ルシアをなんとか宥め、ワーカー達は4つに分担し、フォーサイト、天賦、グリンガムは大墳墓の探索、老虎は出口の警戒及び他に侵入できる箇所がないかの調査に割り当てられた
神殿入口から入った先は仄暗い石造りの一本道
続く道の奥は何も見えないほどに深い、暗闇がよりいっそう不気味さを増していた
「迷路みたい、、、」
アルシェの言葉通り、墳墓の地下は迷路のように複数の道が枝分かれしおり何度か行き止まりで足を止めてしまった
そのため、分かれ道には必ず目印として松明を設置していた
トラップなどもあったが、吹き矢や落とし穴といった当たればそれなりの傷を負うだろうが
フォーサイトのような熟練のワーカーチームにとっては脅威にはならない
それに財宝を守る防衛機能としてはあまりにも頼りない
本当に守る気があるのかと疑問に思ってしまうほどだ
不意に衣をするような音とともに無機質な音が木霊した
「とまれ、何かくる、」
それは次第に暗闇からシルエットを明らかにした
「アンデッド!」
「まぁそりゃ、墓守くらいはいるわなぁ!」
地下に入りそれなりに進んだところで、眼の前からボロ布を被り、損耗した鎧、刃こぼれした剣を持ったスケルトンが現れた
頭蓋や胴の骨にはヒビが入っており、身を守る鎧も損耗が激しく、頼りない
まさしく雑魚敵といった見た目をしていた
だが油断はしない、全員が臨戦態勢に入り、遠距離攻撃が可能なイリーナ、アルシェ、ロバーテイクが攻撃を放つ
「ターンアンデッド!」
「火球(ファイヤーボール)」
「余裕だな」
「……」
射抜き、燃やし、浄化
スケルトンを難なく撃破する、緩慢な動きをするスケルトンに遠距離から魔法を当てることなど造作もない
「この程度とは拍子抜けだぜ、」
「ん、でも油断はよくない」
想定していたよりも大分低級な魔物の出現にメンバーに余裕が生まれる
アルシェもこのように発言してはいるもののその表情は出撃前より柔らかい
灰となったスケルトンの骸を他所に一同は前へ進む
「……」
〜
「ターンアンデッド!」
「さて進みましょうか、、」
何度めかもわからない初めに接敵したスケルトンと同じ個体を撃破し、墳墓内を進む、メンバーに一切の疲れの色もみえず、余裕のように視える
「しっかしな、いくら弱くてもこれだけ遭遇するなんて運命感じちまうな」
「ヘッケラン、油断はいけませんよ」
(いくらなんでも弱すぎる、、この規模の墳墓で)
ルシアは地下を見渡す、石造りの壁に天井、ヒビや湿りなどはあったが、壁にはコケや風化による変色などがなかった
(年代物じゃない、、、?古い遺跡にしては、老朽化がみられないし、何より)
マナマテリアルを吸収する性質を有する転移者だからこそわかることがあった、
(マナマテリアルが濃い、)
より奥に進むにつれ、魔力濃度が濃くなっていた、ルシアが感じとっている魔力は、魔皇ヤルダバオトのような単純な魔力量が多い生物や魔力を蓄えたアイテム、魔法陣に至るまでに
故にルシアを含めた嘆きの亡霊のメンバーはある程度の強さや、アイテムの価値、また設置型の術式の所在程度なら把握できる
「誘われてる?(ボソ)」
「どうした、ルシア?」
進むにつれ濃密になっていくマナの本流、それは前方のみでなく、背後からも感じとれた
「ヘッケランさん、これは罠です」
「出口に財宝があったのもそうですが、この墳墓何かがおかしいです」
「おかしい、というと?」
「誘導されてる気がしてなりません、財宝は侵入者が容易に取れないように保管するもの、ですがあれは進めばこれ以上の宝が手に入るぞ、と誘っているとしか思えません」
「餌をチラつかせて、捕食する鮟鱇のように」
「弱すぎる敵も、油断させ撤退不可能区域まで誘導された、、、と考えれば」
「考えすぎじゃねえのか?」
「そもそも急にこれだけの規模の墳墓がいきなりみつかったというのもおかしな話です」
「まるで突然、現れたような、今まで発見されなかったのが不思議なほどです」
「……」
「中も老朽化が全くみられません、少なくともこの墳墓は逐一メンテナンスされています」
「……どう思うロバーテイク、」
「一理、ありますね、、実際我々を含め、他のパーティも異なる出口から進んでいるでしょう、財宝をまえに、我先にと、弱いスケルトンをまえに、先に進むでしょうね」
「…危険か、イリーナは?」
「私は、、撤退に賛成よ、ルシアちゃんが言ってたように、この墳墓、確かにそこまで古いものじゃない、財宝に目が眩んでたけど、」
「アルシェは?」
「……私はお金が必要、、だけど、、それよりも妹達のほうが大切」
「わかった、、、引くぞ」
予想外にもリーダーは寸分の間を置かずに撤退を選択した
正直説得には時間がかかるとは思っていた
「いいんですか?あくまで私ノ意見は憶測の域を超えません、間違いの可能性も、」
「あぁ、そりゃ財宝はほしいが命あっての物種だ、」
「それに、俺等が財宝に魅せられてるなか、冷静に周囲の状況を観察してそう判断したんだ」
「そんなあんたを疑うやつはフォーサイトにはいねぇよ」
「ヘッケランさん、、」
「ま、後ろ髪惹かれる思いではあるがな」
「全くです、ですが、ルシアさんの言う事ですから、財宝は諦めましょう」
「そうね、」
「ん、、」
「よし、そうと決まったら撤退するぞ、グリンガムや天賦は別入口から進んでるから無理そうだが、外の警戒を担当してる老虎とは合流出来るはずだ」
「「「「了解!」」」」
「?!皆さん敵襲です!!」
ルシアが杖を構え来た道を警戒する
「どこからだ?」
「左右からです」
ヘッケランが振り返った、そのときだった硬い金属のようなものがぶつかり合う音が木霊した
それは徐々に大きく、より鮮明に、仄暗い道の先に輪郭すら認識できる程に接近されていた
「おいおい、まじかよ、、、」
今までの掃討してきたスケルトンとは明らかに別格だった
生前の凶悪なフェイスは死してなおその眼窩からでもわかるように鋭く
使い古されたお古のようなものでなく、まるで新調されたスーツのように埃一つなかった
魔法鎚、剣、大盾、様々な種類の武器をもったスケルトンが前方から約8体、後方からは14体ほど確認出来た
「先程までのスケルトンと違って随分良いものを着てますね」
「あぁ、きっと生前はボンボンに違いない、羨ましいなぁ!」
そう言う二人の表情はかなり硬い、額から汗が滲み、スケルトンから目を離さず凝視していた
「軽口わないで、」
「あれ、全部魔法の武具だよ、」
薄く神秘的な輝きを放った剣や鎧、ルシアからもマナマテリアルのような反応が検知されていた
ロバーテイクやアルシェの持つ武器よりも遥かに高い魔力反応
「どうやらルシアの言ってたことは大当たりらしいな」
「まんまと、私達は誘いこまれたわけですね」
「外を警戒している老虎の安否も気になりますが、、」
「あぁ、だが出口側から魔物が来たってことは望み薄だろうな」
「火球!」
アルシェが放った魔法がスケルトンに直撃する
開戦の火蓋に火炎が狭い仄道を包み込んだ
法国編なのにまだ本筋に入れん