オーバーロード 嗤う骸骨は帰りたい   作:嘆きのラジオ

19 / 21
迷い宿③

侵入者の排出が終わり、兄狐は母の元へ歩る

 

「これは宝物庫にしまっておきなさい」

子供たちにシャルティアから没収した武具を渡し指示をする

相当大切なものだったのだろう、形見か?思い入れの品かはわからないし、迷い宿にとって価値などはどうでもいい

 

当人にとって一番大切なもの、、というのがルールであるわけでそれ以外のことは干渉しないのだ

 

「由々しき事態だ」

迷い宿の奥、御殿の源泉で母はその体を回復させていた

 

純白の体毛に刻まれた紅の模様、膨大なマナマテリアルを含んだその10の尻尾はそれ一つで大国の魔力を上回るほどのエネルギーを持っていた

 

圧勝したにも関わらず母が御殿で体を癒すなど珍しかった

 

「それほどの相手でしたか?」

 

「我が子よ、あれを捨て置けば後々そのツケが我々にもくる」

 

「意図してことではないにしても、我々がナザリックの領域を侵犯したのも事実、あのアンデッドはそれを良しとしないだろう」

 

初見ではあった、尻尾もおとされた、だが二度目はない

 

仮面の神に比べればシャルティアの能力は回数制限がある以上、やりやすい、

 

そしてシャルティアのようにある種の世界の理から外れた能力があると知っていれば対策は容易い

 

だが知っていたとしてもそのような迷い宿に害を為せる存在を放っておけるほど愚かなではない

 

「我は外部への干渉はせん、だが降りかかる火の粉は払わねばならん」

 

「あの吸血鬼、、、我を倒すのではなく、我を推し量ろうとしていた」

 

戦闘狂にみえて組織として何が必要なのかを理解している辺り、トップが優秀なのかがわかる

 

シャルティアの戦闘能力は兄狐より低い、だが2尾以下の子供たちでは一対一では難しいだろう

 

何より問題なのは

 

「はい、彼女の記憶を共有しましたが、脅威となるのは彼女だけではないようです」

母はあの戦いで本気を出していない、

 

「吸血鬼には呪いをかけておいた」

 

「あの者の傷は癒えず、そして我々を想い出すこともない」

 

母は彼らの言葉で言うならワールドエネミー級の力をもった神

その呪いはモモンガのもつ「星に願いを」をでも解呪は不可能だ

 

シャルティアは一度死なない限り一割を切ったHP.MPは回復しない

そして仲間内を大切にするモモンガがそのためだけにNPCを殺すことなどしないだろう

 

 

「あの人間は魔導国の攻略するつもりだ、腹立たしくはあるが協力してやりなさい」

 

「わかりました、、、」

シャルティアから得た魔導国の情報は全てではない、ダンジョン罠や階層守護者などといったNPCのスキル構成

 

ダンジョンの要となるギルド武器の在処、そしてワールドアイテムの保管庫に入るためのパスワードなど

 

未だ不明確なことは多い、だがそれを加味しても人間に力を借りようなど幻影と化した身は当然、生来であってもそんなことはなかった

 

「我も動く、、、迷い宿と同じように空を飛行する宝物殿が近日中に姿を表す、傷が癒えれば我はそこに向かう」

 

迷い宿が転移してすぐに《ドローン》と呼ばれる宝具?が宝物殿内部に侵入してきた

 

その魔物は発声器官がないはずなのに会話が出来るらしく自分のことを《博士》と呼称した

 

中年男性のような声色と明らかに常軌を逸している思想本能

 

ある種の狂気を兄狐は感じた

 

「わかりました、母さん、お気をつけて」

 

「わかっておる、我が子らのことを任せた」

 

それほどまでの相手、宝物殿総出で危機感さんの力を借りるほどに母にとってナザリックは危険視している

 

母との会話を終え、兄狐は危機感さんと呼ばれる人間と最も距離の近い彼女の元へへ歩む

 

宝物庫の油揚げがぎっしりと詰められた小樽の蓋から

ぴょこぴょこと尻尾が動いていた

 

「妹よ、危機感さんの所へ向かうよ」

 

「も?」

 

妹と呼ばれた幻影は呼ばれと同時に油揚げを悶え、頬にべっとりと食べかすをつけながらこちらに振り向く

 

油揚げにむしゃぶりつく情けない妹をみて思わずため息がもれる

 

「はぁ、全く」

 

妹がこうなったのも全て危機感さんのせいなのだが、こうまで油揚げに執心するとなると生前に刻まれた性質というのは恐ろしく感じる

 

迷い宿の幻影の強さは知能と尻尾の数に比例する

 

兄狐を除き七尾以上をもつ幻影は今の迷い宿にはいない

 

最近妹は尻尾を三尾まで出せるようになったが、その性能はやはり神と比べると心もとない

 

生え始めということと危機感さんに諭されたことも理由の一つではあるがその状態で不完全とは言え高揚感から神との実力差を見誤った悪く言えば調子に乗っていたのが大きい

 

「私は悪くない、危機感さんが悪い」

そんな兄の思案を察したのか妹はムッとこちらに反論の意見を述べる

まぁ迷い宿のなかで感情に富んだのも彼女だけだ、良くも悪くも人間の影響を受け、成長したのもまたこの妹なのだ

 

「モッキュモッキュモッキュ」

妹は再度、樽の中に頭をつっこみ油揚げに没頭する

純白な衣はマナマテリアルで構成されているため、汚れることはないが、だからといって良い訳では無い

 

「妹よ、行儀が悪いから辞めなさい、せめて箸を使いなさい」

これも良い影響?なのだろうか、兄狐は額を抑え感じるはずのない頭痛に悩まされるのだった

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。