【第一章完】凸込笑美はツッコまざるを得ない……!   作:阿弥陀乃トンマージ

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12本目(4)結果発表

「お、お疲れ様でした!」

 

 控室に戻ってきた司が笑美に頭を下げる。

 

「ああ、お疲れ様……」

 

 笑美が応え、椅子に座る。

 

「はあ……み、水……ぷはあっ!」

 

 司も笑美と机を挟んだ席に座り、水を飲んでぐったりとなる。

 

「ふっ、大分お疲れの様やな……」

 

 笑美が司を見て笑う。

 

「そ、それは疲れますよ……」

 

「説明会でもやったやんか」

 

「だ、だから、あの時とは比べ物になりませんよ!」

 

「そうか?」

 

 飲み物を一口含んだ笑美が首を傾げる。

 

「そうですよ! 会場の大きさもそうですし……雰囲気がもう、全然違います!」

 

「雰囲気ね……」

 

「ええ、もうこの決勝に懸ける!っていう雰囲気が他の出場者の方からビシビシと伝わってきて……さらに……」

 

「さらに?」

 

「客席ですよ! もう一挙手一投足を見逃さんばかりに見つめてくるじゃないですか! 刺さるような視線っていうのを初めて体感しましたよ!」

 

「一挙手一投足って、野球選手やないんから」

 

「おかしいですか?」

 

「うん。投はおかしいやろ」

 

「え? 言葉のキャッチボールをしたじゃないですか」

 

「何を上手いこと言うてんねん。でも……」

 

「はい?」

 

「わりと余裕あるやんか」

 

 笑美が手に持っていたペットボトルを司に向ける。

 

「え?」

 

「大体は緊張でガチガチになってもうて、お客さんのことを気にする余裕なんてほとんどなくなるもんやで」

 

「そ、そういうものですか?」

 

「そういうもんや、まあ、逆に視線を意識し過ぎてもうてアカンことになるパターンもあるっちゃあるけど……」

 

「あれです、お客さんをカボチャだと思いました」

 

「そこはジャガイモとかやろ、なんでカボチャやねん」

 

「夢の時間が解けてしまわないように……」

 

「シンデレラか、なにをロマンチックなこと言うとんねん」

 

「あ~でも、不思議と客席の様子はよく見えましたね……」

 

「へ~」

 

「案外……大物かもしれませんね」

 

「自分で言うな」

 

 司が苦笑する。

 

「いやいや……良い意味で開き直ったのが良かったかもしれません」

 

「開き直った?」

 

「ええ、ネタを決めたのが直前だったじゃないですか」

 

「そうやな」

 

「結局、学校で一回、会場に移動中に一回、そこの廊下で一回……計三回しかネタ合わせ出来なかったじゃないですか」

 

「移動中も廊下もなんやかんやでバタバタしとったから……実質一回やな」

 

「ぶっかけそうめんだったじゃないですか」

 

「ぶっつけ本番やろ。なんやツルツルしとるやないか」

 

「とにかくもう、ええい、しょうがない!って思ったっていうか……」

 

「極端な話、トチらんかったらそれでエエわって感じ?」

 

「正直……そんな感じですね」

 

「ほうか……」

 

「す、すみません……」

 

 司が頭を下げる。笑美が手を振る。

 

「いや、エエよ。それがかえって良かったかもしれんな」

 

「よ、良かったですかね?」

 

 司がおそるおそる尋ねる。

 

「後で見返してみんことには細かいことは分からんけど……少なくとも舞台上では悪いとは思わなかったで」

 

「そ、そうですか……」

 

 司はホッと胸を撫で下ろす。

 

「だからといって、完璧に良かったかと言われると……」

 

「ええっ⁉」

 

 司が驚く。笑美が笑みを浮かべる。

 

「冗談やがな、結果はウチが決めることやないし……おっ、呼ばれたで」

 

「は、はい……」

 

 笑美と司は控室から出て、結果発表のステージに向かう。

 

「……優勝は、『セトワラ』!」

 

「!」

 

「おっしゃ!」

 

 優勝決定のアナウンスを聞いて、司は驚き、笑美は派手なガッツポーズを取る。

 

「セトワラのお二人、ステージ中央にどうぞ……」

 

 大きな拍手に包まれながら、笑美と司がステージ中央に移動する。

 

「……」

 

「……はい、それでは、お二人からコメントを頂けたらと思います。お願いします」

 

「はい、えっと……すみません……」

 

「いや、色々大変やったんですよ、他のメンバーがちょっと体調崩してしまったので、急遽この2人でネタやることになったので……」

 

 感極まる司を笑美がフォローする。司が鼻をすすり、前を向く。

 

「はい……」

 

「おっ、大丈夫?」

 

「ええ……」

 

「そんならリーダーからよろしく」

 

 笑美が促す。

 

「ええっと……まずは支えてくれた最愛の家族に感謝を……」

 

「ハリウッドセレブみたいに言うな!」

 

「なんて小粋なジョークを挟んじゃったりなんかしてね……」

 

「自分で言うてる時点で粋じゃないのよ」

 

「今日は残念ながら来られなかったメンバーに感謝したいです」

 

「ああ、それはちゃんと言うとかないとね」

 

「メガネの先輩、マッチョの先輩……」

 

「名前を言うたれ!」

 

「謎多き双子……」

 

「謎ではないやろ、同級生や!」

 

「メガネ2号、チャラ男1号……」

 

「ひどい言い草やな! チャラ男は2人もおらんし!」

 

「お嬢様と執事さん、外国からの留学生3人……」

 

「だから名前を言うたれよ」

 

「絶海の孤島……古びた館……そこで起こる事件とは……」

 

「なんのナレーションやねん!」

 

「冗談はさておき……メンバーの皆、審査員の方やお客さん、そしてこの大会に携わる全ての方々、応援してくれた皆さん……どうもありがとうございました!」

 

「おおきに!」

 

 司と笑美が頭を丁寧に下げる。会場を温かな拍手が包む。

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