【第一章完】凸込笑美はツッコまざるを得ない……!   作:阿弥陀乃トンマージ

4 / 50
1本目(3)ネタ『サークル活動説明会』

「はいどうも~♪」

 

「は、はいどうも……」

 

「ウチら、瀬戸内海学院お笑い研究サークル、略して……」

 

「「『セトワラ』で~す」」

 

「よろしくお願いしま~す」

 

 笑美の元気の良い挨拶にまばらではあるが、拍手が起こる。

 

「えっと……」

 

「……自己紹介」

 

 尚も緊張気味の司に笑美が囁く。

 

「あ、ぼ、僕は2年の細羽司です」

 

「ウチは2年の凸込笑美で~す。いや~司くんさ~」

 

「え?」

 

 司が戸惑う。笑美がいきなり台本にないことをやってきたからだ。

 

「袖からステージに出てくるまでの動きがぎこちないって!」

 

「そ、そうですか?」

 

「そうよ、アタシ、『生まれたての進撃の巨人かな?』って思ったもん」

 

「生まれたてって! せめて出来たてでしょう?」

 

「そんなんどっちでも一緒や!」

 

 一つ笑いが起こったことで、司にもわずかではあるが余裕が生まれた。

 

「い、一緒かな~?」

 

「まあ、そんなんはどうでもええんですよ! 今日は大事な日なんでしょ?」

 

「あ~近所の福田トメさんのお誕生日です」

 

「違う! アニバーサリーやけれども!」

 

「違うんですか?」

 

「違うでしょ。新入生歓迎会の部活動サークル活動説明会です! 君、なんていうサークルやったっけ?」

 

「セトワラです!」

 

「そう、そのセトワラ、ここに入るとね……なんや良いことがあるんやって?」

 

「そうなんですよ」

 

「ちょっとそれ、皆さんに教えてあげてよ」

 

「はい、こんな僕でもね、セトワラに入ったことによって……」

 

「よって?」

 

 司がピースサインをつくる。

 

「……2ミリ垢抜けたんです」

 

「たったの2ミリ⁉」

 

「『司の2ミリ』って、僕の島ではバズっています」

 

「それはバズるって言わんねん! ただの噂話や! まあまあ、こちらの1年生諸君に入ってきて欲しいんやろ?」

 

「それはそうですよ」

 

「だ~れも入らんかったら?」

 

「サークル存続の危機です!」

 

「あ~こりゃあ大変や!」

 

「大変なんですよ! でもね、皆さん考えてみて下さい」

 

「はい?」

 

 司がボソッと呟く。

 

「……今ならレギュラー確実ですよ」

 

「レギュラーってなんやねん⁉」

 

「なにもしなくてもこうしてステージ立てますよ」

 

「なんもせんのはマズいがな!」

 

「だって僕も現になにも覚えてきてないですからね」

 

「覚えてこいや! まあええわ、どんな人に入ってきて欲しいとかあるの?」

 

「え……まあ、面白い人」

 

「漠然としてるな……他には?」

 

「センスある人」

 

「その時点でセンスない気がするけど……他には?」

 

「えっと……僕とお付き合いしてもいいよって女子生徒の方、大歓迎です」

 

「そんなんおるか!」

 

「応募者多数の場合、厳正なオーディションを行います」

 

「行うな! 何様のつもりやねん!」

 

「なんですか、さっきから!」

 

 司が大声を出す。

 

「おっ、びっくりした……」

 

「誰も入ってこなかったらどうしてくれるんですか⁉」

 

「……どうなるの?」

 

「え?」

 

「サークルに誰も入らんかったらどうなるの?」

 

「そ、それはさっきも言ったように、サークル存続の危機ですよ!」

 

「そりゃ、エラいこっちゃ!」

 

「エラいことですよ。新鮮味が売りのウチのサークルが……」

 

「え? 今なんていうた?」

 

「はい? 新鮮味が売りの……」

 

「え、ちょっと待って、ちょっと待って……サークルが出来て何年目?」

 

「1年目ですよ」

 

「いや、生まれたてやん!」

 

 笑美が後方に下がりながら司の胸をビシっと指差す。

 

「伝統を受け継いでいかないと……」

 

「伝統ゼロやん!」

 

「で、でも、盛り上げていきたいんですよ! この瀬戸内海の小さな島から! 大きな笑いのムーブメントを巻き起こしていきたいんですよ!」

 

「ふ~ん、それじゃあ、なにか目標をここで言うてみてよ」

 

「え? 目標?」

 

「そう、セトワラとしての目標をブチ上げちゃってよ~」

 

「えっと……毎年夏に行われる『笑いの甲子園』……」

 

「あ~ありますね~」

 

「そこで優勝を目指します!」

 

「お~大きく出たね~」

 

「ブチ上げろって言ったじゃないですか」

 

「司くんは笑いの甲子園に出たいんや?」

 

「それは出たいですよ! 応援団で」

 

「いやいや、レギュラー落ちとるがな!」

 

「ちょっと髪の毛が長かかったかな~」

 

 司は髪の毛を触る。

 

「そこだけ昭和の高校球児⁉」

 

「『司の0.5ミリ』って言われて、島でバズって……」

 

「だから、それは噂話やねん!」

 

「ブオオオ~ン♪」

 

 司がサイレンの口真似をする。

 

「あ、これは笑いの甲子園の開幕を知らせるサイレンや! 皆さん! この夏、ウチらとともに夢を追いかけませんか?」

 

「え~福田さんのお宅のトメさん、祠の入り口のつっかえ棒を返して下さい……それは杖ではありませんよ……」

 

「しょうもない島内放送やった!」

 

「つっかえ棒を返して頂かないと……」

 

「頂かないと?」

 

「……島の結界が破られます」

 

「エラいことになる! 島存続の危機⁉ って話変わっているやんけ! もうええわ!」

 

「「どうも、ありがとうございました!」」

 

 笑美と司がステージ中央で揃って頭を下げる。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。