死の支配者が新たな出会いを求めるのは間違っているだろうか   作:全ての道はところてんに通ず

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大変長らくお待たせいたしました。


成長するエルフ

魔法最強化(マキシマイズマジック) 闇の衝撃(ダークウェイブ)

 

モモンガが右腕を振るえば、数十体を超えるモンスターが灰燼に帰す。

 

魔法三重化(トリプレットマジック) 結晶の雨(クリスタルレイン)

 

さらにモモンガが左腕を振るえば、その倍の数が魔石すら残さず消えていく。

新しいモンスターが絶えず産み落とされ、今や広場を埋め尽くさんばかりとなっている異常事態(イレギュラー)

本来であれば冒険者にこの上ない絶望を与えるであろうその場所は、今や逆にモンスター達にとっての絶望の地となっていた。

敵は彼らが今まで会ったことすらないほどのでたらめだった。近づけば死ぬ、離れていても魔法で死ぬ、魔法をなんとか放ったとしても敵を中心とした障壁に阻まれる。

 

「…そろそろだな。レフィーヤ、行けそうか?」

 

「はい!行きますーー撃ち放て、妖精の火矢。 雨の如く降りそそぎ、蛮族どもを焼き払えーー【ヒュゼレイド・ファラーリカ】」

 

さらに、モモンガの魔法を仲間達を盾にすることで何とかしのいでいたモンスターはレフィーヤの魔法により盾ごと跡形もなく焼却される。

どれほどの数で襲い掛かろうともそれらを容易く打ち滅ぼす二人にモンスター達はもはや撤退することすらままならない。活路を見出せぬままその数を刻一刻と減らしていくのみである。

しばらくすると、モンスターを生み出すエネルギーが切れたのか、それとも別の目的があるのかは定かでは無いがモンスターが出現する際に響いていた壁のひび割れるような音も聞こえなくなっていた。

 

「どうやら、モンスターの追加が止まったみたいだな」

 

「あとはここにいるモンスター達を倒すだけです!」

 

その事実にレフィーヤの目にさらなる闘志が宿る。

そんなレフィーヤの姿に気圧されたのか先頭に立っていた狼のようなモンスターがが一歩後ずさり、その恐怖が伝染するようにしてモンスター達の顔に明確な”怯え”が浮かび上がってくる。その中には口元をロキファミリアの血で汚した者たちの姿もあった。

 

魔法持続時間延長化(エクステンドマジック) 岩壁作成(クリエイトロックウォール)

 

「逃がさんよ、自分は散々命を奪っておいて今更殺されたくないなんて。そんな道理は通らないだろう…なぁ?」

 

しかし、モモンガはその退路を塞ぐようにして石造りの城壁を作成する。

モモンガはこの場にいるモンスター達の一切を逃がすつもりはなかった。このモンスターをけしかけた黒幕の目的は何であれ、ここで一番されたくないことはこちらの情報を持っていかれることである。一匹でも逃がせばいくら情報操作のためにあえて低位階の魔法だけを使用しているとはいえ、決して少なくない情報が相手に伝わってしまうだろう。

探知系のスキルや隻眼の屍(アイボール・コープス)が感知していない以上直接この状況を見ている可能性は少ない。だとすれば情報を広めない最適の方法はこのモンスター達を一掃することだ。

 

「【誇り高き戦士よ、森の射手隊よ。押し寄せる略奪者を前に弓を取れ。同胞の声に応え、矢を番えよ――

 

レフィーヤが魔法の詠唱を開始する。詠唱とともに立ち上る光は先程とは比べ物にならないほど大きく、紡がれる矢は暴力的なまでの輝きで広場全体を照らしていく。

 

――帯びよ炎、森の灯火。撃ち放て、妖精の火矢。 雨の如く降りそそぎ、蛮族どもを焼き払え】!!」

 

そして詠唱が終了するとともにその輝きは最高潮に達する。その一撃はおそらくユグドラシルの50レベルが放つ魔法と遜色ないほどである。

レフィーヤは魔法の詠唱が終了するとともに一呼吸置く。そして覚悟を決めたようにして目を見開くと、撃鉄を下すようにして杖を振り下ろす。

 

「――ヒュゼレイドォ・ファラーリカァァァァァァァァ!!!」

 

その号令とともに、迷宮を照らす幾万もの炎の矢がモンスター達に疾走する。

凄まじい轟音は響き渡るモンスター達の断末魔すらかき消し、爆風は天井に生えている結晶を砕く。

レフィーヤのありったけの魔力を総動員した魔法は、広場にいたモンスターの大群を一挙に打倒したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「新たに生まれるモンスターは見当たらない…どうやら、我々は難を逃れたようだな」

 

隻眼の屍(アイボール・コープス)による索敵やいくつかの探知系魔法を発動させて周囲の安全を確認したモモンガはガウンに付いた埃を払う。

手加減はしていたが、この戦いはモモンガが初めてユグドラシルの頃のように知略をめぐらせて戦った戦闘であった。体には全くないが精神的に感じるほどよい疲労感はモモンガの顔をほころばせた…表情は変わらないので心の中ではあるが。

レフィーヤを見れば、彼女は魔法により荒れた広場の一角に何かを埋め手を合わせている。いくつかの剣や杖などの武器が刺さっているところを見るにおそらく仲間たちの墓標なのだろう。

 

「言ってくれたら手伝いくらいできたぞ?」

 

「いえ、これは自分がやらなきゃいけない気がしたので。家族(ファミリア)の最期くらいは私がちゃんと看取ってあげないと」

 

「…そういうものなのか」

 

モモンガの元居た場所では、看取りや埋葬の文化はいくつかの富裕層だけの特権になっていた。汚染された空気に耐え切れなくて病気で死んだり、仕事のし過ぎで過労死したり、多くの貧民にとって”死”というものは悼む必要がないくらいありふれたものだったからだ。

…もしかしたら、自分の母親も最期を看取ってほしかったのだろうか。そんな疑問がモモンガの心の中に生まれる。

しかしその問いに答える者はいない。いや、そもそもその問いに答えなどありはしないのだ。ありふれたフィクションのように心残りが幽霊(アンデット)になるなんてことはなく、いつだって死者に意味を求めるのは残された生者なのだから。

 

「そろそろ行こう、長居しているとまたモンスターが現れるかもしれない」

 

「はい、わかりました」

 

モモンガとレフィーヤは墓標に向けて最後にもう一度手を合わせると、上の階層へと続く道へと歩みを進めていく。

 

「地図を見るに、この道をまっすぐに進めば安全地帯(セーフティゾーン)に着くだろう。近くには冒険者がいるだろうから、私たちはここでお別れだな」

 

「それはそうなんですけど…あの、やっぱり一緒に行きませんか?」

 

「不安なのは分かるが、私を連れて行っても起こるのは争いだけだぞ。レフィーヤも初めて私を見たときには殺そうとしてきただろう?」

 

その言葉にレフィーヤは表情を暗くし、顔を伏せてしまう。

少しつき放つような言動になってしまったが、レフィーヤは変に押しが強いところがあるのでこれくらい言わないと諦めないだろう。

モモンガの返事を受け未練そうに後ろを何度か振り返りながら道を進んでいくレフィーヤを見送り、先ほどの広場ほどまで歩いてきたモモンガはふと考える。

…そういえば、ここまで何処にも居なかったが周囲のモンスターを殺すように命令を出した死の戦士(デスナイト)はどこに行ってしまったのだろう。

定期的に報告をもらっていた隻眼の屍(アイボール・コープス)とは違い偵察と外敵の排除のために呼び出してみたはいいものの一度も報告がなかったので若干忘れかけていたのだが、一体何処で道草を食っているのだろうか。ここの道はいくつかのルートの合流地点となっているのでもうとっくに合流してもおかしくないのだが。

 

「ひょっとしてボイコットでも起こされたか?やっぱり給料もなしに命令だけ出しても従ってくれないよなぁ…アンデッド相手の給料ってどう払えばいいんだろう。宝石とか喜ぶかな?」

 

しなくてもいい不安に数秒間悩むモモンガであったが、とりあえずは己の身を守ってもらうためアイテムボックスから宝石を取り出しながら隻眼の屍(アイボール・コープス)にしていたように念話のようなものを送信する。

しかしその瞬間、モモンガは一つの違和感に気づく。

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全ての召喚物の接続が途絶えた可能性を考慮し隻眼の屍(アイボール・コープス)とパスを繋ぐが、数秒と経たずに応答がある。

 

隻眼の屍(アイボール・コープス)。異常事態だ、索敵範囲を最大限に引き上げろ。報酬は…え、要らない?御身に仕えられるだけで充分?あ、うん、そうなのか」

 

社畜も真っ青な隻眼の屍(アイボール・コープス)の献身具合に若干引いてしまうが、仕事ぶりには変えられないとモモンガは喉まで出かかった否定の言葉をなんとか飲み込む。

隻眼の屍(アイボール・コープス)は白濁した無数の目を見開くと先ほどとは比べ物にならないほどの情報をモモンガに送る。周囲のモンスターたちの動向、死体の数、鉱石やその他アイテムなどについてや地図には書いてなかったダンジョンの隠し通路まで、普通の人間の脳であれば発狂するであろう膨大な情報の中からアンデッドであるモモンガは必要な情報を取捨選択していく。

その中からモモンガはとある重大な事実を把握する。それはデスナイトは仕事をボイコットしたのではなく、既に倒されていたということである。

死因は細いレイピアのような刃物で切り刻まれた後、魔法を打ち込まれたことによる焼死である。攻撃方法から見るにダンジョン内にいる冒険者によるものだったのだろう。

デスナイトはモモンガ自身が作成したアンデッドなので本来のものよりも高いレベルの強さとなっていた。さらに彼にはスキルとして倒されるほどのダメージを与えられても1度だけその攻撃を耐えるというものがある。加えて人を殺すなと命令を出していた以上彼は接敵を避けていたはずだ。

にもかかわらずデスナイトはこちらに接敵したというメッセージを残す余裕もなく討伐されている。ということは相手は間違いなくデスナイトと同等、もしくはそれ以上の者であると考えられる。そのようなことができる隻眼の屍(アイボール・コープス)の索敵範囲内にいる人物、および団体にモモンガは心当たりがあった。

 

「デスナイトを殺したのは、きっとロキファミリアなんだろうな」

 

口に出した己自身の言葉によりモモンガの心にわずかばかりの寂寥感が襲う。

レフィーヤにあれだけ諭しておいて、モモンガも彼らと平和的に交流ができるのではないかと心のどこかでは期待していたらしい。

しかし理解はしていたはずだ。この世界の人々にとってモンスターは自分たちに襲い掛かり命を奪う敵対者であると同時にオラリオから算出される利益の基盤を築いている資源でもある。そんな対象に今更意志があったと分かったところで、和解という選択肢を取ることができる人物はほとんどいないだろう。

 

「…いやいや、これ以上考えても仕方ないことだろこれは。それよりもこれからどうするか考えないと。とりあえずは地上に出なきゃダメだよなー。この姿もなんとかしなきゃいけないし、今持ってるアイテムの整理もしなきゃな」

 

モモンガは心に淀む暗い感情をため息とともに吐き出し、これからのことについて思考をめぐらす。

その瞬間、ダンジョン全体がけたたましい地響きをかき鳴らしながら胎動する。壁は振動によりいたるところにひびが入り、天井からは水晶のかけらが落ちガラスのような炸裂音とともに砕け散る。

さらに隻眼の屍(アイボール・コープス)から届いた情報にモモンガは驚愕する。

それは現在ロキファミリアが駐屯地として利用しており、レフィーヤを送り届けた18階層に多数のモンスターの反応が出たというものであった。

その上、モンスターの内一匹はユグドラシル産と言われても違和感がないほどに魔力量が突出していた。

そもそもレフィーヤの話ではこの階層にはモンスターは出現しないはずである。それに出現している数も尋常ではない。この数に加えユグドラシル産に匹敵するモンスターとあればいくらオラリオ屈指の強さを持つロキファミリアも少なくない犠牲を出すだろう。

かといって助けに入ることは、自らの存在をロキファミリアひいてはオラリオに晒し命を脅かされることになりかねない。

 

「…だからって見殺しにできるほど、人間をやめられるわけないだろ」

 

モモンガは少々の思案の後、自らの杖を掲げ、その先に魔力を込める。

 

転移門(ゲート)

 

そしてレフィーヤの魔力をたどることである程度の座標を割り出すと、モモンガはおそらくユグドラシルで最も使ったであろう転移呪文を唱えその門をくぐるのであった。

 

 

 

 

 

 

「全軍、僕達のテントを中心として陣形を組め!ガレス達はリヴァラの街の住人と協力して避難が遅れた人々の保護!他の団員は進行するモンスターの討伐を優先してくれ!」

 

「了解じゃ、フィン!」

 

「俺たちはモンスター共の討伐だ!行くぞアイズ!バカゾネスども!」

 

「分かりましたベートさん」

 

「「誰がバカゾネスだ!」」

 

「私達も詠唱に入る!魔法の使える者は私について来い!」

 

「「「了解!」」」

 

『迷宮の楽園』とも呼ばれる18階層、そこは今魔物と冒険者が渦巻く真の戦場と化していた。

魔物達は現在大きく分けて3箇所に分かれている入り口から途方もない数が入り込んでいる。それはまるでモンスターで構成された川のように18階層へとなだれこみ冒険者へと襲いかかっていく。

18階層が中層ということもあってかリヴァラの街にはレベル2のもしくは3の冒険者が数十人単位で在席しており今のところ死者の報告はない。

しかしながらモンスターの数は街に住む冒険者の数をはるかに超えている。いくらロキファミリアが援護を行っているとはいえ、このままでは死者も現れることだろう。

 

「もー!今日のダンジョン変なこと起こりすぎ!レフィーヤのことといいモンスターといい今日は厄日だ!」

 

「口じゃなくて手を動かせや!このままじゃ防衛線突破されるぞ!」

 

「わかってるってば!でも数が多すぎるんだよー!」

 

叫び声を上げながらティオナは彼女の武器である大双刃(ウルガ)を振り回し進行するモンスターを薙ぎ払うが、一向にその数が減少する気配は無い。

本来であれば、ロキファミリアの上位幹部にとって中層のモンスターは脅威と感じるほどの強さは持ち合わせていない。しかし今彼らを苦しめているのは、その数であった。

 

「モンスターの出現が止まらない…それにリヴェリアの魔法も出現する範囲が3か所に分かれてるから追いついてない」

 

「それでも私達にできるのは目の前のモンスターを倒すことだけよ。倒し続ければいつかはこの勢いも――

 

ティオネの言葉を遮るようにして再び18階層に轟音が響き渡る。

しかし、その轟音の正体は先ほどまでの地響きとは全く異なるものであった。

 

「…なんだ、ありゃァ」

 

ベートの口から発声を空転させたかのような掠れた声が漏れる。

彼の視線の先には、モンスターが出現していた道のうち正面の道を打ち破り現れたあまりにも巨大なモンスターの姿があった。

その体躯は迷宮の楽園に自生している樹木を遥かに超える大きさをしており、爬虫類を想起させる身体は硬い岩のような鱗に覆われそこから無数の結晶のような棘が生えていた。

彼は二足の足を動かしながら足元を走るモンスター達を意にも介さないとばかりに踏み潰しつつこちらへと向かってくる。鈍重な動きではあるが、もう20分もしないうちに自分達の立っているこの位置まで進行してくるだろう。

 

「いやいや、いやいやいや、あんなの反則でしょ!深層でもあんなヤバそうなモンスター居なかったって!なんだってこんな浅い層に来るのさー!」

 

「まだ避難誘導も満足にできてないのよ!?レフィーヤだってまだ見つかってないのに!」

 

「でも、あれが到着したら確実に私たちの陣形が崩れる…そしたら――

 

その時、ロキファミリアの防衛線から抜け出してきたのか虎のような風貌をしたそのモンスターがアイズの前に躍り出る。

本来であればアイズの実力はこのモンスターを容易く排除できるほどに高い。しかし今、アイズは長時間の戦闘と魔法の乱発により体力と精神力を大きく消耗させていた。

そしてその消耗が、アイズに致命的な隙をもたらす。

 

「――あッ」

 

足に力が入らない。

そう感じると同時にアイズの左膝は地面に着き、そのまま体全体は後方へと倒れてしまう。

今まで無視していた疲労感がアイズの体を地面へと強く縫い付けていく。気づけばアイズは体全体にのしかかる重量感に一歩たりとも動けなくなってしまっていた。

もちろん、そんな絶好のチャンスを逃がすほどダンジョンのモンスターは生易しくない。

虎型のモンスターはアイズに向かい急速に接近するとその勢いを残したまま後ろ足で跳躍、顎を開き眼前の標的の首を喰らわんと肉薄する。

 

「「アイズッ!!」」

 

「クソッ!動けねェ!!」

 

ティオネ達はすぐさまアイズの助けに入ろうとするが、防衛線の維持に戦力を総動員させてやっと現状を保っている今の状況で彼らが動けばこの防衛線は崩壊する。そうなってしまってはアイズ一人ではなくこの場にいる全員の命を失う事態になる。

アイズは自らの死を幻視し、せめてもの抵抗として右腕で顔をかばい固く目を閉じる。

しかし、しばらくの間そうしていてもアイズの想像していた己の腕を牙が貫くような痛みはやってこない。

疑問に思い目を開けると、目の前にいた虎型のモンスターは彼女から少し離れた岩の上に倒れていた。よく見てみるとそのモンスターの腹部には光り輝く魔力で構成された矢が突き刺さっていた。魔石を直接貫かれたのか、アイズが視線を向けている間にそのモンスターは灰と化してしまう。

いったいどこから。アイズは魔法を飛んできたであろう方角に視線を向ける。

現在、ロキファミリアに所属している魔導士たちは全員後方からのモンスターの討伐に奔走しており援護に入る余裕はない。それに他のファミリア所属の冒険者は統率の乱れを避けるためテント周囲の荷物の整理などの戦闘には関わらない支援に限定させていたはずだ。

加えてアイズにはこの魔法に見覚えがありすぎた。なぜならばこの魔法は、まさしくアイズたちが探していた少女のものであったからだ。

視線を向けた先の小高い丘の頂上にはにはやはりというべきか、彼女たちが想像していた通りの少女の姿があった。

服は長い間ダンジョンにいたことが一目でわかるほどにボロボロであったが、ポーションを使ったのか体には傷一つ付いていない。そんな風貌をしたエルフの少女は特徴的な山吹色の長髪をなびかせながらこちらを見下ろしていた。

そして、アイズと目が合うと真剣な表情をわずかに緩めこちらに向かい柔らかく微笑みかける。

 

「遅れてしまってごめんなさい。お怪我はありませんか?アイズさん」

 

「「「レフィーヤ!!」」」

 

少女の姿を目にした3人の少女は満面の喜色を湛える。

レフィーヤは丘を駆けるようにして降りると前線を固める集団の中心へと合流する。

 

「ちょっとレフィーヤ!すっごい心配してたんだからね!今までどこにいたのさー!」

 

「すみませんティオナさん。いろいろと説明はしたいんですけど、色々ありすぎて長くなりそうなのでその話はこの戦いを終わらせてからにしましょう」

 

「オッケー!じゃあレフィーヤも戻ってきたし、私は何も考えず目の前のモンスターを倒すぞー!おりゃあー!!」

 

心の中によどんでいたレフィーヤへの心配が消えたことにより、ティオナの剣撃の鋭さが数段階底上げされる。

それにより現状維持に留めていた前線には少しずつ余裕が生まれていく。たった数人の心境の変化ではあったが、レベル5クラスの動きの変化はそれだけ戦況に影響を及ぼすのだ。

 

「私たちも後に続くわよ!ティオナが作ってくれた活路を閉ざすわけにはいかない!」

 

「わーってるよ!」

 

ティオネとベートはそんなティオナの姿に触発されたのか自らの武器や拳を構え、勇み足に前方に蔓延るモンスターの軍団へと飛び込んでいく。

 

「レフィーヤは、リヴェリアの後方部隊に合流して。あそこならここより絶対に安全」

 

残ったアイズはレフィーヤに向けそう言って後方のテントの方角を指さす。

 

「私が、絶対後ろに通さない。守るから」

 

「いいえ、守られるだけじゃ嫌なんです」

 

そんなアイズの言葉を遮るようにして、レフィーヤが口を開く。

 

「私は今まで何度もアイズさんや、いろいろな人たちに迷惑をかけてきました。でもそれを後悔したまま怯えて後ろに下がるなんて私はもうしたくない。わがままかもしれませんが、私はアイズさんたちに守られるだけじゃなくて、今度は私からも皆さんを支えられるようになりたいんです!」

 

レフィーヤの意志のこもった主張にアイズは驚愕を露わにする。

以前までのレフィーヤであれば咄嗟の状況にあまり慣れておらず、自身やリヴェリアの後ろをついて回る様子がよく見られるどちらかというと気弱な少女といった雰囲気を醸し出していた。

しかし、今となってはその瞳に確固とした覚悟を宿しており、醸し出す覇気にはレベル5であるはずのアイズですら気圧されていた。

いったい彼女に何が起きたのだろう。

それを知りたい気持ちはやまやまだが、レフィーヤが先ほど言った通り今はそんな余裕はない。

 

「この状況を変えられる策が1つあります。今から私がここで詠唱を始めます。この距離だと成功する確率は100パーセントとは言えませんが、相手の陣形に大きな損害を与えられると思います。その間、こちらに向かってくるモンスターを何体か受け持ってほしいんです。お願い、できますか?」

 

しかし、そんな中でもアイズは1つだけ確信を持って言えることがある。

 

「…わかった。そっちは任せた」

 

「はい!」

 

それは、レフィーヤは失敗を踏み越え今、大きく羽ばたこうとしているということだ。




レフィーヤ超強化フラグが乱立する当作品。

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