【第一章完】凸込笑美はツッコまざるを得ない……!   作:阿弥陀乃トンマージ

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11本目(1)予選前日

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「皆さん、それくらいにしておきましょう。集まってもらえますか?」

 

 司が声をかける。部室でそれぞれトレーニングをしていたメンバーたちが集まる。

 

「……」

 

「皆さん、泣いても笑っても、明日からがいよいよ本番です……数日間にわたって『お笑い甲子園』の地区予選が行われます……」

 

「………」

 

「知っての通り、お笑い甲子園で優勝出来ないと、このサークル、『セトワラ』の存続はたいへん難しいものになってしまいます」

 

「…………」

 

「その為にも明日からの地区予選、絶対に負けられません……!」

 

「!」

 

 司の言葉で、皆の顔に緊張が走る。

 

「いや~司くん、決意は大事やけどさ~」

 

「え、笑美さん?」

 

「スポーツ中継の煽りとちゃうねんから、もっと気楽に行こうや~」

 

「し、しかしですね……」

 

「リラックスせんと、出せる力も出せへんで?」

 

「で、ですが……」

 

「人様を笑わせようっちゅうもんがそんなしかめっ面してどないすんねん……っと!」

 

 笑美が司の額を軽くデコピンする。

 

「うおっ⁉」

 

「いや、随分と大げさなリアクションやな、銃で撃たれたんかいな」

 

 司の反応に笑美が笑う。

 

「額を銃で撃たれたら、声は出せないと思います」

 

「マジで返すなや」

 

「リラックスすることは大事だな……」

 

 屋代が眼鏡のフレームを抑えながら呟く。

 

「おっ、先輩もそう思うでしょ?」

 

「ああ、緊張し過ぎていると良いことはない」

 

「そうでしょ、そうでしょ?」

 

「まあ、心理学に精通しているわけではないのだが……」

 

「そういうのは余計な一言ですよ」

 

 笑美がジト目で屋代を見つめる。

 

「む……これは失礼」

 

「……それはともかく、冷静さは頼りにさせてもらいます」

 

 笑美が笑顔を向ける。

 

「自分の筋肉は良い感じに引き締まっているっす!」

 

 屋代の横で江田がポーズを決める。笑美が頷く。

 

「それは結構なことですね」

 

「きっと明日はもっと引き締まっているっす!」

 

「ただ、残念ですが……」

 

「え?」

 

「江田先輩の筋肉を披露するネタをやる予定は今のところありません」

 

「ええっ⁉」

 

 笑美の言葉に江田が愕然となる。笑美は淡々と続ける。

 

「そもそもとして……服を脱いだりするのは、レギュレーション的に反則になってしまう可能性があります」

 

「そ、そんな……」

 

 江田が膝をつく。笑美がしゃがんで優しく語りかける。

 

「先輩は着衣のままでも充分魅力的ですから大丈夫ですよ」

 

「そ、そうっすか……」

 

 江田が笑顔を見せる。

 

「でも、どうしたって緊張するわよね~礼光ちゃん?」

 

「そうよね~礼明ちゃん、いつもの講堂より大きい会場でやるんでしょ?」

 

 能美兄弟が互いの顔を見合わせる。笑美がゆっくりと立ち上がる。

 

「これは古典的な考え方やけど……」

 

「なに?」

 

「お客さんをジャガイモか何かと思えばええねん、意外と緊張解けるもんやで」

 

「え~ジャガイモ?」

 

「そうや」

 

「う~ん、いまいち可愛くなくない?」

 

「……それなら、スイーツやと思えばええねん」

 

「あ、それいい!」

 

「SNS映えしそう~♪」

 

「客席を勝手に撮影せんといてな……」

 

 キャッキャッと騒ぐ能美兄弟を見て、笑美が苦笑する。

 

「ふむ……全国大会を目指す地区予選、燃える展開でござるな!」

 

 因島が腕を組んで頷く。笑美が反応する。

 

「あんまり気負わん方がええで」

 

「そう言われても無理な話! まだ見ぬライバルたち、ワクワクとが隠せないでござる!」

 

「まだ見ぬって、明日嫌でも顔を合わせると思うけどな……」

 

 笑美が鼻の頭をこする。因島の横で倉橋が拳を握る。

 

「俺よりチャラい奴に会いに行く!」

 

「目的変わっとるがな」

 

「え? 違った?」

 

 倉橋が首を傾げる。

 

「ああ、そないに力強く宣言することちゃうし」

 

「そ、そうか……」

 

「まあ、その意気込みや良し!って感じやな、因島くんも含めて」

 

 笑美が優しい笑みを浮かべる。

 

「地区予選……」

 

 優美が首を捻る。笑美が尋ねる。

 

「え? なにか気になるところあるか?」

 

「……わたくしには全国大会への無条件シードこそが相応しいと思うのですが?」

 

「……え?」

 

「ねえ、そうは思わない、小豆?」

 

「お嬢様のおっしゃる通りでございます」

 

 小豆が恭しく頭を下げる。

 

「ま、まあ、その自信はある意味頼もしいかもな……小豆くんも頼むで」

 

 笑美が若干顔を引きつらせながら笑う。小豆が頷く。

 

「精一杯尽力します」

 

「フフン! お笑いの猛者たちの集まり……『足に来る』デース!」

 

「『腕が鳴る』な。やる前からダメージ負っとるやないか」

 

「オ~これはミステイクデース!」

 

 笑美に訂正され、オースティンが大げさに頭を抱える。

 

「まさか、こういったコンテストに出るとはナ……」

 

「でも、なんだか楽しみヨネ~」

 

 エタンの呟きにマリサが応える。笑美が問いかける。

 

「緊張とは無縁そうやな」

 

「こういうのは楽しまないと損だからネ~」

 

「右に同じダ……」

 

「ふふっ、三人とも頼りにさせてもらうで……」

 

 司が笑美に声をかける。

 

「笑美さん、あらためて一言お願い出来ますか?」

 

「皆、まずは自分が楽しむことを心掛けて臨もうや、こういうもんは楽しんだもん勝ちや!」

 

「おおっ!」

 

 笑美の声に皆が力強く応じる。

 

 

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