オーバーロード 嗤う骸骨は帰りたい   作:嘆きのラジオ

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決着

決着は一瞬だった

 

狼人族長グレムリン・バールゲンと迷い族長クライ・アンドリヒ、

二人の強者が殺し合う

だがそれは余りにも一方的な試合だった、グレムリンの閃光のような猛攻に最初こそはなすすべなくやられていると思った

 

それを目にした感想は落胆だった

だが彼女のその気持ちはすぐに裏切られた

 

一方的に攻撃を続けていた筈のグレムリンが唐突に距離をとった

その表情には当初の余裕がなくなっていた

まるで怪物でも見るかのような、得体の知れない何かをみるようなそんな視線だった

 

「うそ」

何故か?、それはすぐに理解できた、あれだけの攻撃を受けてクライは無傷だった

正面から、後ろから左右から足元から頭上から、あらゆる方向からまともに攻撃を受けた筈なのに一切動かず、ダメージどこらか傷ひとつを負っている様子もない

 

「武技、撃速猛進」を使い

オーラを纏い己の肉体を武器と化し突進したグレムリンが弾き飛ばされる始末だ

 

そんな圧倒的な光景に次第に観客は言葉を失っていた

当たり前だろう、連合内で彼の実力は1,2を争うほどだ

そんなグレムリンの攻撃が通用しない

 

迎撃や防御をするならまだしも、何もしないで無傷なんてあり得るはずがない

魔法も使った、だがそれでも傷を負った様子はない

 

タネのわからない、その異様な光景に場の空気は飲み込まれた

 

攻撃に対して一切の防御行為を行わない理由

それは余裕、あまりある実力差から生じる強者にのみ許された余裕だった

 

証拠に彼はその場から一切動こうとしない

それどころかまるで「その程度か?」とでも言うようにグレムリンを煽る

獅子は獲物相手には本気を出さない、出す必要がない

それは証明だった貴様などいつでも殺せる、と案に物語っていた

 

激昂したグレムリンが雄叫びを上げながら獣化を使う

それは狼人族長にのみ許された奥義

本来の姿

 

一匹の狂獣になる為の能力

 

それは顕著に現れた、グレムリンの筋肉は肥大化し、二足歩行から四足歩行に推移

鉤爪や牙はその殺傷能力を向上させる

より長く、より鋭く、より硬く、より獰猛に

 

そこには理性なき魔獣がいた。名を「鬼狂戦狼(バトルウルフオーガ)」

咆哮は大地を震わせ、鋭利な鉤爪は踏みしめた大地を削り

獰猛な牙から滴り落ちる唾液は触れたものを溶かした

 

災害と恐れられた災害級モンスター

 

だがそれをみてもクライには一切の焦りも恐れみえなかった

 

呆れたようにやれやれと言いながら

クライが放った一言

「君に本当の魔法を魅せてあげるよ、」

その瞬間、決着がついた

 

グレムリンだけでなくリネルを除いたコロシアムにいた亜人の全てが地面に体を押し付け平服していた

あまりの異様な光景にリネルは眠ってしまったのではないかと疑ったほどだ

 

だが現実だった、よくみれば地面に平服している亜人の下の地面がめり込んでいた

 

「まさか、、重力魔法、しかもこれだけの規模を詠唱もなしに、一瞬で」

魔法は強力であればそれに比例して魔力消費量、難易度、詠唱時間が長くなる

それはどんな者でも、どんな魔法でも変わらなかった、

だが稀にそんな世界の常識に縛られない存在がいた

 

「逸脱者、いえ、それ以上の」

リネルは震えずにはいられなかった

あれだけの魔法を、更にこの規模でキャスト時間が一切なく行使できるなどそれは世界の常識から外れた超越者のそれだ

 

噂では法国の二人の神人は、評議国の竜王、裏世界のアンデッド、そして魔導王くらいだろう

 

グレムリンは立ち上がろうとするがその身体は強力な重力を前に動かない

無理矢理重力に逆らおうとするが、押し潰すほどの圧力からグレムリンの強靭な骨が砕け激痛が彼を襲う

そしてコロシアム内にいるリネルを除いた亜人は例外なく重力の影響下にあった

 

無論、各亜人族長も対象である

 

コロシアムを見渡しリネルはそれをみつけた

観客席、そのなかでもVIP席と呼ばれるコロシアム全体が見渡せる特等席で二人の雌雄を観戦していた族長も同じようにひれ伏していた

 

〜グレムリンは地面にめり込みながらもその視線はこの魔法の使用者であろうクライをしっかりと捉えていた

 

失った筈の理性は激痛とともに取り戻し、己が状況を理解した

 

(俺は負けたのか、、)

大地にひれ伏しこちらを見下ろす白銀の狐人、誰から見ても勝敗は明らかだった

全力を出し、戦闘能力の一切を、動けるままに封じられた

認めるしかなかった

 

連合から新しい亜人種を迎いいれようと提案されたとき、そしてなお対面した瞬間も、わざわざスカウトする必要があったのか疑問だった

 

歴戦の猛者であるグレムリンからみて神秘的な雰囲気を纏ってはいるものの強者特有の覇気、そして言葉から感じられる自信がなかった

 

こんなやつが族長か、グレムリンはガッカリしていた、仮にも自身と同じ群れのトップがこんなにも不甲斐ないとは、、と

だからこそグレムリンは部族間の争いが禁止というルールを破りクライに突っかかった

 

亜人連合、異種混合の群れに弱い奴は要らない、

 

だがその思惑は大きく外れた

人語を介してもなおこちらは狼人の言語を続けた

 

そんな自身を前にクライは肩をすくめながら

言い放った

 

(俺等に必要なのは対話ではなく、闘争か、、)

一切の躊躇なく放たれた言葉、長年、族長として、亜人領を仕切る一人の獣として、そこまで言い放ったのはクライが初めてだった

 

だからこその挑発にのった

その自信をへし折りたくなった

 

(まぁ折られたのは俺のほうだったがな)

 

眼の前にいる男は自分よりも遥かに強力で強大だった

自身の持てる力全てをぶつけ、真正面から受け止められ

そしてたった一撃の魔法で負けた

 

しかも殺さないように手加減までされた

 

連合の族長はまだ決まっていない、だが今回の決闘でそれは決まったようなものだ

コロシアム全域を巻き込んだ重力魔法、そしてその範囲内にいた族長全てがそれに対し抵抗できずにいた

 

そのなかには魔法職を納めているものもいた

 

だが皆等しく地面にひれ伏した

それは彼に勝てるものがいないという表れ

殺さないように手加減するということはいつでも殺せるという証明

あえて全ての攻撃に対し無抵抗だったのは圧倒的強者故の自信だった

あまりにも規格外、生物としてのスケールが、次元が違いすぎた

 

最早彼を、クライ・アンドリヒを疑う者は一人として亜人連合にはいない

重力が解かれ、その影響下から解き放たれ、グレムリンは立ち上がり、眼の前の亜人を見下ろす

軋む体に鞭を打ち、眼の前の男を見る

 

初対面のときと何も変わらない

 

その仮面からは驚きも、焦りも感じられない、

そこにあったのは

「まだやる?」

 

ー余裕だったー

 

「いや、、、」

グレムリンは即座に跪いた

 

「御身の力、大変感服致しました、今までの御身に対しての無礼な行いの数々どうかお赦し下さい」

認めるしかない、眼の前にいる御方こそ亜人連合の総族長なのだと

「そのためなら俺、、いや、私、グレムリン・バーグはこの命を持って償う所存であります」

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