【第一章完】凸込笑美はツッコまざるを得ない……!   作:阿弥陀乃トンマージ

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4本目(1)廊下でボディビル実況

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「あ~遅くなってもうたわ~」

 

 笑美が早足で廊下を歩く。担任の先生から頼まれた用事を片付けるのに少し時間がかかってしまったのである。

 

「ネタ選びの日か……さて、司くんは今回どれくらいのネタを書いてきたんやろうか?」

 

 笑美は微笑を浮かべつつ、部室の前に立ち、ドアに手をかけて開けようとしたその時……。

 

「いや~江田パイセン素敵~♪」

 

「そ、そうっすか?」

 

「ええ、もうたくましさが限界突破って感じです~」

 

「ほ、本当っすか?」

 

「ねえ、そう思わない~?」

 

「うん! 筋骨隆々って言葉がよく似合うわ~」

 

「お、お世辞でも嬉しいっすね……」

 

「お世辞じゃないですよ! ねえ~?」

 

「ええ、本心から言ってますよ~」

 

「て、照れるっすね~」

 

 江田に対して何やらきゃあきゃあと言っている声が聞こえる。声の主は恐らく二人。笑美が首を傾げる。

 

「……誰や?」

 

 笑美がドアにかけていた手を引っ込めて考え込む。会員に女子はいなかったはずだ。では、この黄色い声をあげているのは……。

 

(ファンか⁉)

 

 笑美は一つの結論に達する。さらに聞き耳を立ててみる。

 

「ねえ、先輩ちょっとポーズ取ってくれません?」

 

「ポ、ポーズっすか?」

 

「そうそう! バディーギルダーみたいに!」

 

(ボディービルダーやろ、なんや、そのB級ロボットアニメみたいなんは)

 

 笑美が心の中で突っ込む。

 

「ポーズって、恥ずかしいっすね……」

 

「ちょっとでいいから~」

 

「アタシたちが声援送るから~お願い~」

 

「ちょ、ちょっとだけっすよ?」

 

(江田先輩、ちょろいな。まあこういうのには縁がなさそうやし……)

 

 笑美が失礼なことを考える。

 

「こ、こんな感じっすかね……?」

 

「おおっ、ブレてる、ブレてるよー!」

 

(キレてるやろ、ブレてどないすねん)

 

「ライスバンク!」

 

(ナイスバルクやろ、なんやお米の銀行って)

 

「干上がっているよー!」

 

(仕上がっているやろ、干上がっていたらアカンやろ)

 

「……ふん!」

 

「おおっ! 胸がピクピクしてる!」

 

「それにしても……巨乳!」

 

(巨乳って、男にかける言葉ちゃうやろ)

 

「きょ、巨乳っすか? いや~巨乳は好きっすけど、自分がそう言われるのも案外悪い気はしないっすね~」

 

(アンタも何を言うとんねん)

 

 笑美は照れる江田の反応に冷ややかな表情を浮かべる。

 

「……むん!」

 

「おお、すごい腹筋!」

 

「この腹筋、すりおろし器みたい~!」

 

「そうね、これですりおろしたリンゴジュース飲みたい~」

 

(飲みたないやろ、そんなん)

 

「いつでも言ってくれれば喜んですりおろすっすよ」

 

(頼むわけないやろ……)

 

 江田の言葉に笑美が額を軽く抑える。

 

「……ぬん!」

 

「おおっ、すごい肩!」

 

「肩とは思えないわ~」

 

「肩にちっちゃいガ〇ダム乗せてんのかい!」

 

(ジープとかトラックやろ、そこは。ちっちゃいガン〇ムってプラモデルやんけ、逆にスケール小さく感じてまうやろ)

 

「ははっ、江田健仁、いっきまーす!」

 

(ア〇ロいっきまーすみたいに言わんでええねん)

 

 江田の決め台詞に笑美が苦笑する。

 

「……うん!」

 

「おおっ、すごい背筋!」

 

「背中に天使の羽生えてんのかい!」

 

(そこはシンプルに羽でええやろ、なんやランドセルしょってるみたいやん)

 

「背中に煉獄さんが見える!」

 

(背中に鬼が見えるやろ。煉獄さんは鬼を滅する方やろ)

 

「よもやよもやだ!」

 

(やかましいな、真似せんでええねん)

 

 江田の再度の決め台詞に笑美が若干だがイラっとする。

 

「しかし、本当に見事な肉体……」

 

「そこまで鍛え上げるには起きれない朝もあっただろう⁉」

 

(眠れない夜もあっただろう⁉やろう。ただのお寝坊さんやんけ)

 

「まあ、筋トレに夢中になり過ぎて、夜更かししてしまうときもあったっすね……」

 

(なにを真面目に答えとんねん……っていうか、ウチはなんでこんなボディービルの掛け声に詳しいんや……)

 

 笑美は自分で自分に突っ込む。

 

「ふん、まったくくだらないな……」

 

「おっ、屋代パイセン、参戦する感じですか~?」

 

「江田パイセン見て、火が点いちゃった系~?」

 

「なんでそうなるんだ、しょうもない……」

 

「あ~目を逸らした~」

 

「自信がないんじゃない?」

 

「そっか~それじゃあしょうがないか~」

 

「……待て」

 

「え?」

 

「自信がないだと? 聞き捨てならん……な!」

 

「おおっ!」

 

「これは意外、屋代パイセン、細マッチョってやつ~?」

 

「勉強の息抜きに鍛えているからな……」

 

(屋代先輩、自分もきゃあきゃあ言われたくなったんやな……)

 

 笑美が目を細める。

 

「ねえ~こうなったらさ~?」

 

「そうよね~」

 

(ん?)

 

「司ちゃんも脱いじゃおうよ~!」

 

「ええっ⁉ ぼ、僕もですか⁉」

 

「早く、早く~」

 

「ちょ、ちょっと待て! 男女でナニをしとるんや!」

 

 笑美が入ると、二人の男子に服を脱がされそうになる司の姿があった。

 

「え、笑美さん⁉」

 

「な、なんや、この状況は⁉」

 

 笑美が驚く。

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