『ウィィィィィス!!どうもぉジャムでぇす!!』   作:ジャムキンTV

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大会直前

 ○月●日午前8時。三つの都市に大勢のトレーナーが集まっていた。

 

「何だい今日は……さっきから腕にヘンな輪っかをつけた連中を見かけるが……」

「通行人はどいてた方がいいぜ!」

「今日、この街は戦場と化すんだからよ!」

 

 何も知らない通行人の呟きに近くにいたトレーナーが答えれば、突然の戦場発言に恐れ慄いた通行人が走り去る。

 街の各地に点在するポケモンセンターや簡易ポケモンセンター“ポケストップ”。そこでトレーナー達はグローブ、バングル、パルデアチップを受け取っていた。

 パルデア在住のトレーナーだけではなく他の地方からやってきたトレーナーも大勢おり、大会の始まりを今か今かと待ち望んでいた。

 

「おうおうおう!兄貴が人の多さにオカンムリだァ!テメェら道開けねぇと痛い目見るぞォ!?」

「そこ退けそこ退け!兄貴が通るぞォォォ!!!」

「……」

 

「全く、なんて下品な人達なのかしら」

「お嬢様、やはり車内でお待ちになられた方がよろしいのでは?」

「そうね、戻りますわよ」

 

「動物園に来たみたいだぜ。テンション上がるなぁ〜」

「この汚らしい阿呆共がァーッ!!」

「コイツらはジャムが大好きなんだよ。よりによってジャム主催の大会だからちくしょう!!」

 

 大会の開催地である三都市にはトレーナーだけではなくそれを見に来る一般人から観光客が多い。その影でリーグスタッフが慌ただしく動き回り誘導や物品の準備に走り回っていた。

 

「今回の大会は、ジャム氏主催の大会だ。しかし個人での開催ではなく、我々パルデアポケモンリーグの協力の元で行われる。皆、気合いを入れて行くぞ!」

「うおぉぉおおおぉぉ!!」

「ふうん、お上も随分熱が入ってる様子だ」

「ヨロコンデー」

「デッデッデデデデ!」

 

 入念な打ち合わせと準備により万全の体制を敷く運営も今か今かと待機している。これから始まるのは都市全体を舞台として行われるポケモンバトル。

 ポケモンセンターは次のステージの出場者が決まるまで稼働し続ける事は確実。ジョーイさんを筆頭にスタッフ達は過労不可避であった。

 

「これなら不測の事態が起きても迅速に対応出来るでしょう」

「……ええ」

「それにしても、貴方のムクホークは凄い。二人乗せても普段と変わらずに飛んでいる」

「……ええ」

「……アオキ、キチンと聞いていますか?」

「……ええ」

 

 出場者もスタッフも熱気を飛ばす街を見下ろしながら、様子を観察しているのはリーグ委員長である“オモダカ”と四天王“アオキ”。

 飛行タイプの使い手という理由で駆り出されたアオキの気分は六段階ダウンであり、それを隠さずに普段よりもテンションは低い。その様子を見てやれやれとオモダカは首を振った。

 

「今日は気分が良いので許します。大会が始まってもそのままならば喝を入れますが」

「……分かっていますよ。しかし、この大会を通してパルデアのポケモンバトルの向上と他地方への喧伝をする為にここまでするとは」

「喧伝?宣伝と言ってください」

 

 オモダカの頭には『パルデアのポケモンバトル発展』が一番の目的となっている。それはリーグが主軸にならなくとも良く、外部の人間がそれに努めても良いと思ってすらいた。非合法な事以外なら全てに寛容である。

 最近のオモダカさんは人使いが荒いし、バトルの事になると早口になるな。そう内心で思うに留めるアオキ。如何せん相手は上司であり陰で暴走しているバトル狂い、触らぬ神にたたりめ無しとムクホークの頭を撫でる。

 

「……各地からの報告を受け取りました。多少の諍いはあった様ですが、それ以外の不備は無し。これなら問題はないでしょう」

「そうだと良いのですが」

「そろそろ戻りましょうか。貴方は引き続き補佐を頼みますよ」

「……」

「アオキ?」

「……はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウィィィィィス!!どうもぉジャムでぇす!!」

 

「ん、んん!うん、喉の調子良し、手持ちも良し、天気良し、俺も良しだで」

 

 ハッコウシティの中心部に存在するスタジアム近くの建物の中、主催専用として通された部屋の中で最後の準備を進めているジャム。

 ここ数日きんちょうかんによってきのみも喉を通らなかったが、配信や動画投稿によってストレスを発散しながら遂に今日を迎えた。

 大会参加者やそれ以外の客の多さに胃の中の物が迫り上がるのを感じながら、発声練習や手持ちポケモンの確認を入念に行い本番に備える。

 

「えぇっと、もう残り時間もそんな、あぁ、まぁそんな無いからね。もう覚悟決めんと……しかし、色々やった、やってきましたけども……えぇ、まさかここまで来るとは」

 

 初めての動画投稿、初めての配信。そこから始まった自分の活動はオフ会なども行い、遂にはパルデアに存在する都市三つを股に掛ける超大型の大会にまで発展してしまった。

 生来ジャムは陽よりも陰の者である。顔出しはしているが他のTraiTuberとコラボなどは未だせず、一人で何かをする方が多かった。

 

「でも、色んな人と関わる内にここまで来たんだよなぁ……」

 

 シンオウやカントーのチャンピオン、パルデアのジムリーダーや四天王と関わりを持つ事でオフ会やら大会やらを開くに至った。

 これをしてみよう、ちょっとした思い付きで一歩踏み込んだが最後、いつの間にやら人生設計が崩壊を起こしTraiTube人生が180度変わっていた。

 

「ジャムさん!そろそろ出番です!」

「おぉ!?もう、もうかぁ……ほんなら行かんとね、如何とも出来ないからねアッアッアッアッ!」

 

 スタッフの一人がジャムを呼びに来た。それを聞いて立ち上がり、伸びをして部屋を出る。先程から聞こえる大勢の人の声がジャムを待っている。

 大きく息を吸い吐き出す。緊張はピークに達するがそれ以上の興奮とやる気を胸に歩みを進めた。

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