尾張ホグワーツと魔法の世界   作:ケンタ〜

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禁じられた森のお話です。入学初日に森に入ります。

あと1000UV感謝!


男と禁じられた森

 「あんたがいりゃあ、何も心配することはねえ」

 

 ハグリッドはランプを掲げ、黒く生い茂った、背の高い木々の間にうっすらと見える獣道に足を踏み入れた。獣道は霞がかった森の向こうまで伸びている。

 

 「まあ、パトロールみたいなもんだ。何もないことに越したこたあねえ。途中までは一緒に行こう」

 

 男はその後ろについて行った。

 

 ハグリッドはもう片方の手に石弓を持っていた。既にそれには矢が装てんされており、いつでも撃てるようになっている。

 

 森は不気味なほどに静かだった。鳥のさえずる音すら聞こえない。二人の足音と木々の向こう側から吹いてくる風の音だけが聞こえる。

 

 男は歩きながら空を見上げた。ほとんど星空は覆いつくされているが、枝の隙間から漏れ出る月の光が見える。全く美しいというにふさわしいものだった。木漏れの光と頬を撫でる冷たい風、これらに勝る情景は……いや、他にも存在するだろうが、あえて……存在しないだろう。

 

 すると、獣道が二手に分かれているところで、ハグリッドが足を止めた。

 

 「じゃあ、おれは右に行く。お前は左へ行ってくれ」

 

 「分かった」

 

 男はその通りに左へ向いた。

 

 「ああ、そうだ。ちょっとまってくれ」

 

 ハグリッドはそそくさと行ってしまう男の足を止めた。

 

 「何かあったら、杖で赤い光を打ち上げてくれ。そうしたらおれが駆けつける」

 

 男はしっかりと頷いた。

 

 「分かった。自分は?」

 

 「おれは心配いらねえ。何年ここでやってると思ってる。心配せんでええ」

 

 「そうか」

 

 「じゃあ、行くぞ」

 

 ともに歩く人がいなくなったことで、森は一層静かになった。男は自分の呼吸音が意識せずとも聞こえることに気が付いた。それだけ静かであった。

 

 苔むした切り株を男が通り過ぎた時、彼は川の水の流れる音を聞いた。

 

 しばらく歩いても、何もなかった。視界に映るのはただ、鬱蒼と生い茂る木々の幹と、絨毯のように地面を覆う落ち葉、それらを薄く覆う霞だけだった。

 

 男は足を止めた。ついに聞こえるのは、彼の呼吸音だけになった。しかし、男はそれ以外の何かを、確実に察知していた。

 

 「あなたの存在は、どう星の動きを見ても、予想できない」

 

 男の目の前の開けた空間に、霧の向こうから現れたのは、赤い髪と赤い鬚をもつ人間の上半身と、滑らかな栗毛に赤みがかかった長い尾の馬の下半身を持つ動物……ケンタウルスだった。

 

 男はケンタウルスに近づき、その前でヨーロッパ式のお辞儀をした。

 

 「こんばんは、ロナン」

 

 「こんばんは、ナナシ」

 

 ロナンと男は互いに挨拶を交わした。

 

 「お元気ですか、ナナシ」

 

 ロナンは静かに聞いた。

 

 「なんの苦労もなく」

 

 男は静かに答えた。

 

 「それは良かった」

 

 ロナンはそう言ってからフーッとため息をつき、首をブルルッと振って空を見上げた。

 

 「今夜は木星が少し暗い」

 

 それに続いて、男も空を見上げた。

 

 「その通りだ」

 

 男は少しの間をおいて、空を見上げたまま言った。

 

 「しかし、その衛星が今日は少し明るくなっている」

 

 「見えるのですか?」

 

 ロナンは男の方を向いて聞いた。

 

 「見える。特に内側から三つの星が……一番外側の星も、少し。それらが木星に重なっている……」

 

 「あなたは良く見えているようだ」

 

 「見えたとしても、たいした意味は分からない」

 

 男はロナンに向き直った。

 

 「ケンタウルスならばわかるかもしれない。しかし、見えなければ……」

 

 男はそこで口をつぐんだ。

 

 「会えてよかった。しかし今は他の物を探している」

 

 「そう。それならば、また」

 

 「また」

 

 互いに挨拶をして、二人は分かれた。男の背中後ろで、蹄の規則正しい走る音が聞こえた。

 

 男がまた歩いて行くと、だんだんと獣道が小さくなっていった。30分も歩けば、すでにそこに道はなく、自然の地面が広がるばかりであった。

 

 樹齢何千年の樫の向こう、びっしりと地面に根を張っている地面の向こうに、開けた平地が見える。

 

 そこには純白に光り輝くものがあった。

 

 額に生える美しくも堂々とした角、月夜に照らされてきらきらと光る銀色の尾、一点の穢れもない、純粋な白い毛並み……間違いない。それはユニコーンだった。

 

 男は樫の木の根を超え、ユニコーンに近づいた。

 

 ユニコーンは男の方を見ていたが、警戒している様子はない。

 

 男はユニコーンの体に手を伸ばし、触れた。さらさらとした心地よい毛並みの感触が、男の手に伝わった。

 

 その時、男は急に眉を寄せた。そしてばっと空を見上げた。

 

 その男の様子を、ユニコーンは見つめていた。どことなく不安げな表情に見えた。

 

 「火星が……」

 

 男はぽつりとつぶやいた。

 

 「いやしかしまだ……」

 

 男は顔を戻し、次はユニコーンに目を合わせた。

 

 「今日か昨日か明日か、あるいはもっと先か……」

 

 男はまた呟くように言った。

 

 その眉間はしわが寄せられたままだった。

 

 「何かが……」

 

 ユニコーンは、その場で前足を曲げ、ひざまずくような格好になった。

 

 「ありがとう」

 

 男はその背中にまたがった。

 

 ユニコーンが蹄の音を響かせて、森の中を、男が元来た道をたどるように走った。

 

 「ナナシ?」

 

 途中で男はロナンとすれ違った。ロナンはユニコーンに追いついて並走した。

 

 「何があったんですか? それにユニコーンに乗るなんて」

 

 ロナンは息を荒らげながら聞いた。

 

 「木星が暗い。火星が変わる」

 

 男はそれだけ答えた。

 

 ロナンは少しの間だけ、走りながら空を見上げたが、

 

 「私にはわからない」

 

 と訝し気な顔をして言った。

 

 「いつか分かる」

 

 向こうにはハグリッドがいた。

 ユニコーンはハグリッドの前でゆっくりと止まり、男は素早く降りた。

 

 「ありがとう。気を付けて」

 

 男が言うと、ユニコーンは来た道をそのまま走って森の中へ消えて行った。

 

 「何があった? それにロナンも……」

 

 ハグリッドは動揺しながら言った。

 

 「何があるかは、ナナシが知っているそうだ。私には分からない」

 

 ロナンもその場を走り去っていった。

 

 「森を出よう」

 

 男は少し声を大きくして言った。

 

 「何かが起きる。ハグリッド、予想は正しかった。必ず何かが起きる。いつかは分からない。もう起きているかもしれない……」

 

 「なんだか分からんが……分かった。小屋ん中で詳しく聞かせてくれ」

 

 二人は走って獣道を辿った。

 

 何かが起こる。それは正しかった。




読んでくださりありがとうございます。感想、評価、とても励みになります。

1000UV感謝。

これからも気ままにやっていきます。良ければまた次回もまた。

男がホグワーツに入るとしたら、どんな寮がいいでしょう? 参考までにお願いします

  • グリフィンドール
  • ハッフルパフ
  • スリザリン
  • レイブンクロー
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