死の支配者が新たな出会いを求めるのは間違っているだろうか   作:全ての道はところてんに通ず

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大変長らくお待たせいたしました。またもや難産です。


苦悩

<魔法三重化(トリプレットマジック) 黒曜石の剣(オブシダント・ソード)

 

「グギャァァァァァァ!!」

 

モモンガが出現させた三本の剣が、壁から現れたモンスターたちを蹴散らしていく。

現在、モモンガはレフィーヤを迷宮(ダンジョン)で数少ない安全地帯(セーフティゾーン)である18階層へ送るため、上の階層へとつながる道を突き進んでいる。

 

「しかし、1階層上がるだけでもかなりの手間だな。もう1時間以上歩いているのに全く景色が変わらないんだが」

 

「ここら辺はまだまだ短い方ですよ。下の階層、それこそ『深層』にもなってくると一つのフロアを歩いて横断するのに半日はかかりますからね」

 

レフィーヤはそう言い終わると溜息を吐く。今までの迷宮(ダンジョン)探索での苦労を思い出しているのか、心なしか若干目が死んでいた。

 

「深層というのはたしか、レベル5か6でないと死の可能性が高い危険な場所のことだったか。レフィーヤはレベル3なはずだろう?どうして深層についてそんなに詳しいんだ?」

 

「私は少し特殊な事情があって、よく高レベルの方たちと一緒に遠征に行かせてもらってるんです」

 

「ほう、つまりレフィーヤにはレベル5に並び立つほどに優秀な素養があるということか。それは素晴らしいな」

 

おそらく、レベル3の時点で深層に通用するほどの強力な魔法、もしくはスキルを持っているのだろう。

詳しく聞きたいところだが、どうやら他者にステイタスやその他の情報を問いただすことはマナー違反に当たるらしい。だからこそ、レフィーヤも言葉を濁しているのだ。

まぁ、褒めるくらいなら特に問題にはならないだろう。モモンガはそう思い、レフィーヤに賞賛の言葉を贈る。

 

「…素養とは、ちょっとだけ違うかもしれません。どちらかといえば、私はアイズさんやリヴェリア様の足を引っ張ってしまうので…」

 

しかし、賞賛を受けた側であるレフィーヤは花がしぼんでいくようにその表情を暗くしてしまう。

どうやらモモンガは地雷を踏んでしまったらしい。

ただ、モモンガはその悩みに強い理解を示す事が出来た。なぜなら、その感情はモモンガがユグドラシルでよく経験していた感情だったからである。

モモンガは、ユグドラシルの中でたっち・みーという存在にずっと憧れの感情を抱えていた。

それは、単純に強さだけではない。彼の立ち振る舞い、そして何より彼の仲間をまとめ上げる強いカリスマ性に憧れ、彼に並び立ちたいと考え続けていた。

しかし、今のモモンガならいざ知らず、昔のモモンガは死者の大魔法使い(エルダーリッチ)という即死攻撃以外正直あまりパッとしない種族を使用していたせいか、仲間たちの足を引っ張ることが多かったのだ。自信も付かず、落ち込んだことも多かった。

状況が昔のモモンガと同じであるならば『種族に特にこだわりないならドラゴン族に転生すればOK!』と軽いアドバイスができたのだが、今回はそういうわけにもいかないのだろう。

モモンガは沈黙の中でレフィーヤにかける言葉を必死に考え、そして口を開く。

 

「そう、だな…レフィーヤは、自身の至らぬ点についてどんな所を考えているんだ?」

 

「…私、モンスターが近くに来ると怯えてしまって、魔法を中断してしまうんです。今回のことだって、私に勇気があれば…私が気絶しなければ状況は改善されて、みんな殺されなくて済んだはずなんです」

 

レフィーヤは顔を伏せ、こぶしを握り締める。血が流れるほどに握りしめられたこぶしには、強い後悔の念が現れていた。

どうやら、レフィーヤの心には"仲間を殺してしまった"という後悔が深く刻み込まれているらしい。半分人間をやめてしまったモモンガには推し量ることは難しいが、理解はできる。

 

「すでに起きてしまったことは、どんな方法を使っても覆すことはできない。自分を責めたところで残るのは罪悪感か後悔くらいなものだ。重要なのは、次にその失敗を繰り返さないために失敗から何を学ぶかだ」

 

モモンガは知っている。過去にとらわれ、進むことを諦めた者に待つ結末を。その孤独を。

だからこそ、レフィーヤにはその失敗を踏みしめてもう一歩前に進んでもらいたいのだ。

 

「レフィーヤは自分の至らぬ点を自覚している。あとはそれを強さに変えていくだけだ」

 

「…そうですね。モモンガさんの言う通りです。いろいろ助言をしていただきありがとうございます!」

 

レフィーヤはそういって深々と頭を下げる。その顔にはもう過去を悔やむような後悔の念は見られず、前をまっすぐに見据える少女の姿があった。

 

「いやいや、大したことはないとも」

 

本当に大したことではない。モモンガがしたのはただのごまかし、言ってみれば詐欺のようなものである。

しかし、現実の世界では小学校を卒業しただけのモモンガにとってこれ以上の慰めの言葉は浮かんでこない。あくまでレフィーヤにこの助言が通じるのは、この偽りの威圧感+威厳たっぷりな外見が一役買ってるせいである。

そうしてモモンガが自身の学のなさに人知れず落ち込んでいると、またもや壁から割れるような音が響く。

 

「どうやらモンスターが出現するようだ。私はモンスターを押さえておくから、レフィーヤは魔法を使ってくれ」

 

「は、はい!わかりました!」

 

レフィーヤはそう言うと、持っていた杖を前に構える。

先ほどまではモモンガが敵を殲滅していたが、情報収集の一環として今回はレフィーヤに任せる。

欲を言えば、彼女が第一級冒険者と肩を並べて遠征に行く理由も知れればいいが、それは贅沢というものだろう。

そうこう考えているうちに、壁の中にいた三体のモンスターはこちらに向けて侵攻を開始している。

 

【解き放つ一条の光、聖木の弓幹(ゆがら)。汝、弓の名手なりーー

 

それと同時に、レフィーヤも魔法の詠唱を開始したようだ。足元には魔法陣が現れており、光の粒子が周囲に立ち上っている。魔力の量を見るに第四位階クラスの魔法だろう。弓という単語が目立つ詠唱文から、おそらく一点集中の矢のような魔法だと予想できる。

ならばモモンガにできることは、モンスターをレフィーヤから引きはがしつつ彼らを一点にまとめることだ。

 

浮遊(フライ)

 

モモンガは空へ浮き上がると、床をすべるようにしてモンスターの周りを飛び回る。

モンスターはそんなモモンガを捕えようと必死に爪や牙を振るうが、それらはすべて空を切る。

それもそのはず、浮遊(フライ)は、モモンガがもっとも得意とする移動手段なのだ。

上位転移(グレーター・テレポーテーション)転移門(ゲート)は安定して長距離を移動できる利点はあるが、転移遅延(ディレイ・テレポーテーション)を使われたり、転移先に爆撃地雷(エクスプロードマイン)を置かれるなどの対策もまたされやすい。

そのため、ユグドラシルでの魔法詠唱者(マジックキャスター)のプレイヤーたちは浮遊(フライ)を重宝し、廃人の一人であるモモンガは浮遊(フライ)の魔法を極めに極めている。この程度のモンスターの攻撃を避けるのは容易いことなのだ。

さらに、モモンガはただモンスターの攻撃を回避していたわけではない。回避の方向を調節することで少しずつモンスターの位置を一か所に集めていた。

 

「…そろそろだな。レフィーヤ、いけそうか?」

 

ーー狙撃せよ、妖精の射手。穿て、必中の矢】大丈夫です!いけます!」

 

モモンガの言葉に対し、レフィーヤは大きくうなずくと煌々と光る杖をモンスターに向ける。

その時初めてモンスターたちは自分たちが一か所に誘導されていたことに気づき逃げ出すが、その時にはもう何もかもが遅かった。

 

「【光散(アリオ) アルクス・レイ】!」

 

その言葉とともに杖先から放たれた光の矢は、逃げ出したモンスターを追従するようにして飛んでいく。そして中心にいるモンスターに着弾すると同時に、その矢は周囲のモンスターを巻き込むようにして爆発した。

爆発に飲み込まれたモンスター達はしばらくの間断末魔を上げていたが、すぐに魔石を残し身体を瓦解させる。

 

「これがこの世界の魔法か…消費した魔力に対して魔法の威力が高い。やはり詠唱が魔法の完成を支えているのか…いや、本人の資質も関係しているのか?どちらにせよ興味深いな…」

 

モモンガは、魔法がモンスターに命中したことに安堵しているレフィーヤを視界にとらえながら様々な仮説を立てていく。

 

「ーーーグァァァァァァァァッッ!!」

 

その時、爆発した煙の中から一匹のモンスターが飛び出してくる。

そのモンスターは先ほどの魔法によって体中に傷を負っていたが、頑丈な種だったのかそれとも運が良かったのか致命傷には至っておらず、魔法を放ったレフィーヤのもとへすさまじい勢いで接近し、牙を突き立てようとその顎を開く。

レフィーヤはその姿を見てとっさに杖を構えようとする。しかし迫りくるモンスターにトラウマを触発されたのか、魔法陣は展開することなく霧散してしまう。

 

「ーーッ!」

 

そして迫り来る痛みへの恐怖から、レフィーヤは体を縮こまらせ瞼を閉じる。

しかし、その牙はレフィーヤの体に突き刺さることはなかった。なぜなら、その攻撃はモモンガの右腕によってかばわれたためである。

 

「この世界で自分がどのようにダメージを感じるのかという実験も兼ねていたのだが…やはりユグドラシルと同じで、低位の攻撃は上位物理無効化によって阻まれるらしいな」

 

腕に牙が突き刺さっているにもかかわらず、モモンガの声はそれを感じさせないほどに平静だった。

これには、モモンガが持つ常時発動型特殊技術(パッシブスキル)が関係している。

上位物理無効化、このスキルはデータ量の少ない武器や低位のモンスターによる攻撃による負傷を完全に無効化するというものである。

一見するとかなり強いと感じる常時発動型特殊技術(パッシブスキル)だが、ユグドラシル時代ではそもそもこれに該当するモンスターなんて精々レベル60程度のものしかいなかったため、カンストプレイヤーであるモモンガには雀の涙ほどの恩恵しかなかったスキルである。

しかし、いま目の間にいるモンスターは隻眼の屍(アイボール・コープス)からの情報によるとレベル20程度、この常時発動型特殊技術(パッシブスキル)の適応内である。

 

「しかし、このまま噛ませておくのも邪魔だな」

 

モモンガはレフィーヤを傷つけないために一時的に切っていた負の接触(ネガティブ・タッチ)を有効化すると、モンスターの首根っこを掴み、自身の腕から引き剥がす。

引き剥がされたモンスターはしばらくの間苦し気にもがいていたが、徐々に生気を失っていき、10秒もしないうちに溶け落ちるようにして消滅した。

 

「この程度のダメージ量でも十秒と持たないのか…どうやらこのあたりのモンスターはどれもレベル20程度の強さしか持ち合わせないらしいな」

 

レフィーヤの話では、ここらの階層で出現するモンスターの攻略レベルはレベル2くらいがほとんどだと言っていた。つまりこれらの情報を総合して考えると、ユグドラシルでのレベル10がこの世界のレベル1に相当するという計算になる。さらに、この世界の冒険者は約7割がレベル1~2なのだという。相当のミスをしでかさない限り、モモンガに命の危険はまずあり得ないだろう。

 

「モモンガさん大丈夫ですか!?今ポーションを使います!!」

 

手のひらに残った魔石を眺めながらモモンガがそのようなことを考えていると、顔を上げたレフィーヤが大慌てで腰に付けたポーションを差し出してくる。

 

「い、いや、大丈夫だ傷はない!気持ちはうれしいが私にはおそらく効果はないからそれは取っておいた方がいい」

 

十中八九善意で差し出したものなのだろうが、モモンガのようなアンデッドにはポーションはむしろダメージになりかねない。それに、効果のない相手に使うよりはレフィーヤが大怪我をした際の予備として持っていた方が効率的だろう。

モモンガはレフィーヤの差し出すポーションを腰のバックへと納めさせる。

 

「…すみません。私、アイズさんだけでなくモモンガさんにまでご迷惑を…」

 

レフィーヤは、すっかり意気消沈した様子でモモンガに向かい頭を下げる。先ほど下手に励ましたこともあって責任を感じているのだろう。目元には涙がにじんでおり、エルフ特有の耳は今のレフィーヤの感情を伝えるようにしょんぼりと垂れ下がっていた。

…なんだか小型犬を彷彿とさせる。ギルメンに聞いたり動画でたまに流れてくる程度でしか知らないが、その姿には庇護欲が湧いてくる感覚がする。

 

「いや、この程度であれば迷惑のうちにも入らない。それに、今の経験を踏まえてレフィーヤが何処を改善すればいいか分かればおつりが出るくらいだ。次に活かしてくれればそれでいい」

 

それに、レフィーヤが敵を打ち洩らさなかったとしても何処かで上位物理無効化の実験はしたいと考えていた。それを加味するなら今回はプラスでしかないのだ。

 

「…はい!次は間合いに入りこまれても、冷静に対処できるようにします!」

 

そんな下種な考えを知る由もないレフィーヤは、顔を上げ決意を新たにする。

騙しているようで心が痛むが、これまでにもモモンガはレフィーヤに対し数々の虚偽(ブラフ)を重ねている。今更1つ2つ増えたところで変わりはしないだろう。

 

「よし、それでは先に進むとしよう。目的地の安全地帯(セーフティゾーン)まではそう遠くはないはずだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

歩みを進めていくと、太い柱のような木々が立ち並ぶ森と洞窟を掛け合わせたかのようなものから、草が生い茂る草原のようなものに周囲の景色は変化していく。どうやら、安全地帯(セーフティゾーン)はすぐそこらしい。

レフィーヤの顔には、分かりやすいくらい喜色が浮き出ている。モモンガもまた、見飽きた景色が変化したことに喜びを隠しきれない。

 

「あとはこの先の広間を抜けたら18階層、安全地帯(セーフティゾーン)です!」

 

「そこまで来たら、私の護衛も終了というわけだ。無事に案内が終わりそうで安心したよ」

 

骸骨の身になってから肉体の疲労は消滅したが、精神の疲労は人間だったころと同じように残っている。周囲を警戒しながらの探索にはさすがに少し疲れてしまう。

…いや、そもそも周囲を隻眼の屍(アイボール・コープス)に探索させていたのだから、敵が来た時に警告してもらえばよかったのでは?

そんな考えが頭をよぎるが、モモンガは脳内でそれを必死に否定する。

ここまでの道のりで得た物は多い。スキル・レべルについての考察、レフィーヤの信頼、モンスター、そのどれもがあの状況だったからこそ手に入った情報だ。きっと楽をしていれば手に入らなかった情報もあるはずだ…多分。

 

「そうだ!私、安全地帯(セーフティゾーン)についたらモモンガさんにお礼をしたいんです。ファミリアの皆さんにも紹介したいですし、18階層に着いた後も私と一緒に行動しませんか?」

 

モモンガが脳内で葛藤をしていると、レフィーヤが声をかけてくる。

地上に出たいモモンガにとって、この発言は実に魅力的だ。モモンガはこの世界に来たばかりで、迷宮(ダンジョン)はおろか、地上の地理すらほとんど分かっていない。それらの多くを知っているレフィーヤがついてきてくれるなら、それは素晴らしいことだろう。

 

「…とても魅力的な提案だが、申し訳ない。それに応じることはできない」

 

しかし、モモンガはそんなレフィーヤの提案を蹴る。

この世界において冒険者とは、モンスターを討伐しそこから出現(ドロップ)したものから生計を立てるものを総称して言う。そして、モンスターは人型であったとしても調教(テイム)以外の方法で人間に味方することはない。

この世界でモンスターと人間が肩を並べるなんてことはあり得ない。たとえ彼女のファミリアに挨拶に行っても、始まるのは殺し合いだろう。当然、そうなったらモモンガも手加減することはできない。

 

「今、レフィーヤと私が一緒に行動しているのも仕方ないとはいえ君のファミリアにとってはあまりよい行動とはいえない。私に救助されたと言う情報は、可能な限り隠ぺいした方がいいだろう」

 

「そうですよね…わかりました。でも、すごく感謝しているってことは分かってほしいんです!」

 

「その言葉だけで十分だよ。こちらとしてもいろいろと収穫があった、こちらこそ感謝したいくらいだ」

 

この世界の情報をここまで収集できたのも、彼女がいたからこそである。彼女がいなければ、モモンガは今も漠然と迷宮(ダンジョン)をさまよっていたことだろう。

モモンガがそんな想像に寒気を感じつつ歩みを進めていると、モモンガは異臭を感じ取る。

 

「これは…血の匂いか。それもまだ乾ききっていない濃い匂いだ」

 

そしてそれはレフィーヤも同じようで、その異臭に顔を歪めていた。

どうやらこの先の広間には人間の血が大量に流れているらしい。怪我をしているのか、それとも死んでいるのか、どちらにせよろくな状況ではなさそうだ。

モモンガは無意識のうちにゆるんでいた気を引き締めなおすと、匂いが強くなっていく広間へと足を踏み入れる。

 

「これは…予想以上に酷いな」

 

そこには、モモンガがまだ人間であったなら失神してしまうような光景が広がっていた。

広間には、数十を超えるモンスターがひしめき合っており、今なおその数を増加させている。そして、そのモンスターたちはレフィーヤの仲間たちだったであろうピエロのような紋章が背中に刻み込まれた死体を奪い合っていた。

その死体からあふれ出した血液は広間の床に流れ出て、広間を真っ赤に染めている。破片はそこら中にまき散らされており、どれが誰のものであったか検討すらつかない。

 

「え、あ、なん、で、どうして」

 

レフィーヤは、目の前の光景に放心して動かなくなってしまう。体は恐怖のあまり小刻みに震えており、失神していないのが奇跡に近い様相だ。アンデッド化により精神の動きが鈍化したモモンガでさえ顔を歪めるほどなのだ。レフィーヤの精神的ショックは計り知れないものだろう。

モンスター達はしばらくの間目の前の死体を一心不乱に貪っていたが、数が多いこともあり足りなくなったのか新たな獲物であるレフィーヤへと目を向けてくる。

モモンガはそんなモンスター達に対し、歩を進めていく。

いくら仮初の契約だとしても、ここで放心しているレフィーヤを見捨てるつもりは毛頭ない。それに、モモンガは短い間の交流ではあったが、レフィーヤという人間を気に入ってしまったのだ。

レフィーヤはこんな化け物の身であるモモンガに対し会話を続けてくれて、最後にはモモンガに一緒に行こうと誘いをかけてくれた。

レフィーヤがくれたその言葉は『鈴木悟』という人間が渇望していたものであった。この身が人間の物であったなら、モモンガはレフィーヤの手を喜んで取っていただろう。

しかし、今のモモンガはレフィーヤの手を取るに値しない臆病者の怪物である。外見、性格、その他にもレフィーヤに見せるものはすべて都合のいい虚像でしかない。

だからこそ、モモンガはいつか、本当の自分としてレフィーヤに相対したいと強く思う。

 

「今ここでレフィーヤを殺させるわけにはいかないんだよ。…化け物は化け物同士で仲良くしようぜ?」

 

そう言ってモモンガがモンスター達を見据えると、モンスター達はただならぬ気迫に押されたのかどよめくような唸り声をあげる。

そしてモモンガがモンスターの群れに飛び込もうとしたその瞬間、モモンガは自身の右腕の袖が引かれているのを感じ取る。

見れば、先ほどは狂気に飲まれたようにして放心していたレフィーヤが、未だ恐怖に顔を歪めながらも杖を持ちモモンガを真っ直ぐに見つめていた。

 

「わ、私も戦います!恐怖にとらわれて何もできずに後悔するのは、も、もうたくさんなんです!」

 

正直なところ、今のレフィーヤに戦いに行けるようなメンタルを感じることはできない。体はいまだに震えているし、顔はまるで死人であるかのように青ざめている。

そもそも、この程度のモンスター群であればモモンガ一人で蹴散らせる。レフィーヤが傷つくリスクを負う必要はない。

しかし、モモンガにはレフィーヤを止めることはできなかった。なぜなら、モモンガを見つめる彼女の目にはモモンガにはついぞ備わることはなかった強い覚悟が備わっていたからである。

今ここでレフィーヤの手を振りほどけば、彼女の覚悟に泥を塗ることになる。

 

「…分かった。ならレフィーヤは支援を頼む。近づきすぎると俺の魔法に巻き込まれかねないからな」

 

ユグドラシルの頃であれば自分が放った魔法が味方に命中することはなかったが、現実に近いこの世界でフレンドリーファイアが無効になっているなんて考えにくい。彼女もそうなる可能性を理解しているのかモモンガの言葉に頷くと、モンスターに向けて杖を構える。

 

 

「「「「「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」」」」

 

その瞬間、モンスター達はこちらを”捕食対象”ではなく”敵”と認識したらしい。そのフロアに居る全モンスター達はこちらに向かいなだれ込むようにして迫ってくる。轟音を上げ、視界のすべてをモンスターがひしめくその光景はまさしく『絶望』という言葉が相応しいのだろう。

しかし、モモンガにはもうそれを絶望と呼ぶことはできない。そんな怪物になってしまった。

だが、それでいい。自分はそれらすべてを受け入れ、()()()()()()()

 

浮遊(フライ)

 

風の弾丸(ウィンド・バレット)

 

モモンガは宙に浮かぶと魔法を推進力とすることで加速、モンスター達に向け言葉通り弾丸のような速度で急接近する。

そしてモンスター達の眼前に一瞬で移動したモモンガは、右腕を素早く構え魔法を紡ぐ。

 

魔法最強三重化(トリプレットマキシマイズマジック) 連鎖する龍雷(チェイン・ドラゴン・ライトニング)

 

その言葉と同時にモモンガの手から放たれた三本の雷電は、先頭のモンスターから連鎖するようにして放射状に伸びて行く。そして雷電が身体を通過したモンスター達は瞬く間に黒い炭となり、魔石すら残さず消滅していく。

 

「悪いが手加減するつもりは毛頭ない。…行くぞ?鏖殺だ」

 

モモンガはそう言って、モンスターに手をかざすと伽藍堂な頭蓋骨に浮かぶ赤眼を不気味に光らせるのだった。




キャラクターの心理描写が上手く書けないのは自分の人生経験の不足からくるものなんだろうか?
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