ショートランド泊地
大淀 「第七艦隊より入電!我、これより夜戦に突入す。」
提督 「間に合ったみたいだな。」
栗林 「そうですね。第七艦隊を応援に送ったのは正解でしたね。」
提督 「損傷の激しい艦は早急に帰還するように伝えろ。撤退時は援護する。」
大淀 「了解しました。」
大淀が返事をし、電信を打つ。
栗林 「やっぱり影の艦隊相手に夜戦は無謀でしたね。」
提督 「ああ、かなりの艦娘が被弾していると思う。これ以上戦闘を続けたら轟沈の危険性もある。」
栗林 「そうですね。それだけは避けなければなりませんね。」
提督 「十六夜の一件もあるからな。…あいつ、無理しなければいいが…」
ガダルカナル島 近海
次々と砲撃音が轟く。第七艦隊と潜水空母影姫の戦闘が激化していた。
出羽 「全主砲、斉射!てーーーーーーーーーーーー!!」
51cm連装砲が爆音を轟かせながら火を吹く。放たれた砲弾は重巡二十一型に命中した。
重巡二十一型 「ぎゃああああああああああああああああああああああ!!!」
重巡二十一型はそのまま轟沈していった。
十六夜 「よし、数は少しづつ減らせてる!」
先程まで第一艦隊を蹂躙していた潜水空母影姫率いる、影の艦隊の水上打撃艦隊はあっという間に壊滅状態になっている。
潜水空母影姫 「ふっ、なかなかやるな…」
潜水空母影姫が不敵な笑みを浮かべる。
立春 「栗林さんの言っていた強力な影の艦隊ってこのことだったんだ…」
馬見ヶ崎 「私、あんなのとやりあえる力なんて全然ありませんよ…」
馬見ヶ崎はかなり弱気だ。
大永 「しかし、夜間でも攻撃隊出せるのはかなり有利ですね。」
大永がそう言いながら、艦載機を発艦させる。(蒼永型空母は夜間航空隊を艦載させていた)
彗星艦爆と流星艦攻が闇を切り裂いて飛行する。
潜水空母影姫 「(夜間攻撃…。なるほど。艦娘の中でも私たちと同等の力を持つものが存在するのね…。)」
潜水空母影姫も迎撃に艦載機を発艦させる。影の橘花だ。影の橘花は高速性能をいかして流星と彗星に向かっていく。
十六夜 「させない!!」
十六夜が影の橘花に向け、13cm連装高角砲を放つ。対艦対空にも優れた13cm連装高角砲は攻撃隊に向かっていく影の橘花を次々と撃墜していった。
潜水空母影姫 「!!?」
これには潜水空母影姫も驚愕する。
無傷の攻撃隊はまっすぐ潜水空母影姫に向かっていく。
潜水空母影姫 「ふんっ。」
突然、潜水空母影姫は海中へと潜航を始めた。潜母700型たちもそれに続く。
曙 「敵艦潜航!!」
曙が叫ぶ。潜水空母影姫は潜水艦のため、海中に潜航、移動することが可能である。しかし、潜水空母は所詮潜水艦のため、基本的に防御力は弱い。
十六夜 「爆雷戦開始!!」
十六夜が対潜爆雷”五式爆雷”を投射する。
米海軍の対潜爆雷ヘッジホッグを真似てつくられた五式爆雷は、九五式爆雷や二式爆雷よりも高性能な対潜爆雷として十六夜型駆逐艦に搭載された爆雷だ。(架空の兵器です)
五式爆雷が宙を舞い、海面に着水する。海面に着水した五式爆雷は、高速で潜水空母影姫が潜航している深度まで到達した。
潜母700型 「!?」
五式爆雷は一隻の潜母700型の脇で炸裂した。
潜母700型 「があああああああああああああああああああああああ!!?」
爆雷攻撃を受けた潜母700型はそのまま轟沈した。
潜水空母影姫 「ふっ、新兵器か…。面白い…」
水中を潜航しながら潜水空母影姫は爆雷攻撃をかわしていく。潜母700型たちは五式爆雷の攻撃を完全には避けきれず、数隻が撃沈され、残った二隻も中破の損傷を負った。
立春 「手応えはあったけど、浅い…」
立春の言う通り、潜母700型たちに深刻な損傷を与えることはできたが、潜水空母影姫には全く損傷を与えられなかった。
潜水空母影姫 「これで終わりか…。ならこちらからいくぞ…」
潜水空母影姫が発射管から多数の魚雷を放つ。…いや、魚雷ではない。それは通常の魚雷を二周りほど大きくしたような兵器だ。
それは、旧日本海軍が九三式三型酸素魚雷を改造してつくられた日本軍初の特攻兵器、
”回天”だったのだ…。
回天は、九三式三型酸素魚雷を改造してつくられた日本軍初の特攻兵器だ。内部には操縦席が設けられ、搭乗員は潜望鏡を見ながら敵艦を補足、そのまま操縦を行い、敵艦に乗員もろとも衝突するというものだった。
先程第二艦隊を襲撃し、比叡に向けて発射された魚雷がこの”影の回天”だったのだ。
影の回天は、潜母700型の艦載機と意識を共有できるように、潜水空母影姫とも意識を共有することができる。そのため、とてつもない命中率を誇り、命中すれば戦艦であろうと大破にまで追い詰めることができる。
十六夜 「回天!?」
大戦末期に建造された十六夜は何回か回天をみたことがあり、その恐ろしさを十分に知っている。すぐさま発射された回天に向けて機銃を発射した。
水中に次々と機銃弾が撃ち込まれていく。
すると水中爆発が起こった。水中を航行していた影の回天に機銃弾が命中し、破壊することに成功したのだ。
潜水空母影姫 「…破壊されただと?」
影の回天と意識を共有していた潜水空母影姫は流石に驚きの表情を浮かべる。
十六夜 「危なかった…」
十六夜が安堵の表情を浮かべる。しかし、油断してはいなかった。
十六夜 「(回天は破壊した。だけどまだ残数が残ってるはず…。でもこっちにはもう爆雷が残っていない。潜航してる敵に砲撃も雷撃も効かない…)」
五式爆雷は先程の戦闘ですべて使い切ってしまったのだ。五式爆雷は攻撃力に優れているが、大型のため多くは搭載できない。
十六夜 「みんな!爆雷は残ってる!?」
立春 「もう残っていません…」
曙 「私ももう全部使い切ったわ…」
どうやら第七艦隊の駆逐艦はすべての爆雷を使い切ってしまったようだ。
大永 「私は航空爆雷は残ってるけど、搭載できる艦載機は残ってないわ…」
馬見ヶ崎 「私もです…、ごめんなさい…。」
大永も馬見ヶ崎もお手上げのようだ。
十六夜 「(どうしよう。このままじゃ…)」
十六夜が頭を抱えた。
その時
どこからともなく”なにか”がものすごい勢いで海中に着弾した。
十六夜 「!!?」
そして次の瞬間、巨大ば水中爆発が起こり水柱が上がった。
曙 「一体なに!?」
曙が驚く。
??? 「またせたね。」
誰かの声がした。第七艦隊全員が振り向くと、そこには…
予備艦としてショートランド泊地にいるはずの響だった。
十六夜 「響!?なんでここに!」
響 「説明はあとだよ。今はあの影の艦隊を倒さないと。」
響が十六夜の声に答え、背部に背負っているVLS発射装置の発射扉を開く。
響 「アスロック発射!!」
発射装置から対潜ミサイル”アスロック”が発射された。先程の高速で海中に着弾したのはアスロックだったのだ。
海中に着弾し、アスロックは潜航を始めた。そのまま潜水空母影姫に向かっていく。
潜水空母影姫 「なんだ…あれは…。あんな兵器はみたことがない…!」
さすがの影の艦隊で強力な力を誇る影姫も、20世紀に開発された兵器の存在は知らないようだ。もちろん対抗方法も知るわけがない。
探信音を放ちながら、アスロックは潜水空母影姫へと直撃した。
潜水空母影姫 「ぐあああああああああああああああああああああああああああ!!?」
潜水空母影姫が悲鳴を上げる。
それと同時に巨大な水柱が上がる。
曙 「やった…!」
響 「まだだよ。」
響はさらに短魚雷を放つ。放たれた短魚雷は先程のアスロックの命中で水中で動きを止めている潜水空母影姫に迫っていく。
潜水空母影姫 「くっ、魚雷か…。まだかわせる力は残っている。」
潜水空母影姫は突進してくる短魚雷を回避した。
しかし、短魚雷は第二次大戦で使用された直進魚雷とはわけが違う。コンピューター制御により、確実に命中するようになっているのだ。
短魚雷をかわし、油断した潜水空母影姫に6本の短魚雷は容赦なく銛のように突っ込んでいった。
直撃の瞬間、潜水空母影姫はこう言った。
潜水空母影姫 「私を沈めたことを…必ず、後悔させてみせる…覚悟…しろ…」
6本の短魚雷が命中し、潜水空母影姫は複数の影の回天と影の橘花とともに海の底へと消えていった。
響 「反応消滅…。敵艦撃沈確実。」
対潜ソナーの反応消滅をみて響が呟いた。
十六夜 「ほんとに?やったーーーーーーーーーーー!!!」
出羽 「よかったです!」
曙 「ふぅ〜、一時はどうなるかと思った…」
第七艦隊全員が海域攻略に喜んだ。これでガダルカナル島周辺の海域の制海権が確保されたのだ。
大永 「とにかく敵主力は撃破したわね。」
立春 「早くショートランドに戻りましょう!」
馬見ヶ崎 「そうですね…。私のせいでまた何かが来ないうちに…」
今だに馬見ヶ崎はネガティブだ。
ショートランド泊地
工廠
北村北斗 「いや〜、これはひどいな…。」
北村が命からがら帰投した吹雪たち第一艦隊と、金剛たち第二艦隊の損傷具合をみて顔をしかめた。
夕立 「北村さ〜ん、どうっぽいっ?」
損傷の激しかった艦娘の一人の夕立が北村に聞く。まだ体中に包帯が巻かれ、痛々しい姿だ。
北村北斗 「言いづらいですけど、はっきり言ってもう艤装は取り付けることはできませんね…。」
吹雪 「それって…」
北村北斗 「除隊待ちの状態です。遠回りに言ってもう戦うことはできませんね。」
霧島 「そ、そんな…」
確かに影の艦隊のElite艦隊と戦闘を行い、かなりの損傷を負い、さらに続けて第一艦隊と第二艦隊は影の艦隊のなかで強大な力を持つ潜水空母影姫とも戦ったのだ。いくつもの無理が重なり、彼女たちの体は限界を迎えていたのだった。
北村北斗 「残念ですが、艤装が取り付けることができなくなった以上、皆さんにさらなる無理をさせるわけにはいきません。」
北村の声が、工廠内にこだました。
三号作戦の結果は、ガダルカナル島に取り残された多国籍軍は無事に海上自衛隊、航空自衛隊により救助、周辺海域の制海権確保に成功した。
しかし、犠牲も多かった。艦娘がなんと吹雪、綾波、暁、夕立、巻雲、高波、照月、古鷹、加古、比叡、霧島の11人が深刻な損傷を負い、轟沈こそしなかったものの除隊に追い込まれる結果となった。
ショートランド泊地 飛行場
提督 「成功ばかりではなかったな。」
栗林 「そうですね。覚悟していたことですがまさかここまでとは予想していませんでした。」
提督 「俺もだ。だが、誰も轟沈しなくてよかった。それだけでも俺は嬉しい。」
提督がさらに言葉を紡ぐ。
提督 「俺は自分に起きたことを二度と繰り返さないように、人に同じことが起きないように提督になった。…彼女たちはこの国、いや、この世界の希望だ。俺がしっかりしなければいけない。」
栗林 「そうですね。まずは吹雪さんたちにありがとうと伝えましょう。ブーゲンビル島で待機中ですので急ぎましょう。」
提督 「ああ、そうだな。」
提督が一機の連山に乗り込む。栗林は違うもう一機の連山に乗り込んだ。零戦の護衛が六機ついている。
操縦士 「蒼海提督、それでは離陸します。」
提督 「はい、よろしくおねがいします。」
栗林の乗った連山を先頭に二機の連山と六機の零戦がブーゲンビルに向けて飛び立ってい行った。
鉄底海峡中心部
??? 「このままで…済むと…思う…な…」
???が沈みながらつぶやき、艦載機を発艦させる。影の橘花だ。十六機の影の橘花が猛スピードで空を飛んでいく。???はそのまま静かに沈んでいった…
ブーゲンビル島 上空
提督 「ようやく作戦が終わった。それにしても吹雪たちには申し訳ないことをしたな…」
操縦士 「でも、作戦は成功しましたし、戦死者は一人もいませんでしたよ。艦娘の皆さんは頑張ってくれましたね。」
提督 「ああ、そうですね。ブーゲンビルに着いたらねぎらってあげよう。」
通信員 「ええ、それがいいですね。」
先頭を飛行している栗林搭乗の連山が飛行場に到着し、着陸準備に入っているのが見えた。
操縦士 「少佐、蒼海提督と同じ連山じゃなくて大丈夫だったんですか?」
栗林 「ええ、もし敵機に発見されても攻撃を受けやすいのは先頭の機です。提督の身を考えたらこうしたほうが生存性が高いと思いまして。」
操縦士 「そうなんですか!?やはり秀才には敵いませんね〜。」
栗林搭乗の連山が飛行場に着陸した。提督搭乗の連山は少し遅れているようだ。
栗林が連山から降りると、十六夜たちが待っていた。
十六夜 「栗林さん〜!」
栗林 「十六夜さん。戦闘での負傷は大丈夫ですか?」
十六夜 「もう大丈夫です!」
金剛 「テートクはまだデスカー?」
栗林 「あの連山に乗っていますよ。」
栗林が振り向き、連山を指差す。
その方向には提督が乗っている連山があるはずだ。
その時、栗林は見てしまった。
影の橘花が提督搭乗の連山に群がっている様子を…
提督搭乗の連山が着陸態勢に入ろうとした時に、影の橘花の襲撃を受けた。影の橘花は提督が搭乗しているのを知っているかのように激しい攻撃を始めた。
影の橘花の数は十六機。こちらはすでに着陸した連山と護衛の零戦を含めても八機だ。影の橘花が30mm機銃を撃つ。
機銃員 「クッソ〜!よくも!!」
機銃員が影の橘花を撃墜すべく機銃を放つ。しかし、高速を誇る影の橘花には機銃弾が当たることはなかった。零戦の奮闘も虚しく連山に攻撃が集中する。
バァン!!
左から爆発音が聞こえた。機銃弾を受け、遂に左エンジンから出火したのだ。
操縦士 「っ!!どうだ!消火できそうか!?」
整備員 「だめです!!このままではそのうちエンジンが停止します!!」
整備員の悲痛な叫びが機内にこだます。
提督 「…………」
不思議なことに提督は冷静だった。叫び声一つ出さずに、席に座っている。
左エンジンから炎を吹き出した連山は、急速に高度が下がっていく。このまま下がっていくと飛行場もしくは海面に激突してしまう。
だが、飛行場はもう目の前だ。
操縦士 「しょうがない!このまま胴体着陸する!」
被弾により車輪が出せなくなったため、胴体着陸を操縦士たちは決行を決意したのだ。
操縦士 「ものに掴まれ〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
連山が炎を吹きながら飛行場に向かっていく。
金剛 「大変デース!!!テートクが!!テートクが〜〜!!」
長門 「落ち着けっ!!着陸したらすぐに救助だ!!」
大慌てする金剛を長門が鎮める。すると
連山が飛行場に接触した。火花が飛び散り、凄まじい音があたりに響く。
そのまま滑走路を滑るように連山は進んでいく。
陸軍兵 「おい!連山が火を吹いてるぞ!消火用意だ!!」
飛行場で待機していた陸軍兵たちが消火器を持って、連山に向かい全速力で走る。ようやく動きが止まった連山に近寄っていく。
十六夜 「っ……!」
十六夜たちも連山へと近づこうとした。
その時
連山が大爆発を起こした。
陸軍兵たち 「うわあああああああああああああああああああ!!」
近くにいた陸軍兵たちが爆風で吹き飛ばされないように踏ん張る。
十六夜 「くっ……」
十六夜たちも爆風に吹き飛ばされないように踏ん張る。
ようやく爆発が収まった時、十六夜の目の前に何かがひらりと落ちてきた。
十六夜 「!!」
それは提督がいつも被っていた白い軍帽だった…。
十六夜 「提督………」
陸軍兵たちが消火活動と搭乗員たちの救出を開始した。何人かの連山搭乗員が助け出されていく。ほとんど全員がやけどを負っている。しかし、その中に提督の姿はなかった。
栗林 「…………」
栗林は空を見上げる。提督の連山を撃墜した影の橘花がゆうゆうと飛び去っていく。その姿を栗林はただただ呆然とみていることしかできなかった…。
第二章 完
まさかの提督が…。
近いうちに第三章を執筆します!(ちなみに提督機撃墜は史実の海軍甲事件を参考にしました)