【第一章完】凸込笑美はツッコまざるを得ない……!   作:阿弥陀乃トンマージ

25 / 50
6本目(4)シン・チャラ男

「お疲れ様でした!」

 

 講堂の舞台袖に司が入ってきて、二人に声をかける。笑美が問う。

 

「どうやったかな?」

 

「いやいやいや、今回も最高でしたよ!」

 

「ほうか……それは良かった」

 

「ふう……」

 

 倉橋が座り込む。司が尋ねる。

 

「ど、どうだった?」

 

「……」

 

 倉橋が無言で俯いている。司が慌てる。

 

「ぐ、具合でも悪いのかい?」

 

「……じゃん」

 

「え?」

 

 俯いていた倉橋がガバッと顔を上げる。

 

「マジで最高じゃん!」

 

「え、ええっ⁉」

 

「ギャグがハマったときの笑い声! ボケとツッコミが上手く行ったときに起こる爆笑! 終わった時の拍手と歓声の渦! あれはマジで……たまんねえよ!」

 

 倉橋が司の両肩をガシッと掴む。司が戸惑う。

 

「そ、そうなんだ……」

 

「マジでヤバい、もう~ほんとマジで! マジ鳥肌立ちっぱなしだったわ」

 

「あ、そ、そう……」

 

「語彙力が低下しとるで……元からか?」

 

 笑美が笑みを浮かべながら、倉橋たちの様子を見つめる。

 

「いや~本当に……あれ?」

 

 倉橋がしゃがみ込む。

 

「ど、どうしたの⁉」

 

「いや、なんか急に立てなくなって……ちょっと、ツカサン、肩貸してくれよ……」

 

「え、ええ……?」

 

 倉橋が司の肩にすがりついてなんとか立ち上がる。

 

「はあ、はあ……」

 

「大丈夫、倉橋くん?」

 

「大丈夫、大丈夫」

 

「大丈夫ちゃうやろ」

 

「!」

 

 笑美が背後から膝カックンを仕掛け、倉橋は再び崩れ落ちる。司が慌てる。

 

「なにをするんですか⁉」

 

「下半身の力が抜けとんねん」

 

「! ど、どうして?」

 

「詳しくは知らんが極度の緊張からなるものやろ」

 

「そ、そうなんですか……それならこのまま休んでもらって……」

 

「いや、癖になるとマズい、治療すべきや」

 

「どこで?」

 

「僕の実家の病院だ……」

 

「屋代先輩!」

 

「フェリーまでは自分が運ぶっす!」

 

「江田先輩!」

 

 江田が倉橋を軽々とおんぶする。

 

「自分もよく言っている病院だから間違いはないっす!」

 

「そ、そうっすか……」

 

「まあ、様子見で1日入院かもな……」

 

「入院⁉」

 

「拙者のおすすめアニメ入りのタブレットを貸してあげるでござる」

 

「い、因島……」

 

「入院の退屈もそれで多少は紛れるでござろう」

 

「あ、ありがとう……」

 

「私たちは……ねえ、礼明ちゃん」

 

「ええ、祈ってあげるわ、怪我の快癒の為にね」

 

 礼明と礼光が目を閉じて両手を合わせる。倉橋が苦笑する。

 

「わ、悪気はないんだよな……」

 

「倉橋くん! これ、着替えのジャージ!」

 

「おおっ、ツカサン、気が利くなあ」

 

「……あの、こういうときにする話じゃないかもしれないけど……」

 

「ん?」

 

「今後もセトワラの一員として、活動を期待してもいいかな?」

 

「もち、いいぜ」

 

 倉橋のあっさりとした返答に司は目を丸くする。

 

「ほ、本当かい?」

 

「ああ、ここで俺は理想の『チャラ男』像に近づくことが出来そうなんだ。今後も頼むぜ」

 

 倉橋が江田におぶられながら、右手の親指をグッと立てる。

 

「ふふっ、『シン・チャラ男』の誕生かね?」

 

 笑美が笑いながら首を傾げる。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。