ようこそ愛に満ち溢れた教室へ 作:鴨の加茂
呼んで頂きありがとうございますm(_ _)m
感想、評価、お気に入り等とても喜びますので是非お願いします!
私、久遠 瞳は両親からの暖かい声援を背に受けて今日から通う高度育成高等学校行きのバスに乗車した。
幸運にも席を確保する事が出来た私はバスに揺られ眠くなる衝動を抑えながら目的地に到着するのを待つ。
「席を譲ってあげようって思わないの?」
…ふぁっ?ビックリしたぁ。
結局私は眠気に抗えず寝てしまっていたらしい。そんな中、私の正面に座る金髪マッチョの男子生徒にOL風の女性が話しかけていた。隣に老婆が立っている事からも状況は容易に推察出来る。
けど、どうでもいいや。
そもそも、問題を解決したいならOL風女性は金髪マッチョくんだけにお願いするんじゃなくて全体にお願いをすればいい。そんな勇気が無いとは言わせないよ?既に大衆の面前で行動に移せているからね。それでも反応が無ければ前から後ろまで座っている乗客全員に順番に軽く声をかければきっと何処かで誰かが席を代わってくれる。
ん?そんな事を考えている間に金髪マッチョ君が勝ったみたいだ。勝ち誇った顔でイヤホンを装着している。ちなみに音漏れが相当酷い。煩い。地面に埋めたい。
金髪マッチョくんとは対照的にOL風女性は少し悔しそうに、けれども申し訳なさそうに老婆に小さく謝罪の言葉を口にしている。
「あの……私も、お姉さんの言う通りだと思うな」
そんな、誰もが終わりを確信した時、またまた同じ制服に身を包んだ女子生徒が思い切って勇気を出した様子で少年へと話しかける。
「今度はプリティーガールか。どうやら今日の私は思いのほか女性運があるらしい」
「お婆さん、さっきからずっと辛そうにしているみたいなの。席を譲ってあげてもらえないかな?その、余計なお世話かもしれないけれど、社会貢献にもなると思うの」
パチン、と少年は指を鳴らした。
「社会貢献か。なるほど、中々面白い意見だ。確かにお年寄りに席を譲ることは、社会貢献の一環かも知れない。しかし残念ながら私は社会貢献に興味がないんだ。私はただ自分が満足出来ればそれでいいと思っている。それともう一つ。このように混雑した車内で、優先席に座っている私をやり玉にあげているが、他にも我関せずと居座り黙り込んでいる者たちは放っておいていいのかい?お年寄りを大切に思う心があるのなら、そこには優先席、優先席でないなど、些細な問題でしかないと思うのだがね」
少女の思いは届かず、少年は堂々とした態度を終始崩すことはなかった。OLも老婆も、続ける言葉はなく悔しさを噛み殺す。
しかし、少年に真っ向から立ち向かった少女がそれで挫けることはなかった。
「皆さん。少しだけ私の話を聞いて下さい。どなたかお婆さんに席を譲ってあげて貰えないでしょうか?誰でもいいんです、お願いします」
私は少し周りを見てみる。あれ?後ろの方に座っている男子学生と目が合った。とりあえず手でも軽く振っておく。
「あ、あの、どうぞっ」
何が原因かは分からないけど1人の社会人風の女性が老婆に席を譲る。その後は老婆がOL風女性やプリティーガールちゃん。席を譲ってあげた社会人女性にお礼を言い席に着く。
……そろそろかな?
そこで私は立ち上がり、OL風お姉さんに話しかける。
「お姉さんも疲れたでしょ?席空いてるから座っていいですよ」
あれ?『……は?』って反応されちゃった。優しさ純度100%だよ?……仕方ないなぁ。
「先程は大変でしたね、優先座席に学生が座っていたら話しかけないといけないとかルールがあるんですか?」
小声でお姉さんだけに聞こえるようにそう言って、半ば強引にさっきまで私の座っていた席に座ってもらう。お姉さんは理解不能といった感じでポカーンと席に座ったままだ。
それから程なくして目的地に着くと、前と真ん中の出入口から順番に乗客達が降りていく。
バスを降りて学校の門の前辺りで呼び止められた。相手はバスの中での1悶着を興味無さそうに後ろの方の席に座りながらこちらを見ていた死んだ目の男子学生だった。
「どうしたのー?」
「さっき、ほらバスの中で色々あっただろ?その時に、手を振っていたが俺たちどこかで会っていたか?」
「目が合ったから何となく手を振っただけだよ?あ、そう言えば君の名前を聞いても?」
「綾小路 清隆だ。よろしく」
「私の名前は久遠 瞳って言います。よろしくね!」
そう言って私達はお互いに自己紹介を済ませる。
「それじゃあまたね!同じクラスだといいねー!」
「……は?」
その言葉と共に私は駆け出す。綾小路くんはきっと最初から友達が多いタイプでは無く途中で何かしらのイベントを挟んで友達を増やしていくタイプと見た。つまり今はそんなに関わる価値が無いんだよね。それよりも早くクラスに行って友達を増やした方が良さそう。
って訳で早速クラス発表を見に行こう。
「それじゃあまたね!同じクラスだといいねー!」
「……は?」
彼女……。久遠 瞳と出会い、互いに自己紹介をしたのはつい数秒前の話だ。普通はもう少しお互いに自分自身の事について話をしたり、多少は会話を重ねる物だと思っていたが彼女は颯爽と校門の奥へと駆けて行った。
そもそも、彼女に話し掛けたのは聞きたい事があったからだ。バスの中で騒動が起きた時、老人に対しては興味無さそうだったのに対してOL風の女性には席を譲ったりもしていた。普通それなら老婆を座らせていればもっと早く騒動が終わっていた筈だ。
「ちょっと」
そこまで思考した所でバスで隣の席だった黒髪ロングの少女に呼び止められた。どうやら先程の一件で目を付けられたみたいだ。