【第一章完】凸込笑美はツッコまざるを得ない……!   作:阿弥陀乃トンマージ

28 / 50
7本目(3)ネタ『メイドの適性』

「はい、どーも~2年の凸込笑美で~す」

 

「1年の厳島優美ですわ!」

 

「同じく1年の小豆忠厚です……」

 

「『セトワラ』、今回はこの三人でお届けします、よろしくお願いしま~す」

 

「よろしくお願いしますわ!」

 

「お願いします……」

 

 借りた講堂内に大きな拍手が起こる。ひと呼吸おいてから笑美が話し出す。

 

「え~二人は1年生っていうことやけれども……どう? 学校生活はもう慣れた?」

 

「そうですわね、まず通学が……」

 

「ああ、この島以外の人はフェリーで通学やもんな。なかなか慣れへんよな~」

 

「いえ、わたくしはヘリで通っていますわ」

 

「ヘリ⁉」

 

「ええ、厳島家所有のプライベートヘリです」

 

 驚く笑美に対し、小豆が頷く。

 

「プ、プライベートヘリか……スケールでかいな……お昼休みはどうかな?」

 

「お昼休みですか?」

 

 笑美の問いに優美が首を傾げる。

 

「そうそう、学食とか購買部とかいつも混んでるやん」

 

「ああ、食事はいつもこちらの小豆に用意してもらっておりますので」

 

「え⁉ そうなん⁉」

 

「僭越ながら……」

 

 小豆が頭を小さく下げる。

 

「よ、用意してもらうって、例えばどんなのを用意してもらってんの?」

 

「そうですね……もっぱらステーキですわね」

 

「ス、ステーキ⁉」

 

「ええ、小豆の焼くステーキは絶妙な味わいですわ」

 

「へ、へえ……そうおっしゃってるけど?」

 

「恐縮です」

 

 小豆が再び頭を下げる。

 

「なにかコツとかあんの?」

 

「そうですね、優美お嬢様はウェルダンがお好みなので……」

 

「ウェルダン? あ~わりとまんべんなく焼く感じやったっけ?」

 

「ええ、そうです」

 

「内面にもしっかりと火を通して……」

 

「そうですね」

 

「肉をひっくり返したりして……」

 

「はい、プライベートヘラで」

 

「なんやプライベートヘラって! オフィシャルのヘラあんのかい!」

 

「いつも美味しいですわよ」

 

「……お褒めに預かり光栄です」

 

 優美の言葉に小豆は微笑をたたえながら頭を下げる。

 

「ふ~ん……」

 

「どうかいたしまして?」

 

 腕を組む笑美に優美が尋ねる。

 

「……ウチもお昼にステーキ食べたいな」

 

「え?」

 

「お願い! ウチにもステーキちょうだい!」

 

「と、おっしゃっていますけど、小豆?」

 

「良いですよ」

 

「あ、ええんや? 言ってみるもんやな~」

 

「ただし条件があります」

 

「条件?」

 

「はい、我らが厳島家のメイドになっていただきます」

 

「メ、メイド⁉」

 

「そうです」

 

「……わ、分かった」

 

「適性があるかどうか見てみましょう。こちらへどうぞ」

 

「はいよ」

 

 笑美が優美と小豆の真ん中に立つ。小豆が口を開く。

 

「まず、お嬢様が朝お目覚めになられました……」

 

「? あ、ああ、シミュレーションかいな。え、えっと、お召し物をお取替え致します……」

 

「お願いね」

 

「はい……」

 

「駄目ですね」

 

「え、何が?」

 

「お嬢様は鉄製のコルセットを装着してお休みになられております。それではコルセットを落としてしまいますよ」

 

「どんなコルセットやねん! 余計負担かかるやろ!」

 

「姿勢を矯正するためですから」

 

「どんだけ姿勢悪いねん!」

 

「……朝食を終え、お出かけになられます」

 

「ああ、登校の準備やな……お嬢様こちら、お鞄になります……」

 

「また駄目ですね」

 

「え? ああ、忘れ物が無いよう、きちんとチェックせなアカンのやな?」

 

「その必要はありません、教科書類は全て学校に置いてありますから」

 

「そっちの方が駄目やろ!」

 

「通学の時間です」

 

「……お嬢様、ヘリにお乗りください」

 

「またまた駄目ですね」

 

「ええ?」

 

「ヘリは空中にいますから、そこから垂らした縄はしごに飛び乗って下さい」

 

「トム〇ルーズなん⁉ オタクのお嬢様⁉」

 

「エベレストに旗を立てますわ」

 

「『ミッション〇ンポッシブル』か! 通学でいちいち大げさやねん!」

 

 右手の親指をグッと突き立てる優美に対し、笑美が突っ込みを入れる。小豆が呟く。

 

「残念なお話ですが……」

 

「何よ?」

 

「このヘリは三人乗りなのです」

 

「ス〇夫みたいなこと言うな! え? ウチはどうやって学校に行ったらええの?」

 

「縄はしごは垂らしたままにしますから、それになんとかしがみついて……」

 

「アカン、死ぬ! メイド死んでまう! たかが通学で!」

 

「小豆!」

 

「は……」

 

 優美の合図に小豆は一旦袖に下がり、素早く戻ってくる。笑美が首を捻る。

 

「え? 何、何よ?」

 

「こちらをどうぞ……」

 

「わあ! こ、これはステーキ⁉」

 

「どうぞお召し上がりください」

 

「うわあ、美味しそう!」

 

「これが本当の……」

 

「「冥土の土産」」

 

 優美と小豆が妙なポーズを決める。笑美が声を上げる。

 

「やかましいわ! なにを上手いこと言っとんねん!」

 

「まあ、適性はあるようね。合格で良いのじゃないかしら?」

 

「優美お嬢様がそうおっしゃるのなら……こちらをどうぞ、オフィシャルのヘラです」

 

「オフィシャルのヘラあった! って、もうええわ!」

 

「「「どうも、ありがとうございました!」」」

 

 笑美と優美と小豆がステージ中央で揃って頭を下げる。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。