ようこそ坂柳有栖のDクラスへ   作:いろはす@

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第3話:初めての学級会

- 能力のある人間の無自覚は、能力のない人間にとっては単なる当て付けだ -

 

By 折木奉太郎『氷菓』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、失礼極まりない金髪ボーイをぶっ飛ばし、これにて一件落着・・・とは行かなかったようです。

 

 

「必要性を感じないわ。失礼しても良いかしら?」

 

 

「けっ!俺らはガキかよ?自己紹介なんてやってられるか!」

 

 

私の振る舞いにドン引きしつつも、捨てゼリフを残して立ち去ろうとする黒髪さんに赤髪君。はぁ・・・面倒ですが、何としても引き留めなければなりません。ここは実力至上主義の学校。先々、安全で快適な高校生活を送るためには、初めに全員が情報と心構えを共有しておく必要があるのです。

 

 

「お待ち下さい、堀北鈴音さんに須藤健君」

 

 

「は?」

 

 

「あ?」

 

 

絶妙なコンビネーションを見せて立ち止まる、不良品のおふたりさま。意外と相性が良いのかも知れません。お高くとまってるツンデレさんに脳筋おバカさんだけど愛さえあれば関係ないよねっ。おにあい。

 

 

こんな深夜アニメ、あまり見たくありません・・・

 

 

「どうして貴女が私の名前を知っているのかしら?非常に不愉快なのだけれど?」

 

 

あくまでも非友好的な態度を変えない堀北さん。バスでの遣り取りで、取り敢えずお近づきになったつもりでしたが、どうやらわたくしの早とちりだったようです。

 

 

あ、貴女のお名前についてでしたね。そんなの、さっきもちらりと触れましたが、机にネームプレートが貼ってあるからに決まっているじゃないですか。ええ、そうです。さっきから私がクラスメートたちをフルネームで認識していたのは、これを見ていたからですよ。二次小説では、この点に言及しているケースは少ないようですけど。あれ?ということはそもそも、自己紹介って必要だったのでしょうか?(白目)

 

 

「・・・話すつもりが無いなら、もういいわ」

 

 

ひとりで話を纒め、そのまま出て行く素振りを見せる堀北さん。ここは敢えて、彼女を説得することにしましょう。本来なら、こんなまどろっこしい方法は取らないのですが・・・彼女は潜在能力がかなり高そうですので、懐柔して成長を促すやり方に方針転換です。(上から目線)

 

 

「貴女はこれからずっと、おひとりで過ごしてゆくおつもりなのでしょうか?」

 

 

私の問いかけに、彼女は振り向きながら答えます。

 

 

「ええ、その通りよ。私の能力なら単独の方が動きやすいわ。無能な他人はむしろ、足手まといになるだけだから」

 

 

おやおや、なんとも自信過剰なお嬢さんです。完全に孤独と孤高を履き違えているようですね。

 

 

「では、もしクラス単位で競う試験があったらどうします?」

 

 

「え?そ、その時は・・・」

 

 

やはり何も考えていなかったのか、堀北さんの返事は要領を得ないものでした。やれやれ、手間のかかるツンデレさんです。

 

 

「おひとりさまを貫き通すのはご自由ですが、その結果、堀北さんがこのクラスにとって足手まといになったとしたら、貴女は無能者だったという結論になりますが?」

 

 

「くっ・・・わかったわ、貴女の話を聞けば良いのでしょう?ただし、自己紹介はしないわよ?」

 

 

さて、残るはあとひとり・・・

 

 

「あん?俺は残らないぜ。早くバスケの練習がしたいからな。だいたい、どうしてお前みたいな()()の言うことを聞かなきゃならねえんだよ?」

 

 

ちび・・・?気が変わりました。彼はここで切り捨てましょう。

 

 

「ふふふ・・・ところで須藤君、あなたは『ジパング』というアニメをご存知ですか?」

 

 

「はぁ?俺の知ってるアニメは『スラムダンク』だけだぜ!」

 

 

聞いた私が愚かでしたね。ちなみにあのアニメには「戦闘『みらい』」という、素晴らしい処刑用BGMがありまして・・・

 

 

「西暦20XX年、謎の嵐に巻き込まれた海上自衛隊の最新鋭イージス艦『みらい』は、1942年6月のミッドウェー海戦当日へとタイムスリップしたのでござるよ!!」

 

 

私の思考を遮って、なぜか大興奮の外村秀雄君。やはり、ヲタクに恋と空気を読むのは難しいみたいです。

 

 

「なにをごちゃごちゃ、わけの分からねぇことを言ってやがるんだ?俺は行くぜ?勝手にやってろ、ちび!」

 

 

ちび・・・?二度も言った?お父様にも言われたことはないのに・・・

 

 

「ひっどい・・・」

 

 

「何よその言い方!」

 

 

「なんであんな不良がこの学校にいるわけ?」

 

 

おっと?思わぬ援護射撃です。サルヴォー!

 

 

「ちっ!な、なんか文句あるのかよ!?」

 

 

そんな女子たちからのブーイングにたじろぐ須藤君。おそらく、部活ひとすじだったあなたはご存知ないのでしょうけれど、女子グループに嫌われたら学園生活はジ・エンドですよ。(経験者談)

 

 

「どうやらあなたは、熱血バスケ少年のようですね。では、もしわたくしのお話を聞いて下さるのなら、あとでバスケの1on1勝負を致しましょう。こてんぱんに叩きのめして差し上げますよ」

 

 

「たかが1門の砲で何ができる?!」

 

 

どなたか、外村君を黙らせて下さいませんか?

 

 

「んだと?!上等だ!じゃあ自己紹介でも何でもやってやらァ!その言葉忘れんなよ?!」

 

 

敵意剥き出しで吠える須藤君。ふふふ、これでミッションコンプリートです。

 

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

ふぅ・・・やっと、面白くもなんともない自己紹介タイムが終わりました。男子はお調子者の山内春樹君に、思春期真っ盛りの池寛治君や、先ほどから目障りなアニメヲタクの外村秀雄君。ガリ勉っぽい幸村輝彦君はお名前をふたつお持ちのようですが、彼も中二病なのでしょうか?そしてまさかの男の娘枠、沖谷京介君・・・え?高円寺君?そんな名前の方、いらっしゃいましたっけ?(すっとぼけ)

 

 

女子の方は、ほぼ想定内です。全員とお友達になりたい症候群の櫛田さんを筆頭に、攻め(責め)は強いが守り(受け)が脆い軽井沢さんや、彼女が眼鏡を外したら、を地で行く佐倉愛里さん。実は出来る子、松下千秋さんなどなど・・・なんか、尖った方が多いですね・・・

 

 

さて、これでクラスメートたちのパーソナリティは、概ね把握できました。唯一、綾小路君の自己紹介には期待していたのですが・・・残念です。あと、この雰囲気の中でなおも自己紹介を拒否した堀北さんは、使い方を間違えなければ強力なお道具・・・ケホン!武器になるかも知れません。

 

 

「みんなありがとう。じゃあ坂柳さん、改めてお願いできるかな?」

 

 

平田君のイケメン采配で、再び私のターンが巡って来ました。このDクラスが飛躍できるかどうかは、これからの数分間にかかっています。団体行動が求められる以上、たとえ不本意ではあっても、他人との連携は不可欠だからです。

 

 

「なんだか学級会みたいだね。楽しみだなぁ。頑張って、坂柳さん!」

 

 

もはやお決まりとなりつつある、櫛田さんの陽キャアピール。相当ストレスかかってませんか、それ。いつか暴発しますよ?

 

 

「貴重なお時間を、再度有難うございます。では早速、ヲタク学級会を始めさせて頂きたいと思います・・・皆さん、天井をご覧頂けますか?」

 

 

さらっと学級会ネタを頂戴すると、私はバスガイドさんのように右手を翳しました。あ、外村君、そこは反応しなくて結構です。

 

 

「なっ?!か、監視カメラ?」

 

 

「うそ?あんなにたくさん・・・」

 

 

見上げて驚く生徒たち。やはり若干1名を除き、誰も気付いてはいませんでしたか・・・いえ、もうひとり、高円寺君のリアクションはわざとですね。食えない方です。

 

 

「ええ、見ての通りです。防犯目的にしてはあまりにも多過ぎる監視カメラ。廊下や階段にもありました。この事実と先程の茶柱先生による説明を踏まえれば、来月のポイント支給額は恐らく・・・」

 

 

いったん言葉を切り、クラスの反応を探れば・・・ふふふ、みんな良い子で聞いてくれていますね。ちょっとした口調や言葉選び、表情、仕草。他人を惹き付ける話し方というものは、時に学力や腕力をも凌ぐ武器となります。あ、私は全部持っていますが何か?

 

 

「いきなり10万円。おかしいとは思いませんでしたか?」

 

 

ここは敢えて切り口を変えて、相手の注意を引きましょう。

 

 

「え?だって、俺らにはそれだけの価値があるって・・・なぁ?」

 

 

愚かな反論を試みて、周囲に同調を求める池君。彼など最初からお呼びではありませんが、ここは会話を繋ぐために利用させて頂きましょう。

 

 

「ええ、確かに先生はそうおっしゃいました。では皆さん、これまで毎月のお小遣いはお幾らでしたか?」

 

 

高円寺君を除けば、みな一般家庭の子女のようです。まさか月10万円のお小遣いを貰っていた方など、居るとは思えません。はい?私ですか?甘え声でお父様におねだりすれば、幾らでもOKでしたが何か問題でも?

 

 

「・・・そうです。入学したばかりの私たちに、そんなお値段が付くはずがありません。それに値するのは、卓球と野球で全国大会に行かれたという、山内君ぐらいのものでしょう」

 

 

「ぐうっ?!」

 

 

当のご本人は、クラス中からジト目の視線を浴びて瀕死状態です。ほらごらんなさい。慣れないウソは危険なブーメランになるだけですよ?

 

 

「たぶん、わたくしたちの言動は、学校側に逐一監視されていると思われます。そしておそらくは、それらを数値化してポイントの支給額に反映する仕組みこそが『Sシステム』の根幹ではないかと。だから差し当たり今月中は、各自生活態度に注意しつつ、手持ちのポイントを温存する方向で過ごすべき・・・と考えました。もちろん、まだ推測の域を出ない仮定の話ですから、皆さんに強要するつもりはございません」

 

 

さて、現時点で話せる部分は話しました。クラスメートたちの反応や、いかに?

 

 

「え〜洋服やコスメいっぱい買おうと思ってたのに!」 

 

 

「プレステGETのチャンスがぁ・・・」

 

 

「ウマ娘のコスプレ衣装が遠ざかってゆくでござる・・・」

 

 

はぁ・・・若さゆえの過ちでしょうか・・・あと最後のは聞き違いでしょう、きっと。

 

 

「そっか・・・話してくれて有り難う、坂柳さん。おかげで浮かれた気分が引き締まったよ」

 

 

平田君が理解を示して下さったおかげで、クラスの空気は肯定的なものになりました。あとは口止めですね。

 

 

「いいえ、まだ確証はありませんので。あと、このお話はここだけのオフレコにするべきかと」

 

 

「えぇ?!なぜだい?むしろ学年全体で共有した方が・・・」

 

 

だからあなたは甘ちゃんなのですよ、平田ボーイ。

 

 

「もちろんその通りです。しかし、もし私たちへの評価が個々人だけではなく、クラス単位でも下されるものだったとしたら・・・」

 

 

「!!」

 

 

これには、平田君をはじめ、幸村君や堀北さん、松下さん辺りも強く反応しました。あら、このクラスも案外捨てたものじゃないですね。

 

 

「わかったよ。みんな、まずは今月いっぱい、坂柳さんの仮説をもとに過ごしてみないか?その後どうするかは、来月の状況を見て柔軟に判断しよう」

 

 

「うん!私も賛成だよ!ポイントは必要だしね」

 

 

「平田君がそう云うなら・・・」

 

 

「まぁ、確かにポイントは欲しいしなあ・・・」

 

 

上手いですね。頭ごなしの命令ではなく、あくまでも協力を求めるという形で、クラスの意見を集約させた好青年平田君。そして絶妙なタイミングでそれに同調した堕天使、櫛田さん。しかもポイントという、目に見えるメリットを示して。さすひら、さすくし。いまいち語呂が悪いですね。

 

 

さてと、警告はしました。あとは彼ら、彼女らがどう判断するかです。それを踏まえた上で力を合わせれば、自ずと結果は付いてくることでしょう。

 

 

では、次なるミッションは、いざ他クラスの偵察です・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?さっきの坂柳ちゃんのキックって、校内暴力だからポイントをマイナスされちゃうんじゃ・・・」

 

 

しーっ!そこはご都合主義というものですよ、池君。バキッ!(ハイキック一閃)




次回第4話『初めてのお散歩』

新たな出逢い・・・あとは若い人同士で。
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