモ”の様になってしまいまともに会話が成立しない……かと思われたが、そこはレッド専用全自動翻訳機とリーグスタッフから言われているグリーン、遺憾無くその才能を発揮し無口とキョドりの架け橋となっていた。パーフェクトコミュニケーション。

 

「まぁ大体一連の流れは分かったぜ。ミュウツーがコピーとしての自分の存在証明の為にトレーナー達を利用しようとした。で、ジャムはトレーナー達を助けてくれたと」

「ハイ、ソウデス」

「……もしかして島に辿り着けなかった奴らを助けてくれたトレーナーってのは?」

「それもじぶんです」

「へぇ、それはカントーポケモンリーグを代表して礼を言わせてくれ。お前のおかげで何人ものトレーナーとポケモンが救われた、ありがとう」

「いえ、礼を言われる程の事は……」

「後、聞きたい事があってな。どうしてパルデア在住のアンタがカントーに居るんだ?しかもタイミング良くあの港に居て、わざわざ危険を顧みず助けに出てくれたんだ?」

「マ゜ッ!ア゛ッ!↑」

 

 グリーンの無意識での接し方が少しずつジャムの心の扉を開き、普通に会話が出来る様になってきた頃にこの質問。訊かれたくなかった事を訊かれクッソ汚い叫びが漏れる。

 何かあるのがバレバレな様子をじっと見つめるグリーンと呑気にミックスオレを飲んでいるレッド。

 頭の中で思考を巡らせたが、良い言い訳が浮かぶ事も無く、どうすれば良かったのかと過去の自分に恨み言を吐き掛けるジャム。

 

「(他のトレーナーを助けて、良い感じにミュウツーとミュウの戦いを止めて、俺以外の記憶を消してもらえば解決……なんて考えなきゃ良かった!)」

 

 今現在ジャム達はカントーポケモンリーグの応接室の中にいた。ミュウツーとミュウの戦いをどうにか止めたジャムを待っていたのはリーグから派遣されたスタッフとグリーン。他のトレーナー同様保護されてるのかと思えば、一人だけ別待遇を受けた時点で尋問を受ける事になる事を察するべきであった。

 まぁミュウとのバトルで深く被っていたレインコートが破れるアクシデントがあり、3人のトレーナーから「ジャムじゃねぇか!」と気付かれた時点で逃げても身元バレして終わっていたのだが、それはまた別のお話。

 ミュウツー達が去るのに合わせて逃げても意味が無かった事を知る由もないジャムは一分丸々思考に費やし、どうにか言葉を捻り出す。

 

「あ、そのですね。えぇっと……か、カントー旅行してまして。ほんで、まぁ、たまたま立ち寄っただけなんですよ、あの港町には。そんでトレーナー達が良くない事を始めたので、えぇ、心配で助けに行ったと。それで、3人の後を着いて行ったらあの島にね、着いてしまいましたと」

「……はぁ、その言葉を信じる。悪そうな雰囲気はしねぇし、レッドがその辺り反応してねぇからな」

「…………」

「お前は強いトレーナーとヤバそうな気配には敏感だろ。そのおかげで過去何度も助けられたからな」

「…………」

 

 元々ジャムは邪な思いを抱いていた訳ではなく、何が起きてどう展開していくのかが分からないからとやって来た。問題が起きなければ放置、危なそうなら介入というスタンスをとってきた。それだけではなく困っているトレーナーやポケモンを助けたいという思いもあり、それを察したグリーンはこれ以上探っても仕方ないと判断。日頃の行いが功を奏したのである。

 何故グリーンが納得したのか見当が付かないジャムは二人の顔を見渡した後小首を傾げた。

 

 それ以降は互いの地方の事やポケモンについて情報を交換したり、レッドにバトルを挑まれ拒否したりという出来事があったのだが……。

 

「君もドラゴン使いにならないか?」

「だいじょうぶです」

「君なら私に並ぶドラゴン使いになれるぞ?なんなら私が直々に指導しても良い。ドラゴン使いの心構えを会得したり、最近里で生まれた珍しいピンク色のミニリュウを相棒に出来たり、古くから里に伝わる竜神伝説を学ぶ事も出来るんだ」

「ケッコウデス」

「このミニリュウだが、可愛いだけではなく他のミニリュウ達より根性があって強い子なんだ。可愛さと強さを兼ね合わせた彼女には君の様なトレーナーが必要なんだ!」

「マニアッテマス」

 

 応接室にやって来たカントーポケモンリーグ四天王“ワタル”。ドラゴン使いであり四天王最後の砦でもあるワタルはジャムを知っているらしく、挨拶を済ませるとドラゴン使いへの勧誘を始めた。呆気に取られるグリーンとレッドを尻目に熱烈アピールをされ、落ち着いて来たジャムもこれには堪らずカタコトに戻ってしまう。

 ワタル曰く「見れば解る、君の強さ。ドラゴン使いに相応しいな?放送内で語られたドラゴンについての深い知識と持論、ドラゴン使いとして練り上げられている。至高のドラゴン使いに近い」と語られたがこれを再度拒否。すると今のままでは次の段階に進めないと説明に入るがジャムからすれば「グリーンさん助けて!」と叫ぶしかなかった。

 

「おぉ、君がレッド達が言っていたトレーナーじゃな。ワシはオーキド、ポケモン博士と呼ばれておるぞ」

「あ、どうも。ジャムと言います」

「今回の騒動で知識を貸してほしいとリーグに呼ばれておったのじゃが……ん?んん?はて?お前さん、一度どこかで会わんかったか?」

「え?いや初めてですね」

「そうか、ネットニュースか何かで見たのかもしれんな……リーグでの用事は済んだから孫達の顔でも見ようかとここに来たんじゃが、パルデア人と話す機会はあまりない、そちらのポケモンについて少し聞きたい事があるがいいかのう?」

「えぇ、何でも訊いてください」

 

 今回の事件でリーグに協力していた世界的権威を持つポケモン研究家のオーキド博士も現れいよいよジャムの緊張は有頂天となり、ストレスがマッハで鬼なる、鬼なった。最終的に一周回って普通に会話が出来てしまっていた。

 オーキドの話を聞く事になったジャムがパルデア地方に住むポケモンについて答えれば、オーキドから更なる質問が出てくる。ジャムは更に答え、時にはジャムからオーキドへの疑問等も出てくる。一つの質問から始まった会話は議論にまで発展してしまい、その様子を見たグリーンからは「初めて会ったのに、まるで昔からの友人みたいな距離感で話してる」と言われレッドからは珍しく「…………」という冗談が出る程度には会話は白熱していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

「レッドはバトルしたいって迫り過ぎ。向こうさんはバトル続きだったんだから、労わってやれ」

「うーん、彼の実力ならドラゴン使い見習いとして里で過ごす事も可能だったのだが……」

「流石に向こうのリーグ通さないとこっちに滞在させるのは無理でしょ。パルデアのリーグ委員長が推してるトレーナーらしいから」

「……どこかで会った気がするんじゃがのう。はて、どこだったか……」

「爺さんは何ブツブツ言ってんだ」

 

 ニューアイランド事件と銘打たれながらも、ポケモンリーグと警察上層部は事件内容を詳しく公表する事を避ける事で同意した。ロケット団の負の遺産とも呼べるコピーポケモンの情報が広まれば、それを排除しようとする人々が出て来ても不思議ではない。ロケット団とはそれ程までに恐れられ、警戒するには十分な組織であった。コピーポケモン達が他者に危害を加えないと分かっていても、何かしらやらかす輩は湧いてしまうと判断したのだ。

 会見にて詰め掛けたマスコミに語られた内容は少なく、詳しく説明をと非難されてしまったが問題は無いだろう。3人のトレーナーについては他のトレーナー同様、一時的にトレーナー資格とポケモンの預かりが行われた。

 

「あの3人にはキチンと説明して納得してもらった。島にあった研究施設はリーグでどうにか解体していく。ミュウツー達がどこに行ったのかは分からないけど、まぁ目立たず静かに暮らしていくって言ってたらしいからそれを信じるしかねぇわな。それよりもジャムの方だが……」

 

 事件の中心にいたもう一人のトレーナーであるジャムとの会話、特段何かある訳ではないと判断したグリーンは少しばかり話をするとジャムを開放した。何かしらの罰則を受けさせたり監視を付けるべきではとリーグ委員会から挙がったが、ジャムが他地方のトレーナーである事や一般人として扱うには名が広まっている事、事件の内容が公表出来るものではない事を考え敢えて触れない事にした。事件に関して他言しない様に誓約書は書かせたが、目立ちたくないと本人が言っていた為大丈夫だろうと考えるグリーン。

 ジャムを見送った後、3人にツッコミを返しながら上への報告書の作成の為に自室へと向かうグリーンはジャムについての情報を収集していく。

 

「えぇっと、カントーに来る時に登録されていた手持ちのポケモンは“イルカマン、ペリッパー、ルカリオ、ピカチュウ、フーディン、キョジオーン”。イルカマンとキョジオーンってのがパルデア地方原産のポケモン。他の4匹は他の地方でも広く散布していると。ポケモン達は懐いてたし、かなり強そうだったな。ちょっとネットで調べてみるか……特に変な噂は……うん、SNSで変な噂流れてるけど、これ与太だな。TraiTubeでかなり人気がある……へぇ、視聴者が粒揃いでレベルが高い……」

 

 自身もたまにトレーナーを指導する事はあるが、本格的に行う事はない。ジムリーダーとしての業務だけではなく、リーグ幹部としての業務も兼任している為に後進に手を回す事は基本的に無い。自身の欲求を優先する傾向にあるレッドなら尚更他者に教える事は無いだろう。

 

「こういう人材は是非リーグに欲しいな。専門の動画と配信の部門を作っても良いかもしれん。もうちょっと話を聞いておけば良かったか?」

 

 連絡先を交換しているとはいえ、向こうには向こうの生活がある。あまり利用する様な真似もしたくない。そう考えながらどうするかとメモに書き残していく。グリーンは後進の育成についてリーグ内で話し合い更なる発展の為に動いていく事となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 劇場版イベントが終わればすぐにパルデアに戻るのがジャムの中でテンプレと化している。事件が解決すればさっさと帰る、毎度の事でありなかなかに疲れる行程だが、ジャムは弱音を吐く事もなくリーグから出てすぐに旅客機の座席を予約し飛行場へと向かった。

 カントーポケモンリーグに連れて行かれるというイベントもあったがこれも問題無くやり過ごせた、そう喜びながら機内から外を見る。青い空に白い雲、嵐が去った事で快晴となり絶好の航空日和であった。

 

「……それにしても、ポケモンの一種として存在しているとはいえトンデモなく強かった」

 

 思い返されるのは幻のポケモンの一匹であるミュウとのバトル。オール100という種族値は対戦環境においては「アタッカーとしては火力不足なのを多種多様な技で補う」「サポーターは補助技が多いので色々と出来る」という評価。しかしそれはあくまでゲーム内での話。

 

「エスパータイプ特有のサイキック能力、ミュウ個人の能力。それが種族値オール100を底上げしていた」

 

 正確なレベル、個体値、性格は不明であったが、長い年月を生きている事は確定。いざバトルが始まれば、どう見ても対戦環境でお出しされるレベルを優に超えていた。

 廃人からの評価はあくまでレベル50の決まったルール上での物であり、それを超過し設定通りの能力までも行使するのを見て恐怖に慄いたジャム。「野生はルール無用だろ」と言わんばかりに激しい光を身に纏い放たれた威力140の飛行技は、手持ちのルカリオを簡単に弾き飛ばし一撃で沈めた。

 そこから始まった激戦。サイキック能力を行使しながら縦横無尽に動き回り、放たれる高威力技の数々。“他のポケモンにへんしん”しそのポケモンの力までも行使する設定に忠実な能力。なんだねこれは地獄かね?

 

「まぁレッドさんの方はミュウツーを相手にしたんだからもっと大変だったろうな……建物が崩れるレベルでやり合ってたし、強過ぎでしょ……」

 

 ジャム同様にレッドもミュウツーを相手にしていた。特攻と素早さの鬼であるミュウツーを相手にして勝利をもぎ取り「…………」と無表情で立つ姿は威風堂々としていた。ジャムと同じ様に最後にはピカチュウを使っていたが、同種族とは思えない程の動きをしており、格の違いを見せられ割とへこんだジャムであった。

 ジャム自身は全トレーナーの中でも上位陣に入る実力を持っており、本人も強くなっているという自覚があった。しかし、出会う相手が悪かった。

 

 学生でありながら現時点で地方最強であり未だ進化している“ネモ”。

 他の地方にまで名が知られている原点にして頂点である“レッド”。

 その他色々なトレーナー達。

 

 時に直接対戦をして、時に間近で見る事で、上位の強さを体感してしまった。それ故に「並び立ちたいし勝ちたいけど、主人公でもない自分じゃ出来ないな」と思ってしまっていた。

 

「いやぁ、流石レッドさんだったなぁ。あ、サインしてもらうの忘れてた……」

 

 まぁ、割と呑気しているので問題はないだろう、多分。

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