あとホラー描写注意です
目が覚めたら見知らぬ病室のベッドの上だった。
病院のあの独特な匂いを認識した瞬間俺の意識はハッキリと覚醒する。
「……ここは……トリニティか」
利き腕はギプスで固定されていて動かせない。
枕元にはメモが置かれており、俺はそれを確認するために手を伸ばした。
ミネ団長の書き置きのようで、内容は怪我が完治するまでの滞在許可を得ることができたとのことだ。
また基本自由に見回る事は可能だが、絶対にベッドの上で安静にしろと書かれている。
「ずっとベッドの上だと暇死しそうだから断る」
俺はベッドから降りると救護室から出た。
ギプスの所為で少し歩き難いが、この時間(真夜中)は流石に生徒が居ないので問題ないだろう。
月光が差し込む西洋風の廊下は少々不気味だが、むしろその雰囲気が普段の銃撃戦よりも非現実的で良かった。
「……っと、流石に見回りは居るみたいだな」
物音を立てないように部活会館から抜け出し、見回りの生徒の死角を歩く。
ミレニアムとは違って建物が密集していないため開放感がすごい。
会館から出て右方向の道を歩いていると丁字路が現れた。
「まっすぐか右折か……右かな」
丁字路を右に曲がると一直線の道が続く。
そして大きな噴水とその奥には何かの建造物。
噴水まで歩くと俺はそのふちに腰かけた。
「ここがトリニティ・スクウェアか〜。
テーマパークに来たみたいだぜテンション上がるな〜」
とは言ってもまだ夜なのだが。
優しく吹く風が少々肌寒い。
けれど未知である此処を知ることが出来る事に興奮が収まらない。
「……っと、流石にそろそろベッドに戻らなきゃな」
1時間ほど涼んでから俺は来た道を戻った。
ぐっどもーにんぐ。
起きて真っ先に視界に入ったのがミネ団長で心臓が止まりかけたぞい。
「やっと起きましたか。ですがそれも致し方ありませんね。
なにせあなたは彼らに酷い仕打ちをされていましたから」
一瞬なんの話かと思ったが、すぐに彼女に吹き込んだ有る事無い事の無い事を思い出す。
ごめんよカイザーコーポレーション。
「あー、うん、とりあえず此処まで運んでくれて感謝する。
ところで……なんで俺はこんなに包帯が巻かれてるんだ? あとギプス」
返ってきたのは包帯は傷口の保護しているガーゼを固定しているためだと言う事。
そして右腕のギプスは……疲労による腕の骨折で骨がくっつくまで固定。
「ですので完治するまでは安静にお願いしますよ?」
ミネ団長の後ろにいたピンク髪の……女子が四角い盆で何かを運びながら声をかけてくる。
盆の上には軽食が並べられていて、それが俺の朝食らしい。
「はじめまして、私は1年の鷲見セリナです。こちらは朝食です」
「あ、わざわざどうも。俺は
初めての髪色と声質、それとヘイローの形を記憶する。
ベッドの横にある棚の上に置かれた、盆のサンドイッチを掴もうと腕を伸ばすとミネ団長に軽く叩かれた。
「怪我人なのですから安静にして下さい。ほら、私が口まで運びますから」
正直恥ずかしいし、その方法での食事は面倒だから嫌だったが、拒否権はないと思われるので大人しく彼女に従う。
口の前に運ばれたサンドイッチに向かって顔を伸ばす。
一口噛んで咀嚼するが……チーズが強い。
口直しにコーヒーが欲しくなる。
それとそろそろ何か話してくれませんかねぇ。
沈黙状態でこんな餌付けみたいなことをされていると辛いんだが?
さっさとこの時間を終わらせるべく用意された朝食を済ませて救護騎士団の滞在中に問題は起こさないようにと釘を刺される。
「言われなくとも俺から喧嘩ふっかけはしねぇって」
俺がそう返すと、彼女達は授業の為か部室から出て行った。
さて日時は滞在3日目の昼過ぎ、俺は図書室らしき建物で本を読みながら時間を潰している。
此処ではトリニティの雰囲気らしいとしか形容できないのだが、そう言う本が多い気がする。
ある程度の学問系の本は2日目には目を通し終えて今は小説系統を漁っている。
因みに現在手に取っているのは教師と生徒の恋愛ものなのだが、特定の人物しか借りていないのか、貸出カードの記録には同じ生徒の名前しか載っていない。
「えーっと……うーん…………」
読み終えたその恋愛小説を棚に戻そうと元の棚を探していると、何やら悩んでいるのか小さな唸り声を耳が拾った。
思わず辺りをキョロキョロ見渡すと、先程俺が本を読んでいたテーブル席の隣に座っている生徒のようだ。
とりあえず本を棚に戻し、適当に次の本を選んで元の席に戻る。
その時にチラリと隣の少女に目を向けると課題を解いているようだった。
本を読みながらたまに視線を移して観察するが、特定の箇所で手が止まっているようだ。
「ああ、●●●●についてのことか」
以前……というより最近此処で読んだ本を思い出す。
その呟きが聞こえてしまったのか、隣の生徒が勢いよくこちらを向いた。
「わ、分かるんですか?」
「あー、まぁソレ関係の本を最近読んだからな」
そう言いながら席を立つ。
我ながらお節介とは思うが、該当する本を手に取って少女に渡した。
「多分その本よりこっちの本の方が目的のが載ってると思うぞ」
「わ、わざわざありがとうございます! ええっと……」
「西ヒカルだ。別に覚えなくていいぞ、緑髪娘」
その次の日から俺は図書室でトリニティの生徒、俺称緑髪娘の勉強を何故か見るようになった。
それに、たまにだが朝早くからまだベッドから出ていない俺の様子を見にきたりしてくるし、昼食の誘いもある。
「……食いカス付いてんぞ」
「えっ、ほ、本当ですか? ど、何処ですか?」
少し抜けている彼女の口を拭ってやる。
今日も緑髪娘の用意してくれた弁当を食べているのだが、正義実現委員会とのOHANASHIがあるので早めに解散した。
分かれる前に終わった後必ず勉強を見る約束をして俺は正義実現委員会の部室へ向かった。
向かう途中に大量の通知のあったモモトークを消費しつつ防御アイテムを買う。
一応金は使えたがあんまり消費したくなかったぜ……。
「……えっとそこの人、中入って大丈夫?」
「は、はい! えっとミレニアムの西ヒカルさんですね。問題ありません!」
念の為学生証を見せながら許可を得て入室する。
部屋には黒くて大きな女がいた。
記憶にある(羽の)デカさからして羽川ハスミだな。
「お待ちしておりました。どうぞこちらに」
「どーも。あ、これお土産です」
そこからカイザーコーポレーションとのドンパチの件の聴取が始まる。
特に隠す必要のない話は伏せておきながら、ハスミさんがミネ団長から聞いた有る事無い事の無い事に関する話の訂正と謝罪をしておいた。
その時に彼女が、多分だけど眉間あたりを摘んでいたので、ミネ団長の暴走気質に悩んでるのだろうと推測する。
「言い方は悪いですけど、よくあのミネ団長を利用できましたね……」
「それはカイザーコーポレーションの横槍のおかげだな。
あいつらが来なかったらぶっ倒されてたし」
そんな話をしてたら、黒い制服の人物が2人入ってきた。
片方は猫背でヘイローがなんか溶けてるし、もう片方はなんかスカートがめっちゃ短い。
「……そいつか、ミレニアムの」
「ツルギ先輩の顔を見て怯えないなんて珍しいですね、ハスミ先輩」
え、ツルギさんって人今どんな顔してんの。
黒いのが3人に増え、その色の圧を強く感じるようになった。
そこにハスミさんが先生の話題を持ち出した。
「さて、そろそろ本題に入りましょうか。ヒカルさん、アナタはあの日何をしていたんです?」
表情が認識できないことがこれほど嬉しいと思った瞬間はこれ以外にないだろう。
声が笑ってないんだもんこの人。
とりあえずお土産のパウンドケーキを勧めて話を濁しつつ、先生と映画を見に行っていたの先生と一緒の部分だけを伏せて答えておく。
怪しまれない程度に先生の話題を上げていくと、そのうち多分女子会の様な雰囲気になり始めた。
そして先生トークに熱がではじめたところを見計らって、時間を確認したふりをして脱出する。
なんかモモトークの通知音が聞こえたけど、緑髪娘に埋め合わせで髪の毛を遊ばせる約束があるから無視じゃ無視。
「〜♪」
「…………」
楽しそうに髪の毛を結われながら俺は先ほど届いたモモトークの内容を確認していた。
それは先生からのメッセージで、今何処にいるか聞かれていた。
ほとんど動ける状態だって言ってるのに心配性だなこの人、と思う。
「出来ました! やっぱりヒカルさんに似合うって思ってたんですよ!」
「ほーん……良いじゃん」
手鏡を渡されて自分の髪型を確認すると、ボサボサだったのが綺麗にまとめられている。
それに編み込みが細かくてなんか可愛い系の美人さん?にありそうな髪型になっていた。
まぁ自分の顔も認識できないから髪型の感想しか言えないんだけど。
「この髪型って名前はあるのか?」
「はい! これはハーフアップって言うんです。
ヒカルさんの髪の毛って長いけど水晶みたいに綺麗ですし、優しいので似合うかなって」
ハッハッハッ、愛いやつめ。
褒められるのは嫌いではないのでお礼として髪の毛がぐしゃぐしゃになるくらい撫でてやろう。
そんなことをやってたら、大人の人がなんかこちらに向かって走ってきている。
「あれは……シャーレの先生……?」
「……へ?」
その人影が目の前まで駆け寄ってくると、息を切らしながら「やっと見つけた」と言う。
そして次の瞬間、俺は先生に抱きかかえられていた。
「なっ、ちょ、はぁっ!?」
「今すぐ救護騎士団の所に戻るよ」
緑髪娘はなんか興奮気味にこっちを見ているけど助けてくれないかな?
って、疲れてるはずなのになんでそのまま俺を横抱きのまま運ぼうとするん?
「こ、この抱え方はま、まずいって、先生!!
ちょ、お、降ろせっ――」
「勝手にいなくなったりする罰だからダメ」
ならせめて走ってくれと頼むが、疲れてるから無理と返される。
ならば降ろせと行っても、楽しそうな口調で躱された。
この人絶対にこの状況を楽しんでいやがる。
てか下手したらお前も死ぬぞと言いたい。
暴れたせいか顔が熱くなってきた。
そして俺がおとなしくなったタイミングで、救護騎士団の部室に到着した。
ベッドに座らされ、靴とソックスを脱がされる。
この屈辱、いかにして晴らしてくれよう……!!
「おのれカイザーコーポレーション赦すまじ……!!」
「なんでその企業名が急に出るのかな?」
先生は知らないだろうけどアイツらに因縁あるからね、俺は。
まぁ話したらもっと面倒ごとになりそうだから言わないんですけど。
あでも、何度も姿をくらましては再会して怒られるのも嫌だしどうしよう。
「……時間あったら話す」
「今聞いちゃダメな感じかな?」
「…………うん」
らしくはないけどこの人なら、と思った。
まだ付き合いは短いけど多分この人なら大丈夫だと。
「あ、あの、ヒカルさん。これ……」
「おお、そういえば置いたままだったな。持ってきてくれてあんがとさん。
褒美に撫でてやろう。うりうり〜」
緑髪娘の髪をグシャグシャと撫でる。
「ふふっ、や、やめてください」と笑いながら軽く抵抗するが、甘んじて受け入れている様だ。
その様子を先生が見ていたのだがなんか生暖かい視線を感じる。
「……なんだよ。俺だってこう言うことするぞ」
「いいや、ただなんか微笑ましいなって。
それじゃ私はもう行くからくれぐれも治るまではおとなしくするんだよ?」
そう言って先生は出て行った。
そして緑髪娘もそろそろ教室に戻るらしく、今度から自分が足を運んでくると言ってそのまま俺の返事を待たずに行ってしまった。
「……暇だし本でも読むか」
「……………………」
「さて、まずはようこそトリニティ総合学園へ、西ヒカルさん。
私は桐藤ナギサです、以後お見知り置きを」
目の前に座っている人物がそう言って紅茶を一口、口に含む。
因みに俺から見て左側にはピンク髪の人、右側にはシマエナガと一緒にいるケモミミが座っている。
特にピンク髪の人からは物凄い圧を感じる。
「………………………………」
めちゃくちゃ胃が痛い。
今日は暖かい気温のはずなのに何故だか寒気を感じる。
「現在、怪我の完治するまでの間の滞在を許可しているのですがお加減はどうですか?」
「……あー、ぶっちゃけ包帯は過剰だと思ってるんですよね。一応まだ腕の骨は完全にくっついてはないんすけど」
なんでここの空気は重苦しいの?
答えるだけですごく疲れるんだけど。
「因みにどうしてそんなお怪我を?」
「……おたくんとこのミネさんと少々ドンパチしてその際に蓄積された疲労でポックリと」
「救護騎士団の団長である彼女と渡り合えたなんて信じられないが……実際に目撃者もいる様だね。
あ、私は百合園セイア、よろしく」
不思議と時間の進みが遅い気がする。
マジでこの時間早く終わってくれと思う。
完全にティーパーティの存在を忘れていたのが悪いんだけど、先生に抱えられた時の構図が構図のせいでお腹が痛い。
そのせいか、違いも分からない紅茶の味が余計に分からない。
「ねぇねぇ、そんな話よりももっと重要なのあるよね?」
ピンク髪が口を開く。
声のトーン的に笑顔なのだろうが、雰囲気が笑っていない。
「そうだね。詳しく話してもらおうか、西ヒカル」
セイアも彼女に賛同するように続ける。
彼女もピンク髪の人と同様雰囲気が笑っている感じがしなかった。
「そうですね。話してくださりますよね?」
「……はい」
スレ民の中にいた経験者のアドバイス通り、なるべく先生にヘイトが向くように自己弁護する。
そして抱えられ方も自分の意思ではなくて、たまたまであることも加えておいて自分に非がない様にあの出来事を話した。
「……そういえば話が逸れるんだが、最近やたらとおたくの生徒とすれ違う時にゲヘナに関するヘイトが溜まってる声を聞くんだが何かあったのか?」
なんとなくだが、現在の時系列が知りたくてさりげなく繋がりそうな話題を持ち出してみる。
すると、あっさりとだがエデン条約の話をしてくれた。
「――とまぁ、これが大まかな内容ですね。もちろん他言は厳禁ですよ?」
「分かってるって、俺は匿ってもらってる恩があるからな」
それに今現在進行形で命を握られてるしね。
そんなこんなでやっと解放される。
特にピンク髪……聖園ミカからはあの後もしつこく何も無かったのか確認されたしマジで疲れた。
シャワーを浴び終え、買っておいたココアシガレットを一本口にくわえながらベッドで寛ぐ。
久しぶりに煙草が吸いたい。
そういえばあの頃もこんな感じで荒んでいた頃はよく吸ったなと、ふと昔の事を思い出す。
こんな所じゃ買えないから代わりにココアシガレット買ったけど、あの経験をしてからは吸うのは控えていた事も思い出した。
そしてココアシガレットを食べ終えた俺はそのまま横になり、寝た。
草木も眠る深夜1時。
トリニティ総合学園の敷地内に不審な影が動く。
「本当に此処に居るんだよな?」
「ああ、パトロンからの情報が正しければな」
「なんでこんな所にいるかは知らないけどさっさと済ませよう」
月明かりは雲で遮られ、何者かが侵入したことを隠す。
その影は部活会館へと迫り、西ヒカルの眠る部屋の見える窓まで侵入を成功させた。
「やっぱ鼻が曲がるくれぇ羽毛クッセェところだなぁ」
「目標物は……寝てるみたいだな」
「うっし、ここは私に任せな」
そう言って1人が音も無く手慣れた様子で窓ガラスを破り、内鍵を開ける。
そして何事も無く寝ているヒカルの元へ辿り着くと、影は彼女を担いだ。
「確保したらさっさとオサラバだな」
「まぁ焦るな。帰りも慎重に行くぞ」
慢心することなく影はトリニティ総合学園からの脱出を図る。
そして巡回する生徒に気を付けて素早く脱出を済ませた。
しかしここで、彼女らに異変が現れた。
「……なぁ、なんか寒くねぇか?」
「夜だから寒いには当たり前だろ」
「いやそうなんだけどさ……」
ピキリッ、と何かが凍り付く音が響く。
その音に驚いた影は辺りを見回すと、何故かアスファルトが凍り始めていた。
「な、何が起きて――」
――ぼとり。
何かが落ちる音がセリフを遮る。
そういえば回収した西ヒカルを担いでいた奴の口数が減っていた事を影の1人が気付き、その人物の方を向いた。
そこには担いだ格好で凍る仲間と、路上に落ちた西ヒカルの姿があった。
そして寝ていたはずの彼女が不自然な体の動きをしながら起き上がる。
「――ヒッ」
「おいバカ撃つな!」
短い悲鳴をあげ仲間の制止も聞かずに1人が発砲する。
しかしその銃弾は彼女に当たらず、逸れるどころか風にあおられた落ち葉の様に舞い上がった。
「な、なんなんだよこいつは……!!」
閉じられていた瞼がいつの間にか開いている。
そこから黄色……ではなく鮮紅色に妖しく燃えるように光る双眸に2人はすっかり腰を抜かしてしまっていた。
ふらりとヒカルが2人にゆっくりと歩み寄る。
今夜は曇り。
お陰で灯りはあるが夜の闇に彼女の肌は隠れ、空間に浮かぶ鮮紅色の点が不気味に見える。
「――いあ いあ はすたぁ うぐう……」
耳障りな言語が響き、気を失いたくても冷気がそれを阻む。
ただ、幸いなことに2人はその言語を理解できなかった。
けれど、理解できなくとも嫌悪感は鳥肌として現れ、無意識に歯がカチカチと音を鳴らす。
気付けば仲間がもう一人、動いていない。
そして、自分の四肢が動かないことにも気付いた。
目の前の何かが自分の顔面に掌を向ける。
「や、やめ――」
その指が自分に触れた瞬間、プツリ、と意識が途切れた。
深夜3時。
ふと、目を覚ましたシャーレの先生はオフィスの屋上で夜風を浴びていた。
変な時間に起きてしまった所為なのか、二度寝をする気分も無かったためである。
深夜とはいえまだ所々には灯りがあり、それがヒトの社会の中に自分がきちんと所属していることを実感させてくれていた。
けれど今夜は何故だか、肌に触れる夜風が嫌に冷たい。
「まぁ、こんな時間だからかもしれないな」
そんなことを呟いて気を紛らす。
けれど、感じていた嫌な気を確信に変えるように、鈍い落下音が背後から響いた。
思わず振り向くと、彼の後ろに落ちたのは人だった。
慌てて駆け寄り触れると、その体は嫌に冷たい。
ただ、その人は気絶しているだけで、まだ生きているようだ。
「いったい誰が……ってヒカル?」
気が付くとトリニティで療養していた筈の西ヒカルが立っている。
ゆらゆらと彼女はその場に立ち尽くしている。
距離はおおよそ3メートル。
怪我はどうしたという疑問よりもどうしてここに居るのかが勝る。
よくよく観察してみると、普段の彼女の正5角形のヘイローの形が崩れていた。
まるで触手の様に蠢く星型のヘイローは彼が嫌悪感を催すのに十分である。
しかし彼は、その感情を抑えて彼女に歩み寄った。
すると、あと数歩の所でプツリと糸が切れたように彼女の体勢が崩れる。
慌てて彼女が頭を打たないよう、先生は彼女を支えるように抱きかかえた。
そして気を失っている二人の生徒をオフィスの中に運び入れ、その異様な体験による疲れのおかげか彼は再び床に就いた。
はい、てなわけでトリニティ総合学園滞在編は以上です。
いや~長かったなぁ!!!!()
ブクマ・感想・評価・誤字脱字報告ありがとうございます!!
特に誤字脱字報告してくださる方々には足を向けて眠れねぇですへへへ……(ちゃんと推敲しろ)