感想欄見るとメスゴリラが範馬勇次郎でイメージ固定されていて笑った。
一応お顔は美人の設定です。
誰が広めたかは知らないが外国人が日本を語る時のテンプレの「スシ・テンプラ・ゲイシャ・フジヤマ」なんてフレーズが広がっているぐらいに。
寿司っつー料理は正に日本を代表する日本食の王様みたいなモノだと俺は思っている。
特に庶民に嬉しい回転寿司は見た目も楽しくてオマケに安いもんだから、前世でよくお世話になったもんだ。
今世では裕福な家に産まれたし、俺自身もちょっと幾ら稼いでいるか把握しきれていない程度には金を持っている。
だからちょっとばかし豪勢な外食がしたいなーって気分の時に、職人が一貫一貫魂を込めて握ってくれる高級な寿司屋に行く機会もあった。
つっても俺の実家はニューヨーク。日本人的観念から考えてマトモな寿司店と判断していいかは悩ましいような、ちょっと微妙なところにしか行ったことは無いんだけどな。
……いや、まあ。美味いよ? カリフォルニアロールやレインボードラゴンロールも。
でも向こうは寿司=ロールのイメージが強いから別の料理を喰ってる感覚なんだよなぁ。
やっぱ寿司と言ったら握り。そんでもって筋トレと格闘技が趣味の俺からしたら最高のネタはマグロだな、マグロ。
もちろん赤身一択さ。大トロとかも嫌いじゃないけど、回転寿司ではわざわざ食わないかなぁ? 高級店に行く機会があったら食べてみてーけども。
……街の中探し回れば高級寿司店とかもあるのか? 暇な時にでも探してみるか。
そんな妄想に浸りながら赤身の握りをパクリと頬張った。うん、美味い‼︎
「やっぱ寿司は日本に限るねー。向こうだと生魚と生卵は敬遠されがちだからなー」
「そ、そうなんですか……」
思わず口に出た俺の感想に、対面に座ったソイツは律儀に相槌を打ってくれた。
我ながら早いペースでバクバク食っている俺とは対照的に、チマチマと小さいお口に切り分けた厚焼き玉子を運んでいる美少女……じゃなくて美少年。
小動物っぽい華奢な体躯と白い肌が庇護欲をこれでもかと擽ぐる、ところどころ外に跳ねた青髪のショートボブが目を惹く男の娘。
「他人の金で食ってると思うと倍で美味く感じるな。Thank you. 京介」
「い、いえ。その、お詫び……ですから」
入学前のちょっとしたアクシデントがきっかけで知り合った少年。
沖谷京介が緊張した様子でちんまりと俺のことを見上げていた。
入学2日目を迎えてついに授業が始まった……っつっても、どの教科も殆どガイダンスと自己紹介で終わったようなもんだ。まあ初回だから、そんなもんだろ。
教師陣の特徴としては残念ながらオッサンが多くて、個人的にはやる気が激減だ。
それでも数少ない女教師は芸能人にいてもおかしくないレベルの美女揃い。
特に日本史を教えている茶柱っていう個性的な苗字の先生。彼女はGoodだ。
クールな瞳と大胆に、はだけた胸の谷間のギャップが堪らない。青少年には目の毒なんじゃないかと変な心配しちまうぐらいにホットな美女なのさ。
昨日ちょっとだけ会話した星乃宮とは方向の違う美人に出逢えて嬉しい限りだ。
茶柱先生はDクラスの担任らしいが、全く、マジでDクラスの男子が羨ましい。
口煩くてノリの悪い真嶋のオッサンと担任を取り替えて欲しいぜ。
そうそう真嶋のオッサンと言えば、またしても生徒指導室に呼び出しされちまった。
席替えの時にオハナシした里中の様子がおかしいからって、まるで俺が犯罪者みたいな扱いだ。
嫌になっちまうぜ。俺は何も悪いことはしてねーってのに。
確かにほーんの少しだけ。小指の先っちょほどの圧を込めてお願いした自覚はある。
とは言え、里中のヤツにはお礼としてポイントだって払ったし、それにアイツだって最終的には「何でも言う通りにするから本当に勘弁して下さいごめんなさい許して下さいすみません」って快く頷いてくれたんだ。
暴力だって一切振るってない。あんまりにもしつこい真嶋のオッサンには何度も説明してやったって言うのに、こっちの言い分なんざ無視される。
どうやら完璧に問題児として目をつけられちまったようだ。ヤレヤレだぜ。
結局、2日連続で生徒指導室に呼び出し。
おまけに今日は部活動紹介っていうイベントが放課後に控えていたもんだから、結果的になかなか遅い時間までオッサンと二人きりのランデブーだ。
Fワードを吐き捨てて中指立てなかった俺を褒めて欲しいぐらいだぜ。
授業を終えて、部活動紹介もキッチリと参加して、その後に生徒指導室でオッサンと密会。やってられねーよ、全く。
まあ、俺も転んだらタダじゃ起きねえ男、じゃなくて女だ。
どうせ説教されるなら、と部活動紹介を眺めている時に思いついた俺様渾身の最高にスマートなグッドアイデア。
こいつを仮に実行したとして校則や学校運営側のルール的に問題ないか。しっかりと許可を取っておいた。
昨日のソファーの件みたいに予想外な大事になったり、今回の席替えのオハナシのように後から文句言われるのも面白くないからな。
俺の作戦を聴いたオッサンはその素晴らしさに感動しちまったのか、盛大に顔面を引き攣らせた後に、苦虫を100匹噛み潰したような表情で許可を出してくれた。
意外と聞き分けは良いんだよな、真嶋のオッサン。
「くれぐれもヤリ過ぎないように」なんて釘を刺されたが、まあそこら辺は適当に聞き流す。もちろんお説教もついでにスルーだ。
それにしても苦虫ってどんな虫なんだろうな?
さて、俺が解放されたのはすっかり日が暮れた頃だった。
時刻は18時過ぎ。小腹も空いてきたコトだし、食事の準備でもするか。それとも面倒だから外食でもするか。
寮に帰る道筋から外れ、適当に街をぶらついている時。ちょっと見覚えのある後ろ姿を見つけた。
小さな背丈。薄暗い路地にぼんやり浮かぶような白い首筋。ふんわりとしたした青のショートボブヘアーだ。
一度寮に帰った後に買い物目的でブラついてるのか、あの目立つ制服じゃなくて地味な私服を着ている。
俺は音を立てないようにササッと背後から忍び寄って、ヒョイッと子猫を掴むように目的の人物を片手で持ち上げた。
「ふぇぇっ⁉︎ えっ、何ぃ⁉︎」
身長差の関係でいきなり宙に浮くことになった、かわい子ちゃんは驚いたように足をバタバタさせた後、ようやく此方を振り向いた。
クリクリとした大きな瞳が俺の事を映すと、男にしておくのは勿体ないぐらいの整った彼の顔面があっという間に驚愕と恐怖に染まっていく。
俺の心にゾクゾクとサディスティックな愉悦が走る。目の前のこいつが女の子だったらとっとと寮へと攫ってそのまま押し倒して美味しく頂いていたかも知れないな。
そんな煩悩に塗れた本音を押し隠すように、俺はあえて明るく声をかけてやった。
「Hello
ダメ押しとばかりにズイッと顔を近づけて舌舐めずり。
「もちろん断ったりはしない……よなぁ?」
すっかり顔色を悪くしたリアル男の娘は俺との再会があんまりにも嬉し過ぎたのだろう。
壊れかけたボブルヘッドの人形みたいにガクガクと何度も頷いた。
「……あのー。この前の事は、本当に……すみませんでした。決してワザとじゃなくて、その。体調悪くて、殆ど前も見ていなくて、その」
オズオズと。そんな表現がぴったりな様子でリアル男の娘こと、沖谷京介が向かいの席から俺のことを潤んだ瞳で見上げている。
全く、店に入ってから何回目のセリフなんだか。これで相手が女だったらうるさい口なんてとっとと塞いでやるのに。もちろん舌を入れてな。
「しつけーよ。此処で夕飯奢ってくれりゃ水に流してやる。ってこの話は何回繰り返すんだ?……っと、マグロ来た来た」
「あ、はい。ごめんなさい」
「もう頭下げなくていいっつーの。ところで京介、お前はもう食わないのか?」
俺の手元には10枚重なった皿のタワーが3つ纏めてあるというのに、京介の側にはタワーが一つだけ。食べ盛りの男子高校生にしては控えめに過ぎる食欲だ。
「昔からあんまり量が食べられなくて……。あ、剛力さんは遠慮なく食べて下さい。ね?」
「そりゃ遠慮なく食うつもりではあるけどよ。何で同学年なのに敬語使ってんだよ?」
「えっ? いや、だって……失礼なことしちゃいましたし」
「だから気にしてねーってつうのに」
完全に解凍されていなかったらしい、ちょっと硬めの赤身を2貫まとめて口の中に放り込んだ俺は、どうにも微妙な気持ちになっていた。
そりゃ出逢い方がアレだったので最初は顔面を凹ませて骨の2、3本は圧し折ってやろうか。と割とキレていたが、京介の可愛い顔にすっかり絆されて、怒りなんてもんはとっくのとうに散っている。
オマケにこっちも胸を揉まれた仕返し、とばかりに我ながら結構ヒドイことをヤッちまった自覚がある。男子の尊厳的な意味で。
ダメ押しにケジメとしてこの店の会計まで持ってもらうんだから、そこまで畏まる事もないだろう。
寧ろ、すっかりクラスの中で腫れ物、どころか危険物のような扱いを受けている自覚がある俺としては、普通に京介と仲良くなりたい。
股の間から余計なモノがついているとは言え、見た目は完璧に
「とにかく、敬語は止めてくれ。っつーか止めろ。何か腹の据わりが悪いし、俺がこうして京介のことを名前で呼んでんだ。そっちもそのぐらいフランクに接してくれよ」
「えっ……でも、だって。あんな酷いことしちゃったし、それに、出逢ったばかりだし」
「俺がそうしろ。って言ってんだから良いんだよ。敬語は無し。名前で呼ぶ。俺達は友達。OK?」
行儀悪いのを承知でズイッと指し箸してやると、京介は小動物みたいにビクッと震えて瞠目する。なんかハムスターみたいなヤツだな。
その後は身体を縮こませるようにモジモジとさせ、恐る恐ると言った感じで俺を見上げて来る。
「は、はい。じゃなくて、うん。オーガスタ……さん」
じんわりと薔薇色にそまっていく柔らかそうな頬が、京介の抜けるような白い肌と青空のようなふわふわのボブヘアーに映えている。チクショー。めちゃくちゃ可愛いぜ。
「呼びにくかったらオーガでもガシーでも何でも良いぜ。家族はオルガって呼んでるし」
「えーと、それはもう少し仲良くなってから、かな?」
「シャイなヤツだな、京介は」
空になった皿のタワーが5本目に到達する頃には俺と京介はすっかり打ち解けた。どっからどう見ても友人だ。
あのセクシーな茶柱先生が担任を務めているDクラスに在籍している京介と互いのクラスの雰囲気について話をしたり。
互いの地元の話をしていた延長戦で俺の産まれの話をしたり。
特にニューヨークでのちょっとした思い出を語ってやった時に、京介が目をキラキラ光らせて話をせがんで来たのが印象的だった。
日本から出たことない人間からすれば、さぞアメリカは魅力的に映るんだろう。
まあ、ぶっちゃけ治安も食事も日本の方が上等だと思うけどな。
寿司も美味いし、暗がりを一人で歩いていてもピストル持ったジャンキーに絡まれる心配も無いし。
と、まあ。お会計する時に金額のせいか京介の顔色が若干悪くなったりもしたがソレはソレ。流石に次回は俺が奢ると約束してやったけどな。
腹八分目とは言え、規格外の体躯を持つ俺だ。
一般人の食う量と比べたらかなりの枚数を食っちまった自覚はある。
ムカつく野郎だったら集ったところで良心は咎めないが、紆余曲折を経て今じゃ京介は友人だし。
しかも何気に日本に来てからのファーストフレンドだ。大事にしてやらないとな。
「次の土日、どっちか暇か? 焼肉行こうぜ。俺の奢りで」
ぐだぐだと喋りながら寮へと向かう道中だ。
二人の身長差が目立つからか、それとも単純に俺単体が人目を引くのか。
やけに周りのやつらからジロジロ観察されながらも俺達は週末の予定を詰めていた。
悲しいことに京介もクラスでは友人はまだ居ないらしく、オマケに部活もやるつもりはないから予定は真っ白らしい。
まあ、まだ入学して2日目だから、お互いこれからだろう。
「予定は空いてるけど奢りなんて。ポイントにはまだ余裕あるから普通にワリカンで食べようよ?」
「今回の御礼みたいなもんだし、気にすんなって。ソレによぉ、ちょっとばかしナイショ話なんだけどよお」
耳打ちする為に身を屈めて京介との距離を縮めた。
すると京介は面白いくらいに露骨に動揺してアタフタし始める。
顔を真っ赤にしながらも必死で俺の瞳を見返そうとしているのに、それでもチラチラと俺の胸元に目が吸い寄せられている様が何だか愉快だ。
男の子だねー。でもその反応じゃ
俺は別に気にしねーけど、他の女子には止めといた方がいいぜ。
まあ、京介の可愛いお顔なら案外、許されちまうかもだけど。
内心でそんな事を考えながら俺は京介の耳元でちょっとした企てを打ち明けた。
「近い内に臨時収入が入る予定なんだ。それも端金じゃねえ。上手くいけば100万単位のポイントが手に入る筈さ。だから飯ぐらい奢ってもノープロって訳さ」
真嶋のオッサンの反応を見るにルール的にも問題無しで、確実に稼げる算段だ。
俺の目論見通りに行けば何百万ものポイントが数日中に手に入る。
つまりこの食事の誘いは作戦が成功した時の御祝いを兼ねてるってワケだ。
祝い事は1人でやるより友人と祝った方が楽しいからな。
全くもって自覚は無かったが、どうやらその時の俺は相当に悪どい笑みを晒していたらしい。
瞠目しながら俺の笑顔を見つめていた京介は何やらちょっとビクついた表情に変わり、僅かに逡巡。
「あ、あの。オーガスタさん‼︎」
やがて何かを決意したように、可愛いお目目をほんの少しだけキッと細くして、俺を見上げて叫ぶような声を上げた。
「んお? どした? 焼肉が嫌なら別の食い物でも……」
「あ、あの‼︎ そういう事は良くないって思うよ⁉︎」
「はぁ? そういう事?」
「だから‼︎ い、いくらポイントが欲しいからって‼︎ か、カツアゲはダメだと思うんだ‼︎」
「……」
恐らく勇気を振り絞ったであろう、キリッとした表情の京介。
俺はそんな彼に向かって左手をスッと伸ばし、中指を曲げて親指に引っ掛ける。
ちょっとだけ凛々しかった表情を怪訝なものに変えた京介に、俺は優しく。それはそれは優しく微笑んでから、こう言った。
「
「へ? ぁ痛っあああああああああああ⁉︎ 」
バチコン‼︎ と良い音を立てながら俺の中指が京介の額に炸裂。
「オルガのデコピンを喰らうなら拳銃で撃たれた方がまだマシさ」と酔ったパピーがジョークにする程度には激烈な威力を持ったデコピンを打ち込んだ。
まあ利き手じゃないからそこまで痛くは……って、おい京介。いくらビックリしたとは言え路上でゴロゴロ転がり回るのは止めた方がいいぞ?
え? 痛くてそれどころじゃない? 頭が真っ白になって視界にチカチカ星が瞬いてるって?
そんなに力は入れた覚え無いんだが。
「ったく‼︎ 俺が場末のチンピラみたいなダセェ真似するかってんだ‼︎」
口煩い真嶋のオッサンと言い、リアル男の娘の京介と言い、人のことを何だと思ってやがるんだ‼︎
「痛つうううぅぅ……ご、ごべんなざぁい……う、うぅ……‼︎」
「いや、おい。ガチで泣くなよ」
「だって……だってえぇぇ……‼︎」
「あーもう、仕方ねーなー」
レイトティーンの男が泣くのは彼女を寝取られた時か、ホモにケツを掘られた時だけにしておけよな。
結局、俺はポイントをガッツリ稼ぐ事が出来るスマートな作戦の概要を京介に説明する事も無く。
額を両手で押さえてマジ泣きしながら、痛みに悶絶している失礼な友人を肩に担いで寮に送り届ける事にした。
全く、最後の最後で締まらねー終わり方だぜ。
まあ、何はともあれ高校入学2日目。
こうして俺は、日本に来てから初めての友人を得たってワケだ。
エロ入れたいっすねー。