もしもウマ娘の世界で野球部が存在してたら… 作:ぽてとめぇん
貴洋「…ここが、会場。」
ライアン「…意外と立派なところでやるんだね。」
部員P「うぅ…緊張してきた…」
部員K「ちょいちょい…エースが何緊張してるんだよ。」
部員T「そうそう、大丈夫だって。うちらがしっかり守ってやっから。」
初めての大会でみんな緊張している。
特に高校で始めた組がガチガチに緊張している。
部員F「ら、ライスちゃん…だだだ大丈夫…?」
ライス「ううん、すごい緊張しちゃってぇ…はぅ…」
部員E「だよねだよね…もう心臓がバクバク言ってるもん…」
初めて大会に出場する者もいれば、経験者もいる。
そんな俺たちは今、初陣を迎えようとしている。
先生「みんな~、ベンチに入るわよ~。」
貴洋「…いよいよだな。」
ライアン「うん。まずは1勝、だね。」
貴洋「あぁ、行こう。」
美浦高校。
ウマ娘学園とは友好関係にある学校。
よく陸上の選手たちがそこへ出向きトレーニング、合宿を行っている。
こちらの野球部もほぼ同好会のような感じである。
しかし、粘り強い野球をするチームであり後半戦が勝負所かもしれない。
先生「貴洋君、スタメンは…」
貴洋「組んでありますよ、安心してください。」
パーマー「え、ほんと?見せて見せて。」
ヘリオス「ま?うちにも見して~。」
1番 センター メジロパーマー
2番 セカンド アイエナン(部員A)
3番 レフト 阿部 貴洋
4番 ピッチャー パララシオン(部員P)
5番 ファースト クシナダヒメ(部員K)
6番 キャッチャー アイネスフウジン
7番 サード ティナン(部員T)
8番 ショート シレジアムトリペ(部員S)
9番 ライト バスクワリーノ(部員B)
パーマー「うわ~、うちが先頭か…」
ヘリオス「お~、パマちんがんば!」
貴洋「ライアン、一応何があるかわからないから準備しといてね。」
ライアン「わかった。」
そうこう言っているうちにアナウンスが聞こえる。
『両校のキャプテンは、メンバー表2通と…』
部員P「ふぅ…行ってきます。」
こちらの代表はパララシオン。
このメンバー表交換で先攻後攻を決める。
貴洋(…後攻がいいなぁ。)
そう思いながら俺はアップに励むのであった。
シートノックも終わり、間もなく試合開始が迫ってきていた。
俺たちは試合前のミーティングをしている。
部員P「まずは目の前の1勝。取りに行くよ!頑張ろう!
…えっと、あとは…貴洋君、頼んだ!」
部員の視線が俺に集まる。
…なんとなくそんな気はしていた。
貴洋「みなさん、初陣で緊張しているかもしれません。
しかし思いっきりやっちゃってください。
チャレンジしていきましょう。練習でやってきたこと、忘れてませんよね?」
部員たち「もちろん!」
「しっかり頭に入れてきたよ。」
「サインとかも大丈夫だよ!」
貴洋「…よし。では記念すべき1勝。そしてさらにその先へ行ってやりましょう!」
部員たち「「「よっしゃぁ!」」」
すると、扉のほうから審判の人たちが出てくる。
これを合図に各チームがベンチ前に並ぶ。
それまでざわついていた会場が静まり返る。
審判「……行きましょう。」
審判がホームベース上へ走り出す。
選手たち「「「っしゃぁ!」」」
それを合図に俺たちはホームベースへと駆け出す。
ピシッと並んだ二校の選手たち。
審判「…始めます、礼っ!」
選手たち「「お願いします!!」」
俺たちの初陣が今、始まる。
『守ります。
ウマ娘学園のピッチャーはパララシオン。
キャッチャー、アイネスフウジン。
ファースト、クシナダヒメ。
セカンド………』
俺たちは後攻。
裏の攻撃である。
外野の守備についてキャッチボールをしていると…
?「あ、パーマーですわ!パーマー!頑張ってくださーい!」
アルプススタンドから声援が送られる。
俺は声のもとを見てみると、そこには葦毛のウマ娘と
鹿毛のウマ娘が見える。
?「ちょっと、声が大きいよ!」
?「そうでもしないと届かないですわ!」
?「それは、そうかもだけど~!」
?「ほら、一緒に応援ですわ!」
貴洋「…パーマー、あの子たち知ってる?」
パーマー「あー…うん。知ってるよ。
同じメジロ家のマックイーンと、トウカイテイオー。
多分、マックイーンがテイオー連れてきたんだろうね~。」
貴洋「そうか。」
主審「プレイ!」
主審の合図とともに鳴り響くサイレン。
試合開始である。
部員P「…まず、初球大事に…」
彼女が腕を振って投げた球はきれいにアウトコースに決まる。
美浦部員「…なんか、速くね?」
唖然としている美浦高校。
それはそうだ。
だって、ウマ娘学園も同好会同然。
そのはずだった。
しかし、今は違う。
部員P「あれ?意外といけるかも!」
美浦部員「こんなの知らない!」
美浦の選手のバットは空を切る。
2球で追い込んだ。
部員P「ここで…!」
美浦部員「ひっ!」
インコース高めの明らかなボールを振る相手チーム。
三振である。
部員P「うっそ…三振取れちゃった…」
貴洋「ナイスピッチ、その調子です。」
部員P「…これなら、いけるかも!」
その後、後続を見事に抑え切った。
三者凡退に見事に終わらせた。
マックイーン「すごいですわ!三者凡退に抑えましたよ!テイオーさん!」
テイオー「…うそぉ。去年のレベルからじゃ考えられないんだけど。」
一方そのころベンチでは。
部員K「ちょいちょい!ナイスピッチじゃん!」
部員T「なんだよ!心配することないじゃん!」
部員P「ありがと!よし、がんばって先制するぞ!」
部員たち「「おぉ!」」
盛り上がっている部員たちを横目に俺はアイネスのほうに行く。
貴洋「アイネス、どう?パラさんの球。」
アイネス「コントロールも球筋もいい感じなの。それがどうかした?」
貴洋「できるだけ、球数抑えれるようにしてくれないか?
できるだけ長いイニングを投げさせて、ライアンを温存させたい。」
アイネス「なるほど…わかったの、パララシオン先輩に言ってくるの。」
そう言ってアイネスはパララシオンのほうに今後の配球について話し合いに行った。
俺はバッターの準備をして相手ピッチャーの球筋を見る。
見た感じは打ちやすそうだが…
貴洋「アイさん、あのピッチャー何投げますか?」
部員A「え?うーん…基本ストレートだから変化は狙わないほういいかも。」
貴洋「なるほど…ありがとうございます。」
そうなればバッティング練習とほぼ同じだろう。
そして、こちらの攻撃が始まる。
『1番…センター…メジロパーマー。』
マックイーン「パーマー!かっ飛ばしちゃってくださいまし!」
パーマー「はは!元気だなぁ、マックイーンは。じゃあ…ご注文通り!」
投じられた初球。
それに反応したパーマーが躊躇なく振り抜く。
その打球は見事に右中間に飛ぶ。
ヘリオス「パマちん、行っちゃえ行っちゃえ!」
パーマー「いいねぇ、行っちゃおうか!」
パーマーは2塁ベースを踏み、3塁ベースに行く。
しかし、彼女のスピードは緩まない。
キャッチャー「…っ!バックホーム!バックホーム!」
トップスピードに乗ったままヘリオスは3塁を蹴る。
ボールはまだホームに帰ってこない。
パーマーはスライディングをするまでもなく、
そのままホームベースを踏んだのだった。
貴洋「ナイス、ランニングホームラン。」
パーマー「へへっ、ありがと!」
俺は彼女とハイタッチしてネクストバッターサークルに向かう。
1-0
しかし、まだ俺たちの攻撃は始まったばかりである。
『2番…セカンド…アイエナン。』
部員A「ふぅ……」
美浦ピッチャー「くそっ!」
部員A(…なんだろう、すごくゆっくりに見える。これなら…!)
芯でとらえた打球は見事に三遊間を抜けていく。
シングルヒットである。
貴洋(…いいじゃん、ナイスバッチ。)
『3番…レフト…阿部くん。』
貴洋(見た感じ、ストレートは苦でもない。だから…)
相手ピッチャー「……うりゃ!」
投げられた球はベルト付近の高い球。
完全なる失投。
俺はそれを見逃さなかった。
カキーン……
球場に金属のきれいな音が響き渡る。
真芯でとらえた打球はレフトの頭上を過ぎていき…
やがて、レフトは打球を追うのをやめた。
ガコン…
パーマー「…入っちゃった。」
マックイーン「…ホームラン…ホームランですわー!!」
俺はゆっくりとダイヤモンドを回っていく。
スタンドからはどよめきに近い声が上がっている。
それもそのはず。
彼の打球は外野席の中段まで飛んで行ったから。
打った瞬間、それを確信するくらいの打球だった。
俺はホームベースを踏み、ベンチへ戻ってくる。
先生「はわわわわ、生で初めてホームランを見ましたぁ!」
パーマー「え!待って君そんなに飛ばせたの!?」
ヘリオス「マジヤバ!マジヤバなんですけど!」
部員C「すごかったっす!どうやったらあんな打球が打てるんすか!」
みんな思い思いに俺に話しかける。
ライアン「ナイスバッティング、さすがだね。」
貴洋「…まだまだ…これからだぞ。ライアン。」
ライアン「…そうだね、負けないよ。」
そう言って俺はライアンとグータッチした。
結局このイニングは6得点のビックイニングになった。
その後も打線はつながり4回裏終了には16-0になっていた。
美浦高校ベンチ
「…まって、あっちあんなに強かったっけ?」
「いやいや…秋の新人戦ボロボロだったんだよ?」
「急に打ち出して…怖かった。」
「特にあの3番。何あのホームラン。」
「ほんとそれ、やばすぎでしょ…しかもほかのバッターもすごいし…」
「「「……」」」
しかし、一人の選手が立ち上がる。
(…まだ…終わらせない。私たちだって…やるんだ!)
『1番…ショート…アタヒメ。』
部員P(ここまで0点で抑えてる。この調子で…!)
主審「Strike one!」
アタヒメ(…まだ…まだ終わらせたくない!)
2球目。
美浦選手が振ったバットはボテボテのサードゴロになる。
アタヒメ「諦めたく…ないっ!!」
1塁に決死のヘッドスライディングをする。
ギリギリの判定。
一塁審「She's safe!!」
アタヒメ「…っし!っしゃぁぁぁぁ!」
間一髪、セーフの判定。
美浦部員は一塁塁上でガッツポーズを決める。
盛り上がる美浦ベンチ。
『2番…ライト…』
美浦部員(キャップ…俺たちも負けてらんないっすね!)
部員P「っ!」
とらえた打球は見事なセンター前へのヒット。
一塁ランナーはスタートを切っており、そのまま3塁まで行った。
ノーアウトランナー1,3塁。
盛り上がる美浦ベンチ。
貴洋「…まずいな、アイネス!」
俺はアイネスに間を取るようにジェスチャーする。
アイネスは主審にタイムを要求してピッチャーに近寄る。
アイネス「パラさん…」
部員P「…ごめん、切り替えていくよ。」
アイネス「…貴洋から教わった変化球。ここで試しませんか?」
にやりと笑うアイネス。
部員P「…けど。」
アイネス「忘れちゃいましたか?試合前に言った言葉。」
部員P「!…チャレンジしていこう…だったね。
そうだった、なーに弱気になってんだ私。ありがとう、アイネス!」
どこか吹っ切れた様子のパラさん。
相手ベンチからは必死の声が上がる。
だが、関係ない。
部員P「いくよ…シュッ!」
美浦部員「もらった!」
しかし、空を切る。
美浦部員「…あれ?逃げていった?」
外に逃げていくスライダー。
今日初めて投げたはずだが、コース完璧に決まる。
2球目も同じコースへ。
美浦部員「うそ…バットに当たらない!」
かすりもしない。
彼女は短期間でスライダーを習得したのである。
部員P「…これで…とどめだよ!」
美浦部員「…!あぶな…!」
のけぞるバッター。
しかし、ボールはバッターの体を避けるように外に逃げていく。
主審「Strike out!」
美浦部員「嘘…」
インコースのスライダー。
通称インスラ。
見逃し三振を取るのにはもってこいだ。
美浦部員「……すんません。」
モト「…安心しな、うちが返してやる。」
『4番…ファースト…モト』
ここまで2安打を打っている4番。
1アウトランナー1,3塁。
ここで敬遠してもいい。
だけど…
貴洋「もちろん…真っ向勝負だよな。」
真剣勝負。
二人のバッテリーはそっちを選んだ。
モト「…へっ!面白い!」
部員P「点は…やらないから!」
初球は見逃してボール。
力の入った球。
2球目もアウトコース少し外れてしまった。
貴洋(…置きに行くなよ。)
部員P「やぁ!」
アイネス「っ!」
投げた球はキャッチャーの構えたところとは逆のインコースへ。
逆球だ。
モト「待ってたぜぇ!その甘い球ぁ!!」
部員P「っ!」
レフトに打ちあがる。
幸い打球はフェンスを越えない。
貴洋(…勝負だよな…だったら。)
俺は3歩ほど後ろに下がる。
そしてタイミングを合わせて勢いをつけながら前に行く。
フライを取る。
3塁ランナーがタッチアップをする。
貴洋「1点も…取らさせはしねぇぞぉ!!」
その勢いをすべてボールへと伝える。
そしてその球は…
キャッチャーの構えるグローブへと吸い込まれる。
三塁ランナーは意地でもセーフになろうとすり抜けようとする。
アイネスもランナーをアウトにしようと必死に腕を伸ばす。
1点の攻防が繰り広げられたホームベース上は土埃が舞っていった。
静まり返る球場。
そしてその視線はすべて主審へと向けられる。
主審「……She's out!!」
わずかに…ほんのわずかアイネスのタッチが早かった。
3アウト。
俺たちはコールド勝ちを収めたのだった。
最終スコア
123456789 計 HE
美00000 0 40
ウ6316× 16141
五回コールド
ウマ娘学園 2回戦進出
美浦高校
モト「…悪かった、あの球を仕留めきれなかった。」
アタヒメ「モトが悪いんじゃない…私が他の場面で打てなかったから…」
美浦部員「キャプテン…」
完全なる敗北をした美浦高校。
あのとき、打っていれば。
あのとき、声を掛け合っていたら。
あのとき、コースにしっかり投げれたら。
後悔しか残らない。
そんな試合だった。
美浦部員たち「…私たち…ダメなのかな。」
「無理だよ…あんなチームに勝てっこないよ…」
そのとき…私はチームに何も言えなかった…
どうしたらいいのか…なんていえばよかったのか…
私は悔しさがいっぱいで何も言えなかった。
試合が終わり、俺たちは帰り支度をしていた。
荷物をつんであとは着替えるだけなのだが…
貴洋「…着替えるの遅すぎないか?」
俺は1分以内に着替えを終わらせたのだが…
もうかれこれ3分以上はかかっている。
貴洋「…用でも足してくるか。」
俺はトイレに行こうと歩き出した。
貴洋「……あっ。」
アタヒメ「あっ…」
相手校の人と鉢合わせてしまった。
アタヒメ「…その…お疲れ様です。」
貴洋「…お疲れ様です。…ん?」
アタヒメ「えっと?どうかしたんですか?」
貴洋「…指、腫れてませんか?」
彼女の左手。
よくよく見てみると腫れているところがある。
アタヒメ「あ…えっと…突き指しちゃって…」
貴洋「…冷やすものは?」
アタヒメ「……」
貴洋「…ちょっとそこで待っててください。すぐに戻るんで。」
アタヒメ「え、ちょっと!」
俺は自分の荷物がある場所へと急ぐ。
そして荷物の中から自分用のアイシング道具を出す。
氷を少しもらいアイシングを作る。
その後急いで彼女のもとに走る。
貴洋「お待たせしました、これ。」
アタヒメ「え!そんな、悪いですよ!」
貴洋「いいですよ。それよりもけがを悪化させるほうがダメです。」
アタヒメ「で、でもぉ…」
貴洋「また戦いたいんです。あなたのあの気迫あふれるプレー、
すごいかっこよかったです。
他にも最終回のあの団結感。
それを見てもう一度、やりたいなって思ったんです。」
アタヒメ「…へ?」
貴洋「またどこかで会いましょう!練習試合でも、公式戦でも!
また戦いましょう!」
いろいろ話そうとしていた時後ろから呼ばれる。
ライアン「貴洋君、出発するよー。」
貴洋「はーい、じゃあ。私はこれで…」
アタヒメ「ちょっと待ってください!」
貴洋「…はい?」
服を引っ張られながら制止させられる。
すると、スマホを見せてくる。
アタヒメ「連絡先、教えてください…返しに行くので…」
貴洋「あ、そういうことでしたら…」
連絡先を交換して俺は相手校のキャプテンと別れた。
ライアン「何してたの?」
貴洋「アイシング渡してた。あいつ、突き指してたっぽいから。」
ライアン「え、そうなの…心配だなぁ・・・」
貴洋「大丈夫だよ、きっと這い上がってくるから…」
アタヒメ「………」
モト「…おい、どうしたんだよ。」
アタヒメ「ひゃいっ!え?ど、どどどうしたの!」
美浦部員「…キャップ、なんかおかしいですよ?」
モト「そうだぞ…てか、なんだそのアイシング。
俺らのもんじゃないだろ…」
アタヒメ「えっと…心優しい人が…その…」
美浦部員「おやぁ?おやおやおやぁ?」
モト「…まさか、男か?」
アタヒメ「え!?そんなんじゃないよぉ!大体そんなひとなんてぇ…」
モト「いや、違いねぇや!ヒメがこんな顔するなんてなぁ!はははは!」
キャップ「もぉー!そんなんじゃないってばぁ!!」
貴洋「…へっきしっ!」
ライス「どうしたの、貴洋君?風邪でも引いた?」
貴洋「いや…誰かに噂されてんのかな…」
ライアン「ははは、そうかもね!あんなホームラン打ったわけだし!」
貴洋「…そうかもな。」
私も…ホームラン打てたらなぁ……
一度は柵越えを打ってみたいものですね(笑)
次回もよろしくお願いします。