「…命をかけてまで、、、か」
モモンが探索前にワーカー全員に放った一言、ワーカー達への激励か、はたまた覚悟の確認か、
墳墓に侵入しルシアはモモンが放った一言の真意を考えていた
嘆きの亡霊の冒険は常に血にまみれていた
文字通りの死ぬ気で臨ざまなければなし得なかったし、命を掛けなかったことなど一度もない
それはいつでも、どんなときでも変わらない、亡霊の進む先には苦難が、試練が待ち受けていた
故にルシアは直感的に感じとった
地下大墳墓入口、壁に囲われ閑散した草原のなか、まるで神殿のような外装の建造物があった
「どうやら、あれが入口のようだな」
「他にもあれと同じ建築物があるな」
墳墓内には同じような遺跡が数か所発見された、白い寝殿造り、バロック式の支柱は墳墓に優秀な建築士がいたことがわかった
無論内装も素晴らしい、ポツンと置かれた巨大な棺、壁に立てかけられた見たことのない紋様が描かれた金で縫われたフラッグ
それだけでも相当な価値があるだろう
「おい、そっち持ってくれ」
重たい蓋を開け、鈍い音が鳴る
中の棺からは金銀財宝が収められており、灯のように室内を照らすほど輝やいていた
「すげぇ、、、」
ヘッケランや他のワーカーチームが興奮した声をあげる
棺の中には溢れんばかりの金銀財宝、これだけでも数年は遊んで暮らせるだろう
しかもこれが他の神殿にもあるのだ、ワーカーたちの墳墓に対しての期待は絶頂期に達していた
一人を除いて
神殿の外で、飛行魔法を使い上空から地上を監視している黒いローブを纏った魔術詠唱者、「黒魔導のルシア」
ルシアは財宝には目もくれず周囲を警戒していた
上空から墳墓全てを見渡し視覚強化の魔術で何か起こればすぐに魔法が放てるように警戒していた
「……」
風が吹き、草木が揺れる
閑散とした墳墓内
、
何もない、はずだ、人の気配は一切しない、大気の魔力濃度も墳墓内と外では大差ない
実際に上空から全体を観ても怪しい影すらない
だが一向に気分は晴れない、嫌な予感が粘液のようにルシアに纏わりつく
「どうした?ルシア?」
「いえ、なんでもありません」
「まさか、怖気づいたのですか?黒魔導のルシアさん?」
「おい、天賦」
「はは、別に私は馬車に戻って頂いても構いませんよ、その分、私の取り分が増えますので」
全員が無事神殿内から広場に集まるのを確認しルシアは地上に降りた
天賦と呼ばれた嫌な顔をした男が何か言っているが、こういうタイプはすぐ死ぬのでルシアとしては関わる気もなかった
だがあまりにも能天気なワーカー達にルシアのストレスは貯まる一方だった
誰もが眼の前の財宝に浮かれている
墳墓内に潜む危険などは一切考えていないのだろう
大抵旨い案件にはそれに見合ったリスクがある、宝と危険は常に表裏一体だ一方がデカければそれに比例しもう片方もデカい
そんなことがわからないワーカー達にルシアは頭痛を覚える
モモンがああ言うのも納得だ、少なくともワーカー達は命をかけてはいないようだ
危険地帯だというのに頬を緩ませ、まだみぬ財宝への期待にこんな野ざらしに警戒もせず妄想に耽っているのがその証だろう
「はぁ、、」
思わず溜息が漏れる、黒い仮面をずらし改めてワーカー達をみる
(油断しすぎ、、)
空から雷が降るかもしれない、地割れが起こるかもしれない、神殿内から敵がくるかもしれない、ドラゴンがくるかもしれない
嘆きの亡霊としてあらゆる危険を想定し兄のせいで予想を超える災難に見舞われた身としては歯痒いものがあった
(まぁドラゴンとか雷はないにしても伏兵や、強力な魔物なんかは普通にいそうだけど)
だからといってこれはない、
「皆さん、もしこの状況で敵に襲撃されたらどうするつもりですか?」
「え?」
「ぶははははは、」
「それはないだろ、ぷふ」
「心配性だなぁ、ルシアちゃんは、まだ中にすら入ってないんだぜ?」
ルシアの顔は仮面に隠れて視えない、ワーカー達はそんなルシアを笑う、だがフォーサイトのメンバーは違った
それほど長く行動していた訳では無いが、共に依頼をこなすにつれある程度はルシアのことも理解していた
「ま、まぁまぁ落ち着けよ!」
ルシアを庇うようにヘッケランはワーカー達の前に立ち塞がるがその言葉は背後にいるルシアに向けられていた
「そ、そうですよ、皆さんいくらなんでも緊張感が足りません」
「そうよ、そうよ、てか、あんたレンジャーなんだからだべってないで周囲の警戒しなさいよ!」
「ん、、」
遅れるようにヘッケランの援護にまわる、イリーナ、アルシェ、ロバーテイク
その誰もが額に汗を浮かべ、焦っているのか言葉も早口になっていた
(ルシア、)(ルシアちゃん、)(ルシアさん、)(ルシア、)
((((めっちゃ怒ってる!!?))))
初めて4人の考えがシンクロした瞬間だった