「では定例会議を始めようか」
法国最高権力をもつ六色聖典責任者「神官」
六人の神官が会議室に託し、無言で手元の報告書に目を通していた
「帝国が魔導国に属国」
「魔界の領域の拡大」
ボソリと火の神官が呟く
その声は心労によるものなのか暗い
「どれも頭が痛い話だ、良いニュースはないのか?」
「良いニュース、、かはわからないが、新しいアダマンタイト級冒険者が現れたようだ」
「何故それが良いニュースではないのだ?我々人類を護る盾、新たな一柱が生まれたのは良いことではないか」
「その一柱が陽光聖典を再起不能に追い込みあまつさえ秘宝を簒奪したものでもか?」
「まさか」
「あぁそうだ、報告にあった嘆きの亡霊だ」
「確かにそれは頭の痛い話だ」
報告書を作製した本人である土の神官レイモンはズキリと痛む頭を抑える
もう二日も徹夜している、目の下には薄く隈が出来上がり、少し痩せたようにみえた
「秘宝奪取に向かった風花聖典も壊滅させられたと聞く」
「報告によれば嘆きの亡霊はギガントバジリスクにも勝る凶暴性だと」
「事実、嘆きの亡霊、リィズスマートはデスナイトを蹴り殺したと」
「うーーーむ、、」
魔導国もそうだが、一般常識から考えて人間が単騎でしかも強力な武具を使わずにステゴロでデスナイトを滅するなど人間の領域を逸脱している
「貴殿はかの者たちがどれ程の力を有していると考えるか?」
「風花聖典、そしてアダマンタイト級の力をもつ陽光聖典をたった二人で全滅させることからアダマンタイト級最上位、漆黒聖典、神人にすら届きえると愚行します」
「元漆黒聖典第3席のヌシがそう言うのだから間違いはないのだろうが」
神人クラスの力を有しているなど、戦った場合どれだけの損害が出るのか想像もしたくない
「秘宝は諦めるしかないかの」
「えぇ、どのみち主天使を一撃で葬り去るほどの実力者、敵対することこそ愚策でしょう」
「ましてや今はアダマンタイト級冒険者だ、法国にとってどれだけの損害を与えることになるのか」
「だが、何もなく赦すとなればそれは我々の国、ましてや聖典内部で軋轢を生む要員になりえるぞ」
「既に2つの聖典が壊滅されている、士気にも影響がでる」
「水明聖典も魔導国の調査から音信不通、残りは火滅聖典、土塵聖典、漆黒聖典のみか」
「はぁ、、、おっと失礼」
「よい、貴殿の気持ちは理解できる」
自然に漏れたため息、他の神官も同じ気持ちなのかそれを咎める声はない
神官は全員が権力というしがらみに囚われない、共通の人類繁栄の志をもった同志なのだ
今こそ、その関係に感謝した日はない
「聖典へはわたしが説明する」
「それに今は亜人連合、大盗賊バルバレ、この問題をどうするかだ、、」
「エルフ国との戦争中にこれ以上、戦力を割くことは出来んぞ」
法国は既に疲弊している、火滅聖典と一部漆黒聖典、土塵聖典はエルフ国との戦争中だ
残りの漆黒聖典には有事の際の法国の護りてとして待機して貰っている
国の防衛力をなくすなどそんなことは到底出来ない
「ならばどうでしょうか?この案件、嘆きの亡霊に依頼するのは?」
「実は先日、私は嘆きの亡霊の錬金術師シトリースマートと接触しました」
「何?!それは真か?!レイモン!!」
「えぇ、どうやら向こうは我々が今、何に困っているのか、それをよく理解していました」
どこから情報が漏れたのか、あのときあったピンクブロンド髪の女は法国が何に窮しているのか的確に指摘した
「《バルバレに、亜人、お困りではありませんか?良ければ私達がなんとかしましょうか?》と」
「何も無条件ではあるまい?」
「えぇ、要求は秘宝の所有権の譲渡、そして法国への経営販売権」
その言葉をうけ、神官達の眉がピクリと動いた
当然の反応だろう
法国は二度、嘆きの亡霊に煮え湯を飲まされている
「奪っておきながら何を今更」
「どうする?」
「秘宝はどのみち難しいでしょう、奪われたとはいえ、彼らは善良な市民の守護、その過程で取得したに過ぎない」
「それに返せといってただで返すような輩ではないでしょう、」
「シトリースマート、若いながらとても頭がキレる女です」
「既に各国と太いパイプを持っていると噂もあります」
「敵対するにはリスクが大きいか、、、」
「狂人」ルークサイコル、「狂犬」リィズスマート、「稀代の天才」シトリースマート「千変万化」クライアンドリヒ
どれもが一騎当千の猛者、全員が英雄の領域に到達したパーティ、それは漆黒聖典と同じようなものを感じた
「今は人類は争っている場合ではないか」
最早諦めに近いが意見は纏まったようだ
レイモンは報告していない、シトリーからの言葉を思い出す
『安心して下さい、既にバルバレの拠点も亜人の拠点も既に千変万化が抑えています、』
『問題解決には二日とかからないでしょう』
既に嘆きの亡霊は動いていた
いつから?
それを知る術をレイモンは持ち合わせていない
ただ確かなのは千変万化、クライアンドリヒがシトリースマート以上の切れ者であり、実力者だと言うことだ
どこから聞きつけたかはわからない亜人と盗賊団の存在、そして2日足らずで結果を出すという豪胆さ
双方どちらの組織にも法国精鋭部隊が手を焼く強敵が存在する
とくに亜人連合は一筋縄ではいかないだろう
蛮勇とも思える自信
だがレイモンにはそれが英雄のような何かに感じられた
「ならばみせて貰おうではないか、嘆きの亡霊、その実力を」
その言葉には最初と違い、確かな決意と期待が満ちていた
今日はもう一話
明日も一話更新します