世の中ままならないものだ
僕は切り札を一つ失った喪失感、そして両腕に亜人の娘?に腕を強引に巻き付けられながら僕は考えていた
コロシアムでの試合から数刻、祝勝、歓迎を兼ねた、そして総族長就任を祝って宴が開かれていた
松明が焚かれ、亜人達が騒いでいる
そんななか魑魅魍魎とも言える魔獣の群れに僕は囲まれていた
「クライ様、先程の試合お見事でした!」
「流石、」
量脇及び周囲の亜人達が僕におべんちゃらをしてくるが、全く嬉しくない、、、
それに声色的に多分、女性なのだろうけど、、うん、
種族の違いとうのは余りにも大きすぎる差なんだな
男性亜人種にとってはハーレム状態なのだろうが、僕は人間なのだ、熱っぽい視線を向けられてもハッキリ言って怖い、
それに人間だとバレた瞬間に袋にあいそうだし
唯一人間の女性に近いといったらリネルくらいだろうが、まぁそれでも僕より身長も高いし威圧感が半端ない
なんか遠くて睨んでくるし、、、僕なんかやったかな?
当の本人は、ハイエナに群がられた死肉状態の僕を遠目で割と凄い形相でみている、できれば助けてほしいんだけど、、
尻尾がバンバンと地面を叩く音がなんとも怖い
「クライ様、よければ私達、狼人族の宴会にも参加されませんか?」
「それでしたら私達、蛇人族のほうが、、」
「いえいえ、私達のほうが」
「オマエ、ヤルナ」
逃げる隙がない、僕を四方から囲みながら
荒い息遣いが場を満たす、ゲロを吐きそうだ
ただでさえ人間と違い森をテリトリーにする亜人は衛生上に難があるのは何かとは言わないが
もともとの筋力が貧弱な僕にとって、強靭な亜人の拘束から逃げる術を持ち合わせていない、
セーフリングも拘束には弱いのだ
「皆さん、クライ様は先の決闘でお疲れなのです、よってたかってそう迫るものではありません、、、よ?」
「あぁ?何?あんたは関係ないでしょ?」
先程まで不機嫌そうに木陰から睨んでいたリネルが僕に助け舟をだす
亜人娘たちはそんなリネルをギロリと睨みつけた
こっわ
「クライさんの補佐役は私です、それは連合会議でも決定したはずですが?」
「だから何?あんたの許可がいるっていいたいの?」
「もちろんですよ?クライ様と貴女達では位が違うのですから、本来話すのにも許可が必要なのは当然でしょう」
「ちっと優しくして貰ったくらいで調子のんなよ?」
「やめんか!馬鹿者!」
言い争いが始まり、そろそろ殺し合いが始まりそうな予感に震えて傍観していたら突如体をすっぽり隠すほどの巨大な傘をさした小さい老婆が現れた
「ちょ、長老!?」
「全く客人の前だぞ、争いは控えんか」
長老と呼ばれた老婆を前に先程まで言い争っていた亜人が狼狽える
「すまんの、クライ殿、お恥ずかしいところをおみせした」
嗄れながらもハッキリと脳に響く声、姿こそ婆さんだがそこに老いによる衰えは一切見えず、翡翠に輝く瞳からは老齢とは思えない強さが感じとれた
この既視感、ヒドゥンカースのクランマスターを彷彿とさせた
何が言いたいのかと言うと
まぁ関わったら碌でもないことに巻き込まれる、、ということだ
「じゃ、僕はこれで」
「待たれよ」
「I?」
軽く挨拶をして自然なノリで逃げようと後ろを振り向いた瞬間老婆がいた
妖怪かなんかかな?
「フォフォフォ、まぁそう急がれるな、時にクライ殿、貴殿は神の存在を信じるかの?」
「え?神、、、ま、まぁ信じるけど」
「それはどんな神かの?」
「え、、え〜〜と?油揚げ、、失礼、狐の神とか?」
「狐神、、東方ではそのような小神が信仰されておるのか、実に悲しき」
直後僕に向かって一陣の風が待ち起こり、目先1cm程に黒曜石の針が停止していた
「よいか、クライ殿、、真に我らが信ずるべき神は狐でもましてや六大神でもない、、それがわかるか?」
「いや」
「星じゃよ」
「星より生まれた神、それこそが我らが奉ずるべき神なのじゃ?」
「クライ殿、神は近々降臨なされる、その一柱は忌々しきエルフの国で」
再度起動するセーフリング、一瞬黒い塊が視界を覆い、視界が晴れる
老婆の能面のような顔がピクリと動いた
避けようにも見えすらしなかった、ただ視えなかっただけだ
表情が一切変わらないのも慣れてるし何よりセーフリングがあるからに他ならない
「へ、へぇ〜ちなみに神様はなんて名前なの?」
なおも攻撃を受け続けながら僕は質問を返す
「創星神、、それが我らの神の名じゃ」
「祭司長!!」
「あーうっさい!そんな怒鳴らなくても聴こえておるわい!!」
声が響いたとともに巫女服のようなものを羽織り顔を布で隠した女性が立っていた
「すまんなクライ殿、少し野暮用が出来たようじゃ」
「あ、はい」
巫女に急かされ老婆は煩わしいように手を振りながら僕にそう告げる
巫女が僕を一瞥した瞬間、老婆と巫女は姿を消した
現実味がないまるで神隠しみたいだな〜
と僕は呑気に思った
〜
祭司長こと種族仙人、「穿死」の異名をもつ、元人間であり弛まぬ鍛錬から仙人へと至った紛れもない化け物である
威力こそ低いが不可視であり予備動作の一切もないない透刺を一切動かずに防いだ
タネがわからない、それがまるで当然であるかのように青年の表情はかわらなかった
クライと呼ばれた人間は亜人連合の手に余る
レベル83クラス呪師、「吼雲梁」
彼女もまた異世界からの放浪者である
「血が騒ぐわ」
老婆の体からゴキンと骨が軋む音がし老婆の体が盛り上がる
嗄れた肌は時間が巻き戻ったかのように若さを、艶を取り戻す
「ふぅこの姿に戻るのは何年ぶりかしら」
そこには20代後半のような銀髪の中華風の衣を纏った女性が立っていた
シミがかった肌は絹のように白く変わり、閉じていた瞳は開きその中に五芒星の紋様が浮かびあがっていた
「クライ・アンドリヒ、アダマンタイト級冒険者、王国に彗星の如く現れた期待の新星にして異例の早さでアダマンタイト級へとのし上がった二人目の英雄」
「そして、正真正銘の神の寵愛を受けしもの」
クライから感じられた神秘、それは彼女が賜った神秘と似て非なるものだ
狐神、そんな神の存在を彼女は聞いたこともなかった、、だが小神というには余りある神性、それはたかが一つの信仰として見過ごすことはできなかった
故に彼女は神の寵愛を使った
「星視」
奉ずる神、星詠みの神獣から賜った能力
千里眼に似た能力、自身から半径5km圏内の透視、弱点看破、そして記憶の読み込み
「化け狐、13尾の狐神、星の触覚、仮面の神」
クライの記憶から覗いたそれは紛うことなき、創星神に並ぶ神格を持っていた
「フッフッフッ、世界は広いわね」
龍帝、神人、魔導国に我らが異界の神
この世界に生まれ落ちて300年、退屈だった世界が裏返ったかのようだ
「降臨は近い」
神の降臨に必要なのはその肉体を構成に必要な魔力、生命エネルギーだ、
既にエルフ国は手中に収めている、エルフ王、もとい彼が使役したゴーレムには驚かされたが素体としては申し分ない
エルフはその存在そのものが高生命力の塊なのだ
そして自然、エルフ国に流れる地脈は神が降臨すべき地に相応しい
既に西方に存在した強力な魔獣や魔人が存在する魔界とよばれる地域では既に神は降臨された
地下深くに存在する「魔神殿」では大量の眷属を生み出している、その眷属のみで一国を一夜にて滅亡させることができるほどだ
だがそれはまだだ
降臨はしたが、未だにその権能全てを取り戻すには至らない
まだ魔界は神の養分として必要なのだ
「とはいえ、住民や悪魔王は生命力を吸われすぎて、生きているか死んでいるのかわからない状態だと聞く、公爵殿はやることがエゲツナイな」
何れ領域は地上にまで顕現する、魔神殿が地下にあるのはその神の性質によるものなのだ
同じ星の神ではあるが復活に必要なエネルギーはそれぞれ違う
エネルギーには様々な種類がある、生命力、魔力これは全ての神に共通している
純度の高い自然エネルギー、魔界特有の瘴気エネルギー、神への信仰から生まれる呪力に近い意志のエネルギー
そして信じはられないが科学と呼ばれるものから生まれる疑似エネルギーだ
地下は既に異界と化しただが地上にまで領域を広げるにはまだ足りない
「公爵は既に復活は最終フェーズに入ったと言っていたな」
エルフ国では膨大な地脈、魔界はその国の動力源、魔心臓を養分としていた
同じく300年前に世界に生まれ落ちた同志、通称「公爵」「博士(ドクトル)」「神徒」そして自身「祭司長」
各々が奉ずる神の降臨のため300年前から準備を行っていた
だが未だに博士と神徒からの連絡はない
博士は所謂、狂人だ、科学の発展、彼の神の復活はその目的の終着点でもあるがあくまで目的は科学技術であり神ではないのだ、
だがそれよりも異質なのは神徒だ、神徒は一層、他の代理人と違い生物味がない
何を考えているのかわからないし、一切の意思疎通もできない
だが生まれ落ちた我々とは明らかに異なった
我々には神より賜った権能がある、奉ずる神によって権能は変化するがだが何もない、などあり得なかった
権能とは代理人である象徴であり、信徒としての証であった
あの狂人であれそれは変わらなかった
「同志ながら、同じ神に仕えるものながらわからぬものよ」
ボソリと信者に聞かれぬほど、小さな声で呟く
異質と言うならそれはあの青年にも言えたことではあるが
そう考え、彼女は光神殿へ続く扉を開けた