もう我慢できねぇ!
投下だぁ!!!
一誠が、珍しく一人で歩いていた。
最近は夕麻に付き纏われて一人になる瞬間があまりなかった。
が、今日は何故か夕麻が来ない。休日だというのに。
ついに諦めたのだろうか。
それならそれで構わないが……。
ーーーーーーーーーーーー少し、つまらない。
夕麻との僅かな時間は確かに一誠を変えていた。
喧嘩に明け暮れ、そして喧嘩を売ってくる相手が居なくなった今。
夕麻は一誠の生活に、いない生活が少しつまらないと思う程度には食い込んでいた。
「まぁいいか……今日は……」
ふらふらと近所の公園へと入っていく。
涼しく、噴水のある公園は、トレーニングにぴったりなのである。
噴水のところに差し掛かったところで、何やら奇妙な敵意と視線を感じる。
奇襲など、以前は日常茶飯事であったために、気配には敏感なのである。
しかし、この気配は妙であった。
まるで、相手が空を飛んでいるかのような場所からの視線。
ふっと振り返る。
「ほう……別に隠す気はなかったが……気付いたか」
黒い翼をはやした、コートと帽子の男。
空を飛び、一誠を見下ろしていた。
敵意は増大していき、殺意へと変わっていく。
そんなことは一誠にはわからないが、何か不思議な圧が目の前の男から発せられていることはわかった。
「我が名はドーナシーク。
堕天使というやつだが……わかるか?」
「…………」
まったくわからん。
というか、なんでこいつは空飛んでるのか。
背中の羽ばたく翼が推進力とでも言うのだろうか。
デ○ルウイングなのだろうか。
「で、その堕天使が何の用だ?」
「おや、対して驚かないのか。
この街最強の人間という噂はどうやらデマではないらしい」
おっさんの堕天使、ドーナシークはそうおどけながらいい、その手に光を集めていく。
明らかに、喧嘩を売りに来た以外のそれではない。
「なんだかよくわからねぇ上に、寝起きですぐたぁ……随分気が利いてる。
眠気覚ましに喧嘩の一つでもしたかったところだぜ」
「ふん、下等な人間風情が、堕天使の私に勝てるとでも?」
光は収束し、槍の形状へと姿を変えていく。
今までの喧嘩でも、獲物を持った奴らと何度も戦ってきた。
とあるドスを持ったヤクザと戦い、そいつをボコボコにしたこともあった。
獲物が卑怯とは言わない。なぜならば、それは武器を持ってないのに武器を持った奴に勝てる実力を備えてないそいつが悪いのだ。
一誠は春先故にと親が渡してくれた上着を腰に巻いて結ぶ。
幼い頃から、このスタイルは気に入っている。
「久しぶりの喧嘩が人外相手とは、中々にスリリングかつ刺激的だ。
神様に感謝の一つでもしたいね……」
「ふん、たかがチンピラが神に祈るか」
「祈るのはてめーだよ」
一誠は駆け出した。
何故喧嘩を売ってくるのかとか、そんなことは彼にはどうでもよかった。
なにせ、久しぶりの喧嘩である。渇いて渇いてしょうがなかった。
強い奴が目の前にいるのだ。
そいつを超えて、その先にいるやつを超えて。
俺は最強になる。
最強を目指す人間は、堕ちた天使へと殴りかかった。
駒王学園オカルト部部室。
休日であるにも関わらず、リアス=グレモリーはその部室で紅茶を楽しんでいた。
部員である小猫、そして朱乃と木場も一緒に。
「ぷはあぁ~……この一杯のために勉強してる」
「リアス、その声やめなさい。
だらしないわよ」
紅茶を飲んだ後、まるでビールを飲んだあとのように息を吐くのを、朱乃は咎める。
「いいじゃない、別に誰が見ているわけでもなし。
あなたたち以外に見せる気もないわ」
ニコニコ笑いながら、部員たちに笑いかける。
小猫は黙々とクッキーを食べている。
「それにしたって、おっさんみたいな姿見せないでちょうだい。
眷属に示しが付かないわよ?」
「だから、眷属以外にこんな姿見せないわよ……って、ん?」
リアスが首をかしげる。
クッキーを食べていた小猫の口元を拭っていた木場も、姫島も、そして小猫もリアスを見た。
「光の力?ちょっと濁ってるし、堕天使のものかしら?」
「……なるほど?
どうやら侵入者ってことですか?」
朱乃の口調が先ほどの友人同士の口調から変わる。
まるで、自分の主に話しかけるように。
「部長、どうします?」
「私が行くわ。
まったく真昼間っから何をやってるのやら……」
リアスは面倒そうに立ち上がり、ドアから出ていく。
ティーカップを朱乃が片付け、小猫は我関せずを決め込むのか、クッキーを未ださくさくとかじり続けている。
「じゃ、行ってきます。
帰ったら、またおいしい紅茶頼むわね」
「はぁ……分かりました。
心配するまでも無いでしょうけど、気をつけてください」
「オラオラ、どうしたカラス野郎!」
「ちっ!矮小な人間風情が!」
一誠の拳が空を切る。
翼をはためかせて回避するドーナシークに、さらに距離を詰めて拳を振るう一誠。
ドーナシークは槍で切り払うが、人間よりも洗練されたはずの堕天使の身体能力は一誠を捉えられずに空振りとなる。
気が付けば後ろに一誠がいる。
動きの上では一誠が上をいっていた。
身体能力では堕天使たるドーナシークが優位だろう。
だが、喧嘩の才能と直感の鋭さ。そして技術において一誠が高みにいた。
「そんなもんじゃ俺は殺せねーぞタコ!」
「ふん!舐めるなよ人間!」
槍を持って突きかかるドーナシーク。
それに対し、一誠は足で土を蹴り上げる。
土煙がドーナシークの視界を遮り、槍は一誠を捉えることなく土煙を切る。
その先に一誠の姿はない。
「先ほどからちょこまかと……何っ!?」
目を周囲に向け、一誠を探すドーナシーク。
しかし、翼に圧力を感じ、羽ばたこうとする。
その翼を人の手が鷲掴みにしていた。
「貴様、この私の翼を!」
「ちょこまかとうっとーしーのはよぉ!
テメーの方だってんだよ!」
一誠はドーナシークの翼を引き、自分の方に寄せる。
そして、その顔面へ向けて、幾多の不良を屠った拳を放つ。
「ぐうっ!?」
「そらそらァ逃げらんねーぞカラス!」
その拳はしっかりと顔面を捉え、さらに次の一撃を加えるべく、もう一度翼を引き寄せる。
顔面へ、剛拳が突き刺さった。
「ぐほぉっ!!」
「ありゃ、羽根が抜けちまった」
案外脆いなと呟き、黒い羽根を放る。
ドーナシークは痛みに悶え、地面でうずくまっている。
「ったく、お前弱いな……当たったら終わりな武器があるなら、それを当てるための何かを考えろよカス」
「ぐ……オォ……!」
首をバキバキと鳴らしながら肩を回す。
光の槍は既に離散し、帽子はどこかに飛んでいってしまっていた。
顔面に二発のパンチを食らっただけで、ドーナシークは立ち上がれないほどのダメージを受けている。
「何故……!
このような、クズに、この……私が……!」
「うるせーんだよさっきからよ。
あーあ、人外っつってもこんなもんかよ……退屈凌ぎにもなりゃしねえ。
えーっと、ドナッシーくんだっけか?かえっていいぞ。
シラけちまった」
腰に巻いた上着を解くと、肩にかけて背を向ける。
既に、興味は失せていた。
しかし、そうはいかないらしい。
「……は?」
腹に、二本の光が突き刺さっている。
いつの間に、や。何故、といった疑問が浮かばないわけではなかった。
だが、今一誠の心のうちにあるのは、ただ
「この……やろ……ォ!」
「ドーナシーク、大丈夫か」
「カラワーナ、こんな奴心配することないっつの。
どうせいつもどおり油断しまくったんでしょーよ」
胸を大胆に開けた服を着用し、黒い翼を広げる女性。
そして同じく黒い翼を持つ、金髪の、まだ幼さの残るゴスロリ少女。
その二人が光の槍を一誠の背から腹へと突き刺していた。
血が滴り落ちていく。
「ぐっ……!
ミッテルト、カラワーナ……か……」
「あーあー、随分とやられちまってんのね」
「急ぎ戻る必要があるな。
人間ごときに、しかも顔面にたった二発食らっただけでこうなるとは……この男、危険か?」
まだセイクリッドギアも発言していないだろうに……。と、カラワーナと呼ばれた女性がこぼす。
うずくまるドーナシークへと視線を向けるカラワーナ。
あまりに密着しながら突き刺しているため、その豊満な胸が一誠の背中へ押し付けられて変形しているが、そんなことは一誠にはどうでもよかった。
「オラ……無視してんじゃねえぞクソアマ共ォ!!」
『!?』
無理やり、腕を捻って後ろへと手を回すが、その前に二人が飛んで下がる。
一誠の腹には二本の光が残っていたが、自然と消え去っていった。
「油断、した……!
まさ、か……仲間がいたなんざ……いや、想像できたことか……!」
「……っ!!」
ミッテルトと呼ばれた少女は驚愕していた。
光の槍を腹に二本も突き刺され、血がだくだくと流れているのにも関わらず、目の前の少年はその表情に強大な怒りを浮かべ、立っているからである。
普通の人間なら、今の時点で意識を失い、倒れ伏しているところである。
「反省した……!
そして、その上で!俺は……!お前らを!この場でぶん殴る!!」
叫んで、走った。
それに驚愕したのは堕天使の面々である。
如何にこの人間が強くあろうと、たかが人間。
先ほどの槍によって腹をぶち抜かれてなお、闘志を絶やさず、さらに走ってこちらへと向かってくる。
それに、狂気すら覚えた。
「ミッテルト!ここは引くぞ!」
「う、うん!」
カラワーナとミッテルトはドーナシークを抱えると、その翼で飛び上がる。
猛接近していた一誠の渾身の拳は空を切り、その近辺には堕天使の黒い羽根が散らばっていた。
「畜生……。
せめて、一発……ぶっ飛ばして……から……死にたかったぜ」
一誠は膝をつくと、口から血を吐く。
吐血した血液が土を濡らす。
それでも、倒れるわけにいかなかった。
「最強になりたかった……。
どんな奴にも……ゲホッ!
……負けねぇ……最強に……!」
未だ思い出せぬ前世の、唯一残った夢。
叶えたかった、夢。
「父さ……母……さ……」
意地なのか、それとも偶然なのか。
一誠は膝をついたまま絶命した。
前にも、後ろにも倒れることなく。
愛した家族の名を呼んで。
彼の背後から、一つの影が彼に近寄っていく。
彼の魂が、天へと召し上げられていくのに気付かず。
無理矢理感は否定できません。
しかし、これは一応必要なことなので言っておきます。
ご都合主義、僕大好きです。
次回、一誠の真の力、解放されます。
追記 2014 8/23ちょこっと改訂しました