- 学校生活は選ぶことの繰り返し。けれども選択肢は無限にあるわけではなく、考える時間も無限にあるわけではない。私たちに与えられた猶予は、僅か3年間だ -
By 煉獄杏寿郎『鬼滅の刃』
「はぁ、はぁ・・・さ、探したぜ。さっきの1on1の話、忘れてねぇだろうな?」
バスケットボールを手に、詰め寄ってくる須藤君。呼吸も荒くて、みるからに変態さんです。ちっ!すっかり忘れていました・・・仕方ないですね、さっさと終わらせましょう。
「ええ、もちろんです。では、どこで致しましょうか」
なぜか自分の言葉が卑猥に聞こえてしまうのは、きっと疲れのせいでしょう・・・
「おう!学生寮の近くにバスケコートがあるのを見付けたんだ。そこでヤろうぜ!」
まさに、好きこそものの上手なれ。その熱意を少しでも勉学に向けて下されば・・・ムリでしょうね。あと、意図的な誤字はやめて下さいごめんなさい。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ふぅ・・・須藤君は、まるで散歩に行きたくてリードを引っ張る飼い犬のように、ものすごい勢いで私たちをバスケコートまで連れて来ました。どれだけバスケ好きなのでしょう。その興奮した様子に、かなりのギャラリーまで集まってくる始末です。あら、同じクラスの方々も、ちらほらと。これはもしかして、彼をアピールする絶好のチャンスなのでは・・・
「よっしゃあ!じゃあ先攻は譲ってやるよ。かかってこいやー!!」
「承知しました。では綾小路君、どうぞ」
「「は?!」」
見事な男性二部合唱。合唱コンクールがあれば、優勝も夢ではないかも知れません。
「いや、オレは聞いてないんだが・・・そもそも、バスケをやったことがない」
ホワイトルームのカリキュラムにそんな盲点が?!偉そうなこと言いながら、いったい何をやっていたんですか?綾小路パパさん!
「はぁ?ど素人出してくるとか、舐めてんのかよ!お前が勝負するって言ったんだろ?坂柳!」
では、ここはひとつ、
「いえ、綾小路君は作られた天才です。影が薄いのは世を忍ぶ仮の姿。その正体は、とある施設であらゆる技能を身に付けた、いわば最高傑作なのです」
隠すからこそ、秘密は秘密足りえます。バラしてしまえば、それはもはや単なる妄想ストーリー・・・信じるか信じないか、それはあなた次第です。デデン!
「なにその痛い中二病設定・・・?」
「そ、その施設とは、ショッカー?虎の穴?それともSOS団でござるか?!」
少なくとも最後のは違いますよ、外村君。
「なんかよくわかんねぇけど、早くしろよ!」
ベッドの中でもせっかちな殿方は嫌われますよ、須藤君。
ボールを手に、まだ躊躇っている綾小路君に近付くと、私はそっと耳打ちしました。
「力を持っていながらそれを使わないのは、愚か者のすることです」
僅かに彼の表情が動きました。
「・・・どこでそれを?」
「ふふふっ・・・全力を出して下さるなら、あとで教えて差し上げますよ」
これで須藤君の完敗は確定です。
「あのリングに入れればいいんだな?」
確認すると、彼はおもむろにボールを放ちました。美しい放物線を描いたそれは、微かな音を立ててゴールに吸い込まれ・・・
「え?」
乾いた音と共に地面を転がるバスケットボールと、固まる須藤君。ふふふっ・・・残念ですが相手が悪すぎましたね。
「ま、マジ・・・?」
「超ロングシュート?」
「ジョ、ジョーンズ!!?」
誰かいい加減、外村君を・・・いえ、何でもありません。
「く、くそ・・・!バケモノかよ・・・」
遂に力尽きたバスケ少年。お疲れ様でした。その後、1on1は予想通りの結果に終わりました。綾小路君は、この短時間で須藤君の動きやテクニックを吸収し、圧倒してみせたのです。まずはさすが、と言ったところでしょうか。
「お見事です、綾小路君。素晴らしいプレーでした」
「相手が弱すぎただけだろ」
その言葉、後ろの彼には聞かせない方が宜しいかと。
「スゲぇじゃねえかよ!悔しいけど俺の負けだ。つーか綾小路!バスケ部入らねえか?お前となら、マジで世界狙える気がするぜ!」
本当に男子という生き物はチョロいですね。昭和のスポ根アニメの香りすら漂わせながら、須藤君は彼と肩を組んで青春しています。
ふふっ・・・あれでもう、親友になったつもりなのでしょう。いずれにしろ、綾小路君の実力の一端を見せつけることが出来ましたし、須藤君の懐柔にも成功です。我ながら完璧な結末。勝利を祝う今夜の晩酌は、ヤクルト1000を2本に増やすことに致しましょう。
「やだ・・・綾小路君って、かっこいい・・・」
「よく見たらイケメンじゃない?」
「あとで連絡先交換して貰おうかな・・・」
ちっ!このメス豚どもがっ!訂正。今夜の晩酌はネルノダに変更です!
「どうした?坂柳。なにか怒っているのか」
汗ひとつかいていない様子で、私に問う綾小路君。ええ、とっても怒っています。あなたの価値や苦しみなど、何もわかっていないニワカどもに。
そんな心の声を飲み込んで、私は今度こそ学生寮へ向かうことにしました。
「いいえ、なにも。それよりさっさとお部屋に帰りましょう。すっかり余計な時間を費やしてしまいましたから」
「そうだな」
ばらけ始めた見物客の人垣を避けて、私たちは足早にその場をあとにしました。
「それで、いかがでしたか?本気を出したご感想は」
これから毎日、通学路となる景色を眺めながら私は彼に尋ねました。
「特になんともないな・・・」
無表情に答える綾小路君へ、更に言葉をかけようとした次の瞬間、
「きゃ?!」
取り敢えずかわいい悲鳴をあげながら、私はバク転して
「へっ!これを躱すとか、まともじゃないぜ。いままで、この不意打ちを避けることができたヤツはいねぇ」
「これまでのお相手が、雑魚ばかりでいらしただけでは?」
そこには、見るからに柄の悪い長髪男子とその手下の不良君1号、そして巨漢のサングラス黒人君にちょっと拗らせた感じの青髪美少女が居ました。これはまた、ずいぶん濃い面子を集めてきたものですね。
「クククッ・・・俺は龍園翔。Cクラスの王だ。まあ、今のうちにほざいておけよ。お前は最後に潰してやるぜ、坂柳有栖」
「あら、こちらがお呼び立てしたわけでもありませんのに、お仲間を連れてわざわざ自己紹介にいらして下さったとは・・・よっぽどお暇なのですね、ドラゴンボーイさん?」
「てめぇ・・・次にその呼び方をしたら・・・」
「おや、お気に召しませんでしたか、ドラゴンボーイ」
「てめぇ!!」
空気を切り裂く飛び蹴りを紙一重で避けると、私は背後から彼の首筋にそっと手刀をあてがいました。チェックメイトです。それなりの力はあるようですが、武道を習っている動きではありませんね。さしずめ、修羅場で磨かれた独学の戦闘スタイル、といったところでしょうか・・・
「次はありませんよ、龍園君?」
私は謎めいた微笑を浮かべて、怒り狂う彼を牽制しました。
「ちっ・・・!おもしれぇ。いまはせいぜい、勝利の優越感を味わうんだな。だが俺はしつこいぜ?これから四六時中、お前を付け狙ってやる。飯を食ってる時も、寝ている時もだ。それこそ風呂や便所に居る時もな。クククッ」
「え?!りゅ、龍園君・・・?」
私は敢えて、弱々しい声を出しました。女子は誰もが女優さんなのです。ただし、演じすぎると櫛田さんみたいになってしまいますが。
「どうした?早速ビビってチビッたのかよ」
上手く韻を踏んだからってドヤ顔しないで下さい。それよりも・・・
「あなた、まさか・・・」
両手で自分の身体を抱きしめながら、私はぽつりと言いました。
「私のお風呂やお手洗いまで付け狙うとか、その顔でロリコンさんなんですか?」
「なっ?!」
「ぷっ!」
後ろの青髪さんが吹き出しました。彼女とは、今後お友達になれるかも知れません。
「クソが・・・お前は絶対に、潰す!」
「ええ、楽しみにしております」
怒りが収まらない様子のドラゴン君は、去り際に振り向くと、私の肩越しに揶揄するような視線を向けました。
「ククク・・・ひとつアドバイスしてやるぜ。手下はもうちょっとマシなヤツを選ぶんだな、坂柳」
はぁ・・・やはりあなたも所詮、その程度ですか。綾小路君の実力に全く気付かないとは・・・それでは彼の相手など、100年経っても務まらないでしょうね。ごきげんよう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ドラゴンボーイと愉快な仲間たちが消え、再び歩き始めた私たち。綾小路君は何事もなかったかのように、会話を再開しました。
「あいつら、監視カメラの無い場所を選んできたな」
「むぅ・・・そんなことより、ここはまず『怪我はないか?』のひとことでしょう?」
「なぜだ?お前、全く無傷だろ」
ダメです。会話が噛み合っていませんね。
「ところで、どうして助けてくれなかったのですか?」
そう言って恨めしげに彼を見上げましたが、大した反応はありません。
「あの程度の相手に、敢えて手助けするまでもなかったと思うが?」
つまり、もう私の技量を見抜いたと?
「たとえそうであったとしても、女の子は王子様に助けて欲しいものなのです。綾小路君は、もっと女心というものを学ぶべきですね」
「済まん・・・言ってる意味がよく分からないのだが。どうしてそこで、いきなり王子様が出てくるんだ?」
やはり彼とは一度、ゆっくりお話をする必要がありそうです・・・
中略
さて、どうしてこうなったのでしょうか?
「お前のような妹が居ると、恥をかくのはこの俺だ。今すぐこの学校から去れ、鈴音」
「嫌です兄さん!私は必ずAクラスに・・・!」
「無理だと言ったはずだぞ。また痛い目に遭いたいのか」
いま、私は学生寮の裏手で茂みに隠れ、お覗き・・・ケホケホ!偵察行動中です。ハードな入学初日が終わり、寛いでいた夜半過ぎ。寮の自販機へ飲み物を買いに出た私は、何やら慌てた様子の堀北さんを見かけ、ストーキング・・・ゴホゴホ!あとをくっ付いて行ったら、兄妹の禁じられた遊びを見せられる羽目に。しかも背後には最高傑作の気配・・・
本当に彼ときたら、事なかれ主義とか言いながら、こうして陰でせっせと暗躍しているなんて・・・ふふふ、無表情なツンデレ少年なんて、かわいらしいじゃありませんか。
「?!」
と、堀北さんの足が宙に浮きました。これはさすがに不味いです。咄嗟に飛び出した私は会長の右手首を掴みました。
「なっ?!お前は・・・!」
「なっ?!ではありませんよ、生徒会長さん。ここで止めなかったら確実に刑事事件になってましたよね?詳しい事情は存じ上げませんが、シスコンも度を過ぎると嫌われてしまいますよ?」
「・・・その手を離せ」
次の瞬間、凄まじい速さで鼻先を掠める裏拳。バックステップしながら続く上段蹴りを躱し、伸びてきた左手も払い除けました。分かってはいましたが凄い攻撃です。
「ほぅ・・・今のを躱すとは、何かやっていたのか」
「・・・空手と柔道、合気道に截拳道、それとマーシャルアーツを少々・・・」
あ、ネタではありませんからね?これらが全て免許皆伝とか、自分の才能が怖いです・・・テヘペロ(・ω<)
「それだけやっていたら、少々とは言わん・・・」
生真面目に答える生徒会長さん。ご本人はお認めにならないでしょうけれど、あなたと妹さん、そっくりですよ。頑固で融通がきかないあたりとか、特に。
「さ、坂柳さん?どうしてあなたがここに・・・」
呻くように呟く堀北さん。大好きなお兄さんの前だからなのか、すっかりしおらしい態度になっています。その方が絶対にお友達が増えると思いますけど。
「なるほど・・・お前が坂柳有栖か。学科、面接ともに満点の首席入学だったのに、なぜかDクラス配属になったイレギュラー」
なんとまぁ、個人情報をぺらぺらと。しかも特大のヒント付きとは、やっぱりあなたもツンデレさん?!
「あと、もうひとりも出て来い。そこに居るのは分かっている」
あっさり看破され、姿を現す綾小路君。まあ、半ば意図的な行動なのでしょう。
「お前は・・・確か、綾小路清隆だったな?入試結果が全科目50点だった・・・」
は?清隆君、あなた何をしているのです?力がありながらそれを使わないなんて、まさしく愚か者ではありませんか。
「鈴音、まさかお前に友達が居たとはな」
「いえ・・・このふたりは友達なんかじゃありません。事なかれ主義の隣人と、ただのつるぺたロリガールです」
なんっ?!わざわざ助けて上げたのに、その言い草ですか!?てかその表現、無意識に高円寺君からパクりましたね?お父さんは、そんな品のないことを言う娘に育てた覚えはありませんよ!
「ふっ・・・お前がそんな言葉を口にするとはな。少しは成長したということか」
そこは叱るところでしょう?お兄さん!
「・・・はっ?!そ、それは・・・はうぅ・・・」
お兄さんに指摘され、今さらながらに顔を真っ赤に染めて狼狽える鈴音さん。自分で口走っておいて、ブラコンのツンがデレるとか誰得ですか?それよりも、私の名誉はどうなるのでしょう。
「50万PPだ」
すると、悶える妹を捨て置いて、唐突にお兄さんが告げました。え?まさか妹さんの恥ずかしい姿は有料配信コンテンツだったんですか?!しかもお高い・・・www
「ふたりとも端末を貸せ」
・・・なるほど。綾小路君は一部始終を撮影していたようですし、生徒会長としては不都合な真実を買い取るつもりなのでしょう。なんでもポイントで解決するのが、ここのやり方・・・
「ほぅ・・・この額では不満か?」
私たちの反応が鈍いのを勘違いしたのか、生徒会長の眼鏡の奥に宿る殺気。ずいぶんせっかちですね。ならば・・・
「いえ、ポイントは要りません。その代わり、私たちを生徒会に入れて頂けませんか?」
ここは単刀直入です。転がってきたチャンスボールは、しっかり決めましょう。
「ふっ・・・ずいぶんストレートだな。しかしその判断力、なかなかのものだ。この学校は実力至上主義。そして生徒会は常に有能な人材を必要としている・・・明日から来られるか?」
おや、まさかの即採用。ビズリーチ!その判断力、なかなかのものですね。(謎の上から目線)
「はい、もちろんです。では、どうぞ宜しくお願い致します」
「こちらこそ宜しく頼む。ところで『私たち』と言うには、綾小路も一緒と考えて良いんだな?」
そこを拾って下さるとは、さすがです!会長。
「は?いや、オレは・・・」
「ええ、おっしゃる通りです。彼は作られた天才ですので、きっとご期待に沿えるかと」
他人事みたいに突っ立っていた綾小路君に反論の余地を与えず、私は言葉を被せました。何しろ彼は、ホワイトルームの最高傑作なのです。それなりの立場を与えたら、直ぐに学校中の注目を集める存在になるでしょう。今後は悪い虫(♀)が付かないように、定期的な害虫駆除が必要となりますね。(澱んだ目)
「そうか。期待しているぞ」
天才云々の部分は見事にスルーして答える、堀北学君。(さらっと友達扱い)ふふふ・・・たぶんこれから、この学校を揺るがす驚くべき展開が待っていると思いますよ、会長さん?
「いえ、だからオレは・・・はい、宜しくお願いします」ボソッ
そして、私と会長が放つ無言のプレッシャーに屈する清隆君。そうです、あなたはどんどん前に出てゆくべきなのですよ。
「そんな・・・坂柳さんはともかく、どうして綾小路君まで・・・?」
一方、やっと悶絶から立ち直り、戸惑うばかりの堀北妹。(呼び捨て)まあ、いまの彼女では、彼の実力を推し量ることなど不可能でしょう。あなたが毎日コンパス責めしている相手は、規格外の天才なのです。
「ふっ・・・どうやら、新しい風が吹き始めたらしいな」
口元を僅かに緩める、堀北生徒会長。こういうタイプの方は、放って置いても勝手に自己完結してくれるので、手間がかからず楽ですね。
「鈴音、Aクラスに上がりたければ必死で足掻け。それと坂柳、お前は人を見る目も確かなようだ。生徒会の役員席にはまだ、若干名空きがある。これから誰か育ててみるのも一興だろう」
はぁ・・・しちめんどくさいシスコンさんですね・・・私に妹の育成を丸投げするとは・・・もっと素直になれば、人生気楽でしょうに。
「ときに会長、あなたは『冴えない彼女の育て方』というアニメをご存知ですか?」
「ん?待て。あれは地味な娘をギャルゲーの主役に仕立てる話だ。そもそも鈴音とは根本的な立ち位置が違・・・はっ?!」
「え?に、兄さん・・・?」
ふふふっ・・・やはりあなたはシスコンアニメヲタクでしたか。生真面目で知的なイケメン眼鏡。実はそれこそが、オタッキーの外面的特徴のひとつなのです。おや?眼鏡が曇り始めましたが、どうなさったのでしょうか。一時的に不自然な体温の上昇と発汗量の増加が見られますよ?
「ふふっ・・・続きは会長のお部屋でお聞きしても宜しいでしょうか」
「な?!そ、それはダメだ!まだ橘も部屋に入れたことは無いのに・・・はっ?!」
「・・・兄さん。その橘という女は誰ですか?」(真顔)
ひょ?!堀北さんが一瞬でヤンデレに?!ここは即時撤退あるのみです。
「す、鈴音?どうして橘が女子だと分かったん・・・はっ?!」
動揺のあまり、自ら傷口を深くする生徒会長さん。ワロタwww
「続きは兄さんの部屋で伺います」
「ま、待て!いますぐこの学校を去れ、鈴音!」
「この状況では全く説得力が感じられません。いったい何を慌てていらっしゃるのです?兄さん」
一気に凄みを増す堀北ヤン音さん。大したものです。
「お、落ち着け。よし!お前の時間を言い値で買い取ろう。この学校では、ポイントで買えないものはない。いくらでもいいぞ、言ってみろ。そうすれば、作りかけの美少女フィギュアを隠す余裕が・・・」ボソッ
声に出てますよ、会長さん。ヲワタw
「このままでは、妹の私が恥をかくだけです」
「くっ!あとはせめて、朝潮型駆逐艦娘のセーラー服を片付ける時間さえあれば・・・はっ?!」
「セーラー服・・・橘・・・女子の影・・・いますぐお部屋に行きましょう、兄さん」 ハイライトオフ
「くっころ!」
「ふぅ・・・帰りましょうか」
実の妹に引き摺られる会長さんを見送ってから、私は口を開きました。子供には見せられない兄妹のプロレスごっこが、最後は笑えない結末に・・・タイトルをつけるなら、さしずめ『恐怖!機動
「オレは初めて、恐怖というものを理屈ではなく感覚で理解した気がする」
彼がぼそりと呟きました。
「奇遇ですね。わたくしもですよ、清隆君」
こうして彼は、感情というものを学んでゆくのでしょう。それだけでも、この学校に来た甲斐があると言えるはずです。
「ところで坂柳、生徒会長の最後のセリフはどういう意味なんだ?」
あなたには、まだ早いです。
「大した意味はありません。カニクリームコロッケの略称ですよ。たぶん、晩ごはんのリクエストだったのでしょうw」
「もうひとつ、いいか?」
「ええ、どうぞ。ただし真剣交際の申し込みでしたら、もっと雰囲気のあるシチュエーションでお願いしますね」
「・・・さっきから、時々坂柳のセリフに付いてる小文字のwって、何なんだ?」
次回第6話『ようこそ独身至上主義の職員室へ』
ポイントで、不都合な真実を買い取りましょう。