『ウィィィィィス!!どうもぉジャムでぇす!!』 作:ジャムキンTV
「おやおやおや、まさか貴方も参加しているとは。久しぶりですねぇアンデルセン神父」
「……貴方を探して数年、ようやく尻尾を出したかと思えばこの様な大会に参加しているとは……いや、その話は後にしましょう。拘束させていただきます」
「おっと?いきなり捕まえるのはルールで禁止だろうにねぇ?」
熱狂と興奮で騒めく街の片隅、人どころかポケモンすらいない路地裏で二人の人間が対峙していた。一人はアルセウス教カトリコス派の神父、もう一人はジャム主催の大会で予選3位通過を果たしたばかりの女性。
男は予めボールから出していたメタグロスのサイコキネシスで女性を捉え動きを封じていた。
「何故、何故貴方はパルデア支部を抜けカトリコスから離れたのです?司教の中でも最も勢力的に活動し、主の為に働いていた貴方が何故?」
「今も私は主の為に動いていますよ。立ち位置が変わっただけでそれは変わらない。ちょっとやり方を変えただけです」
「……」
数年前、突然宗派を抜けると言い周りの静止を振り切り忽然と姿を消した女性。司教の一人でありこのままいけば大司教にすら成れたであろう、と将来を期待されていた人。何か事件に巻き込まれたのではと教会が警察機関と協力して探すも見つからなかった。
時を同じくして、パルデア内で謎の組織が動き始めたと情報が入った。影に隠れて何やら暗躍している組織。失踪と暗躍、これに関係があると教会は秘密裏に捜査を始めた。
「そして、その組織が我らが主を奉りながらも資金を集め何かしらを企てていると分かった。そして、貴方がそこに関与している事も」
「へぇ、そこまで分かってるんだ〜?いや、結構頑張って隠れてたし、組織が表に露呈しない様にしてたのにそこそこバレてるのヤバくない?マジヤーバーヒートなんですけどぉ!」
「……ただの邪教の類なら滅ぼしてお終いですが、貴方達は手を出してはいけない人に手を出したぁ……」
「え?」
「〜〜〜ッ!ジャム様ですよジャム様ァ!貴方達はあろう事かジャム様にまで手を出したァァ!以前の配信では襲い掛かり、今回の大会では参加者として……邪教風情がァァ!!」
「なんだこのおっさん!?」
突然の発狂とジャム様呼び、余裕を見せていた女性もこれには驚いた。邪教判定された組織を滅ぼす時でさえ淡々としていた男が、こうまで感情的になり叫ぶ等想定していなかった。後ろで待機しているメタグロスは「やれやれまたか」と呆れた様子で顔を横に振るった。
「え、何?あ、あぁ君前の配信に参加した時ジャム様ジャム様言ってたけど、あれマジで言ってたの?キャラ付けかと思ってたよ!」
「異端審問官として貴様をこの場で断罪したい所だがぁ……大司教様からの要望だ、早く支部に行くぞ」
「いや何で?君前までは『主は最高!主こそ至高!他?興味ないね……』って感じだったのに何で!?」
「ジャム様は私に更なる力を与えてくださった、止まっていた足を進ませてくださった。ジャム様は主が送り賜うた啓示なのだ」
アンデルセン神父にも立ち止まり思い悩む時期があった。そこに偶然現れたジャムによって悩みは解消された。ジャムの言葉によって活動の幅は広がり、今ではパルデア支部で一番の働き手として皆から称賛されていた。
彼からすればジャムは主の使いであり主の啓示そのもの。主から数段低くなるがジャムも敬愛し奉る対象となった。
「で、私の行動を事前に察知して大会に来たと?」
「もう喋るな。後は向こうで聞く」
「いや、私この大会に参加してるんだけど?」
「参加辞退の連絡は代わりにしてやった」
「不戦敗はヤダよ!」
「ンアー!」
「ポッチャマ……」
「ん、良いバトルだったよぉ?じゃあこれは受け取るね」
相手のトレーナーからチップを受け取りバックルに嵌め込む、光を反射してキラキラと輝くそれを撫でながら周りを見渡す。
「トレーナーは……みんなバトルしてて相手がいない。早い所切り上げて妹の所に行きたいんだけどなぁ」
トレーナーは皆バトルをしており、周りにいるのは見物客。自身とバトル出来そうな相手が居らずどうしようかと考える。
「それにしても、かなりレベルの高いトレーナーがいるね。学生時代のアイツと同じレベルの人もいればそれ以上の人もいるし、普段どこに隠れてたんだか」
近くのポケストップでポケモンの傷を癒してから近くのベンチに腰を下ろしながら考える。この大会の主催者の男の元に集まったトレーナー達は千差万別の強さがある、その中には主催者が学生の頃と同じ強さのトレーナーやそれ以上の強さを持った者もいる。以前の大会から更にレベルが全体的に上がっていた。
「あ…あの」
「うん?」
「自分…ファンなんスよ。握手してもらっていいスか?」
声を掛けられた。自身のファンだという少年に応えて握手をすれば、相手は緊張しながらも「あざーす!!」と笑顔で離れていく。大会中であるが何度かファンに握手やサインをした、対戦したトレーナーから求められる事もあった。この大会に参加するジャムファンなら自身を知っている人も多く「前の配信で出てた人ですよね?」とかなりの人数から言われていた。
「クウィンスさん、ですよね?」
「そうですよぉ?」
「バトル、お願い出来ますか?」
「いいよ〜いつでもオッケー!」
こうしてまた一人バトルを挑むトレーナーが現れた。自身の配信やジャムの配信でバトルの腕が広まった事でそこそこレベルのトレーナーから避けられてしまっていたが、腕に覚えのあるトレーナーからは腕試しの為に挑まれる。今回の相手もこちらの事を知った上で挑んで来ており、それ相応の雰囲気があった。
「それじゃあお願い、カイリキー!」
「勝つぞ!ゴウカザル!」
大会が始まり数時間。3時のおやつの時間すら通り過ぎ、夕方に差し掛かる頃。各街でパルデアチップを集め終えたトレーナーが増えてきていた。
チャンピオンクラスを筆頭にジャムの視聴者達の中でもレベルの高いトレーナーが次々に予選を突破していた。
「へぇ、こいつらみんな予選通過者か?」
「そうだろうね、ポケモンセンター内の宿泊施設は大会中は参加者しか使えないから」
ポケモンセンターには未だバッジを集め終えていないトレーナー達が入れ替わり立ち替わりでやってきて、回復マシンが全台急ピッチで動いていた。
そんなポケモンセンターの休憩スペースでは周りの情報を集める者や明日以降の為に作戦を練る者等、各自が思い思いに過ごしていた。
「おい、あれ見ろよ。ナンバーワンとナンバーツーだぜ」
「おぉ。サインとか貰えないかなぁ……」
ポケモンセンター奥から歩いてくる二人組にトレーナー達の視線が集まる。このポケモンセンターには他のトレーナーよりも数時間早く予選を突破した二人がいた。複数の視線に晒されながらもどこ吹く風な様子で外に出ていく二人は皆が警戒していた。
「この街からトップ3が出るとはな」
「滅茶苦茶早かったよな、昼飯食ってたらアナウンス来て思いっきり喉詰まらせたわ」
呑気に談笑しているトレーナー達だが、その目は笑ってはいなかった。言葉では朗らかにしているが、周りのトレーナーやその手持ちの情報を収集しようと辺りを伺っていた。
手持ちのスマホロトムで大会の映像からネット掲示板まで手を伸ばし大会を有利に進めようとする者もいた。
「後2時間くらいで予選が終わりますね」
「このポケモンセンターだけでもこれだけいるのだから、どれ程の人が予選を突破するのか」
残り2時間、どれ程のトレーナーが突破して来るのか。今も尚三つの都市で行われているバトルの映像を見ながら先に勝ち進んだトレーナー達は次に備え始めていた。