鉄底海峡。
ソロモン諸島サボ島の南方、ガダルカナル島の北方に存在する海域。かつての先の大戦で多くの艦艇がこの海域に沈み、その水底が鋼鉄に覆われていることからこの名がついた。
サボ島周辺海域 ガ島近海
暗闇のなか、何隻もの艦艇がこの海域を航行している。影の艦隊の輸送艦隊だ。鮫のような外見に大量のドラム缶を体に装備した”輸送艦二一型”が何隻もガ島の泊地に停泊している。
泊地の入り口では、影の艦隊の重巡二十一型が二隻、駆逐十六型が四隻哨戒にあたっていた。泊地防衛の南方部隊だ。
重巡二十一型1 「ねえ、なにかみえない?」
重巡二十一型2 「味方の駆逐艦だろう。気にすることはn」
重巡二十一型が言い終わらないうちに、パッと空が明るくなった。
重巡二十一型2 「!?」
照明弾だ。照明弾が投下されたため空が明るくなったのだ。
重巡二十一型1 「各艦、戦闘用意!」
重巡二十一型が命令したとき、
ババーン!! ババーン!!
巨大な爆発音が響き、発砲炎がみえた。砲撃が開始されたのだ。
出羽 「初弾、夾叉(きょうさ)!!次弾装填急いで!」
曙 「分かってるわよ!」
影の艦隊に対して、砲撃を行ったのは呉鎮守府所属の精鋭艦隊”第七艦隊”だった。旗艦である出羽がさらなる指示を出す。
出羽 「十六夜ちゃん!立春ちゃん!魚雷発射急いで!」
十六夜 「分かりました!」
立春 「了解です!」
十六夜たちが試製六連装酸素魚雷を発射する。合計十二本の魚雷が影の艦隊に向けて放たれた。放たれた魚雷はまっすぐ駆逐十六型に着弾した。
駆逐十六型 「がああああああああああああああああああ!!」
駆逐十六型が叫び声をあげながら、沈んでいった。
十六夜 「やったあ!!」
一方、出羽ともう一人の艦娘、馬見ヶ崎が重巡二十一型に対して砲撃を続行していた。
ドガァーーン!!
重巡二十一型2 「!?」
重巡二十一型に25糎(センチ)砲弾が命中する。馬見ヶ崎が放ったものだ。
馬見ヶ崎 「え、嘘…。当たったんですか…?」
本人はあまりうれしくないようだ。
重巡二十一型2 「ぎゃああああああああああああああああああああああああああ!!?」
重巡二十一型が轟沈した。出羽の放った51糎砲弾が命中したからだ。
曙 「これでここの艦隊は壊滅したわね。」
出羽 「そうですね。しかし、まだ泊地内に敵艦隊はいます。十六夜ちゃん、お願いします。」
十六夜 「分かりました〜!」
泊地内
軽巡二十型 「我、発砲炎及ビ砲跡ヲ確認。敵艦隊ノ襲撃ノ可能性アリ。十分二警戒サレタシ。」
泊地入り口を見張っていた軽巡二十型が、第七艦隊と南方部隊との戦闘の発砲炎を発見し旗艦である重巡二十一型に報告した。しかし、
重巡二十一型 「何を言っている。どうせ島に対する砲撃だろう。たとえ敵艦隊だとしても少数だろう。」
軽巡二十型 「シカシ、先程カラ南方部隊トノ通信ガ途絶エテイルノデ…」
重巡二十一型 「分かった。今から南方部隊に連絡をと」
カチャーーーー!!
突然周囲が明るくなった。重巡二十一型が目を凝らしてよく見ると、明るさの正体が分かった。探照灯だ。十六夜が探照灯を北方部隊に照射しているのだ。
軽巡二十型 「敵艦隊!?」
重巡二十一型 「待て!友軍の混乱かもしれない。連絡をとってみる。」
十六夜 「出羽さん!敵艦から信号です。『我、味方なり』です!」
出羽 「どうやら私達のことを味方だと勘違いしているみたいね。」
これは好都合だ。すると
曙 「出羽さん!馬見ヶ崎さんたちが遅れてます!」
十六夜 「ええ!?なんで!」
実は先程、一隻の重巡二十一型が馬見ヶ崎に向けて突撃を仕掛けてきていたのだ。衝突を避けるために馬見ヶ崎は変針、これに立春もついていったようだ。
出羽 「しかたありません。馬見ヶ崎さんたちがくる前に攻撃を開始しましょう。敵が味方だと思いこんでいるうちに。」
十六夜 「は〜い!」
そして、十六夜たちは敵艦隊の右舷側から砲撃を開始した。
重巡二十一型 「!?」
敵艦を友軍だと信じ込んでいた、重巡二十一型は瞬く間に51糎砲弾、13糎砲弾、12.7糎砲弾の一斉射撃を受けた。
駆逐十六型 「があああああああああああああああああああああああああああ!!?」
早速一隻の駆逐十六型が撃沈された。重巡二十一型はようやく敵艦隊だと確認し、反撃を開始した。しかし、反撃を開始した頃には周囲には友軍の姿はなかった。
重巡二十一型 「(くそっ!失態だ。この失敗は私にある。なんとしてでも泊地への侵入は阻止しなくては…)」
十六夜 「そこ〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
十六夜が被弾で動きが鈍くなっている重巡二十一型に魚雷を発射した。夜戦での魚雷は発見しづらい。瞬く間に重巡二十一型に着弾した。
重巡二十一型 「ぐあああああああああああああああああああああ!!」
重巡二十一型は叫び声をあげながら撃沈された。
軽巡二十型 「クッ、旗艦ガヤラレタカ…」
重巡二十一型 「なにを言う!まだ私がいる!なにがあっても敵艦隊を泊地内に入れるな!」
軽巡二十型 「ワカッテイマス!」
しかし、影の艦隊にさらなる攻撃が加わる。
馬見ヶ崎 「敵艦隊発見です…」
立春 「攻撃開始します!」
なんと馬見ヶ崎たち海域に到着、残存していた影の艦隊の左舷側から攻撃を開始したのだ。よって影の艦隊は、十六夜たちと馬見ケ崎たちの二艦隊に挟撃(きょうげき)されることになった。
泊地前に次々と巨大な爆発音が響く。この攻撃により、影の艦隊は南方部隊、北方部隊のすべてが壊滅状態になった。
出羽 「敵艦隊壊滅確認です!」
十六夜 「これで泊地内にに侵入できますね。」
馬見ヶ崎たちと合流した第七艦隊は遂に泊地内に侵入した。砲撃を容易にするために馬見ヶ崎は探照灯を照射した。
輸送艦二一型 「!?」
探照灯で照らされた先には、泊地を埋め尽くすほどの数の輸送艦二一型が停泊していた。
出羽 「撃ち方、始め!」
51糎砲弾、25糎砲弾、13糎砲弾、12.7糎砲弾、さまざまな砲弾が影の艦隊の輸送船団に襲いかかる。
影の艦隊の輸送艦二一型は防衛用に搭載されている10糎単装砲で応戦するも所詮焼け石に水だ。次々と輸送船団は火に包まれていった。
これにより第七艦隊は敵艦隊、敵輸送船団を壊滅することに成功したのだった。
ショートランド諸島海域
十六夜 「ああ〜、疲れた〜」
出羽 「でも作戦は成功しましたし、潜水艦に気を使う必要もありません。そうですよね馬見ヶ崎さん。」
馬見ヶ崎 「はい…。でも、もしものことがあったらどうすれば…」
曙 「心配することはないんじゃないですか。」
今、第七艦隊の上空には四機の瑞雲が飛行している。爆弾のかわりに爆雷をそれぞれ二発づつ懸吊(けんちょう)している。馬見ヶ崎が対潜用に発艦させておいた瑞雲だ。
馬見ヶ崎 「私よりも駆逐艦である十六夜さんたちのほうが対潜には向いていますし、私の瑞雲は気休め程度にしかなりません…」
十六夜 「何言ってるんですか!あるだけでも心強いですよ!」
出羽 「そうですよ。自身持ってください。」
そうこう馬見ヶ崎を励ましていると、上空から巨大なエンジン音が聞こえてきた。
立春 「なんでしょうか?」
全員が空を見上げると、そこには旧海軍の使用していた大型陸上攻撃機”連山”が六機の零戦とともにまっすぐショートランド泊地の方角に向け飛行していった。
出羽 「提督が到着したみたいですね。」
連山機内
栗林 「提督、ショートランドが見えてきましたよ。」
提督 「あ〜、ようやく着いたか。」
栗林 「なぜならラバウルから506キロほど離れてますから。」
操縦士 「提督、そろそろ降りる準備をしてください。」
提督 「はい。分かりました。」
提督が降りる準備を始めた。
ショートランド泊地 飛行場
整備兵1 「連山がきたぞ〜!」
整備兵2 「早くしろ〜!」
整備兵たちが滑走路に向かって走っていく。その光景を後ろから整備兵長の北村がみていた。北村もショートランドに移動していたのだ。
連山がゆっくりと降下し、滑走路へと着陸した。護衛の六機の零戦も、一機ずつ滑走路へと着陸していった。着陸した連山と零戦に整備兵たちが近づき、零戦は整備が開始された。
提督は連山から降りると、あたりを見回した。朝の光が眩しい。夜間の三時頃に出発したため、三時間ほどかけてショートランドに到着したのだ。
提督 「きれいなところだな…」
栗林 「そうですね。ここで戦争が起きていたなんて信じられませんね。」
ショートランド島は、大戦中日本軍の占領下に置かれ軍事用に使用された島だ。今でも島のあちこちには零戦の残骸や戦車の車体が海に沈んでいたりしていて戦争の爪痕が残っている。
提督 「それじゃあ、庁舎に入るか。」
栗林 「そうですね。」
提督と栗林は庁舎に向けて歩きだした。
庁舎内
出羽 「以上が海戦の戦果及び被害です。」
長門 「分かった。下がっていいぞ。」
出羽 「失礼しました。」
報告を済ませた出羽が部屋から出ていく。
金剛 「テートクはまだデスカー!!」
長門 「もうじきくるから待っていろ。」
金剛 「うう〜」
十六夜 「そういえばさっき連山が飛んできたからもう近くにいるかもしれないですよ。」
提督 「もういるけどな。」
長門 「っうおっ!?いつの間にですかっ!?」
栗林 「出羽さんが出た時からですけど…」
金剛 「テートクー!!」
金剛が提督に抱きついていった。かなりの勢いだったのにも関わらず、提督はしっかりと受け止めた。
響 「金剛さん、少しは司令官から離れてよ。」
響は少し、不満そうだ。(艦これ2 光の絶望と影の希望では十一話で、響と提督はケッコンしています)
金剛 「いやデース!最近響はテートクとずっと一緒にいたじゃないデスカー!」
響 「うっ…」
金剛 「一人だけテートクを独占するのはずるいデース!」
栗林 「そろそろ作戦について話したいんですけどいいですか?」
終わりそうにない言い合いをみて、栗林がそう言った。
提督 「そうだな。早く編成も決めたいしな。」
栗林 「なので、ふたりとも提督から離れてください。」←半ギレ
響・金剛 「はい…」
栗林はそう言いながら、響と金剛を提督から引き離した。
提督 「それじゃあ話を始める前に、十六夜。昨日の敵輸送船団撃滅任務ご苦労さま。」
十六夜 「は〜い。ありがと〜。」
栗林 「それでは作戦について話します。 今回の作戦は第二次い号作戦の成功により敵航空戦力は壊滅、敵戦艦群も甚大な被害を被っています。それを機に南方に進出、鉄底海峡付近から出現している影の艦隊の殲滅が第一目的です。そしてガダルカナル島の多国籍軍の救出が第二目的、そして南方海域に存在する豊富な資源の確保が第三目的です。」
長門 「状況によっては多国籍軍の救出が優先される可能性もある。」
十六夜 「人命も大切だけど、被害を拡大させないためにも影の艦隊は撃滅しないといけないね。」
提督 「そうだな。どっちにしろ影の艦隊を殲滅すること。それが主目標だな。」
栗林 「作戦名は”三号作戦”です。」
ガ島近海 鉄底海峡
何隻もの影の艦隊の潜水空母700型が浮上している。どうやら哨戒任務にあたっているようだ。
潜母700型1 「コチラ潜母700型。周辺二以上ハ無シ。哨戒任務ヲ続ケル。」
潜母700型2 「ソウイエバ日本近海ノ艦隊ハ全滅シタソウダ」
潜母700型3 「残ッテイルノハ、我々ダケノヨウダゾ。」
潜母700型たちがそんな会話をしていた。すると
??? 「お前たち、何をしている?」
今までの影の艦隊とは違う雰囲気を放つ、人形の艦が言った。両腕には飛行甲板のようなものを装備しており、頭には真っ黒の軍帽をかぶっている。
潜母700型1 「!!〜〜様!?」
潜母700型2 「何故コチラニ!」
??? 「今はそんなことは聞いていない。我々だけ残っているからなんだ?この海域も防衛できないとでもいうのか?」
そう言って、彼女は冷え切った瞳を潜母700型たちに向けた。
潜母700型3 「イイエ!ソウイウ訳デハ…!」
??? 「なら与えられた任務をこなす、それだけだ。しっかり哨戒任務にあたれ。」
潜母700型達 「了解!!」
潜母700型たちがそう言うと、彼女は水中へと潜り、姿を消した。
栗林 「なんだか、嫌な予感がします。」
提督 「ああ、そうだな…。」
ショートランド泊地 庁舎前
長門 「以上が作戦の内容だ。作戦開始は明日。準備を怠るな。」
長門が全艦娘に向け説明を終え、解散の号令をかけた。解散の号令がかかったため、艦娘たちがその場から離れようとしていた。
すると栗林が、
栗林 「今から呼ぶ皆さんは少し集まってください。」
と、艦娘たちに声をかけた。
栗林に呼ばれた艦娘は比叡、霧島、吹雪、綾波、暁、夕立の六人だった。実はこの六人はあることを共通してもっていることがある。”史実でこの海域に沈んだ”ことである。
霧島 「栗林補佐官。どうしたんですか?」
夕立 「なにか用事でもあるっぽいっ?」
呼ばれたことに当の六人は疑問に思っているようだ。そこで栗林が口を開く。
栗林 「今回は皆さんには注意してもらいたいことがあります。」
吹雪 「なんですか?」
栗林 「ここにいる皆さんは影の艦隊の攻撃を受け、中破の状況に陥ったらすぐさま撤退してください。」
綾波 「どうしてですか?」
綾波の問いかけに、今度は提督が答えた。
提督 「ここの海域は油断ができない。お前たちならわかるだろ?」
全員 「!!」
提督 「俺の勝手かもしれないが、海域の制圧よりお前たちの命のほうが大切だと俺は思っている。」
比叡 「司令…」
栗林 「任務遂行より命です。」
栗林が言った途端に
暁 「もお〜〜〜〜〜!暁は子供じゃないんだからそんなに心配することないわよ〜!」
栗林 「えっ!?」
霧島 「そうですよ。確かに自分たちの命も大切ですし提督が心配する気持ちも分かります。」
夕立 「でもだからこそ頑張るっぽいっ!」
吹雪 「そうですよ!そのための私たち艦娘ですから!」
栗林 「皆さん…」
提督 「でも無理はするなよ。それだけは約束してくれ。」
全員 「はい!!(ぽいっ)」
その夜
庁舎内
提督 「明日か…。」
提督は、窓から闇に染まる海を眺めながら呟いていた。艦娘たちは明日に備えて出撃の準備をしている。提督のいるこの部屋には提督以外誰もいない。
提督 「(今回の作戦はかなり大規模だ。ガダルカナル島の多国籍軍の救出が最重要任務。さらにこの海域の奪取も必要だ。…かなりの被害が予想されるな。)」
現在、ガダルカナル島にはアメリカ軍を主力とした陸上部隊約2万人が取り残されている。連日、影の艦隊の影の富嶽により空襲を受けており、全滅の危機に瀕している。
提督 「(早急なる救助が必要だな。)」
すると、ドアがノックされた。
提督 「誰だ。」
ドアが開き、入ってきたのは栗林と長門だった。
長門 「提督。明日の作戦についてもう一度確認をしてもらいたく。」
提督 「ああ、そうだな。」
栗林 「まずは第七艦隊が先行していきます。そして影の艦隊の前衛艦隊と交戦、この間に海上自衛隊、航空自衛隊によるガダルカナル島の多国籍軍救出作戦を開始。それと同時にガダルカナル島を空襲していた富嶽爆撃隊の発着地であるツラギ島飛行場を戦艦群で艦砲射撃、無力化し、救出作戦中に爆撃がこないように防ぎます。第二艦隊はガダルカナル島周辺を警戒、救出作戦終了後、同海域の奪還を開始します。」
提督 「明日からの大まかな流れはこうだな。」
長門 「そうですね。うまくいくといいですね。」
栗林 「うまくいけば、ですね。」
三号作戦開始まで八時間
これにて第一部終了です。第二部はしばらくかかるのでお待ち下さい。