TS竜人は平和に暮らしたかっただけなのにいつの間にか天下統一をしなければならなくなりました   作:雅媛

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8 辺境伯就任式

 就任式は予定通り行われることになりました。

 最初は、辺境伯位を禅譲する証として、辺境伯の家宝である剣を受け取り、ボクが辺境伯になったことを宣言する、という程度でした。

 せいぜいそれの後に宴会を適当にやるぐらいでいいかなと思っていましたが、いつの間にかプログラムがどんどんてんこ盛りになっています。

 

 まず、就任の儀式は、最初はお城の適当な会議室でやろうと思っていましたが、いつの間にか竜神教の教会で行われることになっていました。

 竜神教とは、法と剣を司る神様を祀った宗教であり、そこそこメジャーな宗教ではあります。ボクが竜人であり、竜人の守護神でもありますから、ここが選ばれたのでしょう。ボク自身は別に信仰はしていません。村に教会がなかったし。

 教会でやると、より多くの見物客が参加できることと、神から認められたという建前が使えるのが強いところですね。どれだけ司教さんに袖の下渡したのでしょうか。

 

 

 何にしろまずは教会での正式な儀式です。

 参加者は新辺境伯のボクと、前辺境伯のエミリー、あと司教さんとボクの付き添いとして義兄です。義兄とは結婚式はしていませんが、ちゃんと夫ということになっています。正式な手続きとかあるわけではないので、今日から夫婦と言えば夫婦なのです。

 

 服装ですが、ボクはここ最近の普段着である痴女白ビキニです。これ、本気で正装なんですね。帝国の正気を疑います。

 そしてエミリーも色は黒ですがデザインは同じ痴女ビキニ服です、竜姫騎士にあこがれていると聞いていましたが、もうちょっと羞恥心を持った方がいいと思います。

 そして、司教さんはハイレグ黒レオタード服です。頭おかしいんじゃないですか? 痴女と痴女と痴女が集まって姦しくなっちゃってるじゃないですか。あれもまた竜神教の正装だという話ですから、正気を疑います。竜神さまって、エロ親父なのではないかと疑いを持ってしまい調べましたが、どうやら外見は美人の女神様らしいです。つまり単に痴女女神だという話でした。終わってるな竜人!! 

 

 ちなみに義兄はブーメランパンツとマントという伝統的な衣装を断固として断り、今どきの礼服である普通の燕尾服に蝶ネクタイを着ています。義父のお下がりらしいです。ずるいですね。

 ただ、竜神教は男女を差別せず変態にするとても公平な宗教だということはよくわかりました。

 

 何にしろ就任式です。

 これ自体は非常に簡素なものでした。というか簡素なものにしました。だって、2時間も3時間も話すの大変ですし、聞いてる方も多分寝ますよ。

 ということで、エミリーが当初出してきた、ボクの演説2時間コースは却下し、簡単に終わらせるものにしました。

 

 

「辺境伯及び次期辺境伯が入場いたします」

 

 

 痴女の司祭さんが厳かに告げた声が教会の聖堂に響きます。痴女の格好でも一切恥ずかしがらずに厳かに告げればそれっぽく見えるのは不思議です。

 その声に合わせて、エミリーとボクがそれぞれ両方の脇から入場します。義兄はボクの後ろからついてきます。

 そのまま司教さんの前で向かい合うと、エミリーが跪き、持っていた剣を横にして両手でボクの方に捧げます。

 

 

「現辺境伯より、大いなる姉にして次期辺境伯たるアーシェロット様へ。辺境伯領をより良いものとしていただくことを願い、辺境伯位をお譲りします。その証として、辺境伯に伝わる宝剣をお受け取りください」

 

 

 そう言いながら差し出された剣が辺境伯の家宝である剣です。

 ボクはそれを受け取り、左手で鞘を、右手で柄をもって抜き放ちました。

 柄が装飾された美しい宝剣は、その美しい刀身を銀色に輝かせています。

 

 

「アーシェロットは謹んで辺境伯位をお受けする。竜神と、前辺境伯エミリーと、皆さんに、辺境伯領をより良いものとし、領民たちを幸せにし、敵を打ち払うことを約束しよう」

 

 

 そう宣言すると会場は歓声で湧きます。否定的な反応が怖かったのでサクラも仕込んでいましたが特に問題ないようです。母が最前列で歓声を上げていました。妊婦なんだしもう少しおとなしくしてほしいです。主に義父のために。心配そうにしてるじゃないですか。

 

 そのまま宝剣をくるくるとまわしながら曲芸のように鞘にしまうと、義兄に渡しました。辺境伯位の象徴となった剣を渡すことで、義兄がボクの身内で信頼していることをアピールする効果があるそうです。

 あとは、今後義兄がボクの代行として動く時のアピールにもなるようです。義兄の外見は筋肉が結構ついている以外は平凡ですから、辺境伯オーラが足りていないそうです。一方ボクはなんせ竜人で痴女な格好してますから、500m先でもわかるオーラをまとってるんだとか。なんか褒められている気がしません。なんにしろ、ボクは剣なんてなくてもわかりますが、義兄は外見だけだとわからないから宝剣を渡してアピールするっていうことですね。ここまでエミリーが考えたことです。ボクにはよくわかりませんがそう言っていたのでそうなのでしょう。

 ボク個人としては、良い剣ではありますが、軽すぎて使いにくいので義兄に使ってもらおうと思って渡すことは確定していました。義兄の今の剣は義父からのお古でぼろいので、ちょうどいいと思います。

 

 そのまま右手をエミリーに、左手を義兄に預けて、聖堂の中心を通ってボク達は退場します。結構あっけなく終わりました。

 

 

 ちなみにこのシーンですが、画家さんが待機していたので後日絵になることが確定しています。何か注意した方がいいことはないかと聞かれたので、義兄の服をブーメランパンツマントにするようにだけは強くお願いしています。痴女と痴女と痴女の中で普通の正装は浮いちゃいますからね。妹の適切な配慮です。お前だけは逃がさんぞ、なんてことは結構考えています。

 

 

 

 さて、儀式が終わったら次はパレードです。

 パレードですよ。ボクは全くそんな予定がなかったのに、いつの間にかそんな計画になっていました。

 突貫工事で作られたらしい山車に乗って、町を一周グルっと回ります。

 山車の動力は人力です。主にうちの村で捕虜になっていた人たちが押してくれています。重くてつらいでしょうし、ハレの日に働くのも大変そうですので自分で歩くと言ったのですが、皆さんやる気にあふれていて説得はできませんでした。

 

 ゆっくりと動く山車。前後を固める馬に乗り、礼服を着た騎士たち。

 ここで言う礼服は、女性はボクと同じ痴女ビキニ(アーマーですらない)ですし、男性はブーメランパンツマントです。

 ヤバい変態集団が爆誕しています。

 騎士役の人たち、基本今回の件で集まった貴族なんですけどね…… 大丈夫? 恥をかかされたってあとで反乱起こされない? まあ統一感はありますし、貴族は皆鍛えていますので、見せられるだけの肉体をしているのが幸いです。一応参加希望者にお願いしているので、あとから文句を言われる可能性も低いでしょう。うん。

 

 ボクは山車の上で延々と群衆に手を振っています。

 指をそろえて、肩の高さで手を振る、前世テレビで見た皇族の手の振り方です。

 元気度で言えば腕を上げて腕ごと振るぐらいがちょうどいいですが、これが一番きれいに見えると思いますので、おとなしく手を振り続けます。

 

 観客も大盛り上がりです。子供たちが義兄を指さして「なんであのお兄ちゃんだけ服を着ているの?」と言っていたのは傑作でした。変態の国で普通の格好をしていると狂人に思われるという典型ですね。ですが義兄は決してブーメランパンツマントにはなりませんでした。残念。

 

 

 

 パレードが終わると、宴会が始まります。

 町の人も参加できる形式の、いわゆる無礼講です。

 適当に酒樽が各所に置かれ、適当にパンがそこかしこに積み上げられます。各自が適当に料理を持ち寄ったりしながら、あちらこちらで大騒ぎしています。

 メインステージでは義父が、先ほど狩ってきた熊を捌いています。野蛮ですね。ですが周りは肉が食べられると大盛り上がりです。

 

 

「アーシェ、皮剝ぎ手伝ってくれ」

「ボク、辺境伯様なんですけど!?」

 

 

 そして義父に呼ばれてメインステージに上がります。

 まあ、解体ならボクの方が絶対にうまいですからね。この皮、宴会代とかに充てるのでできるだけ綺麗に剥いで高く売りたいですし。

 お腹側から心臓を一突きしているので、おなか側から切っていきます。

内臓を取り出して、胆のうは熊胆になるので縛って保管します。干すと高級薬の材料です。ほかの部位は洗って焼いて食べましょう。

 心臓をエミリーちゃんに渡したら悲鳴を上げていました。

 

 皮をはいで、肉を切り出していきます。適当な大きさに切って、鍋にぶち込んでいきます。既に野菜も入っていますので、ワイルドな熊汁が出来上がります。

 そうそう肉が食べられないからでしょう。すさまじい人だかりになりました。

酒を飲んで、パンと肉を食べて、皆満足そうです。

 

 ちなみにボクはお酒禁止令が出ているので、子供たちのコーナーで薄いレモン水しかもらえません。悲しい。

 近い年代の人たちは皆酒を飲みに行っているので、子供たちとおとなしく遊んでいます。訂正します。全然おとなしくないです。走り回ってますし暴れまわってます。

まだ成人になっていないエミリーも同じコーナーにいましたが、すでに子供に埋もれてしまいました。かわいそうに。

 ボクは藁のクッションに子供たちを投げる遊びをしています。大人気アトラクションですが、さすがにそろそろ体力的にきつい……とても辺境伯に対する扱いとは思いません。

 さすがに体力が切れたので終了にして、ボクは藁のクッションに休憩のためうつ伏せに倒れました。そしてなぜかその上に乗ってくる子供たち。すごく、温いです……。

 そのまま圧力と温さにボクは意識が遠のいていくのでした。




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