いずれお前もこうなるTS転生者   作:まさみゃ〜(柾雅)

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本日2話目


幼女の定義はだいたい満1歳から小学校3年生(満8歳~9歳くらい)

 先生のおかげか、いつの間にかエルザからの(鬼メッセージの)影に怯える事がなくなった日々。

 今日のシャーレの当番は、言い方が悪いがミレニアムのモブ生徒。

 その子と鉢合わせないように今日もシャーレで過ごす。

 まぁ一度もバレた事ないんだけど。

 周囲の俺に対する認識としては、矯正局やミレニアムでの収容を行なっても脱獄してしまうため、最高セキュリティを持つシャーレの独房に入れられている、だそうだ。

 まぁ、平気でシャーレの中歩き回ってるけど。

 

「それに生活拠点はラボだし」

 

 あと、俺の知り合いは普通にシャーレで顔を合わせてもスルーするしね。

 それに先生は身の回りの整理整頓をしっかりしねぇからな。

 ユウカもそうだけど俺たちでしっかり先生の周辺を綺麗にしておかないと。

 本当に困った大人である。

 だから今日は悪戯を仕掛けることにした。

 以前、先生が幼児化してしまった山海経のあの薬。

 それを改良したものをコーヒーに混ぜて運ぶ。

 今日は暑いしアイスでいいだろう。

 怪しまれないように、いつものように2人分のコーヒーをトレイに乗せて運べば、先生はコーヒーの香りに気付き、作業の手を一旦止める。

 

「お疲れさん、先生」

「ああ、ヒカル。今日も来たんだ」

 

 当番の生徒が使用する机は片付いている為、もう帰ったのだろう。

 ホワイトボードをみれば予定ではこの後ユウカが来るらしい。

 なら彼女が来るまでは幼なくなった先生をまた楽しめるだろう。

 

「流石にそろそろ来る時は連絡して欲しいんだけど」

「いつもモモトークで送ってるぞ。いつも未読だけど」

「……ごめん、それは私が悪かった」

 

 忙しいのはわかるけどせめて通知画面は見てほしいよね。

 電話だと迷惑だと思ったからメッセージで連絡を入れているわけだし。

 そしてさりげなく薬を盛った方のマグカップを先生の前に置く。

 

「それで今日はどうしたの?」

「別に用がなくても来ていいだろ。最近は追手も減ってきたけどシャーレが1番安全だし」

「ヒカルの安らぐ場所になれているなら良かったよ」

 

 そう言いながら先生は俺の頭を撫でてくる。

 こ、コイツ……。

 やや暑さを感じたため、それを誤魔化すために手元に置いてあったコーヒーを飲む。

 インスタントの特有の酸味が口の中に広がった。

 そしてコップから口を離して気付く。

 先生に渡したはずの柄のマグカップを俺は握っていた。

 

「……やっぱり悪戯しに来たんだ」

 

 俺の反応で何か察したのか、先生は呆れたような声色で言う。

 即効性を持たせたために眠気が襲いかかる。

 

「す、すんませんした……」

 

 コップが割れてしまわないように置いてから意識を手放す。

 最後に聞いた声は先生の「おやすみ」という言葉。

 声に反応して火照る身体に、この睡魔は心地の良いものだった。

 

 

 

 

 目が覚めるとソファの上。

 先生の背広を掛け布団がわりに俺は寝ていた。

 起き上がるといつもより視点が低い。

 

「……我ながら完璧な調合だったみたいだな。いや、オリジナルの方がすごいんだけど」

 

 背広に染み付いている先生の残り香を堪能しながらこの後どうしようか考える。

 この状況からして先生には俺の身体の変化はまだ気づかれていない様子。

 なら気付かれる前に撤収するべきだろう。

 名残惜しいが、嗅いでいた先生の背広を畳んでソファの上に置く。

 

「よし、そんじゃそろそろトンズラするか」

 

 そして廊下に出た。

 いつもより視点が違うためとても新鮮な感じがする。

 普段の身長でも届かないが、幼児の身体では余計に広い。

 ロリシュンのように衣服までも縮まなかったため、ブカブカになったスカートを片手で握っているという不恰好な状態。

 それに歩幅もいつもよりも短いため、歩いているだけでは移動距離が稼げない。

 試しに走ってみる。

 普段よりも身軽になったのか、早く走ることができるようだ。

 

「ただやっぱ体力も子供に戻ってるなこれ……」

 

 すぐに回復するとはいえ、疲れが表に出るのが早い。

 やはり身を隠しながら外に出る方がいいだろう。

 そう考えながらコソコソ進んでいると、ふと甘い香りが鼻を掠めた。

 

「んあ?」

 

 それに疑問を抱いた瞬間、謎の浮遊感に襲われる。

 そして本能なのか、俺の意識は2度目の暗闇に落ちた。

 

 

 

 目が覚める。

 見知らぬ天井と、部屋の香り。

 体を起こすと、清潔感のある部屋。

 小さな猫のぬいぐるみが俺が寝かせられたベッドに座らせられており、もう片方にはペンギンのぬいぐるみだろうか?

 

「……よし、スレで助言求めるか」

 

 早速立てるとワラワラとスレ民が湧いてくる。

 おい、今ウェストンくんを馬鹿にしたやつ表出ろ。

 普段ならスレタイだけでも話を聞いてくれる奴が多いが、初見がいたため釣りを疑われる。

 そのため、俺は嫌だったが姿見の前に立って証拠の画像を共有した。

 

「うわきっも」

 

 乗せた瞬間気持ち悪いレスが増える。

 てかそのID、お前幼女転生者じゃねぇか!!

 たまに徘徊したスレで見かけたけど、お前に王族の婚約者がいるの知ってるぞ俺は。

 

 そしてどうすればいいかアドバイスを求めると、机を漁れと言われる。

 いやモラル的にダメだろ。

 だから反論したら過去の行いを挙げられて何も言い返せなくなった。

 今でもあの時のことを思い出すと耳の裏がゾワゾワして顔が熱くなるんだよな。

 仕方ないので近くの机を調べる。

 すると、目に入るのは見覚えのある電卓と写真だった。

 

「……嫌な予想ってなんで外れないんだろうな」

 

 片方の写真は特定の誰かに渡したものと記憶が一致している。

 写真でも顔が認識できなけれど、その構図と服装はアレしかない。

 なんで撮ったかって? 雰囲気を楽しんでるんだよ。

 だって先生って佇まいだけでもカッコいいし。

 それに、手でおおよそのイメージは覚えているため、そのイメージを顔の部分に当て嵌めれば……やべ、想像したら鼻血出そうになった。

 

「そういえばコイツらに経緯説明してなかったな」

 

 なぜこのような状況になったのかという問いがレスされる。

 覚えている通りの順番に説明すると、2回目の気を失う際に俺が捕まった人物がユウカだろうという結論が出た。

 そのままシャーレに預けられなかったのかは疑問だが、後で聞けばわかるだろう。

 あと、何度も言ってるけど街を滅茶苦茶にしたのは確かに西ヒカルだけど俺じゃないぞスレ民。

 

 ──ガチャリ。

 

 玄関と思われる方向から鍵が開くような音がした。

 今から窓をつたって逃げ出すにも、既に話し声と2人分の足音が近くまで来ている。

 

「……大人しくするか」

「あら? もう起きていたのね」

 

 先に入ってきたのはユウカだった。

 その後に続いてノアが入ってくる。

 ユウカはおそらくシャーレから帰ってきたところだが、2人とも手荷物を持っているところからして途中で合流して夕食を買ってきたところなのだろう。

 コンビニのビニールからは即時に栄養が補給できそうな物ばかりが透けて見えている。

 

「お、おはよう、ございます……?」

 

 咄嗟に敬語が出てしまう。

 きっと2人にはバレているだろう。

 だからなのか、異様に胃が痛い。

 

「ふふっ、おはよう。……って言ってももう夕暮れ時だけどね」

「ユウカちゃん、その子がさっき言ってたシャーレで保護した子?」

 

 ……? 二人の様子がおかしいな。

 髪色、肌色、それと装飾の白衣や口と耳のピアスはそのままなのに、俺の正体に気付いていないような素振りをしている。

 いや、ノアの方からは若干観察されているような視線があるけれど。

 

「あ、あの、お……じゃなかった、私はなんで此処に……?」

 

 バレていないかどうか一度一人称を変えてみる。

 これでもしバレていたのならツッコミが入るところだろうが……。

 

「だってシャーレに見知らぬ子供がいたんだもの。保護するのが当然のことでしょう?

 それに戸籍の無い子がシャーレにいたら色々と問題になるからね。一度私たちの部屋で保護させてもらったわ」

 

 戸籍の無い子、と言うことは正体がバレていないようだ。

 でも普通学生証が……あ、見つけられなかったのか。

 だから見覚えのない子供=戸籍の無い子、と言う式が出来上がったんだな。

 

「ユウカちゃん、私はお風呂を沸かしてくるね」

「はーい。……そう言えば今日はノアが当番だったっけ。

 それじゃあお風呂が沸くまで私のお膝の上にでも座りましょうね♪」

 

 そう言いながらユウカは俺を抱えて自分の膝に乗せる。

 後頭部には彼女の胸が当たり、意外とあるんだなと思わず感想を抱いてしまう。

 だが、生きた心地がしない。

 これで正体がバレたら生きて帰れるかなぁ俺……。

 

「それにしてもどうして貴女はあんなところにいたのかしらね……」

「お、覚えてない……です」

 

 誰か助けて。

 今だけはこの白衣が心の支えだ。まぁ、エルザのものなんだけど。

 あとはお風呂が沸くまで何も無いためか、ノアも戻ってくる。

 そして2人はコンビニで買った食料を片手に雑談混じりで勉強を始めた。

 ……なんで俺を抱えたままやるんだ?

 広げられたノートの内容は見ていても普通に分かる内容だし本当に暇なんだけど。あ、そこの数式は代入するやつ違うぞ。

 

 しばらくして湯が沸いた知らせが聞こえてきた。

 2人は一度勉強を中断して、なぜか俺を交えてお風呂に入る準備をする。

 その間もノアの方から何やら視線を感じた。

 身包みを全て剥がされて全員が裸になり浴室に入る。

 普段から仲が良いのか、2人はいつものように身体を洗いながら湯船へ入った。

 その際、俺も自分で洗おうとしたのだが、ユウカが滑ると危なとかで止めてくる。

 自分でできるのだが拒んでも洗おうとしてくるので最終的に俺が折れた。

 

「それじゃあ流すわよ」

 

 優しく頭を揉み洗いされた後、丁寧にシャンプーを洗い流される。

 揉み洗いされた時は、あまりの心地良さに思わずあくびが出てしまった。

 そしてリンスを付けられる。

 

「これでよしっと。それじゃ私たちも湯船に浸かりましょうか」

 

 

 湯浴みが終わると、大きさの合わないパジャマを着せられる。

 そして洗うために脱いだ衣服を回収された。

 ユウカが俺の制服を持ち上げると、そこから学生証が落ちてしまう。

 慌てて拾いに行こうにも、既にそれはユウカに拾われてしまった。

 

「これって……なんでヒカルの学生証が? ……ってまさか貴女!」

「あー……そのぉ……黙っててすまん」

 

 顔の動きからして俺の学生証と顔を何度も往復しているようだ。

 ちなみにノアは先に出たため、彼女にはまだバレていない。

 とりあえず土下座するのでご容赦をば……。

 

「い、良いって! と、とりあえずもう遅いし寝ましょう?」

「は、はい……」

 

 肩に手を置かれて顔を近づけてくる。

 やけに鼻息が荒い。

 そしてそのまま逃げる間も無く俺はユウカに抱えられてベッドまで運ばれる。

 ノアは既に寝る前のスキンケアを終えており、自分のベッドで本を読んでいた。

 

「ノア、お待たせ」

「ううん、大丈夫だよ」

 

 ノアは先生の前だと丁寧語が基本だからか、ユウカとのタメ口での会話は新鮮だ。それだけユウカに気を許しているのだろう。

 読みかけの本に栞を挟み、そろそろ寝る準備を始める。

 俺はユウカに何故か抱えられたまま同じベッドに入れられて、向こう側にはノアが。

 

「それにしてもヒカル。貴女って意外と体温低いのね……」

 

 程よい温もりに意識がうつらうつらとなる。

 そんな中、ユウカが何か小声で呟くがうまく聞き取れない。

 ……それでもやけにノアのいる方向から視線を感じるなぁ。

 

 

 

 

 誰かに身体を揺すられる。

 ふと、目蓋を開けると誰かが……いや、この髪色と匂いはユウカか。

 ユウカがこちらの顔を覗き込んでいた。

 

「──あっ、やっと起きたぁ……はぁ……」

 

 どこか心配そうな雰囲気。

 部屋には陽の光が差し込まれて、今の時刻が朝だと分かる。

 

「……おはようさん」

「おはようさん、じゃないわよ! アラームの音で全然起きないし呼吸も浅いし心配したんだから!!」

 

 え、アラーム鳴ってたのか?

 全然気づかなかった。

 呼吸が浅いのは知らんけど、心配させてしまったようだ。

 

「……はぁ、とりあえず何か飲み物を持ってくるわ」

「そうですね。私も心配したんですよ? ヒカルちゃん?」

「いやぁ本当にすまん……あ?」

 

 今の会話に違和感を覚える。

 今、ノアは俺の事を何と呼んだんだ?

 聞き間違えでなければ俺の名前が聞こえた気がする。

 

「うふふふふ……」

 

 気が付けばノアの方向から妙な威圧感が。

 これは……さては何で俺の身体が縮んだのか検討がついたな。

 

「ら、ラボにあと試験管で2本在庫があるんでそれで許してくだせぇ……」

 

 自然と姿勢は土下座に。

 すると、土下座をしている俺の頭に彼女の手が乗せられる。

 そして優しい手付きで頭を撫でられた。

 

「ふふっ、そこまで怖がらなくても良いですよ」

「え、なにこの状況……」

 

 コーヒーの香りを漂わせながらユウカが戻ってくる。

 トレイには人数分のコーヒー。この独特な香りは……インスタントだな。

 

「ううん、何でもないですよ」

 

 そのままの姿勢でノアは俺の頭を撫で続ける。

 俺の前で屈んでいるため、顔を上げると多分見えるだろう。

 まぁ、今となってはたかが女性下着程度で興奮なんてしないんだが。

 この状況をスレ民に話せば絶対画像を要求されるだろうし黙っとこう。

 

 

 

「──って事だからお願いね?」

「この身体状態でアイツらの面倒を見ろと? まぁやるけどよぉ」

 

 ゲーム部の部室の前に連れて来られる。

 ノアは既にセミナーの所へ。

 

「あ、初めましてでしょうか?」

 

 部室の扉を開けると1番にアリスが反応する。

 その次にヘンテコなロボットと才羽姉妹。そして最後にロッカーからユズ。

 

「いんや、俺だよ俺」

 

 学生証を見せながら入る。

 彼女たちは俺に変化に大きく驚いてくれた。

 現在の服装はスカートはたまたま俺に荷物に入ってた目玉クリップでウエストに幅を合わせて、サイズの合わないワイシャツとブレザー。

 床を引き摺る白衣には見覚えがあると思うんだがなぁ……。

 ちなみに白衣の袖の長さが丁度いいぐらいになるようにこれも目玉クリップで止めているぞ。

 何故か既に今の身体のサイズ用の制服を用意されたが全力で断った。

 

「え゛っ!? ヒカル先輩!?」

 

 1番リアクションが大きかったのはモモイ。

 アリスは驚きよりも興味心身で俺の周囲をまわって質問攻めをしてくる。

 それをはしたないと落ち着かせようとする謎のロボットと、遅れてアリスと共に質問してくるモモイを呆れて見るミドリ。

 ユズはいつも通りロッカーから俺に怯えてる。見た目、ガラが悪いからしょうがないね。

 うーん、賑やかだな!!

 

 

「って事でテストプレイお願いします!」

 

 そうしてコントローラーを手渡される。

 テレビ画面にはゲームのタイトル画面が表示されており、ボタンを押せばいつでも開始できる状態だ。

 本当は先生にテストプレイをしてもらう予定だったそうだが、急遽予定が入ってしまったために俺が代打にさせられたのである。

 ……タイトルの雰囲気的にホラーゲームか。

 

 てきとうにコントローラーのボタンを押して進める。

 導入は身に覚えのないゲームのベータテストの当選電話がかかった所から。

 今ならこういったやりとりはメールのやり取りで済むのだが、時代設定的に電話で知らされている。現に、画面に写っている電話器は古い物だ。

 そして個人情報の確認という体でプレイヤーネームを決める。

 

「今回は素早さ重視で『あ』でいいか」

「え〜!? もっと凝った名前でも良いじゃん!」

「テストプレイなんだから別に良いだろ」

 

 野次が飛んでくるが気にせず進める。

 主人公の家に届いたゲームを起動して、マップが表示される。

 この形状は……キヴォトスか?

 いくつかの区画に分かれて選択して物語を進めるらしい。つまりはホラーノベルゲームか。

 試しに一つの地域を選択して決定ボタンを押す。

 そして、ここから地獄への扉は開かれた。

 

 

「……は?」

 

 あっさりと終わるチャプター。

 

「……すまん、内容がうまく頭に入らん」

 

 語り手の話し方が独特すぎておそらく怖いであろう内容が全く耳に入らない。

 

「え、また分岐か?」

 

 一つの話に流れに複数の分岐。

 

「……またフリーズした」

 

 小まめにセーブをしていた為そこまで問題なかったが、フリーズするゲーム。

 いや、決まって映像パートで発生するから大問題だわ。

 

「いちいち正気に戻すの面倒いんだが?」

 

 分岐をやり直すにしても高確率で発狂するキャラクター。

 

 

 それらが積み重なり、フラストレーションが貯まる。

 故に……。

 

「はいクソー!! ずっとやってられっか!! こんな糞ゲー!!!!!!」

 

 コントローラーをクッションに投げつける。

 俺の突然の発狂に彼女達も驚いてしまう。

 そのおかげで幾分か冷静になれた。

 

「……すまん、流石に言い過ぎた。ただ、あまりにも問題が多すぎるわこのゲーム」

「やはりそうでしたか……」

 

 謎のロボットからも同意見が出てくる。

 おお、見た目以外は常識的だなこいつ。

 え? ウェストンくん? あの子は可愛いだろ。

 

「てかモモイ。お前って『ザ・王道!』って感じの明るい冒険譚のシナリオ得意だっただろ。何でホラーノベルゲームを作ろうとしたんだ?」

「いやぁそれがさぁ! 前にヒカル先輩とお出かけした時あったじゃん? あの時買った宝くじが大当たりしちゃってさぁ!」

 

 どうやらその当選額を使って外部に今回のゲームのシナリオライターを雇ったらしい。

 あ、今更だがモモイがタメなのは俺が許しているからである。

 

「ほーん。んで頼んだ先が朽木修羅って人か」

「SNSで募集かけたらすっごい熱意の篭ったDMをくれたから頼んじゃった!」

 

 実際に届いた文章をモモイは見せてくる。

 募集をかけてい場所はアカウントはゲーム部の共有アカウントか。

 実際に届いた文章を読んで見ると確かに熱意は伝わる。

 が、所々同業者を見下しているような文言が見えるな……。

 

「とりあえずすぐに直すべきダメな点は分岐が多過ぎるのと一部シナリオが雑すぎる、の2点かな。フリーズバグは一度プログラム見せろ。

 にしても色々雑で勿体無いシナリオだな……もう少しオチまでの繋ぎがどうにかならんかねぇ……」

 

 怯えながらプログラムを見せてくるユズに俺のすることに対して興味津々なアリス。

 ミドリは自分の描いたイラストに特にダメ出しがなかったからか、やや得意げだな。

 

「言っておくがミドリ。いくつかまだカラーラフ段階のが混じってんの気付いてるからな?」

「う、ご、ごめんなさい……」

 

 まぁ気付いたのは共有した画像を見てたスレ民だけどな。

 と言うかまだ時間はたっぷりあるのに何で横着しようとするんだ。

 つーかスレ民はよくカラーラフだって気付いたよな。

 俺は全然分からんかったわ。

 そうして色々とあのヘンテコなロボット──ケイと俺は今回のゲームの問題点をまとめた。

 問題点のなにがダメでどう改善するべきか。それを彼女達に考えさせながら。

 色々と今後消化すべき課題へどう取り組むかおおよその方針が決まった頃、ゲーム部の部室の扉が数回のノックの後開かれる。

 俺を含めて全員が扉の方を向くと、見覚えのある背丈の人物がいた。

 

「先生!? 用事があったんじゃなかったの!?」

「思ったよりも早く片付いたから来ちゃった」

 

 ゲーム部の面々が一気に先生のもとに集る。

 ワイワイと賑やかな雰囲気に混じってやや湿度を感じるが、彼女達の低い身長のお陰か、微笑ましさが勝っている。

 ただ、微笑ましい光景だというのに何処か胸が痛い。

 いや俺もさ、先生のことは好きだけどさ? わざわざ歳下である彼女たちに対して嫉妬心なんて抱いても意味ないのは分かっているんだよ。

 結局は早い者勝ちな訳でさ。

 それに、転生前だって軽くだけど遊んでたから当然生徒たちに好感はある。

 と言うかSNSのTLで流れてきたワカモのビジュから入ったクチだし。

 だからこそ、この胸を締め付けるような濁った熱は認めたくはない。

 ……つまり色んな生徒を自身に惚れさせておいて「大人だから」という理由で一緒を引いている先生が悪い。

 

「君は……初めまして、かな?」

「っ!?」

 

 考え事をしていると、いつの間にか先生が屈んで俺に視線を合わせていた。

 先生ならヘイローを認識できるから、俺が西ヒカルだって分かるはずだというのに、そんな素振りを見せない「初めまして」。

 急に声をかけられたから咄嗟に近くにいたケイの背後に身を隠してしまった。

 

「は、はじめ……まして」

 

 試しに初対面を装って見ると、先生はすんなりと受け入れる。

 本当に気付いていない……?

 ……なら普段出来ないことが出来るのでは?(名案)

 

「あの、えっと、その……」

 

 幼い少女を演じながら先生の袖を引っ張り、ソファに座らせる。

 目の前にはプレイ途中である例のホラーノベルゲーム。

 俺はクッションに埋まっていたコントローラーを手に取って、ソファに座る先生の太腿に座った。

 そして次にアリスが動く。

 俺が右太腿に座ったためか、「アリスも先生の膝の上に座りたいです!」と言って我先に左太腿へ。

 出遅れた才羽姉妹は「ずるい」と言いながらも先生の両肩にしがみつく。

 そして最後にユズ。

 彼女はタイミングを逃したからか、半開きのロッカーの隙間からこちらの様子を伺っている様だ。

 ケイは声色的に俺たちに呆れているようだが……俺には分かるぞ。いずれお前も先生に対してこうなるんだ。俺は詳しいんだ。

 

「っ!?」

「えへへ……」

 

 テストプレイの続きをしている途中、不意に頭を撫でられた。

 ゲームの方に集中していたためよく聴こえていなかったが、どうやらアリスがおねだりしていたらしい。

 そして何故か同時に俺も頭を撫でられたのか。

 ……これは非常に不味い。

 猫だったら確実に喉が鳴ってた。

 と言うか男特有のゴツゴツとした手なのに撫でられ心地が良過ぎて溶けそうになる。

 

「ヒカル〜? 先生を見なかった〜?」

 

 そこに知っている声と共に誰かが俺の名前を呼びながら入室してきた。

 そう、ユウカである。

 そして俺の名前が聞こえたことにより、先生の頭を撫でる手が止まる。

 

「あ、先生。こちらにいらしていたんですね。ところでヒカルは……貴女、何をしているの?」

 

 先生に向けていた顔が自然とこちらを向く。

 そして威圧感を放ちながら彼女は近づいてきた。

 

「ぜ、ぜってーに離れねぇからな!!」

 

 プライドを捨てて先生の胴体に抱きつく。

 それと同時にユウカは俺の胴を持って引き剥がそうとしてきた。

 ぐぬぬ……やっぱ幼女ボディじゃ力が足りねぇか。

 徐々に引き剥がされつつあるためせめての足掻きで先生の首筋に顔を寄せて……吸い付く(噛み付く)

 

「痛──っ!?」

「ちょ──っ!?」

 

 俺の行動を予測できなかったからか、一瞬だけユウカの引っ張る力が緩む。

 が、直ぐに復帰されて俺はそのまま引き剥がされた。

 そして顳顬をグリグリと両手の拳で圧迫される。

 

「貴女、なんてうらや──じゃなくて、プライドとか無いの!?」

「うごごごご」

 

 プライドで欲求が満たせるか!!

 まぁ、プライドも欲求の一つだけど。

 

「ま、まぁ、それぐらいにしておいたら?」

「せ、先生……。ですが……」

 

 先生はどうやら庇ってくれたようだが、その厚意は利用させてもらうぜ。

 気が緩んだユウカからの拘束から抜け出して走る。

 

「あっ、ちょっと、こら!!」

「あばよとっつぁあん!!!!!!」

 

 背後から「誰がとっつぁんですか」と聞こえてくるが気にせず走る。

 時折背後を確認すると、確認するたびに追手が増えているのはなんかウケるな。

 

「流石にこの時間は人が多いか」

 

 首に装着されている首輪を軽く叩いて施した改造を起動する。

 コイツに施した改造のおかげで逃げ道を増やすことが出来る様になるのだ!

 ゆえにモブ生徒の間を潜り抜けたり、壁や天井を駆けながら、徐々に彼女たちとの距離を離す。

 最終的にはC&C、ヴェリタス、ゲーム部、エンジニア部、(リオ会長を除く)セミナー、あとトレーニング部に追いかけられてた。ウケるw。

 

「はい俺の勝ちぃ!!」

 

 上手く振り切って、廃棄区画にあるラボの一つに到着する。

 まぁそのラボからシャーレに通ってる現在の拠点なんだけど。

 一つ目と二つ目のラボはもうC&Cにマークされちゃってるからね。

 ネルパイセンには勝てねぇから拠点を変えるしかないのだ。

 流石はミレニアムの最高戦力だよあの人。

 さて、そろそろ解毒薬でも飲んで元の姿に戻るとするかねぇ。

 ユウカからくる通知を無視して俺は薬の副作用で意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……死にてぇ」

 

 元の姿に戻ってから幼女ボディで先生にやらかしたことが今更恥ずかしくなった。

 誰か俺を殺してくれ。

 ちなみにユウカのメッセージの返信にそう打って送信してしまったためガチ目に心配された。




ブクマ・感想・ここ好きいつもありがとうございます!

ここからは言い訳フェイズ

Q.何故1年も期間は空いたのか?
A.色々あってモチベが死んでた

Q.色々って?
A.色々と言っても人間関係のゴタゴタに巻き込まれたのと執筆中の小説が自動保存される前にブラウザのリロードが入ってかきかけのデータが吹き飛んだの2点です

人間関係の方は既に解決済みですが、私は巻き込まれた側とはいえ言葉足らずで被害にあった方を傷つけてしまった上で自分も傷ついたとか言う自業自得ですわ
9割は書きかけのデータが吹き飛んで萎えた、なのでみんなもレポートとかもそうだけどこまめにデータは保存はしようネ!

P.S.デカグラマトンよ゛か゛っ゛た゛
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