リネルに森の中を案内され亜人連合本拠地に向かっていたクライ
だがそこには一つの問題があった
前がみえん、、、
それも当然だろう、なんせ狐面には眼窩が空いていない、そして僕に透視といった超常能力はない
つまり僕の視界は眼前に映る狐面の裏側、しろ白一色
そのため手を引いてもらわなければ前に進めない
一応、この状況の解決できる宝具もあるが魔力が切れたら使えなくなるので、この先、どれだけ亜人のフリをする必要があるのかわからない以上温存しておきたい
というわけでそれっぽく頼み込んだら快く引き受けてくれた辺り、この亜人の子はきっと良い子なのだろう
この世界では亜人は迫害、差別されるらしいが僕はそうは思わない、ノウブルや妹狐、はたまた地底人とも仲良し?かもしれない僕としてはなんとかしてあげたいものだ
手を引かれ、既に迷惑を掛けているだろうが、これ以上かけないために確かな足取りで歩く
「ご到着致しましたクライ様、こちらが亜人連合本拠地、アニムスフィアでございます」
どうやら着いたようだ、彼女がそう話すとともに話声が聞こえる
恭しく僕にお辞儀をし案内を続けてくれる彼女に少し申し訳なく思う
彼女は僕が亜人だと、そして強いと勘違いしているらしい
生憎だが僕は人間だし、なんなら弱い、亜人なのも強そうなのも皮だけである
中身はただのお飾りのランク8の人間なのだ
「ーーーーーッ‼」
不意に僕の眼の前に狼の頭に、二足歩行に手には槍を持った亜人
が現れた
何か言っているようだが、生憎何を言っているのかわからない
そして何も視えていないのでどんな亜人なのかもわからない
「無礼者‼それが部族長に対しての態度が!」
なんかリネルが激昂している辺り、失礼なことでも言われているようだが、僕にはただ叫んでるようにしか、視えないし、
多分事実しか言っていないのだから怒る必要もない
「うるさいなぁ」
だが喧騒が激化するにつれ周囲から注目も浴びるため僕の精神上よろしくない
僕は注目されたくないし、小心者なのだ、勘弁してほしい
何より、そんなに大声を出さなくても聞こえているし
鬱陶しいのでつい本音を言ってしまった
まぁ言ってしまったのはしょうがない
「正直、君が何を言ってるのか僕は全くわからないな?もっとわかりやすく言ってくれない?」
僕はもうやけになっていた、まぁなるようになるだろう
何が気に触ったのかなおも眼の前にいるであろう狼人は叫び続ける
ガウガウ、うるさいんだけど、
うーん、どうしようか
「はぁ、ガウガウ」
とりあえず何言ってるのかわからないが、意思疎通を図るのは重要だ
僕は気持ちをこめて狼人の言葉を真似ていってみる
まぁガウガウしか言ってないけど、通じあうのに必要なのは言葉じゃない、心なんだ!
「ガッ‼」
不意に声が止む、
「ガーウガウ」
「ガウ」
「ガウガウガウガウ」
「ガーヴ」
「ガーーーウ」
通じただろうか?僕としてはラブアンドピースを込めて、仲良くしよう、僕達は仲間、争いはよくない
アイスは好き、と伝えたつもりだ、まぁ狼人は何言ってるか知らんけど
ていうかなんかリネルも何も言わなくなったし、どうなってるんだ?
「ガウガ、、、」
「口説いぞ!狼人族、族長よ!」
「クライ殿はこう仰られている、貴様の意図も汲んだ、これ以上何が不満なのだ!」
リネルが怒鳴る、びっくりするからいきなり怒鳴らないでほしい
何か不満でもあったのか、もしや僕の思いが通じたのかな?
なるほど相手も仲良くしようとしてたのか、まぁうんそうだよね、余所者がきたらそりゃ警戒する
てか族長って、マジ?
「リネルさん、僕は気にしてないよ、勘違いは誰にでもあることだ」
「?そう、なのですか?クライ殿がそう仰るのでしたら」
「うんうん、そうだね」
「……」
狼人はどうやら去っていったようだ、足跡が離れていく
誤解は解けたようで安心した
「本当によろしいのですか?」
「うんうん、いいよ、いいよ、じゃないと皆納得しないでしょ?」
勘違いは誰にでもある、僕がゆずって済むならそれでいいのだ
「はい、本来は部族間、しかも族長どうしの争いはご法度なのですが?」
「クライ様の提案は理に叶ったもの、さらに連合内でも白兵戦では屈指の実力をもつ狼人族にあのような啖呵を切るなて、、、」
「流石としか言えませんクライ様」
ん?流石ってどっちの流石なのかな?もさかして流石に馬鹿なの?という意味なのだろうか?
え?あれマジで族長なの?確かに他の狼人とは毛並みの色合いも体格も大きかった気がするけど、というか決闘?
「けっとう?」
「はい!殺し合いとまでは行きませんが、クライ様が連合にお力を示されるとは、愚かにもクライ様のお力を感じとれないものは多数おります」
「うん?」
「私達、蛇人族は魔術に通ずるものが多いので問題はありませんが、そうでない部族はクライ様の実力に気づいていないでしょう」
「そこで連合で屈指の実力をもつ狼人族との正式な決闘は、良い機会だと私は思います!」
んーーーーーーー????
この子は何を言っているんだ?
君には僕がどう写っているんだ?
決闘って、僕はそんなこと言ってないぞ!!?