虹夏ちゃん推しなのに推しに酷い設定を盛られていることに胸が痛くなっている人がいます、
私です。
家族なんてわずらわしいと匙を投げた私を、余計なことを考えたくないと一人逃げた私を覚えているならば、お前は私を赦してくれたのだろうか。
「じゃあ伊地知さんまた明日!」
「…うん、また明日〜!」
高校2年生初日は自己紹介がてらのホームルームや少しの授業だけで終わり昼過ぎには終わりを迎えた。
終礼も済み、部活や下校などそれぞれの時間へ向かうためガヤガヤと騒がしくなる教室の中で、クラスメイトにひらひらと手を振って笑う虹夏のもとに俺とリョウが歩み寄った。
「友達、早速できてよかったじゃん。心配する必要なんかないって言った通りだったろ?」
「そうだね。また明日、だってさ……明日もまた仲良く話せるかな?」
「私や晴人と違って明るく人当たりのいい虹夏なら大丈夫。それにそういう時ための『虹夏ヒストリー』でしょ?」
誰もがするような別れ際の挨拶に憂いを浮かべた顔で呟く虹夏に間髪入れず答えるリョウ。微妙に聞き捨てならないことを言っていた気がするがそれは置いとこう。リョウに続いて俺も頷く。
「そうだよ、てか俺らと毎朝普通に話せるようになってんだから大丈夫だよ。やることは同じさ」
「うん……そうだよね!うん、弱気になってちゃもったいない!当たって砕けよー!」
「砕けちゃダメだろうけどね。さ、虹夏が元気なうちにバイト行くぞー。今日は忙しくなりそうって店長言ってたし」
明るく拳を突き上げる虹夏に苦笑しながら教室を出る。今日はこれからバイトがある。さぁもうひとふんばりだ。
学校を後にした俺達が訪れたのは虹夏の家がある建物の地下。彼女の姉、星歌さんが店長を務めるライブハウス・STARRY。昨年からオープンしたばかりのこの場所で俺達3人はバイトをしている。
「お疲れ様でーす」
「おう、お疲れ。今日も頼むぞ」
店長である星歌さんに軽く挨拶をして仕事に就く。開店準備のためにまずは掃除から始める。モップで床を吹いたりテーブルの水拭き、後はゴミ出しか。掃除の他にもやることはいろいろとあるが去年のオープン当初からバイトをしてる俺やリョウは手慣れた手付きでそれをこなす。
そんな俺達だが虹夏はというと……。
「えーと、掃除はもう終わったから……あ、まだ開店の看板出してなかったかも!」
パタパタと走り回り俺達と何ら変わらず仕事をこなしていた。
ここで一つ『記憶』について話でもしようか。
記憶にはいくつかの種類がある。
徳川家康が江戸幕府を開いた、リンゴは果物など、特定の場所や時間には関係しない知識や情報の記憶は意味記憶と呼ばれる。
スマホやパソコンの使い方、楽器の演奏の仕方といったいちいち口で説明せずとも身体が覚えている動作に関する記憶を手続き記憶という。
10に10を足すと20になるというような計算など作業に必要な情報を一時的に保持して処理する記憶を作業記憶。
そして、いつどこで誰と何をしたか。という特定の時間や人物が関係する個人が体験した出来事の記憶をエピソード記憶という。端的に言えば思い出、というものだ。
まあ他にもあるが流石に長くなりすぎるからやめておこう。
虹夏はこの中のエピソード記憶に障害が起きている。他の意味記憶や手続き記憶は基本的に保たれているから学校で勉強した記憶がなくてもその内容は覚えているし、バイトも何をやるかさえ確認できてしまえばその仕事を問題なく遂行できてしまう。
そうやって覚えていることはできるのなら思い出も忘れさせずにいてくれよと、いるかも分からない神に何度吐き捨てたことか。
仕事をこなしていればあっという間に開店時間を迎え、お客さんが入ってきてライブの開演時間になる。
そうなれば受付やドリンクを渡す仕事もほぼなくなり暇になる。
ステージに立つバンドが挨拶をしてMCで会場を盛り上げるなか、ドリンクのカウンターでその様子を見つめる虹夏とリョウに声をかける。
「2人ともおつかれ。あとは俺がやっとくからもうちょい前で見てきたら?今日のバンド結構人気あるし勉強になるんじゃない?」
「あ、ほんと?でも大丈夫?一人だと大変じゃない?」
「へーきへーき、ライブ中はドリンク貰いに来る人そんないないしさ。休憩がてら見てきなよ」
「行こう虹夏、晴人がいいって言ってるし。それにライブ見てるだけで時給が発生する。こんな楽な仕事は他にない」
「やっぱりおめーには残ってもらおうかな山田。まぁコイツの図太さを見習えとは言わないけど虹夏も遠慮すんなって」
リョウをジト目で睨んでから虹夏にそう笑いかける。そんなやり取りに苦笑しながら虹夏は頷いた。
「そっか、じゃあお言葉に甘えさせてもらおっかなー。いこ、リョウ」
リョウの手を取りカウンターから出ていく虹夏にひらひらと手を振って一人カウンターの中で頬杖をついてぼんやりとステージを見つめる。
ボーカルのMCが終わって演奏が始まり歓声が上がる。そうしてかき鳴らされている楽器の音にリズムを取る虹夏の後ろ姿が見える。
そうして2人があのステージでライブをする姿を夢想する。
虹夏とリョウは最近バンドを組んだ。名前は『結束バンド』。ちょっとふざけてるのかと言いたくなる名前をリョウが付けた。
虹夏がバンドに憧れたのは小学生の頃。母親を喪いふざきこみ、一時は笑顔も失くし、記憶障害になった彼女にそれを改善するきっかけにでもなればと星歌さんが当時組んでいた自分のバンドのライブに連れていった。
結果として記憶障害こそ治りはしなかったが、彼女に笑顔が戻った。学校に再び来れるようになったのはこのライブの後だったそうだ。
それから練習を続け、以前組んでいたバンドから脱退したリョウを誘い今に至る。現状はドラム担当の虹夏とベース担当のリョウしかいないため、メンバーの募集に勤しんでいるが虹夏はやる気に満ち溢れている。
なんでもノートにバンドを組むことへの熱い想いが綴られているそうで、昨日までの自分の願いを叶えてやりたいのだそうだ。
俺は楽器を弾けないからただ近くで応援してやることしかできないが、その夢が叶うことを本気で祈っている。そのための助力も惜しまないつもりだ。
「ん、お前一人でやってんのか」
「あ、店長。ライブ始まったし混まないだろうと思ったので。そういう店長こそ受付やってたんじゃないんですか?」
「教育がてら新人の子にやってもらってる」
星歌さんがこちらにやって来て同じようにカウンターで頬杖をついた。
俺一人の時にこうやって声をかけてくる時は大抵なにか話がある時だ。一応長い付き合いとも言えるしこういうのは分かるようになっていた。
「なるほど……何か用ですか」
「まぁ大したことじゃないけどさ、お前らももう高ニなのかって思ってさ」
「はは、なんすかそれ。まぁでも意外とあっという間だったかもしれないですね。高校入学したのがつい最近のような気がします、時間が経つのが早いですね」
「そうだな。でもな、大人になったらもっと時間が早く経つような感じがしてくるぞ」
「え〜まじかぁ」
他愛もない話をしてお互いにへらっと笑う。13年先長く生きてる人が言うのだ、その感覚はきっと本当なのだろう。そうなのだとしたらそれは嫌だな、と口には出さず胸の中で呟く。
「だからこそさ、学生っていう人生の中でものすごい貴重な時間を妹のために使わせ続けてしまってることに申し訳なく思ってるんだ」
「別に言われて一緒に居る訳じゃないですよ俺もリョウも。俺達がそうしたいと思ったからそうしてるだけです」
感傷に浸るような顔で虹夏の背を見ながら話す星歌さんに、何を言ってるんだと言わんばかり明るい声色で返す。そんな俺を横目に星歌さんは続ける。
「お前らだってもっと自分の好きなことすりゃいいんじゃないの?リョウは別なとこでバンド組んでたのに結局抜けてきて虹夏とバンドを組んだ、それにお前は……ほら、なんか彼女とか作ってもっと遊べよ」
「リョウはバンドの人達と揉めて脱退して自分の意思で結束バンドに入ったんですよ。俺もまぁ、正直彼女とかいまのところ全然欲しいと思わないんですよね、今の生活で十分楽しいし。
なんにせよ俺ら2人とも自分の意思でここにいて虹夏といる訳なんで、負い目感じる必要なんて何もないですよ」
鼻で笑う俺に星歌さんはそうかよと呟いて大きく息を吐く。
「そういやこの間虹夏の定期検診あったんですよね、どうでした?」
「相変わらず異常なし、脳に器質的問題はありませんってさ。残念ながら記憶が良くなるのはまだしばらく先になりそうだな」
ため息まじりに言う星歌さんにそうですかと少し暗い声色で答えて下を向くが、すぐに切り替えて顔を上げる。
「まぁでもこれからも手は貸し続けますんで大丈夫ですよ。俺も、一応リョウも。それに虹夏けっこう社交的だし、今日だって新しいクラスの人と早速仲良くなってましたし」
「そうか、それならひと安心だな。学校では私は何も手助けできないからさ、ほんと助かるよ。特にお前にはやっぱ頭が上がんねぇよ晴人」
「いやいや、12歳も下のヤツになんてこと言ってんすか」
「いま私が虹夏と向き合って一緒にいられるのはお前に胸ぐら掴まれて殴られかけたりしたおかげかもしんないからな」
「あーはは……そんなこともありましたね……」
星歌さんが懐かしむように目を細める姿を見て俺は苦笑した。
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ある日突然、母親が死んだ。
私がバンドに精を出す姿を見てそれに憎たらしげな顔ばかりする妹と
そんな妹のことを気にかける母親にわずらわしさを感じバンドメンバーの家に転がり込んでいた最中のことだった。
亡くなる少し前に私に会いに来た母親に一言、声をかけられなかったことがどうしても胸に引っかかって頭から離れなかった私は、余計なことを考えたくないとそれまでと変わらずバンドに打ちこんだ。ギターをかき鳴らしていた。
いま思えばただ逃げていただけだろう。向き合わなければならない事実や取り返しのつかない後悔に、向き合うことを恐れ背を向けていたのだ。
母親が亡くなって1ヶ月経った頃、その日は夕方からのライブに備え朝からスタジオで練習をしていた。
そんななか着信音と共に震える携帯電話、誰からだとその名前を見れば父親からであった。
一瞬の迷いの後、私はそのまま携帯を再びズボンのポッケに押し戻した。
この時、私はまた逃げたのだ。それが2度目の取り返しのつかない私の失敗だった。
その日のライブは大きなトラブルなどなく進み、成功と言っていい結果だった。そうしていつものように居酒屋で打ち上げをした。何故かいつもより皆酒が進み、日付が変わってしばらくするまで打ち上げは続いた。
居酒屋からそれぞれ家路に着き、酔いの回った状態でリビングの扉を開けると、そこには真っ暗な部屋で一人ビールを飲む父親の姿があった。
そこで私は今日の出来事を聞かされた。虹夏がもう学校にもどこにも行きたくないと泣いて暴れたのだという。
ランドセルや教科書、大事にしていたぬいぐるみ達も投げて部屋中めちゃくちゃになっていたらしい。
そんな状態だったから私からも声をかけ説得してほしかったのだという。そして私はその助けを乞う電話を、その手を振りほどいてしまっていたのだ。
翌日、今度は私からも声をかけてみようと虹夏の部屋の前に立った。そしてドアをノックしようと手を近づけたその瞬間、あともう少し動かせばドアに触れるというその位置で私の手は止まってしまった。
私は考えてしまった。いまの私になにができるのだろう、と。
散々バンドを優先してたいして構ってやらなかった私が今更どんな顔してどんなことを言えばいいのだろう。
それが頭をよぎってからは考えが浮かばず、とうとう私の手はドアに触れることなく下に降りてしまった。そして静かに部屋の前から去りギターを担ぎ、家を後にしてしまった。
私はまた逃げ出していた。
「あの、虹夏ちゃんのお姉さん…………ですよね?」
そうやって更にバンドにのめり込もうとしてしばらくしたある日、スタジオから家に帰る途中にある公園の前を通った時、一人の少年に声をかけられた。
「……そうだけどお前は?虹夏の友達か?」
「はい、同じクラスの雨後晴人です。あの、虹夏ちゃんは元気ですか?最近ずっと学校お休みしてて、この前リョ……友達とお見舞い行こうとしたけど誰にも会いたくないって言ってるからって言われて会えなくて……」
固い表情で時々目線をあちこちに逸らしながら話すその少年に、私は小さく息を吐き答えた。
「虹夏はちょっといま、母親のことでショックを受けてて混乱してるっていうか……まぁ落ち着く時間が必要だから悪いけどもう少し待っててやってくれ。時間が経てば多分──」
「じゃあなんでそんな大事な時にお姉さんはそばにいないんですか?」
「……えっ?」
多分なんとかなる。とかそんなことを言いかけた矢先、被せるように、目の前の少年は僅かに声を震わせながら私の言葉を遮った。
そしてキリッと睨みつけるように顔を上げた。
「ショックで混乱してて誰にも会いたくないって言ってる妹がいるのになんであなたはそれをほっといて出かけようとしてるんですか。それギターですよね?俺知ってますよ、お姉さんがバンドやってて全然構ってくれないっていつも愚痴聞いてたから……。そんなにバンドが大事なの?こんな時にも家族をほっといて一人だけ遊びに行くんですか……?」
「いや別にバンドは遊びでやってるワケじゃねぇよ、ただ──」
「悲しい思いして一人でいる家族よりも大事なのかよ!!!!」
「ッ!?」
いきなり胸ぐらを掴まれ叫ばれた。その手を振りほどこうとする私をよそに更にその手に力を込め、Tシャツに皺を作りながら彼は叫ぶ。
「なんでそばにいてやんないんだよ!家族だろ姉ちゃんなんだろ!
一人で泣いてる妹のことはどうでもいいのかよ!?こっちは助けてあげたくても会うことすらできないのに……!1番近くにいるクセになんでお前が助けてやんないんだよ!!ふざけんな!!!バンドなんか辞めちまえ!!!!」
立て続けに言葉をぶつけ、遂には私を突き飛ばす少年。それに気圧されてされるがまま、突き飛ばされ尻もちをつく。見上げれば私よりも小さいその少年は顔を赤くし、目に涙を浮かべていた。
尻もちをついた時に手に伝わるざらざらとした公園の砂の感触、舞い上がった砂ぼこりが散り私の目を襲う。
「………っ、るよ。……たし、だって……!」
僅かな沈黙の後、私はその体勢のまま絞り出すように声を上げた。
「わかってるよ!アタシだって!!言われなくても………、…?」
そう立ち上がって掴みかかろうとしたその時、ポケットの中で携帯電話が震えだした。父親からの着信だった。
前回のこともあり、今すぐ言い返したい気持ちを抑え、私はすぐにその電話に出た。
「……もしもし。」
「星歌!今どこにいる、すぐに病院に来てくれ!虹夏が、虹夏の様子がおかしいんだ!!」
父親の明らかに動揺したその声に、私はすぐに病院へ駆け出した。
病院へ着くと、受付近くの長椅子に座る父親と虹夏の姿があった。私はすぐに駆け寄り虹夏の肩を掴んだ。
「虹夏どうした!怪我でもしたのか!?」
ブンブンと首を横に振る虹夏。確かにみたところ体に怪我などはなさそうだった。そのことにほっと胸を撫で下ろしつつ、じゃあなぜ病院に。そう思いかけた時だった。
「ねぇ……おねえさん、だれ?」
「……………は?」
よく知ってるはずの声が全くの別人の声に聞こえた気がした。目の前が白黒になるような、吐き気がするような、そんな感覚が私を襲った。
「ほら虹夏起きろ朝だ、遅刻するぞ」
「んん〜……朝?あれ、おねえさん誰?」
「私はお前の姉ちゃんだ。いいか虹夏、お前はな記憶が──」
それから父親が仕事で早くから家を出ることもあり、私が朝に虹夏を起こし記憶障害のことを説明するようになった。そして通ってる学校について、学校での大まかな出来事などは担任の先生に連絡帳に書いてもらいそれを伝えることで昨日あったことを虹夏に教えていた。
そうやって朝に記憶について説明して学校に送り出し、その日あったことを楽しそうに語る虹夏の話を聞いて眠る。
次の日もまた記憶のことを伝え学校に送り出し虹夏の話を聞く。
次の日も、
その次の日も、
そのまた次の日も。
虹夏の負担を減らそうと料理や掃除など苦手だった家事もバンドメンバーに教わったりしながら頑張って、そこそこにはできるようなったりもした。
そうやって来る日も来る日も同じことをやり続けながら、できる限りいままで通りにバンド活動も続ける日々を送った私は、ある時プツンと糸の切れたようなそんな感覚に襲われた。
なんだか疲れてしまった。毎日、どれだけ同じことを言っても向こうは明日になれば綺麗さっぱり忘れてしまう。そんな繰り返すやり取りが、まるで自分だけが一人過去に取り残されているような、そんな感じがしていた。
本当は逆なのに。取り残されて明日に進めずにいるのは私ではなく虹夏なのに。
頭ではわかっているはずなのにどうしてもそう思わずにはいられなかった、それくらい私の心は疲れてしまっていた。
私は夕飯の買い物に行ってくるとだけ虹夏に言い残し、家を飛び出してしまった。
私はまた逃げてしまった。これで3度目だ、罪悪感に苛まれながらも私の身体はふらふらとたどり着いた公園のベンチから立ち上がることができなかった。
気づけば辺りはすっかり暗くなり、近くの家から晩ご飯の美味しそうな匂いが時折漂っていた。
いい加減戻らなきゃ、決心して鉛のように重くなっていた腰を上げ家へと帰る。リビングに入るとそこにはダイニングテーブルの前に座り私の帰りを待っていた虹夏がいた。
「あ、おねーちゃんおかえり!遅かったね、何買ってきたの?」
私の暗い気持ちなど吹き飛ばしてしまいそうな明るい笑顔と声で首を傾げる虹夏に、キュッと胸が締め付けられた。
虹夏はずっと待っていたのだ。私がついたウソを信じて何時間もずっと、一人で。その事実に心が痛んだ。悲しかったのは虹夏の方のはずなのに。自然と目に涙が浮かんできた。
「あ、あぁ……ごめん、なにも…買ってきてないや……」
「えぇ〜!?もうおねーちゃんなにやってたのさ!やっぱり家事とか苦手なら私がおつかい行くよ〜」
「そう、だな……ごめん」
「も〜なにしょぼんりしてるのさ」
「……?」
暗く俯いて呟いた私の手を虹夏が握り引っ張ってくる。
「一緒にごはん、つくろ?二人で一緒にやれば多分すぐつくれるよ!」
「……っ、…………あぁ、そうだな。よし作るか、虹夏はなに食べたい?」
「うーん、カレーがいい!だれかが好きって言ってた気がする!」
二人で一緒に。この言葉を聞いた刹那、ふと母親が言っていたことを思い出した。
『二人で支えあって世界一仲のいい姉妹でいてほしいの』
最後に託された母親からの願い、どうして忘れてしまっていたんだろう。
ごめん母さん、ごめん虹夏。あの日の約束は絶対守るよ。
もう私は逃げない、まっすぐ向き合い続けるよ。どれだけ大変でも、苦しくても仲のいい姉妹でい続けるよ。
「そうだ虹夏。姉ちゃんバンドやっててさ、今度ライブやるんだけど観に来るか?」
「え、ほんと!?うん、行きたい!楽しみにしてるね!!」
この日から私は逃げるのをやめた。
目を逸らし向き合うことから逃げた日々は消えない、戻りはしない。
いままでの分を取り返すためにも私はお前と一緒にい続けるよ。
たとえお前が私が逃げたことを覚えていなくても、お前が鬱陶しいと思っても。
私はお前の味方でいる。 そばにいる。
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