『ウィィィィィス!!どうもぉジャムでぇす!!』 作:ジャムキンTV
「(どうして俺はここにいるのだろう)」
この世に生まれ出で早20年と数年、自身が歩んできた人生を思い返すがどうしてこの様な場所に辿り着いたのかほとほと疑問に思う。
どうして?一体何故?そう自分に問い掛けても『もしかして:何もしてこなかったから?』と返ってくるのみ。流れに流れてここにやってきたのだ。
俺という人間は一般家庭に生まれ、何不自由なく過ごし、アカデミーに通いポケモントレーナーとなった。やりたい事は特になく一般的な職に就いて時折ポケモンバトルでもして過ごすのだろう、そう思っていた。
「我らが神に!我らが主人に!世界をあるべき姿に!」
「「「我らが神に!我らが主人に!世界をあるべき姿に!」」」
空中を揺蕩うシャンデラの灯りのみが照らす暗い空間。白い僧衣に身を包んだ覆面と綺麗に整列している黒い僧衣を纏った集団がカルト宗教をしているその場に俺はいた。
「(どこで道を間違えたんだ)」
古今東西、色々な地方に色々な秘密結社やら悪の組織がいた。ロケット団やらギンガ団やら。そういった組織はパルデアには居ないと思っていたのだが本当にいるとは……勧誘されるまで知らなかった。
適当な職に就くまでは良かったのだが、まさかカルト宗教の一員になってしまうとは思わなんだ。
「(いや、秘密結社が一般人に認知される方がおかしいでしょ)」
「(こいつ直接脳内に……!)」
これだ。組織から脱退しようと考えると脳内に流れる他者の声。エスパー特有のテレパシーで俺の考えは見透かされてしまっていた。
どこから思考を盗聴されているのかは分からないが、この中の誰かなのは間違いない。これが教祖や幹部なら即刻吊し上げされていただろう、つまりそうなっていない事を考えれば一般団員の誰かだとは思うのだが……。
「(色々考えてるけれど、私には私の立場があるから教えられないよ)」
前言撤回。立場がどうとか言ってるから一般カルト員ではないのかもしれない。優しく殺して〜!ソフトリ〜!キリングミーソフトリ〜!
「(思考がウザい。それじゃあまた)」
「(あ、おい待ていまだ肝心な事聞けてなおい待てい!)」
返事がない、ただの独り言の様だ。
「それではこれからお布施の時間です、皆さん準備をお願いします」
箱を持った団員が一人一人周り金を回収していく。団員費一万円(一ヶ月)を眼前に出された箱に入れぶつぶつと呟けば朝のカルトタイムは終了、後は個人の自由の時間だ。ある物は組織内で活動、ある者は外に出て仕事に。
俺はそのまま職場のコンビニに向かい仕事を始めた。
「いらっしゃーせー」「ありゃしたー」「あためますぁー」「はしいりゃすかー」
コンビニ店員も楽じゃない、普通の客と普通じゃない客、時折ポケモンの相手をするハードな職場だ。
「ありゃしたー」
「ウ、アザス……」
帽子とマスクで変装したTraiTuberを見送る。この仕事、朝昼夕、どこにも隙がないけどオイラ負けないよ。
仕事が終わればまたカルトの時間だ、でもそんな生活に慣れてしまい俺は謎の充実感を抱いてしまっていた。教祖様の話を聞き、適当に唱えれば後は自由な時間。今日は映画でも観よう。
「(今日はこの間一般人に見つかった事に関してのお話があるので二時間程延長します)」
「(あぁ^〜(心が壊れる音))」
初めに神は時と空間を創り、そして表裏一体となる世界をも創り出した。世界は闇で満ちていたが、神が「光を」と思うと世界に光が生まれ照らされた。
「そして貴方達は世の光。この暗闇の中で煌々と輝く光、神の使者なのです」
そして次に天と地を生み出した。巨人と小人が生まれ、巨人は天を支え小人は地に緑を広げた。天と地の間に命が栄えた。
「愛を持ち正しき道を歩みなさい。そしてその輝きでもって暗闇を照らし生きていくのです」
次に神は生物に感情と意思と知識を与えた。神の御技に生物達は頭を垂れて祈りを捧げた、崇め奉った。
「主は我らを愛します、ならば我らもその愛に応え他者を愛しましょう。それこそが主の意思であるのです」
人々は神をこう呼んだ、始まりの神を意味する【アルセウス】と。
「──まぁ大層な事を言っていますが……あの人が本心で何を考えているのかは分からないんですけどね、初見さん」
「初見?」
「こっちの話しです気にしないでください」
教祖が教徒達に語り掛けているのを離れた所から見つめている二人。教団の幹部である彼らは今後について話し合っていた。
「一般人にバレるだけならともかく全国ネットで晒されたんですけど。もう終わりだよこの団、ですね」
「ここで止めるわけにもいかんだろう。いやいかんやろ?」
「そこはいかんでしょの方が良いですね、いかんのか?にも繋げられます」
某TraiTube“r”の記念配信という大勢の人間が視聴していた所にお邪魔してしまった事で一躍時の人となった彼ら。秘密裏に動き団員を増やして軌道に乗っていた団は秘密結社から謎の組織に降格となった。
やる事は変わらないが行動しにくくなった事でこれからについて話を進め、ある程度纏まった所で会議はお開きとなった。幹部達は散り散りとなり残った二人はこうして話をしていた。
「……君達が使う独特な言語はなんなんだ?私も真似してみたがよく分からん」
「色々な所から色々と持ってきているので、色々と混ざって滅茶苦茶になっています。深く考えると禿げますよ」
「一定の法則と使われる言葉の区別はある程度ついたのだが、時折現在使用されている言語に該当しない言葉も話している。しかし、どうしてそんな使い方を?使い勝手が良さそうで悪いというか、普通に話せば良いのでは?」
「ある階層、社会だけで用いる言葉。卑語。俗語」
「……答える気はないと?」
「いかんのか?」
「いかんやろ。こう使うのか」
「やりますねぇ!やりますやります……」
笑顔を浮かべパチパチと手を叩く“少女”と呆れた顔で首を横に振るう“男”。幹部はそれぞれの事情によって団に在籍しており、この二人も訳あって幹部の席に座っている。
「というか、私達が使う言葉を調べて纏めてるとか暇人なんですか?暇ならお金と人を集めてくださいよ、勧誘!謀略!聖句!勧誘謀略聖句って感じで」
「謀略はしないぞ。勧誘は君の方が適任だろうに」
「とってもプリチーな美少女であるこの私ならお茶の子サイサイシーですからね、天に竹林!地に少林寺!」
「……」
「おじさんその目やめ竹林〜」
「……」
「ア、ハイ」