オーバーロード 嗤う骸骨は帰りたい   作:嘆きのラジオ

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迷い宿

迷い宿、その存在自体が幻とされたランク10宝物殿

その実体は空を高速で移動しているがためだ

 

人間なら人生で一度遭遇するかしないか、それほどまでに運命に嫌われている者でなければ迷い宿に入ることなどない

 

兄狐は二度、それも一年足らずで再び迷い宿に文字通り迷いこんだ人間を知っている

 

幻影の身でありながら頭痛を覚えるのは決して気の所為ではないだろう

 

再び現れた危機感のない人間の妹と取るに足らない人間

 

妹のほうは最初会ったときよりかなりマナマテリアルを吸収したのか、迷い宿のマナマテリアル酔に耐えていた

 

だが仲間のほうはその限りではないようだ

 

既に顔は青ざめ、立っていられないのか地面に伏している

吐き出す者もいるが出来れば遠慮してほしい

 

長い黒髪の女性がジッとこちらを凝視する

一般的危機感の持つ魔術師の女性

 

青年にとってはその程度の評価だ

 

故に今はそんなことを気にしている場合ではない

 

問題なのは彼女らに付いてきたおまけのほうだ

 

濃密なマナマテリアルにも意を介さず、それはこちらを睨みつけていた

種族は吸血鬼、しかも始祖タイプ

 

明らかな強者、母程ではないが生まれたばかりの子供たちでは刃が立たないであろう実力を兄狐は感じとった

 

 

「歓迎するよ招かれざる来訪者よ」

「お前は何者でありんすえ?」

シャルティアは狐面を被った長身の青年を見据えスポイトランスを構える

その表情に一切の余裕はない

 

シャルティアは理解していた

眼の前の青年は自身と同じレベル100クラスの強敵であることを

 

故にシャルティアが最初に行ったのはマナエッセンスとライフエッセンスによる敵のステータスを開示することだ

 

だがその瞳に色は映らない、鑑定妨害はPVPの基本ではある

しかし眼の前のそれは少し毛色が違う、まるで本当にそこに存在していないかの幻かのような

 

(チッ、アウラでもいれば良かったんでありんすけど)

無いものねだりしてもしょうがない

 

周囲への警戒を続けながら、シャルティアは問を投げつける

 

「ここはどこでありんす?」

「あぁ、そうか君はあちらのものではないのだったな、ここは迷い宿、あらゆる全ての理が平等な場所さ」

 

青年は今気づいたかのような仕草をしシャルティアの疑問に淡々と答える

 

意志の疎通は可能、警戒こそされてるが殺意はないように思える

 

「なればあんしは誰でありんすか?」

「?僕たちは迷い宿の幻影、過去の記憶さ」

「過去の記憶、、、?!」

警戒を緩めたつもりはなかった、だがシャルティアは気づかなかった

 

何もない霧が立ち込んでいただけの周囲の風景はいつのまにか巨大な神社のような屋敷の中かのような風景にかわり

 

屋根や祠、上空に無数の狐面を被った少年少女がこちらを凝視していた

 

その光景に絶句しシャルティアはその正体に確信を得る

 

逃げることは不可能だろう、眼前に映る青年は殺意こそないがシャルティアを逃がす気は一切ないであろう

 

シャルティアは今、何が必要なのか理解していた

自身に匹敵しうる存在、その正体、弱点

 

スキル、種族、プレイヤーかどうか、迷い宿の全貌

 

出来るだけ多くの情報をナザリックに持ち帰ることだ

 

「ーーーー!」

シャルティアは問答を時間稼ぎを続ける

 

 

そしてまた青年も眼窩のない狐面の奥からシャルティアをジッと見据えていた

 

紅の鎧を纏い上品な物言いをする女性、だが兄狐はその身に秘めたる凶暴性を見抜いていた

 

強い、、、兄狐ですら勝つのは容易ではないだろう

 

青年には相手の考えがよめる

 

こちらの情報を持ち帰り、ナザリックで自分達の迷い宿への対策を考えるつもりだと

 

迷い宿は平等だ、兄狐はシャルティアの疑問を可能な限り答える

 

だがそれには対価がつく求めればまた奪われる

 

シャルティアの問答に青年が答える度にシャルティアが知るナザリック、その全貌が青年の頭に開示される

 

ナザリック大墳墓、ユグドラシル、ワールドアイテム、領域守護者に階層守護者、そして至高の41人

 

青年ですら驚きを隠せない、膨大な情報が頭に流れてくる

 

(彼女クラスのNPCが何人もいるとはね)

何より厄介なのはワールドアイテムの存在だ

青年はその情報とともに理解した

 

いくら世界と断絶された結界に包まれている迷い宿であろうとあれがあれば突破は容易だと

 

「シャルティアブラッドフォールン、、侵略者よ、生憎君の相手は僕ではない」

 

問答は終わりだ、迷い宿の情報を開示した代わりにナザリックの情報を開示した

 

そしてこちらは迷い宿の幻影に関しての情報は開示したが母の情報は一切開示していない

 

眼の前の吸血鬼は強い、、だがそれは世界にとっての常識の範疇であり神に及ぶには至らない

 

いくら母の力が戦闘に特化してはいないとはいえ

その差は歴然だ

 

「さぁ、シャルティア・ブラッドフォールンこちらの先に母が、君らで言うならダンジョンのボスが待ってるよ」

青年は当たり前のように敵に道を示した

シャルティアも警戒はしてはいるが、拒否権がないことは理解しているだろう

 

現在ワールドアイテムをもたないシャルティアにこの宝物殿から脱出する術は2つしかない

 

一つは母を倒すこと、二つ目は迷い宿のルールに従うことだ

 

扉の先から感じる強大なプレッシャー

並の生物なら立ってることさえままならない

 

そんな母を前にして平然を保てるなど危機感さんを除いたら初めてだろう

 

そう思うとつくづくあの危機感のない人間は恐ろしい

 

あとにも先にも問答だけで母から尻尾を二つも奪ったのは危機感さんだけだろう

 

「どうするのかな?シャルティア・ブラッドフォールン」

シャルティアは青年の問に答えず、無言で扉を開け先に進む

 

青年は彼女を応援している、これは母にとってよい戦闘経験になるだろうと

 

ガタン、と扉は閉められる

 

それを確認し青年は扉から背をむけ、ルシアの元へ歩みをすすめる

 

瞬間、背後の扉の先から轟音と魔力の奔流が迸った




最近みてくれる人がいてくれて嬉しい

更新頑張ります、明日も更新します
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