『ウィィィィィス!!どうもぉジャムでぇす!!』 作:ジャムキンTV
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●ああ@aiueo123456789
ナンジャモは今日配信しないの?w
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●ピーギエ@g1ep1
ジャムに媚び売るなジャモ
「いや、今日配信する訳ないじゃん。なんでジャムの記念配信の日に被らせなきゃいけないんだ、よ!」
Poketter上で投稿された「記念配信を開始しました」というジャムのポケートは世界中を駆け巡り、瞬く間に広がった。配信者兼ジムリーダーであるナンジャモもそれに反応を示し、TL上に表示されたそれにリプライを送っていた。
●ぐらぐらんぶる@gura_gura
今日は配信しないって前の配信で言ってましたよ
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●ノーコン@NoContest
200万人配信する日に被せても同接少ないだろうからなw
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●ぐらぐらんぶる@gura_gura
いや同接とか今関係ないだろ何言ってんだ
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●ノーコン@NoContest
悔しいのうw
しかし、早速それに付いたクソリプの群れとそれに反応する他のユーザーによる争いが始まってしまう。辟易しながらもさっさとミュートしTraiTubeを開けば、毎度お馴染みの挨拶が聞こえてきた。
同業者として配信の先輩としてチェックしておかなければならない、そう考えナンジャモは配信を追っていたが、最近はそこそこハマってしまっているのを自覚していた。自分には出来ない企画は参考になるし、ポケモン講座は育成に非常に役に立った。
「質問拾ってもらったおかげで新しい子も増えたし、そのお礼もしたいんだけどなぁ」
手持ちのポケモンが増えただけではなく元々居た手持ちの技構成も変わり、配信を見るファンから「戦い方変わりました?」「更に強くなったね」とコメントを貰ったり、上司であるリーグ委員長からは「最近はバトルにもキチンと力を入れている様ですね、このまま精進し続けなさい」と褒められる始末。
未だ諦めきれないコラボ配信の夢も半分はジャムに恩を返したいという思いなのだが、本人が乗り気じゃない為無理強いは出来ない。そんな現状にナンジャモは少しヤキモキしていた。
「流石にリポケまでした後「偶然道端で遭遇しちゃった〜」とか言いながら現れたら自作自演なのバレバレだよねぇ。でもでも視聴者とのバトルを想定してるんだから、ボクがバトルしに行っても問題ないよね?ね!?でもいきなり会いに行ったら「ガチ恋勢」とかコメントで書かれて炎上しかねないから……ハッコウシティの近くに来たら行こうかなぁ」
そもそも山の上とか砂漠の真ん中とか大変過ぎて行きたくないしね、と呟きながら配信に目を向ければくじが引かれていた。
「ピケタウンかぁ……ちょっと離れてるなぁ……」
「あっ!ジャムの配信始まった!!」
アカデミーの自室にてスマホロトムを片手にはしゃいでいるのはチャンピオンクラスのネモ。今回の配信のルールのおさらいを聞きながら興奮した様子でくじが引かれるのを待っている。
今日は授業は無く予定も無い。普段は忙しない両親がたまの休みであり「久しぶりに会いたい、顔を見せに帰ってきなさい」と言ってきたが「お父様お母様、今日は外せない予定があるの」と一瞬の迷いもなく返事が出来る程度には今日を楽しみにしていた。判断が早い。
「ピケタウン……ちょっと遠いなぁ」
しかし運が悪い。今いるアカデミーから離れた町が引かれてしまった。イキリンコタクシーを使ってでも行きたいのだが、万全な状態でバトルがしたいとネモは考えていた。快活な性格に対して一般もしくはそれ以下の体力しか持っていないネモには、長い時間風に揺らされるのはそこそこキツい。そこで体力を削られるならもっと近くを引いた時に向かいたい、それがネモの考えであった。
「それにしても、ジャムは今日の配信何時までするんだろう?場所によってかなりの時間使うだろうし」
懸念しているのはくじが引かれる回数。徒歩で移動という豪胆な企画なせいで時間はかなり掛かるのは誰しも予想していた。ジャム自身時間が掛かるだろうと話しており、現在居る北2番エリアからピケタウンまでは切り立った崖や川を越え、広大な東3番エリアを踏破しなくてはならない。普通なら半日以上掛かる距離、早い段階で近くのバトルコートが引かれるのを待つしかない。
「うーん、こんな時だけ神頼みなんてしたくないけど……近くの場所が引かれますように!」
「うわぁ……何食ってどんなトレーニング積んだらこんな走れんだよ」
「一度ジャムさんに飯は何を食っているのか聞きたいぜ」と配信を見ながら呟いたのは秘伝スパイスを探しているペパー。アカデミーエントランスの大図書館で資料を見ていたが、その休憩時間にジャムが配信しているのを知り、見始めれば野生ポケモンを置き去りにしながら走り回る姿にドン引きしていた。
人が出せるトップスピードを維持しながら右へ左へ方向を変え、しかも道具やゴミを拾い続けている。
「エリートは肉体までエリートちゃんなのか?ウチの生徒会長様もこんなバケモノ……こっわ。結構前に生徒相手にバトル吹っ掛けてたって話もあるし、絡まれない様にしねぇと」
ペパーはアカデミーに貯蔵された本の中から強いポケモンについての情報や植物についての情報を洗い出し、どうやら過去に大穴の外でも秘伝スパイスらしき植物が確認されているのを確認出来ていた。“アイツ”の本の内容とジャムが言っていた事が現実味を帯びてきたと手持ちのポケモン達と喜んだ。しかしヌシと呼ばれる各地に点在するポケモンはかなりの強さらしく、今の自分達では太刀打ち出来ないとも思っていた。
「最近は授業にも出てバトルやポケモンについて知識も増やした。ジャムさんの動画を見て実際に試して強くなってる。でもまだまだ。チャンピオンクラス並に強くなきゃヌシなんて倒せねぇ」
そもそもヌシの近くに秘伝スパイスがあるのかすら分かっていないのだが、そこはヌシを倒さなくては確認出来ない。今はまず強くならなければ。
「オレも鍛えるかぁ?健康には気を遣ってるけど、筋トレとかした事ねぇから……」
「うわ、ジャムの配信見てるし」
「うおっ!?」
本を借りようとエントランスまでやってきたボタンは、テーブルに付く他の学生の後ろを通ろうとした際にスマホロトムに映っていた映像を見て無意識に声を出してしまった。
「ファッ!?ビックリした!あっ……驚かせてごめん……」
「あ、いや……オレの方こそ悪ぃ」
「……」
「……」
相手の驚く声に逆に驚いてしまったが、そもそも自分が出した声の所為だと謝れば相手も謝り返す。と、そこで会話が切れてしまった。相手は見ず知らずの生徒であり、向こうも最近アカデミーに復帰したボタンの事を知らない。お互いにこの空気をどうにかしようと思考を巡らせる。
「あ、ジャム……さんの配信見てたけどファンなの?」
「あ、あぁ。ジャムさんにはちょっと世話になったというか、それ以来配信を見てるんだ」
「へぇー……」
「……」
会話がぎこちなく、そして続かない。ド煩い親とは真逆で物静かなボタンは普段から会話をしない。授業には出席しているが事務的で最低限なやり取りしかしていない。そんなボタンが話題を振れる訳もなく……。
「あ、ボタン……ウチの名前はボタン、一年。名乗ってなかったよね」
口から出て来たのは自身の名前。会話の基本である名乗りが出て来ただけ、パニックになり掛けていたボタンは頑張った方である。
「……オレはペパー。二年だ。学年が違うけど、よろしく」
「うん、あ、先輩だったん!?け、敬語にします!?」
「え!?いや、敬語とか要らねぇから!」
先輩であるという可能性を想像をしていなかったボタンは慌てふためき、驚かせてしまった生徒であるペパーは今のままで良いと伝える。
この後、ボタンは自室に向かいペパーは外に野生ポケモン相手にバトルをしに向かった、互いに「もう会う事はないだろう」と考えながら。
しかし二人は知らない。再度二人は出会い、新たな仲間達と宝を探す事になると。