いずれお前もこうなるTS転生者   作:まさみゃ〜(柾雅)

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本日二話目です、前の掲示板から読むのをオススメします。

読者、教えてくれ。私はいったいあと何回、(書きながら何度も読み返しているのに)誤字脱字その他諸々をすれば良い……

23:05追加/予約投稿ミスってそのまま投稿してしまった……


逃亡生活:便利屋居候編

 さて、いきなりだがこの焦げ混じりのお粥を出されたら皆はどうするだろうか。

 ちなみに製作者は少々恥ずかしそうにモジモジしている。

 

「や、やっぱり作り直したほうがいいわよね……?」

「……イタダキマス」

 

 スプーンで一口掬う。

 それを口に運ぶとほんの少し甘い香りが鼻を擽る。

 味も甘い。

 おそらく砂糖と塩を間違えたのだろう。

 それならば醤油を使えばよかったのにと思う。

 

「どう……かしら?」

 

 俺は黙々と甘いお粥を口に運ぶ。

 お椀の分を全て胃に収めると、残りの全部を持って来てもらってそれも平らげる。

 同じ味が続いて吐き気もあったが、無理やり飲み込んだ。

 

「ご馳走様でした……。今度からは塩と砂糖は間違えないようにな?」

「な、なんで全部食べてから言うのよー!!!!」

 

 だって勿体無いですしおすし。

 それから傷も完治したのだが、体がまともに動かせるようになってからは朝昼晩の三食作っていたせいか、出て行こうとすると引き留められた。

 あと、初めは病み上がりだからもう少しいた方がいいと説得され、それもそうだなと了承しているうちに出て行く日をなあなあにされて今に至る。

 まぁ、掲示板に書き込みをしている途中からは潜伏するのに丁度いいとも思い始めたし。

 

「……ほら社長、起きな。朝飯出来たぞ」

「う〜ん……あと5分……」

 

 返事があるからちょうど二度寝をしようとした時らしい。

 彼女が起きるのを待つ間、俺は朝食をテーブルに並べる。

 そして5分後ピッタリに彼女は現れた。

 

「おはよう、ヒカル。今日もありがとうね」

「居候させてもらっている身としてはこれぐらいしか出来ねぇけどな」

 

 これが最近の日常。

 ネットに投稿されている料理動画を見よう見真似で作っているが、慣れ始めると料理は案外楽しいものだ。

 そして彼女たち便利屋が依頼を受けに外出している間は、レパートリーを増やすために料理系の動画を漁る。

 そんな時、今日は来客があった。

 

「はーいってこの雰囲気は先生?」

「ヒカル!? なんでここに……?」

 

 話が長くなりそうなので先生を事務所に上げる。

 そしてお茶を淹れると、俺は先生の向かい側に座った。

 

「それで今日は何用で?」

「経営顧問だから様子を見にきたんだけど……どうしてヒカルが居るんだい?

 アルたちは?」

「社長達は仕事だな。

 俺はまぁ……色々あって……」

 

 カンナさんに捕まってまた牢屋の中にいた話はする。

 そこ以外は話すつもりがなかったのだけれど、仕舞い忘れた増血剤を見られてしまい、隠そうにも隠しきれない気がした。

 そして安価で出た結果の通り、機械頭の男らの話を先生にする。

 

「そんで出るときに機械頭の奴らと再会して、逃げる時に肩と足に銃弾が当たったんだ」

「……ヒカル、この事はアルたちには話したかい?」

「え、言ってないけど……」

 

 そう答えると怒られた。

 そして説教が始まる。

 掲示板に書き込む余裕すらなく、俺は先生に「はい」や「すんません」と答えるしかなかった。

 「記憶を失う前もそうだったけど、君は自分に関する事は秘密にしたがるよね」とまで言われてしまった。

 それは無いと否定したかったが、思い当たる節が多くて反論できなかった。

 

 そして説教がひと段落した時、彼女が帰ってきた。

 

「ただいま帰ったわよ!!」

「社長お帰り〜」

「みんなお帰り、お邪魔させてもらってるよ」

 

 時刻は丁度夕食を作り始める時間。

 先生も一緒にどうか誘ってみると便利屋のメンバーが後押ししたのもあって、一緒に食べることとなった。

 まぁ、作るのは俺なのだが。

 ただ、今日は珍しくカヨコさんも手伝ってくれるみたいだ。

 やっぱ、意中の人にアピールしたいよね。

 

「ヒカル、今日は何を作るの?」

「大豆ミートのハンバーグとほうれん草のおひたしですね」

 

 ちなみにハンバーグには大根おろしを付ける予定。

 二人で作るとやっぱり負担が軽くなって楽だ。

 そこでご飯待ち組の会話が聞こえてくる。

 

「ヒカルって料理出来るんだね。なんか意外だな……」

「ヒカルちゃんの作るご飯、すっごく美味しいんだよ! 先生!」

 

 とても楽しそうだ。

 まだまだ発展途上ではあるが褒められると嬉しい。

 

 

「そう言えばヒカルちゃんっていつもその服だよね」

「……まぁ社長から借りてるの以外ならこれしか着るもんないからな」

 

 ムツキが何やらニヤニヤと笑みを浮かべている。

 何を企んでいるのか分からないが、まぁイタズラとかでは無いだろう。

 

「なら明日みんなでヒカルの洋服買いに行かないか?」

「せ、先生!?」

 

 思わぬ伏兵に、食事中なのに思わず大きな声を上げてしまった。

 さらにアルちゃん社長が先生のその提案に賛同し、続けて便利屋のメンバー全員が同意する。

 こうして俺は、明日久し振りに外へ出ることとなった。

 

 

 

 

― ◆― ―◆― ―◆ ―

 

 

 ショッピングモール。

 便利屋のみんなと一緒に現地で先生と合流する。

 向かう場所はユ○クロの様なお店。

 そこで俺の私服を選ぶことになるのだが、そこでしばらくムツキの着せ替え人形にされた。

 その間各々自由で楽しそうに見て回っていて、この世界の物騒さを忘れさせてくれる。

 

「な、なぁこれ、スカートの裾短すぎないか……?」

「え~、普通だよ〜。それにヒカルちゃんに似合ってて可愛いよ?」

 

 この辱め如何に晴さでおくべきか……陸八魔アル……!!

 制服ならまだギリギリ納得できたが、色合いも少女的なデザインは無理。

 他に渡された衣類から比較的まともそうなものを選んですぐに着替える。

 そこに先生がやってきた。

 

「ヒカルは露出とか嫌そうだしこう言うのとかどうかな?」

 

 先生が持ってきたのはニットの服とジーンズだった。

 試しに着てみると、襟口がオフショルダーと呼ばれるものなのだろう、肩や鎖骨がもろに出てしまっている。

 ジーンズはラインっピッタリだが、動きやすいので許容できる。

 結論、抵抗感はないのでこれにしようと思う。

 

「これにする……って先生?」

 

 試着室から出るとムツキと先生が何故かこちらを見て固まっていた。

 二人の様子に気付いたのか、アル社長とハルカ、カヨコさんの三人が合流する。

 

「似合ってるね、ヒカル」

「ありがとうございます、カヨコさん。先生が選んでくれたんですけど……なんか二人して固まっちゃって……」

 

 そこでやっと先生が口を開く。

 

「ご、ごめん、思った以上に雰囲気が違っててビックリしてた……」

「ねえねえヒカルちゃん、髪の毛結んでみて!」

 

 続いてムツキがヘアゴムを取り出して渡してくる。

 渡されても結ぶってどうすりゃいいんだ?

 ゴムを手に持ったまま戸惑っていると、カヨコさんが「ちょっと貸して、私がやってあげる」と俺の手に持つそれを取る。

 流れのまま俺は屈み、彼女に長い髪の毛を結ってもらう。

 「うん、完成」そう言って出来上がったのは簡易的なポニーテール。

 

「印象がすっごく変わったね」

「……そんなにっすか?」

「え゛、ヒカルなの!?」

 

 今更アル社長が自分の目の前にいる人物が俺だと気付く。

 一応口ピアスとか髪の毛のメッシュとか特徴残ってたはずなんだけど……。

 

「そうだよ社長、俺だ」

「べ、別人かと思ったわ……」

「そんなにか……?」

 

 結構ショックだったが、一番ショックだったのは先生の独り言で「何か人妻感があったな……」と言っていたことを運悪く耳にしてしまったことだった。

 

 

 

 

― ◆― ―◆― ―◆ ―

 

 

 

 今日はやけに下の階が騒がしい。

 社長たちは仕事で出払ってて、今事務所に居るのは俺と先生の二人だ。

 

「なんか下の階騒がしいな」

「銃声とか凄いね……」

 

 様子見も兼ねて、下の階へ続く階段の踊り場まで出る。

 すると、微かにだが「先生」やら「身代金」やらと物騒な内容が聞こえてきた。

 俺は事務所に急いで戻り、先生に隠れるように促すと、武装して再び事務所から出る。

 そして来るであろう敵を迎え撃つ事にした。

 相手はヘルメットを着用した集団。

 一発一発外さないように、けれども迅速に鎮圧するように撃つ。

 薬ぶ、薬品で自身の能力に補正を加えたりしつつ敵を捌くが、キリが無い。

 終いにはヘイローのバックアップ受けた薬品を使って、効果が切れれば無理矢理再使用したりもした。

 

「キリがねぇ……!!

 こうなったら安価ぁ!!」

 

 そして結果は社長達に連絡をする事になる。

 片手でスマホを操作して社長のモモトークに簡潔に情報を送る。

 遮蔽物が少ない所為で、時々銃弾が頬を掠める。

 けれども撃つ手は止めず、弾が切れればすぐさまリロード。

 薬品の効果が切れれば直ぐに打ち直す。

 そうしてなんとか修羅場を凌ぎきり、社長達が到着した時は最後の敵が積まれた所だった。

 

「ヒカル!!」

「先生もう大丈ぶ――グエッ!?」

 

 先生を呼びに玄関の扉に手を掛ける時、何者かの腕が俺の首を絞めあげる。

 背中には柔らかい感触。

 視界の端にはピンク色の毛先が見えた。

 そして俺の意識はここで途絶えたのだった……。

 

 

 

 

 

 ――って事が先日あったんすよ」

「それは……お疲れ様ですとしか。

 と言うよりは、私がその日非番だったばかりに申し訳ありません」

 

 え? 今どこかって?

 例のおでん屋でカンナさんと烏龍キメながらおでん食べてるんだよ。

 装いは変装、もとい私服で同じく私服の彼女とね。

 

「良いよ、あんたもあんたで色々ゴタついてたみたいだし」

「そうですねぇ……。何処ぞの誰かが二回目の脱獄をしましたから」

 

 え、脱獄囚が今出回ってるの? 怖っ!

 まぁ、それはそれとして今回彼女と会った目的は他にある。

 

「へー、そりゃ怖いっすね。戸締りはしっかりしとこ。

 ……それで、あの機械頭の連中については教えてくれるのか?」

「……あの件は本当に申し訳ない。あの方達には私は強く出られないのでしてね」

 

 闇混じりの溜息。

 この人も苦労してるんだなぁと思いつつ、俺は烏龍茶を飲み干す。

 

「俺としてはどうしてアレの情報が漏れたのか知りたいけど、先ずは敵が知りたい。その為の契約だったよな?」

「そうですね……。私としてもそろそろ良いようにされて頭にきていますから」

 

 そう言って彼女が茶封筒を渡してくる。

 中身は今確認しないが、契約内容は互いにとって利にしかならないので裏切ることはないであろう。

 

「ところで話が変わるのですがその……そのご婦人の様な装いは?」

「……あんたもそう見える? 一応先生が選んでくれたやつ――「ゴホッ!!」大丈夫か!?」

 

 何故かカンナさんがむせた。

 そして顔を青く、険しい表情で俺に問いかける。

 

「……不埒な事はされていませんよね? いえ、されましたね? やはり私が彼の動向を監視して、未然に被害を防ぐしか……? ええ、その方がいいでしょう。いや、むしろ四六時中お側にいたほうが尚更良いはずです。べ、別に一緒にいたいわけでは無いですし、監視と護衛が両立できて一石二鳥です。ならば早速――」

 

 問いかけると言うのは間違った表現だった。

 正しくは俺の安否確認という体の自分の欲望の吐露。

 本能に忠実な女の子は可愛いなぁ……(メソラシ)。

 そこにモモトークに通知が来る。

 一人性癖を詠唱している彼女を尻目に内容を確認するとただ一言。

 

『映画のチケットが当たったんだけど明日時間あるかな?』

 

 差出人はシャーレの先生だった。

 明日は俺の命日かもしれない。




次回、デート回。
どうなるのかワクワクするね。

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