【完結】念動変身グレイトクーガー   作:ふくつのこころ

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 念動変身。

 そのように久我が叫べば、その身体を赤い光が包み込み、人間の身体を超人のものへと作りかえる力が働く。

 姿が人間のモノから大きく変わり、体色は赤く染まり、銀色の頭、触手のような器官が額から生え、ソレは大きく歪曲している。

 腰と額のクリスタルを月明かりで光らせ、悠然と立つ姿は神秘的な雰囲気を纏い、それは久我の憧れたヒーローにあまりにも酷似していた。

 身長は久我とそう変わらないものの、その姿は確かに双貌の怪物・ダブルフェイスに立ち向かうに相応しい戦士の姿をしていた。

 

 キャプテン・グレイトから受け取った力を久我雄吾が念動変身の掛け声で変身した姿、それが念動超人である。

 

「未確認のエネルギーの存在を確認、対象は地球人の体内からと思われる」

「よって、排除を開始する」

 

 ダブルフェイスは念動超人から感じたエネルギーの強大さに危機感を感じ、速効で鋏で押しつぶそうとするものの、念動超人の内側からこじ開けようとする力で撥ね退けられ、今度は逆に念動超人がはさみの端を掴んで投げ飛ばした。

 

「先輩……、ですか?その姿は……」

「ああ、俺だ。心配かけちまったな?お節介な宇宙人に貰ったんだ、つっても信じるわけねえよな。だけど、いつの時代にもバルタン星人と戦うのは、光の巨人だって決まってる」

「あれ、カオ二つありますけど?」

 

 念動超人になった久我、表情が全く窺えないのに自信満々な様子なのは、変化する前の彼を知っているからだろうか。

 自分の前に立ち、振り返ってその顔を見せれば、紅の手をサムズアップするのも、なんとなく彼らしいと思った。

 

「そんなモンは些細な問題だ!いちいち細かいとモテねえぞッての!」

 

 自分に向けられた言葉を似たような言い方で冷たい視線の後輩に返しながら、真紅の超人はダブルフェイスに突っ込んでいく。

 超人に変わったことによって、久我の運動神経は人間以上のスペックを発揮出来るようになっていた。

 妙な違和感を久我自身が感じないのは、お人好しな宇宙人の言っていたように念動超人としての姿が久我雄吾のイメージによるものである為、昔から“キャプテン・グレイトに自分が変身したら、どんな動きをしていたのか?”を考えていたことで、キャプテン・グレイトから与えられた力に適応できるようになっていたのだ。

 

「対称、解析開始」

「星の戦士、地球人の両方の反応を感知」

「うごごご、ぐばっしゃあ!うべべべべ、ぼろんどん」

「「デリート決定」」

 

 両手の鋏をくるくる回転させながら、ダブルフェイスの両方の顔がそれぞれ言葉を続ける。

 相変わらず、言葉になっていないことを口走る右の顔、機械的な口調の左の顔が自分の言いたいことを述べて行った後、そこではじめて両方の顔の言葉が一致した。

 念動超人の前に瞬間移動したダブルフェイス、左の鋏を振り下ろし、念動超人の頭蓋を割らんとするが、念動超人の左膝蹴りが炸裂する。

 怪物が相手であることもあり、念動超人の動きには一切の躊躇いと容赦が見られなかったことで鈍い音が響く。

 

 サイズに差があることもあり、ダブルフェイスには、あまり通用しているようには思えなかった。

 単純なパワー対決では、念動超人のほうがダブルフェイスに比べ、不利なのだが、それを念動超人が感じさせないのは、一重に念動超人の内に秘めている熱のおかげであった。

 白雪のことを気にかけつつ、かといって周辺の被害を気にしているかと言えば、そうではなく、地面が割れているのが見られる。

 まだまだ超人としてはひよっこの念動超人、そこまで気にかけられるほどの余裕はなかった。

 

 彼が念動超人に変身できたのは、自分の後ろにいる後輩の少女を守りたいという願いによる行動の結果、宇宙からやってきたヒーローが彼に力を授けたからだ。

 今の念動超人の在り方は、そんな久我のエゴによって生まれ出たもの。

 

 久我雄吾は()()を助けることはできても、()を救うヒーローになれないのである。

 

 ダブルフェイスの力に押し負けそうになるたび、念動超人は白雪のことを思い、力を発揮し、ダブルフェイスの身体に殴打する。

 念動超人の攻撃を受けると、反撃とばかりに繰り出されるダブルフェイスのその鋏による攻撃をかわし、蹴りを顔面に入れると、右の顔が嘔吐するように顔を青くし、息を後ろにいる白雪に吐きかけようとすると、鋏を握力で破壊するほどの怪力を見せ、自ら被りに行った。

 

「目標、エネルギーの減少を確認」

「これより、最終段階に入る」

 

 腰の中央にある結晶が赤く点滅しはじめれば、ダブルフェイスの機械的な声がどこか勝ち誇ったような色が見え隠れし始める。

 ダブルフェイスの右の顔が吹きかけたのは、酸の息であった。

 自分のエネルギーを顧みず、動き回っていたこと、酸の息を食らったことで念動超人の身体の正面が僅かに爛れ、エネルギーは切れ掛かっていた。

 肩で息をするように上下しながら、膝をついてしまいそうになりながらも、念動超人は立ち上がる。

 

「先輩、そんなぼろぼろな身体で……。なんで、私なんかを……。私、先輩が思っているような女じゃないんですよ?先輩が知らないだけで、いっぱい、悪い噂とかあるし」

 

 ぽつぽつと語り始める白雪、生々しい生物感のある念動超人の身体にそっと手を伸ばす。

 念動超人の身体は、変化した久我雄吾の身体は、とても温かかった。

 

「自分が悪い女だからって守らないでください、ってか?俺が何を守るのかは、誰にも決める権利はねえ。俺が守るのは、俺が守りたいと思ったものだけだ。この姿だって、俺がお前を守りたいと思ったから、宇宙から来たヒーローが俺にくれた力だ。鳳を守れるように、ってな」

 

 自分に伸ばされた手、女の子らしい柔らかな手は、どこか震えているようにも感じる。

 彼女のもらした言葉は、きっと心からの本心だろう。

 自分が戦うことによって、傷ついて欲しくなく、自分にはそのような価値がないことを嘆く本音。

 

 出会ったばかりの男に弱ったところ見せてんじゃねえよ、と久我は彼女の言葉に笑い、酸によって爛れた正面を見せないように立ち上がり、左掌に右手で作った拳を打ち付ける。

 

「悪いところのねえ人間なんざ、吐き気がする。だから、お前は何も怖がることはねえ。それもこれも、全部、俺自身がやりてえって思ったことをしてるだけだ。お前が何も心配に思う必要はない。気にすんな」

 

 左掌が先ほど、ダブルフェイスを鋏をつかんで投げ飛ばした際に切ったようで、今になって痛みが走る。

 どうやら、ダブルフェイスの持つ能力は酸や毒であるらしい。

 殴る・蹴ると言った白兵戦でしか攻撃できていない、今の念動超人と非常に相性が悪い相手であるのは確かだ。

 

「先輩……」

 

 久我雄吾は凄い。

 

 自分の身を、今日であったばかりの後輩を助ける為に差し出すことが出来る。

 

 久我雄吾は凄い。

 

 その言葉が確かであるならば、その心を、その精神を、人間ではない何かに認めさせたうえで力を得たのだから。

 

 念動超人グレイトクーガー。

 

 そんな言葉が頭をよぎった。

 

「とっとと終わらせねえと。なにか必殺技でもあればいいんだが……」

 

 傷ついた身体では、これ以上、激しいアクションをすることは出来ない。

 何か、決め手となる必殺技、それも遠距離(・・・)でもいけるような技があれば……。

 

「伸びろ、触角!!!!」

「!!!!!!」

 

 

 額から生えている触手に気づき、それに伸びるように念ずるとエネルギーをそこに集中させ、一気に空高く伸ばす。

 そして、一度のけぞった後に大きく頭を振ると、触手のような器官がダブルフェイスの方まで伸び、ダブルフェイスの身体は爆発四散し、力を使い果たした念動超人グレイトクーガーの姿から久我雄吾の姿に戻る。

 

「せ、先輩っ!」

 

 白雪は倒れる寸前に久我に駆け寄り、優しく包み込むように抱きしめる。

 力を使い果たしたのか、久我は意識を失っている。

 そして、その手首には腕輪をしており、あの超人――グレイトクーガーが現れるときに見えた光と一緒だ。

 

「……見つけた。私を助けて、守ってくれるヒーロー。私だけは、雄吾先輩の味方で居てあげます」

 

 意識のない久我の額に口付けを落としながら、微笑む白雪は妖しく微笑んでいた。

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