なんだか外が騒がしい、
新しい尋問役も来ないし、
ちょっと様子でもみてみようかな?
「敵襲だ!!」
「ばかみてえにつえー魔獣が現れたぞ!」
鐘の音が鳴り響き、周囲に複数の男が増音の魔法道具で盗賊達に警報を鳴らしている
「て、捕虜が逃げてるぞ」
「うるさい、ほっとけ!くそ!亜人どもが、あんな怪物がいるなんて聞いてないぞ」
間抜けなことにそんな中、外に出てきたので僕はあっさりみつかってしまったが
どうやら僕にかまけている余裕がないくらい凄く忙しいようだ
捕虜が逃げ出している状況だというのに、それ以上に優先する事項に嫌な予感しかない
「おい、邪魔だからあっちいってろ」
「あ、はい」
ボケーと立っていたら、奥からやってきた盗賊に厄介払いされてしまった、
あっち、、て
まぁ忙しいようだし言われたポイントに向かうとしよう
そこでは口元を布で隠した非戦闘員がバルバレ盗賊客員に武器や魔法道具を支給していた
「あぁ?なんだよこんな忙しいときに」
「こっちも暇じゃないんだよ、突っ立てるなら手伝いな」
どさっと両手には納まりきらないほどの鎧、ローブ、武器を一気に渡された
何これ?まぁ闘うよりましだが彼らは捕虜をなんだと思っているのか
〜
「ふぅー働いたー働いたー」
なんというかこういうことをするのは久しぶりである、雑用は全部シトリーがやってくれるし
ゴミ拾いとかドブ清掃の依頼を受けようとすると「高ランクハンターが受けるような依頼じゃありません!もっとレベル8としての自覚を持って下さい!」
とエヴァに怒られるのだ
君達は僕をなんだと思ってるんだ
とまぁ最初こそ文句を言っていたが、これはこれで悪くない
非戦闘員に割り振られた僕は魔法道具の手入れを任されていた
慌ただしく出入りを繰り返す武闘派盗賊達を横目にする魔法具磨きは楽しい
喧騒がうるさいのが傷だが、危険な目にあわないだけましだろう
あらかた魔法道具が磨き上がり、一息つこうとしたその瞬間、僕の真上の天井が音を立てて崩れ落ちた
「え?なに?なに?」
無論セーフリングのおかげで怪我はない、だが最早お決まりとも言ってもよいシチュエーション
「おい!出たぞ、キメラだ!!」
「ん?」
何がなんだか、よくわからないが、キメラという魔獣が偶然にも僕の真上から現れたらしい
ただ魔法道具を磨いていただけなのにどうしてだろう?
正面1mで唸り声をあげる魔獣をみながら呑気に僕は魔法道具を磨いていた
まぁ逃げるに逃げられない、逃げたところで逃げ切ることなど僕にはできない
なら逃げるだけ無駄なのだ、
僕は何かと不幸な体質、、なのかも知れない、魔獣や賊に襲われる確率のほうが宝物殿に潜るより圧倒的に多い
しかも周囲は僕が高レベルハンターだからそんな状況になっても誰も助けてくれない
皆僕に期待しすぎではないだろうか?無能な僕にはなにもできないのだ
「にゃーごー」
眼の前のキメラと呼ばれる魔獣は一言で言うなら異形だろう、獅子の頭に、羊の頭、蛇頭の尻尾
動物園なら一匹で3頭分お得になるなぁ、なんて呑気に思っている
というか鳴き声と見た目がマッチしてない、逆に怖さが増す
というかシトリー達は何をしているのだろう?まさか先に法国に行ったとはいえ、流石に異変に気づいたときだろう
「はぁ、全く何やってるんだか、」
外に出るんじゃなかった、そう後悔しても遅い、出てしまったのだからしょうがない
叶うことなら尋問部屋に戻ってゆっくり寝たいが、
大人しく昼寝をしとくべきだった
だがこんな状況に巻き込まれるなんて誰が想像出来ただろうか?
いや、僕の幼馴染は突発的なイベントにも対応していたし
僕以外のハンターにとっては普通なのかもしれない
僕は未だ襲ってこない魔獣を懐に閉まっておいた、すまほ、で写真を撮り、意味ないだろうけどメル友にヘルプをこう
「ざまぁ」
数秒もしないうちに既読がつき、さらに数秒後に返信が返ってきた
僕は知っているこれはスマホ中毒というやつだ、
て今はそんなことどうでもいいんだ!
僕は現実逃避をやめ、眼の前の魔獣に向き直る
鋭利な鉤爪は僕を一瞬で殺せそう、獰猛な牙は僕を一瞬で噛み砕きそう、蛇の頭がある尻尾はなんか毒とかありそう
うん、わかって、たけど無理そうだ、狗の鎖も耐久性はそんなにないしどうしようか
「おい!捕虜が魔獣に襲われてるぞ!!」
「よし、捕虜に意識が向いている内になんとかあの野郎をぶっ殺すぞ、行くぞおめえら!!」
捕虜を囮にするって、まぁ助かるならなんでもいいか、早くして下さい
盗賊は僕と魔獣を囲むように距離を詰める
一人が合図するとともに樽が僕達の間をわかつように投げられた
瞬間、僕の視界が真っ白になり火薬の臭いが鼻についた
洞窟内が揺れ轟音が鳴り響く
「にゃーーー!」
まじか、僕は当然セーフリングで無傷だが、それは目の前の魔獣も同じようだ、その立派な体毛には傷ひとつない
瞬間、魔獣が僕のほうに疾走る
まるで事故のような衝撃が洞窟内に奔る、当然ながらセーフリングが起動し僕は無傷だが、周りはそうともいかないようだ
衝撃波で周囲に群がっていた盗賊は吹き飛ばされたし、それだけで戦意を失ったものや逃げ出す者もいた
だが一番に多かったのは僕に対しての驚愕だった