オーバーロード 嗤う骸骨は帰りたい   作:嘆きのラジオ

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千の試練

試練とはいつだって唐突に突如空いた奈落の穴のように現れる

 

穴は底が見渡せぬ程に深く、地平を見渡すように巨大だった

 

いつだって嘆きの亡霊はそんな絶望にぶち当たり乗り越えてきた

 

源神殿、迷い宿、神と呼ばれる、過去に存在した超常たる生命体、その具現、記録媒体とも言える、ものに落ちてもなんとか、這い上がっていた

 

「……」

 

故にこの落ちつきは馴れだ、

 

死を感じる経験を不本意ながら何度、何十度も体験したからこそ身に付いた精神力によるものだった

 

謎の魔法陣によりルシアとフォーサイトチームは見知らぬ闘技場のような場所に転移していた

 

ルシアの黒い瞳は真直ぐ正面のスケルトンを捉えていた

 

筆舌し難い感覚、圧倒的な死のオーラがルシアを包む

魔力こそ感じない、、いや微かではあるがスケルトンが漏れ出していた

 

「ーーーーー!!」

「、、、、。」

フォーサイトとスケルトンによる対話、いや命乞いか

ルシアの耳には内容など一切入ってこなかった

 

専心するは眼の前の怪物からどうやって逃げるか

 

考えるより身体が動いた

 

微細に、けれども濃密に、察知されぬように、全神経を集中させ魔力を練り上げる

膨大な魔力を小さくより小さく圧縮させる

 

【魔弾】

魔力をぶつけるという単純な魔術、魔術師であれば誰もが扱える初歩魔術

 

魔術とは言っているがあくまで魔術というカテゴリーに含まれるだけで術式も詠唱もないそれを魔術師達は魔術とは呼ばない

 

魔弾には欠点があった、魔力量に比例し威力が上がること、

つまり燃費が悪い

 

単純故にそれは非常に燃費の悪い魔術だった

 

魔力を術式や詠唱なしにぶつける、いわば空気砲のようなもの

必要な行程がない分それは実用性が欠けていた

 

 

「ふー」

 

掌に収まる程に濃縮された小さな魔力の塊が浮遊する

 

(まだ足りない、、)

だがゼブルディア魔法学院では魔弾による研究がされていた、術式を付与し追加効果を与えるもの

魔法式を組み込み物質化するもの

 

だがどれも失敗におわった、そんな面倒な行程を挟むくらいなら最初から同程度の魔術を使えば必要な魔力消費量は少なくすむからだ

 

ルシアはフォーサイトがアインズに特攻を仕掛ける中、ルシアはアインズに対して攻撃の機会を伺っていた

 

圧倒的な魔力量、それはルシアからしても化け物と言わざる得ないほどだった

(魔術師としては向こうが上)

だが、アインズと名乗るスケルトンは何故かサーベルによる接近戦に臨んでいた

 

化け物は油断しているのかそれとも別の目的があるのかわからない

 

だが仮に眼の前の怪物をなんとか撃破出来たとしてもこの状況の打破には繋がらない

 

観客席のほうをちらりとみる、膨大な魔力が3つ、そしてルシア並みの魔力が2つ、闘技場の審判?のダークエルフからも同じ魔力量を感知できた

 

あんなものがまだ数体いるなんて絶望的だ

 

(あの空、この世界の空とも違う、それに大気の魔力濃度も濃い、多分偽物、もしくは宝物殿のような世界とは別の、、)

 

掌への魔力凝縮に集中しながら冷静に周囲を観察する

転移により帝国とは全く別のエリアに飛ばされた可能性もあるがルシアの知る限り、あのような一等星も、星の配置も全く異なる

 

何より魔力濃度が桁違いに高い、それはまるで高レベル宝物殿内であるかのように

 

ルシアは再度スケルトンに目を移す

 

魔封じの指輪はルシアの魔法に制限をかけるが魔力総量の隠蔽も可能なアイテムだった

 

魔力量を測れるフールーダやアルシェへの対策につけていたものだった

 

「高ランク宝物殿で、しかもボスレベルの敵がいるのに悠長にしてる暇はない」

 

頭を抑え苦笑いをする

 

(本当に賭けになるけど、、やるしかない)

 

フォーサイトがスケルトンと交戦し交差する刃から火花が散る

ルシアはスケルトンに杖を構える

 

スケルトンのほうもこちらをちらりとみるが、余裕なのか、警戒する価値もないと侮っているのかすぐにヘッケランにむきなおる

 

「ふぅ」

チャンスは一度きり、

 

ヘッケランがアインズに斬撃を放とうと、双剣斬撃を繰り出すそのタイミングでルシアは魔法を開放する

 

「魔法最強化、重力操作(グラビティコントロール)」

「遅効魔法(ディレイマジック)暴君の大命令(タイラントオーダー)起動」

「異郷への憧憬開放、超過重世界(オーバーグラビティフレーム)」

対象はフォーサイトを除いた全生物、解放された3重の重力魔法が会場全体を押し潰す

 

アインズを含め半径3km圏内のNPC全てに大気を揺らす程の重圧がのしかかる

「グゥッ!?」

唐突な重力、アインズはスキルの守りを突破する魔法に反応が遅れる

膝をつき、小さなクレーターが大地に刻まれる

 

本来重力魔法は難易度が高く、広範囲にまて作用させるとなると莫大な魔力を必要とする、いくらルシアの魔力量でも連発できるような魔法ではない

 

故にあらかじめ遅効魔法で重力魔法を戦闘開始前に行使しておき、それに合わせるように残存魔力で重力魔法を行使したのだ

 

魔力を急激に失った倦怠感がルシアを襲うがそんな場合ではない

 

千載一遇の好機

腰に下げたポーチからどす黒いポーションを取り出し飲み干す

 

 

 

効力は数十秒ほどしかないがそれでも時間稼ぎには十分だ

 

「まだまだ!!」

ルシアは懐から神狐の尻尾を取り出し、起動する

瞬間爆発的にルシアの魔力が上昇する

 

それはかつて兄(クライ)が迷い宿ボスから掠め捕った、神の一部、一つで大国の冒険者分の魔力量と出力を有する

 

流石の、アインズも動揺は隠せない、ルシアはレベル70台の魔術詠唱者、

 

そして急激な魔力の上昇、

 

いくらレベル100といっても三重に放たれた重力魔法が即脱出できる手段はなかった

 

それはNPCたちも動揺だった、意識外からの重力魔法に対応が遅れる、

既に身体は地面につき、抵抗には時間を要した

 

「超圧魔弾(バーストショット)」

「魔法最強化・大層滝(アイライト・リバー)」

初撃に圧縮された水の大砲がアインズを観客席に吹き飛ばし、二の矢で観客席もろとも空からの滝のようにふる水魔法で圧し潰す

 

ルシアが目をつけたのは魔弾が対象に直撃した際に起こる魔力爆発によるノックバック効果だ、【弾丸指】がいい例だ

 

魔弾には込めた魔力に応じて威力、効果範囲、弾速、吹き飛ばしといった何れかのパラメーターに振り分けができる

 

非常に効率が悪いが今のような状況だとありがたい

 

威力こそ皆無だが、放たれた魔弾は直撃とともに魔力爆風を起こす、ほんの強い風が巻き起こる程度ではあるが、それが何倍、何百倍、そして圧縮された場合どんな効果を発揮するのか

 

「今のうちに逃げますよ!!」

これでやりきれないことはわかっている、最初から逃げの一択

発動した魔法も足止めに特化している

 

ルシアはフォーサイト面々にフライの魔法をかけ、コロシアムから飛び去ろうとする

 

「クッソ!!時間切れ」

ルシアが愚痴を零す、瞬間、背筋を凍らすほどの殺気が向けられた

 

「あ、、、」

あまりの圧力に息が詰まる、全身の毛が逆立ち震えが止まらない

アルシェは反射的に振り向いた

 

そこには鬼の形相で凄まじい早さで此方に向かってくるシャルティアの姿だった

 

偽の夜空を飛行しながら、

ルシアは正面を見据えながら魔法を放つ

「待てやこらぁァァァァ‼‼」

シャルティアは難なく避ける、距離にして50m 、シャルティアのほうが圧倒的に早い

 

 

 

「ふぅ、一人くらいなら」

ルシアはシトリー特製のマナポーションを呷りながらフォーサイトを自身から離れないようにしながら一つの魔法を行使する

 

その魔法はクライが押したボタン、それを解析し、ルシアが作ったオリジナル魔法

 

この世界の空間とルシアの知る座標を入れ替える魔法、座標には元いた世界も含まれる、

 

人一人を飛ばすだけでルシア100人分ほどの魔力を必要とするが、到底無理な話ではある、故にルシアは個人を転移させるのではなく座標を交換に変更した、

 

名付けるなら

 

「世界万華鏡(カレイドスコープ)」

 

異世界の転移を可能とする大魔術、触媒にあのボタンを使う羽目になるが背に腹は代えられない

 

大魔法陣、偽物とはいえ、夜空を埋め尽くすほどの巨大な魔法陣が描かれた

 

魔法陣が夜空に展開される、淡い黄金の光は徐々に輝きをまし暗い夜を昼間のような輝きをだす

 

座標の入れ替えだと言っても到底ルシアだけの魔力では足りない、この場にある大気中の濃密な魔力、それを利用する

 

神尾とルシアの全魔力、そしてこの階層に回された魔力を全て消費し大魔術は起動させようとする  

 

(起動まで1分、、、)

座標は既に特定したかつてあの場所に訪れたときにおいてきた魔導具が知らせてくれた

再度挑戦するために置いてきたものだったが、このような用途で使う羽目になるとは思いもしなかった

 

 

 

「させるか!タイムアクセラレーター!!」

「なッ?!」

 

不意にシャルティアがルシアの眼前に表れる

 

 

既に槍は放たれた、回避は間に合わない

 

だがスポイトランスはルシアを貫くことはなかった

 

「なにっ?!」

スポイトランスがルシアに当たる寸前に金属音と共に何かに弾かれる

 

「やっぱり便利ですね、セーフリングは」

ルシアは左薬指に嵌められたシンプルな銀の指輪を擦りながら言う

 

転移前にクライからチャージを頼まれてルシアが持っていた、あらゆる攻撃を一回だけ防ぐことができる指輪、結界指(セーフリング)

 

転移前世界でもっとも強硬とされる結界指の絶対防壁

それは神話級武具スポイトランスすら弾いた

 

「一回防いだくらいで、調子に乗るんじゃねぇ!!!」

「朱の新星(ヴァーミリオンノヴァ)」

だがシャルティアは弾かれたスポイトランスを手放し、魔法を行使する、第九位階魔法『朱の新星』

 

紅い魔法陣がルシアの真下二現れたとともに煉獄がルシアを焼く

 

「ぐぅぅぅう!?」

「こちとら日頃の訓練で炎耐性つけてんだよ!!!蹂躙する雷(カラミティサンダー)!!」

 

「スキル、清浄投擲槍!」

再度セーフリングに魔力を込め、シャルティアの必中攻撃を防御する

 

「水神の檻(ヴァージンジェイル)」

「魔法最強化 破壊衝撃(フォースデストラクション)」

強力な魔法を連続行使したためか魔力不足で視界がぼやける

 

(なんっ、て化け物ッ!、でもあと10秒)

シャルティアにはかなり接近を許していた、

 

「頑張りんしたね?もう死んでいいでありんすよ!」

凶刃が再びルシアに迫る、セーフリングはもうない、

 

ルシアは魔力障壁を行使する、無論それはシャルティアの攻撃を防ぐには到底至らない、

 

硝子の割れる音とともに障壁が瓦解しスポイトランスがルシアの左腕を吹き飛ばした

腕を失った喪失感とともに左肩を灼熱感が襲う

 

「チッ!!」

障壁は致命傷を避けるための、シャルティアの一撃が急所に当たるのを逸らすための苦肉の策だった

 

「ですが、時間は稼げまし、、、た」

三度振るわれた槍がルシアの顔を穿つ瞬間、

 

 

「カレイドスコープ起動」

夜空に描かれた魔法陣が光を放つ。それは徐々に輝きを増し、階層全てを包み込んだ

 

「??」

それだけだった、光っただけシャルティアのステータスにも階層そのもにも変化はない

みかけ倒し?フォーサイトのメンバーはそう脳裏に浮かぶ

 

だがアインズを含め階層守護者は違った

 

シャルティアは躊躇なく切り札、エインヘリアルを使用する

アルベドはアインズの前方に立ち、防御スキルを使用する

 

各々が自身に強化魔法を行使しアインズ守ろうと立ちふさがる

 

シャルティアはルシアに止めを刺そうとスポイトランスを再度、ルシアに向かい突く

 

「はぁ、なんとか行けましたが、賭けはここからですね」

「なっ?!」

「嵐?」

強力な魔力反応、アインズ達は勿論、唐突現れたそれをこの階層領域内にいる全ての者が感じとった

 

雷鳴が轟き、弾丸のような豪雨が辺りを濡らす

 

黒い巨大な積乱雲から魔力の本流が放たれる

 

レベル10宝物殿《迷い宿》それが眼前に迫るダンジョンの名だ

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