いずれお前もこうなるTS転生者   作:まさみゃ〜(柾雅)

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二話目です。
掲示板形式から読むのをオヌヌメします。


逃亡生活:補習授業部編

 さて、目が覚めたら見知らぬ場所というのは何度目なんだろうか。

 昨日は少し用事があって寝るのが遅くなってしまったからか、普段起きる時間よりもだいぶ遅くに起きてしまった。

 

「あら? 先生〜。ヒカルさん起きたみたいですよ〜」

 

 ハナコが先生を呼ぶ。

 いまだに状況が整理できない。

 ただ、荷ほどきの途中の様だったので、彼女たちの目的地に到着したばかりの様だ。

 

「ここは……つーかなんで俺まで連れてこられてるんだ……?」

 

 そこに先生がやってくる。

 出発前に何度か体を揺すって起こそうとしていたらしいが、全く起きる気配がなかったので担いで(道中は車)ここへ向かったらしい。

 

「マジ……?」

「まるで死んでるみたいに寝てたよ。

 というか寝返りをうたないし、寝息が小さ過ぎて最初は本当に死んでるのかと思っちゃった」

 

 何も言えない。

 確かに最近は寝るとセットしていたアラームが聞こえないことがよくある。

 それなのに睡眠時間はぴったり6時間……いや今は8時間か、になっているのだ。

 原因は分からない。

 日に日に伸びる様なことはないが以後気をつけるべきだろう。

 

「ま、寝間着に着替えないまま寝ちまったのは幸いだな」

 

 思考を切り替えて先生の荷ほどきを手伝う。

 掲示板を覗くとちょうどスレも残り少なかったし次のスレッドを立てて誘導する。

 先生との会話をしながら掲示板でレスを返していたら荷ほどきはあっという間に終わった。

 

「案外物を多く持ってきたんだな」

「まぁヒカルがいるからね」

 

 いわゆる女性用の着替えだろうか。

 でもどうして先生が用意できたのだろうかと思ったが、アロナの存在を忘れてた。

 多分彼女が手伝ったのだろう。

 

「……あと一応聞くけどなんで俺は先生と同室なんだ?」

「前にも言った通りヒカルはシャーレに身柄を預けられてる状態だからね。

 カンナから連れて行く条件に私の監視下限定があったから」

 

 カンナさんからそういう条件があったのならしょうがないか……。

 念の為通知の溜まったモモトークを起動する。

 通知の中にはカンナさんからのものもあり、メッセージを確認すると、謝罪と先生に襲われそうになったとか何かあったらすぐに呼んで構わない、とのこと。

 それでこの前の事を思い出してしまった。

 あれは吊り橋効果みたいなものだと結論付けたはず。

 だから俺が先生に惚れているなんてありえない。

 

「そうかい。カンナさんがそう言うなら問題無いか」

「彼女は私とヒナと違って、君が負傷した姿を見ているからね。結構心配してたみたいだよ」

 

 いや一番の心配の要因はアンタだよ。

 まぁ、なんか先生が問題を起こして、そこから先生を捕えて一時的に一緒に居られる、とか考えたりしているのだろう。

 年下の女の子を何人も惚れさせて、激重感情を持たせているのに気付かないなんて悪い大人だ。

 

 

 

 

 

 そしていざ勉強合宿が開始……の前に大掃除が始まる。

 トリニティで使用されていなかった場所を利用しているらしく、確かに埃がたまっている。

 荷ほどきの際に軽く使用する部屋は掃除しておいたが、他の場所も使うし、大掃除には賛成だ。

 何故かハナコが他3人が体操着を着ている中で水着を着て登場したのにはビビった。

 俺は着替えとかはなかったが、元々着用しているボロボロな白衣があるのでいいだろう。

 コハルにはどうして新しい白衣を買ったりしないのかと聞かれたが、愛着があるんだから仕方ないだろ。

 それに裾とかボロボロ(で全体的に色がくすんでる)だけれど、それ以外は裂けたりしていないし。

 

「その愛着がどこからで、どうしてあるのかは分からんけどな」

「ふーん、でも記憶を失っても愛着があるなんてなんか素敵ね」

 

 何故コハルが記憶のことを知っているのかと言うと、彼女は正実に所属しているらしいくて、前に脱走してるのバレた事があったんだよね。

 その時にちょーっと彼女が書いていた小説についてアドバイスとかお話ししたら仲良くなったのじゃ。

 

 こうして合宿所とその周辺の掃除がおおかた終わる。

 変な埃っぽさもなくなり、とても息がしやすい。

 

「もう1箇所、残っていますよ?」

 

 殆どの人が掃除終了のモードに入りかけた時、ハナコがそう言い放った。

 皆は何処か見当がつかない様であったため、彼女は「屋上のプールですよ」と答える。

 そしてプールのある屋上へ移動した。

 

 

 枯れ落ち葉、風雨に運ばれた泥で全体的に黒くくすんだプールの姿がそこにあった。

 正直見てて背筋に嫌な汗をかいてる。

 水で洗い流していない状態でかつ裸足で歩きたくは無い。

 補習授業部の面々はハナコの誘導もあって掃除をする気が満々の様子。

 俺はこっそり先生の方へ近付き、プール掃除を回避しようとしたが、先生もプール掃除に乗り気で逃げ場は無かった。

 

「……あー、俺は今水着持ってねぇからお前らさっさと着替えてこい」

 

 俺を連れて彼女たちは更衣室へ向かおうとしていたので、水着を持っていない事を伝える。

 元々男ならなくてもついて行くだろと思うだろうが、そもそもアレする以外で特に女の裸は見たいとは思わん。

 だってそもそも俺がエロースを感じるのは着衣とかだし()。

 と言うか女の裸はアルちゃん社長のとこで、何度も事故で彼女のその姿と遭遇してしまい慣れた。

 

「急に連れて来ちゃってごめんね」

「……それって何に関する謝罪っすか先生」

 

 何故謝る。

 どうやら事前に伝えておけば水着とか準備できただろうとのこと。

 そもそも水着は(ラボの方の)ホームに置いてあるから事前に伝えられていても持ってこなかったと答えておく。

 

 しばらく先生と雑談をしていると、水着に着替えた補習授業部たちが戻ってくる。

 ハナコ以外は学校指定の水着で、ハナコは何故か小遣いで買った水着の上に制服を着ていた。

 

「……お前の趣味なら何も言わんわ」

 

 ちなみに学校指定の水着は洗ってしまった様だ。

 短時間だけ着て直ぐに体操服に着替えたとはいえ、一度着てしまった物を洗いたくなるのはわかる。

 

「ふふっ、見てください、虹ですよ虹!」

「つ、冷たいよハナコちゃん〜!」

 

 楽しそうにプール掃除をする彼女たち。

 これが青春、これがノスタルジー……。

 俺が前世では得られなかった、創作でしか見られなかった学校生活の1ページ。

 色褪せた、ありもしない青春の記憶が蘇る。

 そして……ハナコの「キャッ」という短い悲鳴が聞こえた。

 その声に反応する前に、急に俺の頭から冷たい、流動性のある何かが襲いかかる。

 

「…………つめたい」

 

 一気に思考が覚醒する。

 郷愁から引き戻された原因は、どうやらホースを持っていたハナコが足を滑らせてしまい、担い手を失ったホースが暴れて俺にその水がかかった様だ。

 

「ヒカル大丈夫!?」

 

 先生が慌ててタオルをかけてくれる。

 俺は先生に軽く「ありがとう」と言ってからハナコの元へ歩み寄った。

 俺が歩み寄ると、彼女の仕草からして申し訳なさそうに焦っている様子。

 

「怪我はねぇか?」

「え?」

 

 責められると思ったのだろう。

 気の抜けた声が帰ってくる。

 

「別に怒っちゃいねぇよ。ボーッとして避けられなかった俺も悪いし。

 ほら、立てるか?」

「……。ふふっ、それでもごめんなさい」

 

 俺が手を貸して彼女は立ちがる。

 そして彼女は俺の耳元に顔を寄せるてすかさず言った。

 

「……それはそれとして、濡れて透けるってイイ、ですね」

 

 お前ぇぇええ!!!!

 分からなくもないが?

 

 

― ◆― ―◆― ―◆ ―

 

 

 さて着替えが無かったからヒフミが用意してくれたトリニティの制服を着させてもらったんだが……めっちゃ着心地がいい。

 でもな、1つだけ言っていいか?

 

「なんで丈の長いスカートなのに左脚だけ生脚出せるようになってるん????」

 

 なんかこう、よくあるスケバンみたいな感じになってしまうんだが?

 あと、白衣が無くてスッゴイ落ち着かない。

 因みにプール掃除は終わり、時刻はもう夜。

 プールの水がはり終えた頃だ。

 

「本当にごめんなさい!」

「謝罪はもういいって。アレは完全に事故だからしょうがねぇ。

 それに俺は本来部外者だから謝るべきは先生だって」

「私!?」

 

 俺からの流れ弾を喰らう先生。

 でも俺を連れてこなかったらこうはならなかったんだから諸悪の根源はこの人だろう。

 

「……けれど流石に疲れてきたな」

 

 少しウトウトし始めるコハルを見る。

 彼女もどうやら眠い様だ。

 みんなで合宿の宿泊スペースに移る。

 先生と俺は彼女たちの向かい側の部屋に入る。

 そして俺はそのままベッドに向かって倒れる様に眠った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇ ―◇ ―◇― ◇― ◇

 

 

 西ヒカルが倒れる様に眠った。

 その様子を見て彼は思わず呟く。

 

「……やっぱり最近、ヒカルの様子がおかしい」

 

 寝ると自力で起きるまでは何をしても起きない。

 それが発覚したのは先々週だった。

 彼女が珍しく事務室のソファーで仮眠を取っていたところ、うっかり近くで運んでいた荷物を崩してしまい、大きな物音を立ててしまったのだ。

 しかし普通なら起きるはずの騒音だったのにもかかわらず、彼女からは全く起きる気配がなかった。

 

「……ヒカル?」

「…………」

 

 彼は思わず寝ている彼女に声を掛けてしまう。

 帰って来るのは耳を澄まさなければ分からないほど静かな寝息だけで、やはり起きる気配がない。

 うつ伏せ状態で寝る彼女の姿勢を直して、毛布をかける。

 側から見れば死んでいるとしか思えないほど静かだ。

 呼吸が浅いたいめか、胸あたりの毛布の沈下する動きが分かりにくい。

 

「最近は寝ている時間が伸びてきているみたいだ。

 本人もそれに気付いているだろうけど一応聞いておかないと……」

 

 すると、扉をノックする音が響いた。

 彼がノックをした主に入室の許可をすると、入室してきたのは阿慈谷ヒフミだった。

 

 

― ◆― ―◆― ―◆ ―

 

 

 ぐっどもーにんぐ諸君。

 なんかスレはまた俺がテーマのイラストが沢山投下されてて遡る気力が出ないぜ。

 そして睡眠時間はぴったり9時間。

 その間にスレには初見がいた様なので、ついでにトリニティの制服の感想を聞くために自撮り(鏡に映った姿の)画像を載せた。

 案の定スケバンを連想したスレ民が多くて俺の感性は間違っていなかった様だ。

 

「おはよう、ヒカル」

「おはよ、せんせ。寝癖出来てるぞー」

 

 少しの身支度をしていたら先生が起きる。

 暫くして向かいの部屋からも補習授業部たちが起きた音が聞こえてきた。

 先生を置いて、使用されていない厨房に向かう。

 持ってきた食材を使って簡単な朝食を人数分作り、皆が来るのを俺は自分の分を食べながら待つ。

 今日やる内容はおそらく模擬試験。

 採点するまでの間は特にやることも無いだろうし、昨日濡らしてしまった白衣の様子でも見に行こうか。

 

 

 結果、まだ乾いてなかった。

 というか思いっきり白衣が目が痛くなるほど漂白されてた。

 そして模擬試験の結果もヤバかった。

 ハナコの4点って何なんだ……。

 

 ヒフミが主導でグループ分けを行い、本格的な勉強会が始まる。

 始まるのだが……正直ハナコは頭いいし俺は二年生組の手伝いはしなくても良い気がするんだが?

 そう思っていた。

 だからスレに顔を出して相談してみた結果、ヒフミの強化計画が出たのでそれに乗ることにする。

 その為、先生とヒフミに頼んでテストの範囲や、過去の試験の問題用紙を貰い、出題傾向や内容を分析することにした。

 多分明日までにはいい勉強メニューが組めるだろう。

 

 

 

 

【生徒プロフィール再現】

【挿絵表示】

 




ブクマ・感想・評価・誤字脱字報告いつもありがとうございます!
今回は14話目のifルート書いたので良ければどうぞ

【18未満はなってから読んでネ】
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=298050&uid=227740

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