Rocket Queen   作:酢味噌ニアン博物館

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第3話 青

手にしたドリンクを片手に再び暗転したステージに目を向けていると、SEが流れ始め

しばらくしてステージ脇のドアが開くのが見えた。

すると虹夏が「リョウが来るよ〜!」と

タダでさえ爆音で流れるSEで何もあのバンドの音以外聞こえないのに頑張って聞こえるように教えてくれてなんとも健気にやってくれるので

なんか申し訳なかった。

 

それからリョウがステージに出てきたのは

ホント数十秒のウチだった。

 

そう、ざ・はむきたすの登場だ

 

はむきたすといえば

この若手の高校生バンドならある程度知られているような連中なのだが

その中でもリョウは他メンバーを埋もれさせるような妖麗さと儚げな雰囲気とカリスマ性に満ちていた。

 

4カウントで彼女らの曲が始まり

思わず聞き入ってしまった。

歌詞は高校生らしく青さを感じるが

そこに彼女らのうちに秘めたパワーを感じて

いつの間にかそんな青さの中に居るのに

淡々とクールに弾きこなすリョウの姿に虜になっていた。

 

(さっきまで一緒に話してたやつとは思えない…!)と心のなかで呟いていた。

 

そうこうして聞き入っているうちに最後の曲になってしまった。

そして演奏が終わり思わずデカい拍手と声援を送ってしまった。

 

するとリョウはとても驚いた顔したが

拍手と声の主が俺だと分かった瞬間ニヤリと

「してやったぜ」と言わんばかりの表情を見せた。

 

ステージでクールに弾いてるときはかっこいいんだけどなぁと思いながら笑ってしまった。

 

リョウの出番が終わったので

さっきの雑談の続きでもしようかと虹夏と

再びバーカウンターの方へ行った。

 

するとリョウと他の はむきたすのメンバーが

バーカウンターのテーブルを囲んでいたので

軽く皆に挨拶を済ませて、あっちの会話が終わるまで虹夏と二人で好きな音楽ジャンルの話しながらのリョウが来るのを待った。

 

しばらくして向こうにいる彼女らの方からあるワードが聞こえてきた

「今の路線よりもっと曲と歌詞を売れ線に寄せていこうと思うんだよね」と。

 

俺はその瞬間、

(それは多分彼女らにとってのアイデンティティの喪失になるし、

俺やリョウみたいなタイプにとってそれは

活動してても楽しいと感じられないのでは…?)と思ってリョウの方を見てみたら、頬杖をついて

浮かれない顔をしてた。

 

しばらくして話し合いが終わったらしく

リョウがこっちにきたので

「おつかれさん」と労いの言葉をかけた。

 

するとリョウは「ハァ…」と深くため息をついた。ついた理由はなんとなくさっき一緒に色々音楽に対する理念を語ったので分かっていた。

 

が、しかし次にリョウが口を開いた言葉は

予想を裏切るものだった。

 

「ごめん昼にカレー食べてお金ないからあとで近くのラーメン屋でチャーシュー麺奢って」

 

(あのさぁ…予想外過ぎるし心配して損したよ…

てかしれっと奢ってとか言われてるし…)と考えたけど

 

「リョウ!会って初日の人にラーメン奢って貰おうとしないの!」と虹夏がリョウに怒ったが

 

きっとため息をついた本音は違うし俺が考えたことの通りで

きっとブルーな気持ちなんだろうなと思ったから

 

虹夏を止めて俺は無言で首を横に振って

「いいんだよ」とジェスチャーした。

 

割と金自体は余裕があったので慰めも兼ねてリョウと虹夏にはラーメンを後で奢ってあげることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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