『ウィィィィィス!!どうもぉジャムでぇす!!』 作:ジャムキンTV
独創的な髪型をしたあの方と出会ったのはスター団のアジトでのバトルが一段落した時の事。
アジトを訪ねた時、団員方々は襲撃者がどうとか言っていましたがこちらが勝負を挑めば普通に応えてくれました。日頃の活動はあまりよろしくありませんが、彼等のバトルに対する姿勢には見習うべきものがあるとバトルを通じて私はそう思いましたの。
「それじゃあ最初は私が相手するわよ」
「よろしくお願いします」
最近、スター団のバトルの腕が上がっていると聞いていましたが、まさかあそこまで強いとは。連続でバトルをしたとして、20人くらいは余裕かと思いましたのに、6人目で負けてしまいましたの。
ポケモン達を回復させていざ再戦を、と思った時離れた場所から声を掛けられました。
「ちょいと待ちな、この場は俺が預かるぜ」
そう言いながら現れたのはアカデミーの学生服を着た男性。前に突き出た髪型と言葉はワイルド?と言えば良いのでしょうか?その反面、所作の一つ一つが気品に溢れていました。
彼はこれからしようとしていたバトルを中断させると私をアジトの外に連れ出しこう言いました。
「お嬢さん、アカデミーではスター団のアジトに行かないように生徒に伝えていた筈だぜ?宝探しが始まって早々にこんな事をするなんて」
確かに担任の先生からその様に言われていました。しかし、私には目的があるのだと彼に告げた。
「私は強くならなればいけませんの。“期日”も迫っておりますし」
「期日?あぁあの大会ですか……」
顎に手を当てて思案する動作と風貌。この二つの乖離が大きく、異彩を放つ。しかし妙に様になっていまして、私は思わず見惚れてしまいました。
「普通にバトルしていたのは分かった。しかし、その相手がスター団なら話は別だ。彼等の普段の行いは知っているだろう?」
「はい、存じ上げています」
知っています。しかし、手っ取り早く腕の立つトレーナー達と連続でバトルが出来る環境はここしかないのです。
「ならばあまり関わりを持つのは……」
「分かりました」
「アカデミーは宝探しで生徒が少なくなってはいるが、バトル関係の授業がありますし、屋上でバトルをしている生徒もいます。んん、そっちに行く事をオススメするぜ」
そう言ってあの方が去ろうとした時、私は彼の腕を掴んでいました。突然の行いにこちらを振り向き驚いた顔を向けられてしまいましたが、私自身も自分の行いに驚いていました。
「ど、どうしました。んん、どうした?何かあるのか?」
「……私は色々な人とバトルをしなくてはいけません。だから貴方にも私の相手をしてほしいのです」
「お、俺と?……ま、まぁ俺で良いのなら手を貸すが」
これが“ネルケ様”との初めての邂逅でありました。これから彼と共に私は大会に向けてバトルを積んでいくのです。
老若男女分け隔てなく校長自ら生徒の為に奔走する。そんな校長は生徒達から好印象に見られ、一年目でありながら既にアカデミーの顔として存在していた。
アカデミーは一年前に教員が総入れ替えとなったものの、以前よりも平和でありそれが余計校長の評価を上げていた。一部生徒による辻バトルを除いては平穏無事である。
しかし、そんな学園にも七不思議と呼ばれるものがある。美術室の絵が動くだとか、音楽室の楽器が鳴るだとか、入口の本棚の後ろには謎の空間があるだとか。色々とあるが、一番の人気は“謎の生徒N”。
Nはリーゼント(正式名称:ポンパドール)をしたそこそこ歳を取った生徒であり、たまに他の生徒を気に掛けて話し掛けてくるのだとか。それによって少なくない人数の生徒が助けられたと発言していた。
「でもあの人、授業で見た事ないんだよね」
アカデミーの授業は選択制であり、他のクラスの生徒とも交流が出来る。しかしNと呼ばれる生徒は授業では会えず、他の生徒に話を聞いても知らないとしか返ってこなかった。
Nの噂が広まり教師の耳にもNの話が来た時、Nは学園から姿を消してしまった。生徒だけでなく教師すら知らない謎の存在。生徒達は彼を“アカデミーのNさん”と呼び七不思議の一つとして今もひっそりと語り繋いでいた。
「困ったものですね。少しアドバイスをしていただけなのに大事になってしまいました」
校長室にて溜息を吐くクラベル校長はカツラを手で撫でながら、過去の行いに思いを馳せていた。生徒の為になると思い変装までした事で色々な生徒の悩みを知り解決してきたが、それが自分の首を絞めてしまった。
校長クラベルはアカデミー生徒ネルケである。
生徒の平和を守る為、日夜戦い続けるのであった!
勤務中はクラベル、それ以外はネルケとして活動していた校長だが会議で「正体不明の生徒がいる。変質者の可能性がある」と議題に上がってしまっては活動を自粛するしかなかった。
しかし、学園外では細々と活動しており危ない事をしようとする生徒を助けたりしていた。
「……ネルケとして活動するのは良いのですが、助けた生徒から「また今度会いたい」「バトルをしてほしい」「何組ですか?」と訊かれるのは慣れませんね。ネルケは校長の影の姿なのですから」
人助けマンなネルケは割と人気がある。悪ぶった口調をしてはいるが、全身から発せられる善の気が警戒を解かせ好意を持たせに来ている。
そんな校長の一番の悩みはアカデミーに復帰したボタンと転校生のアオイ。ボタンは陰で何かしているのだがそこに自分が入り込む余地が無く、アオイはバトルジャンキーで何をするのか分からないからだ。
「ボタンさんはペパーさんという新しいご友人を得た。ペパーさんはボタンさんの協力者として動いている」
ボタンだけでアオイに協力を申し出ていれば自分は協力者として手を貸していた。しかし、ペパーがいる手前、そこに割って入るのは難しい。
クラベルとネルケを使い分けながら、影に日向に情報を収集していくしか今出来る事はなかった。
「しかし、生徒では出来ない事があります。校長だから出来る事があります。“私”が出来る事と“俺”が出来る事、この二足の草鞋が彼らの助けになるのなら私達は全力で彼らをサポートするだけです」
それが校長としての義務だとクラベルは決意を固めていた。