「傑は馬鹿だな~」
セミの声が五月蠅い9月。僕と傑は任務だった。地図にものっていない村。そこで行われていたのは、村全体の児童虐待。傑以外なら我慢できたかは微妙だ。僕だって、あの時の気持ちをどう言い表せばいいのか分からない。ただ、傑は一線を超えてしまった。
「本当に馬鹿だな~。非術師はお前が思ってるほどいい奴らばかりじゃないって、教えただろ。そんな奴らのせいで人生無駄にするなんて馬鹿だろ。大体さ、傑みたいなのにそんな大義は似合わないって。お前は悟と一緒にいる時の方が、何億倍もいい顔してるよ」
《羨ましくなるくらいにね》
羨ましかった。心の底から信頼し合っているお前らが。それと同時に格好良かった。お互いに背中を預けて戦っているお前らが。
「だからさ、2人でいてよ。僕は喧嘩してる2人が嫌いなんだ。傑には悪いけど、そっちには行かせないよ」
僕の我儘だ。2人が憎み合ったり、殺し合ったりするのを見たくない。例え敵になったとしても、2人が一緒に戦う姿が見たい。だから、
「ごめんね、傑」
君の意思を曲げてしまって。君が自分で選んだ人生を、僕の都合で変えてしまって。君に僕の理想を押し付けて。
「本当に嫌いだ。自己中すぎてドン引きだわ」
昔から自分が嫌いだった。それでも、好きになるよりはいいと思っていた。
「・・・ああでも、お前らといる僕は嫌いじゃなかったな・・・」
ごめんね、棘、悟、傑、硝子、夜蛾セン、七海、伊地知。僕の我儘な理由でお前らに迷惑をかける。それでも辞めるつもりはない。
「・・・今までありがとう」
傑の寝顔を見ながら言う。きっともう見ることは叶わないから。
「さようなら、『夏油くん』」
記録 2007年 9月 ◆◆県◆◆市(旧◆◆村)
任務概要 村落内での神隠し、変死
その原因と思われる呪霊の排除
・担当者(高専3年 夏油傑 〇〇棗)派遣から5日後、担当者1名(夏油傑)と旧◆◆村の住民と思われる幼女2名の生存、112名の死亡が確認される
・全て呪霊による被害と思われたが、残穢から夏油傑の呪霊操術と断定
・しかし、夏油傑から〇〇棗の残穢を確認
・〇〇棗の術式と本人が逃走していることから、呪術規定9条に基づき呪詛師として処刑対象となる
後悔はしていない。いや、ちょっとはしてるけど。傑をかばったことも。お前らの敵になったことも。正直、2人や棘が僕のことを覚えてくれていたのは嬉しかった。
だから、この道を選んで良かった、て思えた。
「なぁ、『悟』、『傑』」
久しぶりに呼んだな。2人とも想像以上に驚いている。
「僕はお前ら2人が笑っている姿が好きだよ」
そして、その中で一緒に笑っている僕が。だから、そんな顔するなよ。僕が望んだ結果なんだから。
・狗巻 棗 (いぬまき そう)
棘の年の離れた兄。さしすの同級生。髪の色は棘と同じ。目は濃い紫。弟大好き。天使だと思ってる。
弟の前だと優しくて、いいお兄ちゃん。実際は悪ガキで、悪ノリ大好き。
いたずらのネタを思いつくのは基本こいつ。悟たちを誘って滅茶苦茶悪さをする。喧嘩はするけど、本気で怒るのは弟を侮辱された時のみ。
呪言は持っていないが、普通に強い。
傑と同じ任務に行く。そこで傑が、一般人を殺しすのを止められなかった。術式を使ってその罪を被り、呪詛師になる。
【共喜共悲】
催眠術系の術式。相手の心の隙に入り込み、相手を操る。自分より強い相手は、隙が大きくないと操れない。
何から何まで操るのではなく、どのように行動するのかを決める。そのため、操られるものに感情はある。
それをなくして完全な操り人形にしたり、本人が嫌がっていることをやらせたりするのは、呪力の消費が激しい。
Rhodanthe
ローダンセ
花言葉は『変わらぬ思い』『終わりのない友情』